Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#121「Mental Illness」Aimee Mann (2017)

 #121Mental IllnessAimee Mann (SuperEgo, 2017)


先週も連日の夏日、週末当初は雨の予報でしたがそれもどこかに行って正に五月晴れというにふさわしい素晴らしい天気でした。この週末はいろんなアクティヴィティで存分に五月の爽快な天候を楽しまれた方も多かったと思います。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は、80年代にティル・チューズデイのリード・ボーカルとしてシーンで地位を確立した後ソロに転じ、90年代以降コンスタントに自らのインディ・レーベル、スーパーエゴから着実にアルバムをリリース、自らの心情を率直に歌う楽曲を通じて高い評価を得続けているエイミー・マンが、昨年5年ぶりにリリースしたアルバム『Mental Illness』(2017)をご紹介します。


Aimee Mann Mental Illness 


このアルバムの前作になる『Charmer』(2012)はどちらかというと元気のいいポップ・ロック風の作品だったのですが、この『Mental Illness』は一貫してアコースティックで、物静かで、思索的で、ストリングスが多くの楽曲でフィーチャーされている、どちらかというとムーディーなアルバム

加えてタイトルも決して明るくないですし、多くの楽曲の題材が人生における後悔や現状を嘆くようなものであり、エイミー自身も「これまで自分が作った作品の中で最も悲しく、スローで、アコースティックなアルバム」と言っているように前作とはいろんな意味で対照的な作品です。

Aimee-Mann.jpg 




実際このアルバムの制作中、彼女のマネージャーはもっとアップテンポな曲を書くように迫ったらしいのですが、彼女は「今の感情を表現するにはこれしかない」とアルバム制作のアプローチを変えなかったといいます。

結果、ここで聴けるのは、人生の悲しい状況の数々に対する、シンガーソングライター、エイミー・マンの偽りのない感情の吐露と、そのようなテーマでありながら決してダウナーに落ち込んで行かず、むしろ「人生にはいろんな悲しいこともあるけど、悲しんでばかりいずに生きて行きなさい」と、トンネルの先の小さな光にエイミーが導いてくれているような、そんな不思議な満足感を与えてくれる、美しい楽曲が宝石箱のように目の前に広げられる、そんなイメージを与えてくれる作品です


アルバムのファーストシングルとなった冒頭の「Goose Snow Cone」はエイミーがアイルランドツアー中の雪の日にホームシックになって、インスタグラムで友人のグースという名前の猫の写真を見ていて書いたという曲。静かにほとんどアコギの爪弾きとコーラスだけをバックにゆっくりと流れていく、孤独について歌ったこの地味と言ってもいい曲のスタイルがほぼ一貫してアルバム最後まで続きます

ワルツのリズムでアコギとオルガンをバックに、エイミーのフォーキーなボーカルで過去の過ちを振り返る「Stuck In The Past」、春のそよ風のようなメロディで、相手がもともと自分のことを愛してなどいなかった、と淡々と歌う「You Never Loved Me」などなど、アルバム冒頭から流れるようにシンプルながら聴く者を引き付けるエイミーの楽曲が続きます。



このアルバムで最も「ロック」っぽいアレンジながら、ザ・バンドの最もスローな曲よりもレイドバックな感じで、知り合って大分経ってから実は双極性障害だったと分かった友人の過去の行動や発言の不可解さがやっと理解できた、と歌うというなかなかヘヴィなテーマの「Lies Of Summer」から、こちらもこのアルバムの中では最もサウンド・プロダクションが施され、そこはかとないフォーキーなポップさが魅力の「Patient Zero」、ピアノの弾き語りで70年代初頭のシンガーソングライター然とした印象深いメロディが素晴らしい「Good For Me」、トルバドゥール風のアコギストロークをバックに夢見るように流れるメロディが、「あなたはもう彼女をものにするチャンスを台無しにしたんだから、もういい加減に諦めなさい」という歌詞となかなかミスマッチな「Knock It Off」といった、中盤の楽曲群がこのアルバムの中でもハイライトと言っていいでしょう



アルバムの後半もムーディながら、それでいて聴く者を引き付ける楽曲は続き、最後の「Poor Judge」は男女関係の素晴らしいスタートから、関係破綻後にそれまでのそれぞれの「まずい判断」の数々を振り返るという、このアルバム全体を象徴するほろ苦い、ピアノの弾き語りとストリングがゴージャスにコラボする楽曲。全編39分という長さがあっという間に終わってしまった、という感じを残してアルバムは完結します。



こんな地味で、そして内省的でムーディーな作品でありながら、このアルバム発表直後からシーンでの評価は高くローリング・ストーン誌MOJOなどいくつかの有力音楽誌の2017年の年間アルバムリストにもランキングされ、更には今年1月発表の、第60回グラミー賞の最優秀フォーク・アルバム部門を見事受賞、彼女に取って初の作品グラミー(第48回で最優秀レコーディング・パッケージ賞を受賞したことあり)となり、改めてエイミーの名前に注目が集まることになりました。


