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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【年始恒例企画 #3】恒例!第61回グラミー賞大予想 #4 〜ラップ部門〜

今年も主要部門にドレイクケンドリック・ラマー、カーディBらがノミネートされ、2018年も引き続き最もストリーミングやデジタル・ダウンロードで聴かれた今最も人気あるジャンルであるラップ・ヒップホップ・フィールド。去年はジェイZケンドリック・ラマーの一騎打ちで、ケンドリック・ラマーの完勝に終わったこの部門、今年は更に三つ巴、四つ巴の様相を呈しています。さっそく見てみましょう。


18.最優秀ラップ・パフォーマンス部門

  Be Careful - Cardi B

◎ Nice For What - Drake
○ King's Dead - Kendrick Lamar, Jay Rock, Future & James Blake
  Bubblin - Anderson .Paak
× Sicko Mode - Travis Scott, Drake, Big Hawk & Swae Lee

Cardi B Be CarefulDrake Nice For WhatKendrick Lamar Kings DeadAnderson Paak BubblinTravis Scott Sicko Mode

このメイン・パフォーマンス部門で既にカーディB、ドレイク、ケンドリック・ラマーそしてトラヴィス・スコットと、いずれも2018年のラップ・ヒップホップ・ジャンルでは大ヒットアルバムを放ち、かつ各音楽誌の評価も高いアーティスト四組による混戦状態になってますアンダーソン・パークだって昨年フジロックで会場を一気に動かすハイテンションのライヴをやるなどアーティストパワーは高いのですが、今回はシングルのみの楽曲のノミネートということでグラミーレースでの弱さは否めないところ(年末に新譜『Oxnard』をリリースしていますので、来年のグラミーでの活躍を期待)。
この中で普通に本命◎を考えると、やはりアルバム『Scorpion』がBillboard 200(メインのアルバムチャート)でもR&Bヒップホップ・アルバム・チャートでも5週1位を放ったドレイクが横綱相撲を見せると考えるのが妥当でしょう。このNice For What」は「God's Plan」ほどではないにせよ、Hot 100でもR&Bヒップホップソングチャートでもそれぞれ8週1位を獲得した2018年を代表するラップヒットで、あのローリン・ヒルの「Ex-Factor」をサンプリングしたループをバックにドレイクがアゲアゲのフロウを聴かせるあたりがキャッチーでした。

対抗○はここのところのグラミーにおけるラップ・ヒップホップ部門で圧倒的な強さを誇っているケンドリック・ラマーが、ジェイ・ロックフューチャーらのラッパーだけでなく、音響系のオルタナロックで知られるジェイムス・ブレイクをフィーチャーした、映画『ブラック・パンサー』サントラからのトラップ・スタイルの「King's Dead」。あのケンドリック・ラマーとジェームズ・ブレイクが組んでトラップやってる、ってだけでかなりの話題作ですが、ここは対抗かなあ。

残る穴×はメイン部門でも台風の目の一つになりそうなカーディBトラヴィス・スコットかで迷うところだけど、ここは楽曲のバラエティをぐっと増したアルバム『Astroworld』がシーン、各音楽誌での評価の高い、トラヴィスの初のHot 100ナンバーワンヒットとなった「Sicko Mode」で



19.最優秀ラップ/歌唱パフォーマンス部門

  Like I Do - Christina Aguilera Featuring Goldlink
  Pretty Little Fears - 6lack Featuring J. Cole
× This Is America - Childish Gambino
◎ All The Stars - Kendrick Lamar & SZA
○ Rockstar - Post Malone Featuring 21 Savage

Christina Aguilera6lack.jpg Childish Gambino This Is America Kendrick Lamar SZA All The StarsPostMaloneRockstar.jpg 

