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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#145「K.T.S.E.」Teyana Taylor (2018)

 #145K.T.S.E.Teyana Taylor (Getting Out Our Dream / Def Jam, 2018)


あれだけ長いと思った10連休もとうとう今日が最終日。後半は好天の日が続きましたが、皆さんも旅行やアウトドア、イベント参加など充実した連休を過ごされたことと思います。明日からの日常が憂鬱だ、という方も多いでしょうが、そういう時こそいい音楽を聴いていい意味でテンションをぐっと上げて乗り切って下さい。

さて、今週の「新旧お宝アルバム!」は、先週に続いて最近のアルバムを。モデル、俳優、ダンサーといったマルチキャリアで活動するNYはハーレム出身の女性シンガー、ティアナ・テイラーが、ヒップホップとR&Bが絶妙に一体となった素敵なグルーヴを聴かせてくれるメジャーからは2枚目のリリースとなるアルバム『K.T.S.E.』(2018)をご紹介します。

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NYハーレムで生まれ育ち、カリブのトリニダッド・トバコ系の血を引くティアナは1990年生まれの現在28歳。子供の頃から歌ったり踊ったりすることが好きで、様々なタレント・コンテストにもチャレンジしていた一方、ローリン・ヒルスティーヴィー・ワンダー、マイケル&ジャネット・ジャクソンといった正統派のオーガニックなソウル・ミュージックの影響を強く受けて育ったといいます。

2006年にビヨンセのシングル「Ring The Alarm」のビデオの振付を手がけたことがきっかけでファレル・ウィリアムススター・トラック・エンターテインメントと契約、俳優業やモデルの仕事をする一方、2008年にはデビュー・シングル「Google Me」と、初のミックステープ『From A Planet Called Harlem』をリリースし、そこそこの評判になったようです。

そんな彼女の転機となったのは、あのカニエ・ウェストとの出会い。カニエのアルバム『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』(2010)の何曲かで客演を果たしたティアナは、2012年にファレルとの契約を終了させて、カニエのレーベル、G.O.O.D. ミュージックと契約。2014年にリリースした正式なデビュー・アルバム『VII』が全米アルバムチャートでは19位を記録するヒットアルバムとなったことで、ティアナの名前がメインストリームR&Bシーンに知られることに。

そして、2016年、NBAヒューストン・ロケッツアイマン・シュンパートと結婚・出産を経験したティアナは、去年夏にカニエがワイオミングの山の中にこもって制作して5週連続でリリースした一連のカニエ・プロデュースのアルバムの5作目として、今回ご紹介する『K.T.S.E.』をリリースしたというわけです(ちなみにこの時カニエが1週目にリリースしたのはプッシャTの『Daytona』、2週目は自分の『Ye』、3週目がキッド・カディとのコラボ・プロジェクトの『Kids See Ghosts』、そして4週目がナズの『Nasir』でした)。

Teyana Taylor

アルバムは全編、カニエがどんどんエッジを立てていく前の初期のアルバム群『The College Dropout』(2004)、『Late Registration』(2005)、『Graduation』(2007)といった作品における作風、すなわちオールド・スクールのR&Bのサンプリングをうまく使いながら、彼の意匠であるボーカル・チェンジャーを効果的にあしらいながら、オーガニックなテイストのヒップホップ・グルーヴを作り出すといった手法が如実に表れた作品で埋め尽くされていて、あの時期のカニエの作品が好きなファンや、オールド・スクール・テイストのR&Bやヒップホップが好きなファンには間違いなく気に入ってもらえる、そんな作品に仕上がっています。

冒頭オープニング的なストリングとピアノをバックにティアナが早口気味のR&Bボーカルでこれから始まるアルバムの雰囲気をいやがおうにも盛り上げる「No Manners」でスタートするアルバムは、2曲目でシングルにもなった「Gonna Love Me」ではイントロ他随所でヘリウム・ボイスのコーラスがあしらわれる中、ローリン・ヒルメアリー・J・ブライジらを彷彿とさせるティアナのオーガニックで達者なR&Bボーカルと、70年代っぽい音色のギターリフが終始バックに流れるという、いかにもカニエ初期そのまんまのスタイルの楽曲で思わずニヤリ。続く「Issues / Hold On」もドゥーワップ風の"♪I Do Love You~"というコーラスのサンプリングと、インベーダーゲームの発射音的なエレクトロサウンドが随所で交錯する中で、やはり70年代なギターとベースの音色に乗ってティアナローリン・スタイルのボーカルを聴かせるという、まあカニエも楽しんでやってるなあというのがよく判る楽曲。そのカニエ自身のラップがフィーチャーされた「Hurry」もスライのナンバー「Can't Strain My Brain」のベースラインをサンプリングした、あくまでオールドスクール・テイストのスタイルのナンバー。ちなみに後半にティアナの悩ましいうめき声が登場するのでよい子のお子さんのいるところではご注意を(笑)