Mental Illness (Back)


しかしおそらくこの受賞や各誌の反応があっても、エイミー自身は自分の心情や創作意欲に正直なアーティスト活動を今後も続けていくことでしょうし、そうした彼女の次の作品がどのようになるのか、興味が尽きないところです

それまでの間、風薫る五月の天気を楽しみながら、エイミーの心に染み入るようなこのアルバムを楽しんでみてはいかがでしょうか。


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位54位(2017.4.22付)

同全米ロック・アルバム・チャート 最高位7位(2017.4.22付)

同全米アメリカーナ・フォーク・アルバム・チャート 最高位4位(2017.4.22付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#120「Love Has Got Me」Wendy Waldman (1973)

#120Love Has Got MeWendy Waldman (Warner Bros., 1973)


先週の寒々しい雨空からまた一気に暖かい日々が続いたこの週末、いよいよ音楽を存分に楽しむには絶好の季節になってきました。MLBシーズンも佳境に入り、大谷選手も連日の活躍の様子が頼もしい限り。あとはMLBファンとしてはダルヴィッシュの早期の復活を望みたい今日この頃です。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は、久しぶりに1970年代のアルバムを温故知新。70年代初頭から特にウェストコースト・シーンを中心にシンガーソングライターやセッション・ボーカリストとしての多彩な活動を続け、近年も元気に活動を続ける、ウェストコースト・ロック・ファンにはお馴染みの女性シンガーソングライター、ウェンディ・ウォルドマンのデビュー・ソロ・アルバム『Love Has Got Me』(1973)をご紹介します。


Love Has Got Me 


このコラム、ここのところ女性アーティストを続けて取り上げていますが、やはりこういう爽やかな季節になると心に染みる女性アーティスト達の作品に針を落としたくなるのも必然ということで


ウェンディ・ウォルドマンといえば、古くからのウェストコースト・ロック・ファンの間では、まだメジャーブレイクする前のカーラ・ボノフ、アンドリュー・ゴールド、そして後にカーラリンダ・ロンシュタットのバック・バンドの主要メンバーとして、またウェストコーストの重要セッション・ミュージシャンの一人として活躍するケニー・エドワーズと4人によるグループ、ブリンドルで70年代初頭活動、その後リンダアンドリューらのアルバムのセッション・ボーカリストとして、またマリア・マルダーランディ・マイズナーらのアルバムに曲を提供するソングライターとして、つとに有名なアーティスト。

しかし彼女自身はこれまで商業的成功のスポットライトを浴びたことはほとんどなく、唯一1992年にヴァネッサ・ウィリアムスが歌って全米1位、そしてその年のグラミー賞レコード・オブ・ジ・イヤーソング・オブ・ジ・イヤーにノミネートされた「Save The Best For Last」(以前このコラムでご紹介したフィフス・アヴェニュー・バンドジョン・リンドとの共作)の成功くらいです。それでも彼女の織りなす、フォークやラテン、R&B、オールド・タイム・ミュージックといった様々な要素が一体となった心和ませる楽曲と、ナチュラルな歌唱スタイルのボーカルが、古くからのSSWファンのみならず、同僚のミュージシャン達をも魅了し続けてきました。


Woke Up This Morning


そのウェンディブリンドルが録音したアルバムもリリースできずに、シングル1枚のみで解散した後にメジャーのワーナーと契約、リリースしたのが今日ご紹介する『Love Has Got Me』。後に『Born In The U.S.A.』(1984)ほか80年代のブルース・スプリングスティーンの一連のヒットアルバムを手がけてその名を馳せることになるチャック・プロトキンがプロデュースを手がけた初期のアルバムになるこの作品、ウェンディの楽曲やパフォーマンス・スタイルをいかに引き立たせるかということに気を配っていることがよく分かるアルバム作りで、全体素晴らしい作品に仕上げています。もちろん曲は全曲ウェンディの自作。

そしてバックを固めるのはこの時期のウェストコーストの名うてのミュージシャン揃いで、リー・スクラー(ベース)とラス・カンケル(ドラムス)のザ・セクションのリズム隊やケニー、アンドリューブリンドル仲間達を中心に、面白いのはクルセイダーズのサックス奏者、ウィルトン・フェルダーがB面の6曲全曲でベースを担当していること。この頃はまだウィルトンはウェスト・コーストのスタジオ・ミュージシャンとしての仕事が多かった時期で、あのジャクソン5の「I Want You Back」のベースもウィルトンの仕事だというのはよく知られたところです。つまりウェンディのバックは誠に手堅いミュージシャンで固められていた、というのもこのアルバムの完成度を高めている重要な要因でしょう。



ケニーのつま弾くマンドリンで優しく始まって、ちょっとリンダ・ルイスを彷彿させるようなエキゾチックなメロディ展開とボーカルスタイルで徐々に楽曲を盛り上げていく冒頭の「Train Song」、後半のアンドリュー・ゴールドの控えめなギターソロやオルガンをそこはかとなく配するあたり、取りあえずウェンディの音楽スタイルのあらゆる側面を少しずつ聴かせてくれる、そんなアルバムオープニングにはふさわしい曲です。