去年はジェイZ+ビヨンセを押さえて、リアーナをフィーチャーした「LOYALTY.」で見事この部門を制したケンドリック・ラマー。それまでこの部門で7回受賞と圧倒的な強さを誇っていたジェイZから完全に主導権の流れをもぎ取った感が強かったのですが、今年は更にその勢いを持続させそう。というのも今年のこの部門ではあの映画『ブラック・パンサー』のエンディングのクレジット・ロールをバックに流れて、その楽曲のスケールの大きさで本編の興奮を新たにしてくれたSZAとのデュエット「All The Stars」が燦然と輝いてるんですから。チャート的には大きなヒットではなかったこの曲ですが、メインのSOYROYでもノミネートされていて正直そのどちらでも充分受賞の可能性があると思ってるのでまあ本命◎はこれに決まりですね。

対抗○は、こちらも全然別の意味で2018年のヒップホップ・シーンの盛り上がりに大いに寄与したポスト・マローン21サヴェージをフィーチャーした大ヒット曲「Rockstar」に。トラップというややもすればハードコアなヒップホップ・スタイルをベースにしながら、巧みに叙情性の高いメロディや音像と組み合わせることによって、ハードコアなトラップ・ファンだけでなく広く若い、そして人種を問わないリスナー達を獲得した業界に対する功績も低くないものがあると思いますね。タトゥーだらけだけど恐ろしげでなく、どっちかっていうとお茶目なキャラも強みでした。

そして穴×は消去法的ではあるけれど、残るチャイルディッシュ・ガンビーノの「This Is America」に。これだって普通だったら充分本命・対抗候補レベルの作品なんですが、今年のヒップホップ・ラップ部門の充実ぶりは半端無い、っていういい例ですね。


20.最優秀ラップ・ソング部門(作者に与えられる賞)

◎ God's Plan - Drake (Aubrey Graham, Daveon Jackson, Brock Korsan, Ron LaTour, Matthew Samuels & Noah Shebib)
○ King's Dead - Kendrick Lamar, Jay Rock, Future & James Blake (Kendrick Duckworth, Samuel Gloade, James Litherland, Johnny McKinzie, Mark Spears, Travis Walton, Nayvadius Wilburn & Michael Williams II)
  Lucky You - Eminem Featuring Joyner Lucas (R. Fraser, G. Lucas, M. Mathers, M. Samuels & J. Sweet)
× Sicko Mode - Travis Scott, Drake, Big Hawk & Swae Lee (Khalif Brown, Rogét Chahayed, BryTavious Chambers, Mike Dean, Mirsad Dervic, Kevin Gomringer, Tim Gomringer, Aubrey Graham, John Edward Hawkins, Chauncey Hollis, Jacques Webster, Ozan Yildirim & Cydel Young)
  Win - Jay Rock (K. Duckworth, A. Hernandez, J. McKinzie, M. Samuels & C. Thompson)

Drake Gods PlanKendrick Lamar Kings DeadEminem Lucky YouTravis Scott Sicko ModeJay Rock Win

この部門、この前のラップ/歌唱パフォーマンス部門同様、ぱっと候補を見てもう、ドレイクかケンドリック・ラマーかトラヴィスしかないね、っていうとてもわかりやすい状況。そして本命◎は、というとやはり11週Hot 100で1位を獲得して2018年のビルボード誌年間Hot 100チャートでも堂々の1位を決めたドレイクの「God's Plan」になるんでしょうなあ。どこぞの音楽誌では「3コード(Em, Am7, Bm7)しか使ってない、史上最大のヒット曲」なんて茶化す向きもあったんですが、音楽メディア売上データをトラックしているニールセン社の発表によると、2018年のトータル・ストリーミング配信回数が15.6億回(!)ということで2位のジュースWRLD(そういえば彼は今回グラミーから完全無視ですなあ、可哀想)「Lucid Dreams」の11億回をぶっちぎりでしのぐ、正しくストリーミング時代の2018年を代表する大ヒットということになります。前々回第59回でも「Hotline Bling」でこの部門を制しているドレイク、今後はケンドリック・ラマーとの鍔迫り合いをグラミーで見せてくれるのでしょう。

対抗○は、パフォーマンス部門同様、ドレイクの次に来るならこれしかない、ということでケンドリック・ラマージェイムス・ブレイク他ご一同の「King's Dead」、そして穴×はトラヴィス・スコット他ご一同(含むドレイク)の「Sicko Mode」で。