レコードだとB面の冒頭になる「3Way」では最近人気のプロデューサーでR&Bシンガーのタイ・ダラ・サインをバックにフィーチャーして、フェンダー・ローズの音色をバックにちょっとムーディーなメロディと曲調でちょっとディーヴァちっくな、また違ったティアナのボーカルの魅力が楽しめます。イントロや要所にスタイリスティックスの「Because I Love You, Girl」の一節からラッセル・トンプキンスJr.のボーカルのサンプリングが全体のクラシックな雰囲気をいやがおうでも盛り上げる「Rose In Harlem」では、ティアナは意識してちょっとラップっぽく、ヒップホップなスタイルのボーカルを聴かせてくれます。こういうちょっとやさぐれた感じのボーカルもカッコよくこなすティアナやはりただの片手間シンガーではありません。そして、これこそ熱唱タイプゴスペル・ディーヴァのスタイルで、マーヴィン・サップの曲を下敷きにしたミディアム・テンポのトラックをバックに堂々とティアナが歌い上げる「Never Would Have Made It」を経て、アルバム最後は「WTP」。これ、冒頭でも連呼される「Work This Pussy」の略で、ちょっと言葉のチョイスの可否は別として全体を通じて男性の声で「Ms.テイラー、あんたはマザファッキング(とんでもなく凄い)・ディーヴァだよ!」というメッセージのようで。で、この曲はこれまでの70年代っぽいオーガニックなソウル・ミュージック・スタイルとは異なって80年代後半のハウス・ミュージック的なアタックの強いエレクトロなサウンドとビートで一貫して、最後唐突に終わります。

タイトルの『K.T.S.E.』というのは、「Keep That Same Energy」つまり「その同じエネルギーのレベルを維持しなさい」ということのようで、それが様々な分野で精力的に活動するティアナに対するカニエからのメッセージなのか、それともティアナからこのアルバムを聴いているリスナーへのメッセージなのか、いずれにしてもこのアルバムからはそんなメッセージにふさわしい懐かしいオールド・スクールなグルーヴに乗ったとてもポジティヴなヴァイブがビンビンに伝わってきます

思えばカニエ自身も、一時期精神的に不安定で奇行が散見されたり(2009年のアメリカン・ミュージック・アウォーズテイラー・スウィフトの受賞にステージに上がって文句言ったあの事件、覚えてますか?)、メディアから叩かれたりしたこともあってか、2008年の『808s & Heartbreak』以降は作風が大きく変わってよく言えば先鋭的、アルバムによってはちょっと行っちゃってる感じのものもあり、初期のカニエのファンにはやや遠い存在になっていた感じがあります。しかし、このアルバムでのカニエのサウンドメイキングや、同時期にワイオミングで制作されたプッシャTや彼自身の『Ye』などは、あの初期のカニエの魅力が帰ってきたような楽曲スタイルに戻っている感じもあり、オールド・スクールR&Bとオールド・スクール・ヒップホップの融合体のような彼のサウンドのファンとしては、歓迎すべき傾向だと思っています

KTSE (Back)

とにかくこのアルバム、カニエ初期ファンならずとも、オールドスクールなR&Bのファンであれば絶対楽しんで頂ける作品になっていますので、これから夏にかけてのサウンドトラックの一つとして、是非一度AppleミュージックSpotify等でチェックしてみて下さい。

<チャートデータ> 
ビルボード誌全米アルバムチャート 最高位17位(2018.7.7付)
同全米R&B/ヒップホップ・アルバム・チャート 最高位10位(2018.7.7付)
同全米R&Bアルバム・チャート 最高位2位(2018.7.7付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#144「On The Line」Jenny Lewis (2019)

#144On The LineJenny Lewis (Warner Bros., 2019)


日本中が待望の10連休に入っていよいよ平成もカウントダウンに入った今週、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。天候は残念ながらイマイチすっきりしませんが、大型連休を皆さん思い思いに満喫されてると思います。

さて、今週の「新旧お宝アルバム!」は、TVの子役俳優から身を起こし、90年代には俳優業を封印してインディ・ロックの世界に飛び込んで、同世代の女性たちの心情を吐露するリリックや特定のジャンルにとらわれない独特のポップ・センスを持った楽曲で、カルト・フォロワーのファンを集めた女性シンガーソングライター、ジェニー・ルイスが今年5年ぶりにドロップした最新アルバム、『On The Line』をご紹介します。

On The Line 

南カリフォルニアで育って、ティーンエイジャーの頃からTVCMやTVドラマの子役としてエンタメの世界でキャリアをスタートしたジェニーは、90年代後半、20代前半になった頃俳優業から離れて、当時のボーイフレンドで同じ俳優だったブレイク・セネットら友人達とインディ・ロック・グループ、ライロ・カイリーを結成して音楽活動を開始。当初カントリー・サウンドから出発したバンドは次第にインディ・ロックにアプローチをシフトして、彼女がリード・ボーカルとして前面に出てきたアルバム『More Adventurous』(2004)あたりからシーンの評価を集め始めていました。また、都会の郊外に住む女の子のステレオタイプ的イメージのカリフォルニア・ポップなジェニーのファッションや、同世代・同タイプの女性達の心情を反映した楽曲の歌詞の内容などで一部のファンから強い支持を集めていたのですが、2014年にはバンドは解散。