ウェンディの楽しそうな笑い声で始まり、ウェンディのピアノと、TVや映画音楽作曲で有名なお父さんのフレッド・シュタイナーがアレンジしたストリングスとが、ちょっとジャズっぽいコード進行?と思えるような独得なメロディを操りながらちょっとエキゾチックな感じのバラードになっている「Thinking Of You」は一転70年代SSWらしい雰囲気を演出。

そしてこのアルバムでも3曲でバックボーカルに参加している、「真夜中のオアシス」で有名なマリア・マルダーがアルバム『Waitress In A Donut Shop』(1974)でカバーしていた、マリアッチ風味の異国情緒満点のオールド・タイミーな楽しいナンバー「Gringo En Mexico」で、ウェンディの多彩な作品スタイルの魅力にぐっと持って行かれます


ウェンディのピアノだけの弾き語りで叙情的で力強く、自然との対話を表現したミディアムの「Horse Dream」、アコギのややラフなストロークからちょっとテックス・メックス風のシャッフルに展開していく「Can't Come In」、そしてまた父フレッドのアレンジによる、アコーディオンをフィーチャーしたクラシックでムーディーな「Pirate Ship」でA面はしっとりと一旦幕を閉じます。



B面は、いかにもカリフォルニアの70年代のSSW然とした、クリアな青空を連想させるアップビートな「Old Time Love」でスタート。続いてウェンディの本領発揮たる、オールド・タイミーでガーシュインとかの時代の音楽を連想させる「Vauderville Man」は、こちらもマリア・マルダーがこのアルバムと同時期リリースのデビューアルバム『Maria Muldaur』(1973)でカバーしていたナンバー。そう考えるとこういう曲でのウェンディのボーカルにはマリアに共通するような、エキゾチックなセクシーさがほんのり感じられます。続く「Lee's Traveling Song」は「ライオン・キング」とか「ターザン」とかのアニメ映画の挿入曲にぴったりでは、と思わせるような曲調。

このアルバムもう一曲のいかにもカリフォルニアのSSW然とした洒脱なナンバー「Natural Born Fool」に続いて、ごくごくシンプルな、ほとんどジャズ・カルテット的な楽器構成と押さえた音数で、ふわっとしたイメージで聴かせるバラード「Waiting For The Rain」でぐっとテンションを落としたアルバムは、初期リンダやカーラ・ボノフのファーストなどによく聴かれたマイナー調のメロディにシンプルなアコギやエレピが絡む、それでいて力強いボーカルのサビが印象的なアルバムタイトルナンバーで静かにエンディングとなります。


ウェンディはこのアルバムに続いて、同じくチャック・プロトキンのプロデュースで、今度はマッスル・ショールズ・スタジオで全面的に録音された、R&B・スワンプ風味満点のこちらも素敵なアルバム『Gypsy Symphony』(1974)、その2枚から一転してややムーディで地味ながらウェンディの楽曲が光る『Wendy Waldman』(1975)など、ワーナーから5枚のアルバムを出しましたが、いずれも商業的には結果が出ず、ウェンディワーナーを離れて1982年にはナッシュヴィルに移住、以降80~90年代は、自らの作品は3枚のみでもっぱらカントリー・アーティストを中心にした他のアーティストへの楽曲提供活動を続けました

この時期に彼女が最も商業的成功に近い所まで行ったのは、あのドン・ジョンソンの「Heartbeat」(1986年全米5位)をあのエリック・カズと共作してヒットさせたことくらい。この曲は彼女自身のアルバム『Which Way To Main Street』(1982)に収録されていたのを取り上げられたものでしたが、このアルバムは80年代のシンセ打ち込みサウンド満載で当時のウェンディファンの期待に応えるものではなかっただけに皮肉なものです。


Love Has Got Me (Back)


近年、1995年にはあのブリンドルを再結成してアルバム発表、ツアーもしたり、2002年には同じメンバーで『House Of Silence』を発表。2007年には女性ロッカーのシンディ・バレンズらとザ・レフュジーズなるバンドを結成してアルバムも3枚リリースしたりと、少なくとも様々な形での音楽活動は継続している様子。

しかしブリンドル時代以来のウェンディ・ファンにとっては、またあの瑞々しくもややエキゾチックなウェンディの作品やボーカルを聴きたいところ。そういった、この5月の爽やかな気候にぴったりな彼女の新作を期待しながら、今はこのアルバムを楽しみことと致しましょう。


Bryndle 1995


<チャートデータ> チャートインなし

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#119「Beth Nielsen Chapman」Beth Nielsen Chapman (1990)

 #119Beth Nielsen ChapmanBeth Nielsen Chapman (Reprise, 1990)