21.最優秀ラップ・アルバム部門

◎ Invasion Of Privacy - Cardi B

× Swimming - Mac Miller
  Victory Lap - Nipsey Hussle
  Daytona - Pusha T
○ Astroworld - Travis Scott

Cardi B Invasion Of PrivacyMac Miller SwimmingNipsey Hussle Victory LapPusha T DaytonaTravis Scott Astroworld

さあこの部門、今年のグラミーの他のジャンル部門同様、他のラップ部門のノミニー構成と全く整合性がないラインアップになっているのがかなり不気味です。だって、他のラップ部門にバリバリ存在感を持ってノミネートされてるドレイクとケンドリック・ラマーがここでは影も形もないんですから。おかしいでしょう。
事実この二人がこの部門で、作品を出していながらノミネートすらされていない、というのは過去初めて。しかも二人の作品は共に主要部門の最優秀アルバム部門にはノミネートされてるんですから、不可解の極みですなあ。
ではこのラインアップの中で誰が来そうか、ということなんですが、まあプッシャTのアルバムはカニエ・プロデュースってこともあって音楽誌からも評判いいのですが、やはり、こちらも主要アルバム部門ノミネートのカーディB、作品としてはシーンの評価が高いトラヴィス・スコット、そして昨年惜しくも急逝したマック・ミラーのアルバムの三つ巴でしょう。

ここはこの中で唯一メイン部門ノミネートということで、こちらもいろんな意味で2018年を席巻した今回のグラミーの台風の目の一人、カーディBのアルバムが本命◎かと。彼女はラテン・アーティストとコラボした「I Like It」がこのアルバムからの大ヒットとなってROYにもノミネートされているので、ここは確実にジャンル部門を押さえてくるでしょうね。対抗○は何度もいいますが、アルバムのクオリティが高い評価のトラヴィス・スコット。そして穴×はマック・ミラー。マック・ミラーのこのアルバム、単に同情票、ということではなく、アルバムの作品自体もかなりシーンでは評価が高いようです。ポスト・マローンともある意味通じるのですが、多くのネガティヴな感情やヘイトを露わにするようなフロウをかますラッパー達へのアンチテーゼとして、極々パーソナルな感情や自分の思いをフロウにのっけるというスタイルも今一層好感度のよう。改めて冥福を祈ります。


さてこのグラミー予想も、やっと41予想部門の折り返しまできました。明日中にはもう一発くらいポストしたいと思ってます。よろしく!
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【年末恒例企画 #3】恒例!第61回グラミー賞大予想 #3 ~R&B部門~

松の内ももう遙か昔という感じですが、この週末は三連休ということで何とかこの予想ブログもぐっと進捗させたいと思っています。前回も告知しましたが、三連休明けの16日(水)には吉岡正晴さんの「ソウル・サーチン・ラウンジ」でのグラミー賞大予想トーク&DJイベントが待っていますので、それまでに何とか目処が付きますように。さ、予想第三弾はR&B部門です。


13.最優秀R&Bパフォーマンス部門

  Long As I Live Toni Braxton

◎ Summer The Carters
○ Y O Y Lalah Hathaway
× Best Part H.E.R. Featuring Daniel Caesar
  First Begun (Unplugged) PJ Morton


Toni Braxton Long As I LiveThe CartersLalah Hathaway YOYHER Best PartPJ Morton First Begun