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その2014年にバンド解散への思いと併せて当時経験した個人的な辛いことなども綴った彼女のソロとしては3枚目になる『The Voyager』を、当時アメリカーナ・ロックのシーンでは大スターとなっていたライアン・アダムスのプロデュースでリリース。ライアン独特のアメリカーナ・ロックな音楽スタイルとジェニー独特のポップ・センスに溢れたこのアルバムは、ジェニー・ルイスに対する広い評価を各音楽誌から集める彼女に取ってのブレイクスルー・アルバムになりました

そこから5年を経てリリースされた今回の『On The Line』。前回の『The Voyager』ではジャケにジェニーがレインボー・カラーのスーツを着た首から腰までの写真(顔は写っていない)が使われていたのが、今回はやはり首から腰までの写真ながら、胸元を半分露わにした今時のステージ衣装風のドレスを纏ったジェニーの姿が使われていて、彼女が明らかに前作の発展系として今回の作品を位置づけているのが判ります。(ちなみに裏ジャケはエルヴィス・プレスリー風のピンクのジャンプスーツを纏ったジェニーが白馬にまたがっているというもので、このあたりもジェニー独特のユーモアをにじませたポップ・センスが垣間見えます)

Jenny Lewis

今回のアルバムも当初ライアン・アダムスのプロデュースで始まったのですが、ライアンとは5日間スタジオで録音した後、ジェニー曰く「彼、フケちゃったの」(その後ライアン元妻のマンディ・ムーアへの精神的虐待や女性ファンへの性的不品行というスキャンダルの発覚で大変なことになった)ということで、その後は彼女自身がプロデュースを施すと同時に、前回も一曲プロデュースで参加していた、同じ南カリフォルニアのミュージシャン仲間であるベックが参加、演奏と併せて3曲をプロデュースしています。その他にもベック同様前作をサポートしていたトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズベンモント・テンチがキーボードで参加している他、今やブルー・ノート社長のドン・ウォズがベース、ベテラン・ドラマーのジム・ケルトナーそしてリンゴ・スターも2曲でドラムを叩くという、結構豪華なラインナップです。

前作のオープニング・ナンバーの「Head Underwater」は2000年代フリートウッド・マック、といったバウンシーなポップ・ナンバーでしたが、今回のアルバムはやや厳かな感じのピアノとアコギをバックにジェニーが別れた恋人に対して「あなたは自分が天国に行って私が地獄に行くと思ってるけど/あたし達みんな最後は骸骨になるのよね/頭がポロッと落ちてさ」とシニカルに歌うバラード「Heads Gonna Roll」でゆっくりとスタート。

続く「Wasted Youth」もポップながらややマイナー調のナンバーで、この2曲で既に前作とはトーンが結構違うな、という感じが伝わってきます。


シングルとして先行リリースされた「Red Bull & Hennessey」はフリートウッド・マックの「Little Lies」あたりを思わせる、リンゴジム・ケルトナーの贅沢なダブル・ドラムスのビートが全体を支配する、レッド・ブルとヘネシーでハイになる女の子の歌、といういかにもジェニーっぽい作品。

そしてベンモント・テンチの荘厳なハモンド・オルガンに乗ってゆったりとジェニーが歌う「Hollywood Lawn」と、ここまでライアンのプロデュースながら前作に聴かれたライアン然としたアメリカーナな雰囲気は皆無で、むしろ南カリフォルニアっぽい感じが充満したキッチュなポップさとかすかなメランコリズムが融合したジェニーの世界が広がっています。

ベックのプロデュースによる「Do Si Do」あたりから少し楽曲のテンポが上がってきますが、それに続くムーディーなベンモントのメロトロンをバックにジェニーが歌う「Dogwood」や「Party Clown」といった楽曲でのジェニーの独特なもやがかかったようなポップな曲調は変わらず。

この流れはラス前のタイトル・ナンバー「On The Line」まで続いていって、自分を捨てて東海岸のキャロラインって子のところに行ってしまった元カレのボビーに対して、電話を通してきこえる私の鼓動を聴いてよ、と訴えるこの曲はこのアルバム全体の「別れ」「喪失」「やり直し」といったテーマを象徴する楽曲になってます。それを締めくくるかのように曲のエンディングは長い電話の発信音で終わります。