今年のゴールデンウィークは全体通じて基本素晴らしい天気の日々が続いてとても気持ちのいい休日を過ごされた方も多かったでしょう。自分も初日に高尾山系を縦走するハイキングで五月の素晴らしい新緑を満喫してきました。一方今日あたりは長い連休が終わって仕事に戻り、GWロスでどんよりしている方も(笑)多いことでしょう。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は、またちょっと90年代シリーズに戻って、90年代に多く登場したシンガーソングライター系のアーティスト達の中でも、メインストリーム系の商業的な成功はなかなか得られなかったものの、カントリー系を中心に多数のアーティスト達に素晴らしい楽曲を提供したり、その後に現れたポップ・メインストリームやアメリカーナ系を中心とした数々の女性アーティスト達に大きな影響を与え、今でも根強いファンを多く持っている女性シンガーソングライター、ベス・ニールセン・チャップマンの代表作とも言える、2枚目のアルバム『Beth Nielsen Chapman』(1990)をご紹介します。


Beth Nielsen Chapman (Jacket) 


90年代作品を改めて評価してみようシリーズ、第5弾


ここまで90年代の音楽的ルネッサンス状況を象徴するような、ロック系アーティストやR&B系アーティスト達を取り上げて来ましたこの「90年代作品を改めて評価してみようシリーズ」。今回のベス・ニールセン・チャップマンはそうしたアーティストとはまた違った形で、カントリーやアメリカーナといった違ったジャンルにおいて、しかし大きな足跡を残したアーティストです。そしてある意味60年代後半~70年代初頭に活躍したキャロル・キングローラ・ニーロといった偉大なシンガーソングライターの系譜を汲むアーティストでもあります


ベス・ニールセン・チャップマンというと、一般的に一番知られているのは、カントリー・ポップ・シンガーで同じカントリー・シンガーのティム・マグロー(そう、あのテイラー・スウィフトの曲の題材にもなった彼です)の奥さん、フェイス・ヒルの1998年の大ヒット「This Kiss」(全米最高位7位、プラチナシングル)の共作者としてでしょう。他の二人のやはりナッシュヴィル・シーンの女性ソングライター達と書いたこの曲はそのポップでアップテンポな曲調で当時大いに人気を呼んだものです。

ベスはこの他にもトリーシャ・イヤーウッド、マーティナ・マクブライド、ウィリー・ネルソン、メアリー・チェイピン・カーペンターなどのカントリーを中心とした有名アーティスト達に90年代以降楽曲を提供してきた他、彼女自身のアルバムに参加して共演したアーティスト達はボニー・レイット、ヴィンス・ギル、マイケル・マクドナルド、ポール・キャラックなどなど、枚挙に暇がありません。

Beth Nielsen Chapman


これほどシーンでその存在を高く評価され、根強いファンも多く、またミュージシャン達からもリスペクトされているシンガーソングライターでありながら、彼女のアルバムやシングルはどれ一つとしてビルボード誌のHot 100やアルバムチャート(総合チャートだけでなく、カントリーチャートも含め)には一切ランキングされておらず、大変不可思議です

思うに、彼女の生み出す楽曲は愛や人生、そしてそれにまつわる真摯な感情をシンプルな言葉と心にしみてくるようなメロディで表現する、ということがあまりにストレートに行われているため、ラジオなどでキャッチーなアピールをするというよりは、草の根的にファンからファンに語り伝えられてきている、そんな作品だから爆発的にラジオでかかるとか、アルバムやシングルが売れるとかいった類いの作品なのではないのかもしれません。


ベスのアップテンポなピアノのメロディで始まる冒頭の「Life Holds On」は「少しでもチャンスが与えられれば、人の生命の復活力は素晴らしい」という人生へのポジティヴなメッセージを与えてくれ、ベスがボーカルに徹したややムーディなバラード「No System For Love」は「世の中はハイテクがどんどん進歩してどんなことでも可能になっているのに、未だに愛のためのしっかりとしたシステムは存在しない」というやや哲学的な曲。

このアルバムの各楽曲のバックは、おそらくプロデューサーのジム・エド・ノーマンが集めたナッシュヴィル・シーンのセッション・ミュージシャンが固めているのですが、3曲目の「I Keep Coming Back To You」ではバックをリー・スクラー(ベース)、ラス・カンケル(ドラムス)のザ・セクションのリズム隊と名うてのセッション・ギタリスト、ディーン・パークスが固めるという、本人もプロデューサーのジムもこの曲への力の入れ具合が伺える楽曲。バックの演奏はシンプルで、ベスのボーカルもパートナーのことを愛していながら、彼との関係がうまくいかないことに悩む女性の心理を表現していますが、決して力の入りすぎない雄弁なパフォーマンスで、聴いた後長く楽曲の印象が残る、そんなこのアルバムのハイライトの一つです



その後も、シンセの控えめなサウンドにアコギの爪弾きを絡めながら、自分の道を歩いて行くだけ、と力強く表明する「Walk My Way」、シンプルなピアノの弾き語りで「私に必要なものは私が持っているものだけ/私のそばにはあなたがいてそこが私の人生が一つになるところ」と満たされた愛の素晴らしさを歌う、エリック・カズとの共作「All I Have」、そして「険しい道も流した涙も、すべて目の前に現れるものを受け入れるしかないのよ」とほんわかとしたメロディに乗せて歌う「Take It As It Comes」などなど、人生の機微や愛、信念そして人生の進むべき道などを、シンプルな歌詞と趣味のいいアレンジと、90年代初頭DX7などのシンセサイザーが多用されていた時代にしてはとても控えめなシンセとアコースティックな楽器によるサウンドに乗せて心に響き渡る楽曲を、ベスが次から次へと歌ってくれるのがこのアルバム




そのアルバムのラストは、クリスマスに自分の生家に戻ってきた主人公が、自分が生まれた日に父が植えた庭の木や、向かいの家のクリスマス・デコレーションや幼なじみの子供達が作った雪だるまなどをポーチから眺めながら、自分が幼い時から流れた時間が早いようでいてゆっくり流れていることを実感する、というアコギの弾き語りで聴く者、特に人生の半ばを過ぎたリスナーの琴線に触れるバラード「Years」で静かに幕を閉じます。


BNC back


ベスは、この後90年代から2000年代にかけて、特にカントリー・シーンがアメリカーナやメインストリーム・ポップと相互乗り入れを進める中で、ディキシー・チックス、メアリー・チェイピン・カーペンター、アリソン・クラウス、ジュエル、そしておそらくテイラー・スウィフトといった、実力派の女性シンガーソングライターの台頭のいわば先駆者と言っていい存在だったと思いますし、それに相応の大きな影響をこうした後進の今や大スター達に残した、忘れてはいけないアーティストだと思います。

残念ながら「This Kiss」の大ヒット以外では大きな商業的な成功やスポットライトを受ける機会に恵まれなかったベス、このアルバム発表の僅か4年後には最愛の夫、アーネストをガンでなくし、自らも乳ガンと闘うなど、苦労多い人生を送っていますが、2011年には10年の交際を経て再婚。時を同じくして9作目にあたるアルバム『Back To Love』(2010)でシーンに復帰、その後も2年に1枚のペースで新作を発表、2016年には、あのオリヴィア・ニュートン・ジョンとカナダの女性シンガーソングライター、エイミー・スカイと3人で、喪失の悲しみを癒やし乗り越えるというスピリチュアルなテーマのアルバム『Liv On』をリリースするなど、依然聴く者を癒やし、啓発する音楽活動を続けています。


Back to Love


5月の爽やかで明るい天気の中、ベスの美しくシンプルな、それでいて自分を見つめ直すことのできるそんな楽曲を聴きながら、ゆっくりと過ごす、そんな時間を作ってみてはいかがでしょうか。


<チャートデータ> チャートインなし

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#118「See You Around」I'm With Her (2018)

 #118See You AroundI'm With Her (Rounder, 2018)


ここ2週間、弾丸でNYに遊びに行ったりしていろいろありましてお休みしていましたこの「新旧お宝アルバム!」。その間にMLB大谷は大活躍するは、国会は安倍・麻生の茶番劇で空転するはでいろんなことが起きている間に季節はめっきり春、というよりこの週末の暑さはもう初夏の雰囲気で、自分も今シーズン初短パンデビューしたほど。


さて今日の「新旧お宝アルバム!」は、そんな爽やかな気候にぴったりの心洗われるようなアコースティック・トリオ、ギターのイーファ・オドノヴァン、マンドリンのサラ・ジャロウズ、そしてフィドルのサラ・ワトキンスの3人がアイム・ウィズ・ハー名義で始めて今年リリースしたアルバム『See You Around』をご紹介します。


See You Around 


アイム・ウィズ・ハーというと、昨年ピーター・バラカンさんが主宰するミュージック・フェス「LIVE MAGIC! 2017」への参加で初来日、日本のルーツ・ミュージック系のファン達の間では既に知られ始めている存在。もともとは上記の3人が2015年頃より一緒にツアーをしたり、ミネソタ州セントポールのフォーク系のコミュニティ・ラジオ番組「A Prairie Home Companion」のホストを3人で務めたりと、地味ながら自分たちの音楽性を素直に表現するための一つの形として使ってきたのがこのアイム・ウィズ・ハーのユニット。今回その名義でめでたくフル・アルバムのリリースということで待ち望んでいたファンも少なくはないと思います。


3人の中で一番キャリアの長いのはフィドルのサラ・ワトキンス。彼女は90年代後半から2000年代後半にかけて、当時プログレッシヴ・ブルーグラス・バンドと呼ばれたニッケル・クリークの主要メンバーとして活躍、後にパンチ・ブラザーズのリーダーとなるマンドリンのクリス・シーリーと共にこの新しいジャンルを確立したアメリカン・ルーツ分野では特筆すべき音楽家の一人です。2009年ソロ独立後は様々なアーティストとコラボしたり、トム・ペティ&ハートブレイカーズのキーボード奏者、ベンモンド・テンチや弟のショーと共に「Watkins Family Hour」名義のユニットでライヴを重ねるなど(アルバムもあり)、精力的な活動を展開しています。