そこから一転、アルバムラストはぐっとポップさとビートと明るさが漂うカントリー・ポップ調の「Rabbit Hole」で目の前が晴れたかのように。「もうあたしはあなたと一緒にウサギの穴に落っこちたりしない/悪い習慣はきっぱり辞めるの/もう一週間ドラッグもやってないし/あたしも前はスピリチュアルな感じが好きなセクシャルなタイプだったけど/あなたのおかげでビートルズストーンズにハマるのも考えものよねって思うようになった」という、自分のこれからの方向性へのステートメントというか、決意的なものが窺えるこの曲でアルバムは終わります

ヘタウマとも言えるジェニーのボーカルスタイル、決して「巧い」という表現は当たりませんが、自ら書く楽曲やそれらの曲の持つメッセージにぴったり合った、彼女の表現スタイルとしてはとても効果的なものとして耳に入ってきます。それに独特のサウンドスケープとメロディ、そしてこのアルバムではジム・ケルトナーのドラムスとベンモント・テンチのキーボードががっちりと楽曲の軸となってジェニーの作品を支えている、そんな感じのアルバムです。

On The Line (back)

これから5月、新しい時代に向かって日々暖かさが増していくと思いますが、そんな気候の中で聴くジェニー・ルイスの新作、ご機嫌なサウンドながらやや切なさも感じさせる楽曲に耳を傾けながらこの季節を過ごすのもなかなかいいのでは、そんなことを思わせてくれる作品です。

<チャートデータ> 
ビルボード誌全米アルバムチャート 最高位34位(2019.4.6付)
同全米オルタナティヴ・アルバム・チャート 最高位2位(2019.4.6付)
同全米ロック・アルバム・チャート 最高位4位(2019.4.6付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#143「Sailin'」Kim Carnes (1976)

#143Sailin'Kim Carnes (A&M, 1976)


先週の冷たい雨の後も、まだそこここに桜の面影が残る今日この頃、今週からはいよいよ気温も上がって春本番、さらには10連休に向かって、平成最後の2週間となります。既に連休中の予定もいろいろと決まっていて、楽しみにされている方も多いことでしょう。

さて、今週の「新旧お宝アルバム!」は、70年代に戻って、当時大ブレイク前だったキム・カーンズが、そのシンガーソングライターとしての才能を、名うてのマッスルショールズ・スタジオ専属のミュージシャン達と一つの素敵なアルバムにまとめたアルバム、『Sailin'』(1976) をご紹介します。

Sailin.jpg 

キム・カーンズというと、特に80年代以降のMTV洋楽世代の皆さんには、あの1981年9週全米No.1の大ヒット曲「ベティ・デイヴィスの瞳(Bette David Eyes)」と、あのPVのイメージがかなり強いのでは。なので、あの曲以外のキム・カーンズをよくご存知ない方もかなりおられるのではないでしょうか。

あの曲のキム・カーンズに対する功罪は様々あると思いますが、彼女の知名度を上げて、1982年第24回グラミーではレコード・オブ・ジ・イヤーとソング・オブ・ジ・イヤーの2部門受賞をもたらすなど、一般認知度と商業的成功をもたらした一方、彼女のシンガーソングライターとしての才能(「Bette Davis Eyes」はジャッキー・デシャノンドナ・ワイスの作品)や、ブレイク前は「女ロッド」というコピーで売り出されるなどブルー・アイド・ソウル・シンガーとしての魅力などが、正当に評価されることなく、MTV時代のポップ・シンガー的にステレオタイプなイメージに固められてしまったのは彼女のキャリアにとって、決してハッピーなことではなかったのではないか、と思ってしまいます。事実あの曲以降それまでのカントリーとR&Bの両方の要素を持ったシンガーだったキムが(彼女の初のソロ全米トップ10ヒットは、あのスモーキー・ロビンソン&ミラクルズの往年のヒット「More Love」でした)、あの曲の路線を追わざるを得ず、結果大きく表舞台に出ることも少なくなってしまったというのは残念なことです。

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そのキムが、その独特なハスキーヴォイスの歌唱で、カントリーとR&Bをベースにした実力派シンガーソングライターとしてのキャリアを商業的ブレイクを夢見ながら着実に積み上げていた時代のアルバムが、今回ご紹介する『Sailin'』です。

もともと60年代から夫のデイヴ・エリンソンとのチームでロスの音楽シーンで活動をしていたキムは、シナトラ・ファミリーの作品プロデュースで有名なジミー・ボウエンに見いだされて、スタッフ・ライター兼バックアップ・シンガーとしてデヴィッド・キャシディらに曲を提供しながら、1972年にはファースト・アルバム『Rest On Me』をリリース。ここに収録されていた「You're A Part Of Me」が1975年にアダルト・コンテンポラリー・チャートに入る、キム初のチャートヒットとなった(後にジーン・コットンとの再録バージョンがキム初のトップ40ヒットに)、そんなタイミングで、キムが夫デイヴと書きためた曲をひっさげて、当時スワンプ・ロックの聖地と言われたマッスルショールズ・スタジオで、アリサ・フランクリンなどを大スターにした大プロデューサーのジェリー・ウェクスラーと、マッスルショールズバリー・ベケットをプロデューサーに迎えて作ったのがこの『Smilin'』。

アコギのアルペジオから静かに始まり、キムのあのハスキーなボーカルが「あなたの最高のところに私はやられちゃったのよ」と次第にドラマチックに盛り上げていく、エディ・リーヴスキムの共作による冒頭の「The Best Of You (Has Got The Best Of Me)」、ヴァン・モリソンのカバー曲「Warm Love」、名手デヴィッド・グリスマンのマンドリンの音色がテックスメックスの香りを感じさせる、キム自作の口先だけの男に乗ってしまった女の話を綴るカントリー・バラード「All He Did Was Tell Me Lies (To Try To Woo Me)」、自分の元に返ってこない男に手紙を書こうとしてはやめる女の心情を、自らのピアノの弾き語りで歌うこれも自作の「He'll Come Home」、そしてアカペラのゴスペル風のコーラスで始まり、次第に後半にかけて盛り上がるタイトル曲の「Sailin'」と、A面だけでも「Warm Love」以外の彼女自身のペンによる楽曲は、全体的にカントリーまたはカントリー・ゴスペル風の雰囲気で、ストーリー性や歌詞の織りなす世界観と彼女のボーカルとメロディ・楽曲構成が素晴らしく、当時このアルバムがチャートインすらしなかったというのが信じられないような出来です


もちろんバックのミュージシャンは、マッスルショールズの有名セッション・ミュージシャンたち。プロデュースしながらキーボードを弾くベケット、後にレニー・ルブランとのデュエット、ルブラン&カーとして「Fallin'」のヒットを飛ばすことになる、ギターのピート・カー、同じくギターのジミー・ジョンソン、ベースのデヴィッド・フッド、そしてドラムスのロジャー・ホーキンスという超有名なメンバーがバックを固めています。

B面は他ならぬロッド・スチュアートもアルバム『Atlantic Crossing』(1975)で歌っていた、バリー・ゴールドバーグ(元ポール・バターフィールド・ブルース・バンド)とジェリー・ゴフィン作の「It's Not The Spotlight」でスタート。ピアノの音色に乗って静かに歌い出し、後半ピート・カーのギターソロがドラマチックに盛り上げる「Last Thing You Ever Wanted To Do」、ゾンビーズあたりのホワイト・ソウル・バンドの楽曲を思わせる「Let Your Love Come Easy」、そしてラグタイムとゴスペルとR&Bの要素が次々に楽曲を展開していく「Tubin'」とB面はA面に比べて、R&Bやゴスペル的な要素を感じる楽曲が続きます

そしてアルバムを締めるのは清冽な感じのストリングスとピアノをバックに、エモーショナルにキムが「愛は予測もしないところから現れるから、逃さずに愛をしっかりつかみなさい」と訴える、キムデイヴ作のスケールの大きいバラード曲「Love Comes From The Most Unexpected Places」。バーブラ・ストライザンドがカバーするなど他のアーティストにも取り上げられたこの曲は、キム自身参加してパフォーマンスした、1977年の第6回東京音楽祭で見事作曲賞を受賞。実はこの時日本の音楽ファンの耳にキムの楽曲と歌声は既に届いていたことになります。

今年74歳になるキム、今はロスからナッシュヴィルに居を移して、様々なカントリー・アーティスト達と共演したり曲を提供したり、一番最近ではイギリスのR&Bシンガー、フランキー・ミラーがリリースした様々なアーティストとのデュエット・アルバム『Frankie Miller's Double Take』(2016) でフランキーと共演するなど、まだまだ音楽活動はしっかり続けている模様。

Sailin (back)

残念ながらこのアルバムは未だにCD化されていませんし、Apple Musicスポティファイなどのストリーミングにも登録されていないようで、音源を聴くにはYouTubeにポストされているいくつかの曲を聴くしかないようですが、それでも充分聴く価値のある楽曲ばかりですので、探して見て下さい

これからじわじわと暖かさが増すこの時期に、澄み切った青空を思わせるキムの楽曲と、それに味わいを加えるハスキーなボーカルが織りなすキムのまだ若い頃のこの作品を楽しむのもなかなか乙なものではないかと思う、今日この頃なのでした。

<チャートデータ> チャートインせず

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#142「Delta」Mumford & Sons (2018)

 #142DeltaMumford & Sons (Gentlemen Of The Road / Island, 2018)


いやいやこの週末は先週末の寒の戻りのおかげで桜の満開のピークがばっちりシンクロして、土日とも各所で花見客で大変賑わいました。皆さんも桜爛漫の暖かい週末を過ごされたことと思います。

さて、今週の「新旧お宝アルバム!」は、2000年代に入ってそのアコースティックなフォーク・ロック・サウンドで一躍世界中の人気を集めたイギリスはロンドン出身の4人組、マムフォード&サンズが昨年末にリリースした3年ぶりの新作『Delta』をご紹介します。