マンドリンのサラ・ジャロウズは高校生時代からその才能を高く評価され、ドブロのジェリー・ダグラスやバンジョーのベラ・フレックらこの世界のベテラン達と一緒に録音したデビュー作『Song Up In Her Head』(2009)でシーンに登場、その後パンチ・ブラザーズ他シーンの有力ミュージシャン達との競演を重ねる一方、2016年には4作目の素晴らしいアルバム『Undercurrent』を発表するなど着実にキャリアを積み重ねています。

ギターのイーファ・オドノヴァンはブルーグラス・ストリングス・バンドのクルックト・スティルのリード・ボーカリスト兼ギタリストとして既に10年以上のキャリアを持つ、やはりアメリカン・ルーツ・シーンでは注目のアーティストの一人です


Im With Her


この3人があのストーンズGet Yer Ya-Ya's Out!』(1970)、フーの『Who's Next』(1971)、『四重人格』(1973)、イーグルスのファースト(1972)、『ならず者』(1973)などなどのロックの名盤を手がけたグリン・ジョンズの息子、イーサン・ジョンズのプロデュース(イーサン自身もレイ・ラモンターニュ、ライアン・アダムス、ジェイホークス等アメリカン・ルーツ系の多くのアーティストとの実績あり)で、全12曲中10曲を3人だけの共作で仕上げたこのアルバム、そんな重量級の面子であることを感じさせない、とってもナチュラルでリラックスしたサウンドで充ち満ちた素晴らしい作品に仕上がっています。その雰囲気は、3人がサングラスをかけて緑いっぱいのパティオの真ん中に座って寛いでいる、というジャケが正に象徴しています。



古い映画のBGMのような不思議なメロディで始まり、そこから一気にサラのマンドリン、イーファのギターのつま弾きに突入し、一人ずつボーカルのコーラスを重ねて盛り上がっていく冒頭の「See You Around」は、このアルバムの象徴的なイメージの楽曲。サラのフィドルとサラのマンドリンのアンサンブルとそれを追っかけるように入ってくるイーファのギター、そして3人がビッチリと決めるコーラスがプログレッシヴ・ブルーグラスの世界を繰り広げる「Game To Lose」、ギターとマンドリンが華やかなサウンドを繰り広げ、よりメインストリームなカントリー・テイストのメロディが素敵な「Ain't That Fine」、3人の繊細なコーラスワークが印象的な「Pangaea」、このアルバムで始めてエレクトリック・ギターが(しかし控えめに)登場する「I-89」、そして「決して一線を踏み越えてはいけない/ 今までやってきたことを無に返してはいけない/決して一線を踏み越えないで/一線のその向こうはとんでもないものが待ってる」という切々と語りかけるような3人のコーラスによるブリッジが印象的で、ちょっとジュエルとかの曲を思い出させてくれるThe Wild One」と、アルバムのA面はあっという間に聴き通してしまいます。



B面はサラのフィドルのウキウキしたソロが楽しい、ほとんどクラシック楽曲のような短いインスト曲「Waitsfield」で軽快に始まり、ギタリストのジュリアン・レイジと3人の共作によるサザン・ソウルっぽいメロディがアーシーなイメージを醸し出す「Ryland (Under The Apple Tree)」、70年代初頭のシンガーソングライター・フォーク・ロックのイメージを惹起してくれるようなメロディと歌詞でふっと懐かしい感じを与えてくれる「Overland」、サラのマンドリンが刻むベースと、途中から絡んでくるイーファのギター、サラのフィドルとのインタープレイがあたかも目の前で3人が即興で演奏してくれているような錯覚を起こす「Crescent City」「Close It Down」とたたみかけるように聴かせてくれる素晴らしい楽曲が、3人のケミストリーを強く印象づけてくれます。アルバム最後の「Hunderd Miles」はこちらもアメリカン・ルーツ・ミュージック・シーンでは重要なアーティストの一人、ギリアン・ウェルチの曲ですが、曲の半分くらいまでは3人のアカペラ・コーラスで歌われ、後半からやっと3人のギターが入ってくるという構成で静かにずっしりとした余韻を残してアルバムを完結してくれます。



90年代後半のエミルー・ハリスU2のプロデューサー、ダニエル・ラノワを迎えて自己変革を果たした『Wrecking Ball』(1995)の成功や、ブルーグラスを全面フィーチャーした映画『オー・ブラザー』の大ヒットに後押しされてブルーグラスの女王からメインストリームにクロスオーヴァーしてアメリカーナ・シーンに確固たる地位を確保したアリソン・クラウスの『New Favorite』(2001)など、ここ20年くらいの間にフォークやブルーグラスをベースにするアメリカーナ・ミュージック、特に女性のシンガーソングライターのシーンにおける存在感たるや飛躍的に大きくなってきていますが、その流れを決して肩に力を入れることなく、自分たちのミュージシャンシップの導くままに曲を書き、集まってスタジオで演奏した、そのヴィヴィッドな雰囲気をそのまま缶に詰めてアルバムにした、そんな感じがすごく素敵なアルバム