Delta.jpg 

2000年代に入ってアメリカーナ・ロックに代表されるような、カントリーやフォーク、ブルーズなどのルーツ・ミュージックにそのベースを置くサウンドを主体としたロック・サウンドで作品を作り出すロック系アーティストが多く出てくるようになり、ライアン・アダムスウィルコ、ジェイホークス、ルシンダ・ウィリアムスといった新しいアーティストたちが脚光を浴びるようになると同時に、古くからそうしたルーツ・ミュージック的アプローチのサウンドを作り続けてきたベテラン・アーティスト達の作品に新しいオーディエンスによる新しい目が向けられるようになりました。その一つの象徴的な出来事が、2002年、第44回グラミー賞での、全面ブルーグラス・ミュージックのみで構成された映画のサントラ盤『O Brother, Where Art Thou?』(オー・ブラザー!)の最優秀アルバム部門の受賞でした。 

O Brother 

今日ご紹介するマムフォード&サンズは、その『オー・ブラザー!』のサントラ盤や、2000年前後に自らのキャリアの再定義を経てミュージシャン活動30年目で大きく再ブレイクしていたエミルー・ハリスの活躍など、アメリカでのフォーク・ミュージックの新たな展開に大いに影響を受けて自らの音楽活動を始めた、ロンドンの4人組。

もともとイギリスという国は、アメリカの黒人音楽のコピーからバンド活動を始めて世界的なバンドになったビートルズストーンズの例を挙げるまでもなく、R&Bやブルース、カントリーといったアメリカの音楽に対する根強いファンが多いのですが、マムフォード&サンズそのアプローチをフォーク・ミュージックに向け、世界的にブレイクした珍しいパターンのイギリスのアーティスト、ということになります。

2009年に彼らがリリースしたデビューアルバム『Sigh No More』とシングル「Little Lion Man」は、もっぱらアコギやバンジョー、ダブルベースなど、アコースティックな楽器のみで演奏されながら、そのコンテンポラリーさを持った躍動感溢れる楽曲構成とパフォーマンスで一気に世界中の音楽ファンの注目を集め、英米でアルバムチャート最高位2位の大ヒットに

2013年に発表されたセカンド・アルバム『Babel』は、聖書に登場するバベルの塔を言及するかのようなタイトルや、収録楽曲の歌詞に登場する文芸的な言及など、作品に深みを増しながらも、アップビートでポピュラー音楽作品としても優れた内容が高く評価されて、英米のアルバムチャートでは初登場1位、2013年第55回グラミー賞では見事に最優秀アルバム部門を獲得したものでした。

Mumford Sons

その彼らがアコギをエレクトリック・ギターに持ち替え、バンジョーをしまい込んで、それまでとガラリと異なる楽器編成で発表したのが3作目の『Wilder Mind』(2015)。それまでの2作のプロデューサーだったマーカス・ドラヴスからオルタナティヴ・ロック・アーティストとの仕事で知られるジェイムス・フォードのプロデュースで作られたこの作品は、それまでのマムフォード&サンズの作風から大きく異なるため、商業的には前2作同様の成功を収めながらも、多くのファンに戸惑いを持って受け止められた向きは否めませんでした。

そしてそれから3年ぶりに発表されたこの『Delta』。今回のプロデューサーにはあのアデルをブレイクしたことで有名なグラミー賞受賞プロデューサー、ポール・エプワースを迎え、そのポールが数々の作品を作り出した自ら所有のロンドンのチャーチ・スタジオで、のべ100人以上の関係者が関わって録音されたアルバムで、この『新旧お宝アルバム!』で先月ご紹介したばかりのマギー・ロジャーズもそうした参加ミュージシャンの一人です。

サウンド的には、前作の『Wilder Mind』からまた少し最初の2作のスタイルに、使用楽器という意味では回帰していて、アコギなどの音色もまた多く聞こえますが、全く最初のスタイルに戻ったわけでもなく、エレクトロニカの要素などもそこここの楽曲に感じられる、今の時代のオルタナティヴ・ロックの意匠の感触を、快く感じられるそんな作品になっています。

冒頭の「42」はアカペラのコーラスで始まってハモンド・オルガンが寄り添うオープニングのあたりでは正に最初の頃のマムフォード&サンズを思わせるのですが、楽曲の展開のしかたは最初の頃の彼らの楽曲のそれに比べて一段スケールが大きいものを感じさせます。先行シングルとなった「Guilding Light」も、アコギのバッキングにエレクトリック・ギターのリフがドリーミーな感じで絡む構成とか、楽曲全体の構成が盛り上がっていくカタルシスな造りは相変わらずのクオリティです。