これから屋外でパーティやバーベキューなどする機会が増えることと思いますが、そんな時にそばにアイム・ウィズ・ハーの音楽が流れていると、心がとっても安らかになるのでは。そんなことを思わせてくれるアルバムです。是非機会がありましたら耳を傾けて頂けたらと思います。


See You Around (back)


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位78位(2018.3.3付)

同全米アメリカーナ・フォーク・アルバム・チャート 最高位5位(2018.3.3付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#117「Solo」Solo (1995)

 #117SoloSolo (Perspective / A&M, 1996)


例年より1週間以上早く、先週に満開を迎えた東京近辺の桜もこの週末には散り始めて、残念ながら入学式のタイミングでは葉桜になってしまっていそうです。しかし一気に春爛漫の様相となってきたここ数日、皆さんも一気に開放的な気分でいい音楽を楽しんでおられることと思います。先週からいよいよMLBも開幕、大谷田中マーくんを初めとした日本人大リーガー達の活躍も連日伝えられ、楽しい季節になってきました。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は、前回のトニーズに引き続いて90年代シリーズのR&B作品盤ということで、あの名プロデューサー・コンビ、ジミー・ジャム&テリー・ルイスに見いだされて、90年代のアメリカに60年代のストリート・ソウル・カルテットが舞い降りて来たかのようなクラシックな作品で当時のR&Bファン達を魅了したニューヨークはソーホーを中心に活動した4人組、ソロのデビュー・アルバム『Solo』(1995)をご紹介します。


Solo Solo


90年代作品を改めて評価してみようシリーズ、第4弾、R&B編その2。


前回トニーズの『House Of Music』をお届けした際に、あのアルバムは90年代のR&Bを代表するアルバムの一枚、と言いましたが、その他に特筆すべき90年代R&Bのアルバムの一つにあのジャネット・ジャクソンの1997年のアルバム『The Velvet Rope』があります。1980年代のアルバム『Control』(1986)以来ジャネットとタッグを組んできたジャム&ルイスとの先進的なサウンドメイキングによるメインストリームR&Bの構築、という作業が一つの頂点を極めた傑作といっていいこのアルバムにも象徴されるように、ジャム&ルイスはもう一人のこの時期のR&Bサウンド・メイカーの雄、テディー・ライリーと並んで80年代後半打ち込み中心のサウンドからR&Bが新たな段階に進んで以降のR&Bシーンの中心的な存在でした


その彼らのそれまでのジャネットヒューマン・リーグらとの仕事の実績を高く評価したA&Mレーベルが彼らとのJVで1991年に設立したのがパースペクティヴ・レーベル。このレーベルは新進気鋭のこれからのブラック・ミュージックを推進していくであろうと思われるタレントの作品発表の場として用意され、主なアーティストにはレーベル設立直後にこのレーベルからデビューしたミント・コンディションがあります。

そして今日ご紹介するソロは、ジャム&ルイスがNYのソーホーの街角で歌っていた彼らを見いだして、このパースペクティヴ・レーベルからデビュー・アルバムをリリースする、という幸運に恵まれたグループです。テナーのダニエル・ストークスダーネル・チャヴィス、ややしゃがれた声ながらパワフルなユーニク・マック、そしてアコースティック・ベースで3人のコーラスに滑らかでオーガニックなグルーヴを加えるロバート・アンダーソンによるアルバムを通してのパフォーマンスは、その当時ラジオから流れてくるどのR&Bチューンとも異なり、90年当時の洗練されたサウンドプロダクションで、60~70年代にR&Bが「ソウル」であり、聴く者の心揺さぶる音楽であったことを強烈に思い出させてくれる、そんな感動を呼び起こしてくれるもの。
そしてこのアルバムは、ジャム&ルイスがエグゼクティブ・プロデューサーとして全体を見ているだけでなく、12曲については自らプロデュースとアレンジを担当、その他の曲もフライト・タイム・プロダクションの面々ががっちりとプロデュースという、正しくジャム&ルイス肝いりのアルバムになっています。


Solo back


アルバム全体の構成は、上記のようにクラシック・ソウル・テイスト満点の素晴らしいフル・レングスの13曲の楽曲(うち8曲はジャム&ルイス作または共作)の合間合間に、往年のソウルの名曲のカバーが、それもストリートの雑踏の音をバックにほとんどはロバートのベースだけをバックにしたアカペラで短時間ずつ演奏されるというもの。これだけでもオールド・スクールのR&B・ソウルファンにはたまらないところだけど、そのカバーしている曲がオープニングの「What A Wonderful World」、4曲目の「Cupid」、9曲目メドレーで「Another Saturday Night / Everybody Loves To Cha Cha Cha」とサム・クックの曲3曲に、13曲目がドリフターズで有名な「Under The Boardwalk」とレトロ/テイスト満点で間違いなく60年代のヴァイブに持って行かれること請け合い。