Beloved」では懐かしいあのバンジョーの音色が聞こえますが、最初の2作の頃のようにブルーグラス的な演奏ではなく、あくまで一つの弦楽器としての役割で、伝統的なバンジョーの使い方ではなくギターの一種として使われているあたりがなかなか新鮮。戸惑いがちなピアノの音色とストリングスとかすかなエレクトロニカな音色の織りなす不思議な曲調の「The Wild」や、大聖堂の中で録音されたかのような反響音がゴスペル的な雰囲気を盛り上げながら静かにカタルシスに入っていく「October Skies」、メンバーの演奏するアコースティック楽器の音がデジタルに処理されて不思議な感じを織りなしている一方、楽曲としてはアフリカ音楽のようなグルーヴを感じる「Rose Of Sharon」などなど、アコースティックな楽器とエレクトリックな楽器の絶妙なバランスで織りなす音像世界をバックにマムフォード&サンズならでは、といった耳と心に残る楽曲が本作には収められています

Delta (Back)

最初の2枚の頃のサウンドが「躍動感」「歓喜」「親密感」といったことばで表現されることの多かったマムフォード&サンズ、今回のアルバムではむしろ「思索的」「スケールの大きい」「叙情的」といったような形容詞がぴったりくる、そんなサウンドが全体を支配しています。ちょっと寂しげだけど、大きなスケールで聴く者の心をつかむ、かすかに希望が感じられる初春の日差しを感じる、そんなイメージ。

キーボードのベン・ラヴィットは、本作に関するインタビューで、このアルバムのテーマは「4D」、つまり死(death)、離婚(divorce)、ドラッグ(drug)そして憂鬱(depression)だと言っています。しかしここで展開されるサウンドはそうしたネガティヴなイメージというよりは、そうしたネガティヴィティからの解放を求めるような、そんな彼らの最初の頃のサウンドとは異なる意味でのアップビートさを感じさせるのです

この週末咲き誇った桜が散ると、季節は初夏に向かっていきます。今年は新天皇即位で10連休となったゴールデンウィークに向けて日本中が少しずつざわついて行く中、去りゆく春に別れを告げるのに、マムフォード&サンズのこの『Delta』、素敵なサウンドトラックとなってくれる、そんな感じを持たせてくれるアルバムです

<チャートデータ> 
ビルボード誌全米アルバムチャート 最高位1位(2018.12.1付)
同全米ロック・アルバムチャート 最高位1位(2018.12.1付)
同全米アメリカーナ・フォーク・アルバムチャート 最高位1位(2018.12.1~15付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#141「Painted From Memory」Elvis Costello with Burt Bacharach (1998)

 #141Painted From MemoryElvis Costello with Burt Bacharach (Mercury, 1998)


先週には桜の開花宣言もあり、このまま一気に本格的な春に突入するのか、という勢いでしたが週末寒が戻った感もあり、今週から春の進捗はまた仕切り直し、という感じですね。しかしまた今日あたりから少しずつ暖かさが増していく感じもあり、月末には早くも桜の満開予想が出ている様子。これからは4月中旬まで街中や郊外の山々が美しくなる季節、存分に楽しみたいものです。

さて、先週プライベートでちょっと厳しい状況がありお休みしていたこの「新旧お宝アルバム!」、今回は久しぶりに90年代に戻って、多くの古くからの洋楽ファンの皆さんがとかく見逃しがちなあの時期のアルバムを取り上げます。今日ご紹介するのは、新旧の個性的かつ偉大なメロディメイカー、バート・バカラックエルヴィス・コステロがコラボして、全曲コステロバカラックによる共作の新曲12曲を、コステロが決して声楽的に巧いとは言いがたい、それでいて情感と偉大な作曲家バカラックとの共演できることの感動と畏敬に満ちあふれた素晴らしい歌声を聴かせてくれるアルバム『Painted From Memory』(1998)です。

Painted From Memory 

片や70年代終盤のパンク・ニューウェイヴ・ムーヴメントの中から登場、当初は60年代を彷彿させるパワーポップでシーンを虜にし、その後80年代90年代を通じてミュージックメイカーとしての成熟を重ねていったコステロと、60~70年代初期のメインストリーム・ポピュラー音楽を代表する、叙情的でスケールの大きなメロディメイカーとして既にこの時レジェンドとなっていたバカラックによるコラボレーションの話は、90年代後半当時ちょっとした驚きと、いったいどういう音楽が作られるのか大いに興味をそそられたものです。ディオンヌカーペンターズのようにコステロがバカラック作品の解釈者として果たして機能するのか?バカラックが、20年以上のブランクを経てなおあの変拍や独特のコード進行を駆使して唯一無二の楽曲を作りあげるマジックを、コステロとのコラボで再現できるのか?