そしてこのアルバムのカバーのうち唯一フル・レングスなのがラス前18曲目のあのサム・クックの名唱「A Change Is Gonna Come」の素晴らしいパフォーマンス。ユーニクの絞り出すようなボーカルが公民権運動のテーマソングとして特にブラック・コミュニティの思い入れの強いこの曲に万感を吹き込んでいて、アルバムを締めにかかる楽曲としては最高の効果を達成しています



間に歌われるフル・レングスの楽曲もいずれを劣らぬ素晴らしい出来で、「What A Wonderful World」のカバーに続いてスクラッチ・ノイズをあしらって90年代今のストリート・ソング的仕立てをバックに3人のコーラスがやや控えめにグループ「ソロ」の実力表明をしているかのような「Back 2 Da Street」、ジャム&ルイスがすべての楽器を担当して奏でる、当時のジャネットの楽曲に通じるような軽快で洒脱なビートに乗ってダーネルがしなやかに歌う「Blowin' My Mind」あたりはアルバムの冒頭でがっちりリスナーを掴むには充分。




Cupid」にカバーに続いて明らかにスカルズの「Groovin'」を意識したノスタルジックなソウル・バラードで彼らの最大のヒットシングルとなった「Heaven」(最高位42位)、そして何と!あのドラマティックスの「In The Rain」のキメのフレーズを無茶苦茶カッコよくサンプリングしたゴージャスなナンバー「Xxtra」あたりはこのアルバムでは自分の個人的ハイライト。そしてもう一つの個人的ハイライトは「Another Saturday Night~」のカバーメドレーに続いて、力強くもしなやかなグルーヴでマーヴィン・ゲイの「Let's Get It On」をオマージュしているかのようなひたすら気持ちよい「Where Do You Want Me To Put It」。ここでのボーカル(おそらくダニエル?)はテンプスの往年の名ボーカル、惜しくも先日他界したデニス・エドワーズの男臭いソウルフルなボーカルを思わせて、これも涙




90年代らしいサウンドのクワイエット・ストーム的な濃厚なバラード「Keep It Right Here」「I'm Sorry」に続いて「Under The Boardwalk」の短いカバーを経て、アルバムはいよいよ後半に。そしてまた音は一気にクラシック・テイストに戻って、メインメロディもイントロの楽器も間違いなくジャーメイン・ジャクソンの「Daddy's Home」を意識したな!という「In Bed」でますますソウルファンの気持ちは盛り上がります。

ぐっと80年代っぽいサウンドのクワイエット・ストーム曲「(Last Night I Made Love) Like Never Before」から10秒のスキットを経て60年代後半のテンプスフォー・トップスを彷彿させる男っぽいアップテンポのソウル・ナンバー「Holdin' On」、そして冒頭に触れた感動的な「A Change Is Gonna Come」のカバーで事実上アルバムは完結。最後のトラックは「Heaven」のアコースティックな感じのクワイエット・ストーム・リミックスで静かにフェードアウトしていく感じでエンディングを迎えます。(最後に隠しトラックあり)



再三前回から言ってますが、90年代はR&B・ヒップホップを中心としたブラック・ミュージックでは大きなルネッサンス的オールド・スクール・ソウルへのスタイル回帰と、打ち込み中心のサウンドから大きくオーガニックなサウンド・メイキングに舵が切られ、その中で多くの素晴らしい作品や、才能溢れる新しいアーティスト達が輩出したデケイドです

その中でも80年代をうまく乗り切って90年代に更に高いレベルへとサウンド・メイキングの質を上げていったジャム&ルイスの二人が、ジャネットのメインストリームR&B作品とはまた別の切り口で、クラシック・ソウル・ルネッサンスを見事に表現してみせたのがこのソロのデビュー・アルバムだと思います。

Solo Album (back)


ソロはこの後、前回のトニーズ解散後のラファエル・サディークをプロデューサーに迎えて、こちらも素晴らしいセカンド・アルバム『4 Bruthas & A Bass』(1998)をリリースした後、長く消息が聞こえてませんでしたが、2015年にインディーからニューアルバムを出したらしい、という情報が。残念ながらまだ聴けてないですが、多分変わらぬスタイルで、クラシックなソウルを下敷きにした彼らなりのR&Bを聴かせてくれてるのではないかと思ってます。

その新譜を聴くまでは、この彼らの素晴らしいデビューアルバムで、春爛漫のこの季節、音楽の与えてくれる至福を存分に楽しみましょうか。


追伸:今回のブログ執筆にあたってはこのアルバムの発売当時の日本盤の吉岡正晴さんのライナーノーツを参考にさせて頂きました。謹んで御礼申し上げます。


<チャートデータ> 

RIAA(全米レコード産業協会)認定 ゴールド・アルバム(50万枚売上)

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位52位(1996.3.16付)

同全米R&Bアルバム・チャート 最高位8位(1996.3.16付)

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

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