その期待と謎に対する回答は、1996年のNYブリル・ビルディングを題材にした映画『グレイス・オブ・マイ・ハート』の最後のクレジット・ロールで二人がパフォームする新曲「God Give Me Strength」でその一端が届けられました。当時この曲を聴いた時、イントロからいかにもバカラック作品らしいフレンチ・ホルンの音色とオーケストレーションをバックに、トーチ・シンガーよろしく情感たっぷりに、どん底にいる人間が神に救いを求めるこのバラードをエモーションを絞り出すように、しかし自信を持って歌い上げるコステロのパフォーマンスには、びっくりするような新鮮さと感動を覚えたものでした。

Costello Bacharach at Grammy

しかし当時はこのコラボレーションがフル・アルバムに発展するとは思っておらず、従来からバカラックへの敬愛を露わにしていたコステロの夢実現的なワンタイム・コラボレーションだと思っていました。なので、その2年後、1998年9月にこのアルバム『Painted Memory』がリリースされたことにこれまたちょっとした驚きを感じたものです

コステロバカラックが共演すること自体が既にスペシャルなイベントであるこの企画、そのアルバムに含まれていた全12曲はいずれもまごうかたなきバカラック作品の意匠とスタイルとそしてマジックを見事に再現していると同時に、コステロとの共作がそうしたバカラックの楽曲に微妙な新鮮さと90年代の(そして今の)鑑賞にも充分絶えうるコンテンポラリーさと、コステロのボーカルが独特の表情と印象を届けてくれるという、ふたつの才能がたいへん有機的に結実している素晴らしい作品になっていたのです

ほとんどの楽曲はバカラックのピアノとオーケストラ、そして二人のベテラン・セッション・ミュージシャン、ジム・ケルトナーのドラムスとディーン・パークスのギター、そしてコステロの盟友、スティーヴ・ニーヴのキーボードを中心にした演奏をバックに歌われるバラード曲、それも失恋や失意、逆境にいる人間の哀愁といった、バカラック一流のブルーなテーマの楽曲を情感たっぷりに、そしてほのかに見える希望のようなものを暗示するポジティヴネスをたたえながらコステロが見事に歌っているものです


ためらうように始まるメロディとコステロの歌い出しで既にこのアルバムがスペシャルなものであることを確信させる「In The Darkest Place」に始まり、ほのかな春の訪れを感じさせるピアノのメロディとゴージャスなオーケストレーションとは裏腹に、以前の恋人が頭から消えないまま君と逢い続けるのは間違っているから僕らは終わりにしよう、という悲しいストーリーを語る「I Still Have That Other Girl」、まるで叙情的ロマン映画の一シーンから切り出してきたようなピアノとオーケストレーションをバックに、去って行った恋人が夢の中にだけ現れる男の慨嘆を切々と歌う「My Thief」、自分が思いを寄せる女性たちに対して心ない仕打ちをする男に対して「今日君がひどい仕打ちをする彼女の名前は何?」と迫る「What's Her Name Today?」、そしてそもそもこのコラボの発端となった「God Give Me Strength」などなど、どの曲もこのアルバムのハイライトといっていい、楽曲としての完成度と存在感、そして聴く者の心を動かす楽曲ばかりです。

これ以上このアルバムのそれぞれの楽曲を解説してもレビューとしては退屈なものにならざるを得ません。なぜならば、どの楽曲も同様のスタイルとクオリティで、クイントエッセンシャル(典型的)なバカラック・ワールドを同じように構築していながら、聴く者に訴えてくる楽曲ばかりで、解説としては同じようなものにしかならざるを得ないからです。こればかりは当時ほとんど全ての音楽誌の絶賛を受けたこのアルバムの楽曲を取りあえず聴いてみて下さい、というのが最高の紹介になってしまうのです。


このアルバムのリリース直前の1998年8月に、アメリカのPBS(公共放送局)の音楽番組「Sessions At West 54th」で、当時番組のホストを務めていた元トーキング・ヘッズデヴィッド・バーンの紹介で、バンドとフルオーケストラをバックに、タキシードに身を包んだコステロと、オーケストラを指揮しながらピアノを弾くバカラックによってこのアルバムから「Toledo」「In The Darkest Place」「I Still Have That Other Girl」「God Give Me Strength」など数曲を演奏するという放送がありました。こちらは当時VHSでリリースされたのですが残念なことにDVD化されていません。しかし現在でも当時の放送の一部がYouTube等ネット上にアップされていて今でも見ることができます。取りあえずApple Musicなどで聴いてみるのもいいですが、この映像を見ながら聴くと、このアルバムの素晴らしさが更にぐっと感じられると思います

Painted From Memory (back)

正しく春を迎えようとする今の季節、バカラックが操る柔らかなホルンやオーケストラ、ピアノの音色にのってコステロのボーカルが織りなす、ちょっとメランコリーで暖かいこのアルバムの楽曲群を聴きながら、ほころび始めた桜を愛でるには最高の時期です。これまでこの作品を何度も聴いて親しんで来た方も、そして「こんなアルバム知らなかった」と仰る方も、是非この素敵なコラボレーションに身を任せて、春を満喫してみて下さい。

<チャートデータ> 
ビルボード誌全米アルバムチャート 最高位78位(1998.10.17付)
全英アルバムチャート 最高位32位(1998.10.10付)

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

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