昨年は「この部門はアフリカン・アメリカンが絡まない作品が受賞したことが一回もないので、ブルーノは強そうだけどSZA」という予想したところ、まんまとブルーノがかっさらっていってしまうという事態に。今年は5組とも王道のアフリカン・アメリカン・アーティストが勢揃いなのでそういうことで悩まなくてよさそうです(苦笑)。今年はいずれも結構強力な面子が揃っていて、過去90年代後半~2000年代の全盛期にこの部門3度受賞のトニ・ブラクストン、ジェイZビヨンセの夫婦デュオのザ・カーターズ,この部門でも2014年第56回にスナーキー・パピーとのコラボで受賞し、次のトラディショナルR&B部門では第58回59回と2年連続受賞して貫禄のレイラ・ハサウェイ、主要賞にもノミネートされていて今回のグラミーの台風の目の一つと目されるH.E.R.、そしてマルーン5のキーボード奏者で昨年今年とアルバム『Gumbo』と『Gumbo Unplugged (Live)』がR&Bアルバム部門ノミネートのPJモートンと豪華な顔ぶれ。
で本命◎ですが、レイラH.E.R.もかなり強そうなれど、グラミーでは頻繁にノミネートされて、主要賞では無冠ながらこのジャンル部門では過去に数々の受賞、このコンビでの「Drunk In Love」でこの部門2015年第57回に受賞しているザ・カーターズが順当かと。そして近年での受賞実績がピカイチのレイラが対抗○、H.E.R.+ダニエル・シーザーのフレッシュなデュエットに穴×を付けておきましょうか。実はこの「Best Part」って曲、この3曲の中では一番楽曲としては素晴らしいなあ、と個人的には思うんですダニエル・シーザーもいいパフォーマンスしてるし。なのでこの曲が取っちゃっても僕は何も文句いいません、うん。



14.最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス部門

○ Bet Aint Worth The Hand Leon Bridges
◎ Dont Fall Apart On Me Tonight Bettye LaVette
  Honest MAJOR.
× How Deep Is Your Love PJ Morton Featuring Yebba
 Made For Love Charlie Wilson Featuring Lalah Hathaway


Leon Bridges Bet Aint Worth The HandBettye LaVetteMajor HonestPJ Morton How Deep Is Your LoveCharlie Wilson

おっとこの部門には自分の個人的2018年ベストアルバムトップ10に入れたアーティストが2組も。そのリオン・ブリッジズGood Thing』もベティ・ラヴェットThings Have Changed』もかなり素晴らしいアルバムなんですが、72歳の円熟した表現力とパワフルな歌唱力と迫力でディランのナンバーをぶちかますベティ・ラヴェットの存在はやはりかなり圧倒的なものがあります。従ってここはこの遅咲きの大ベテランに敬意を表して彼女がディランの1983年のアルバム『Infidels』収録のナンバーのカバー曲に本命◎を付けたいですね。ベティのこのアルバム、最優秀アメリカーナ・アルバム部門でもノミネートされていて、どちらかでは必ず受賞する気がします
従って対抗○は、今回ややコンテンポラリーな要素も加味してぐっと広がりのあるアルバムになったリオン・ブリッジズの2作目からの「Bet Aint Worth The Hand」に。
残る穴×は、テキサス出身のソウルシンガー、MAJOR.ことメイジャー・R・ジョンソン・フィンリーも、チャーリー父さんレイラのデュエットも大いに気になるところではありますが、ここはR&Bアルバム部門に2年連続ノミネートのPJモートンの素敵なビージーズ・ナンバーのカバー曲に進呈します。



15.最優秀R&Bソング部門(作者に与えられる賞)

◎ Bood Up Ella Mai (Larrance Dopson, Joelle James, Ella Mai & Dijon McFarlane)

  Come Through And Chill Miguel Featuring J. Cole & Salaam Remi (Jermaine Cole, Miguel Pimentel & Salaam Remi)
× Feels Like Summer Childish Gambino (Donald Glover & Ludwig Goransson)
○ Focus H.E.R. (Darhyl Camper Jr., H.E.R. & Justin Love)
  Long As I Live Toni Braxton (Paul Boutin, Toni Braxton & Antonio Dixon)

Ella Mai Bood Up Miguel.jpeg Childish Gambino Feels Like Summer HER Focus Toni Braxton Long As I Live 

いやー、ここはアガる部門!というのも何と言ってもSOY部門にもノミネートで、自分的にもイチオシのエラ・メイちゃんの「Boo'd Up」がいるから。やっぱり何と言ってもこの曲、ソウルR&B好きに取っては2018年を代表する曲だからね。いろんなところで言われているけど、90年代のR&Bルネッサンス時代の楽曲スタイルの意匠をベースに正に正統派のスタイルで攻めてくるこの曲、R&Bソング・チャートでも去年トータル13週間1位を確保、あのブルーノ・マーズカーディBのキラー・チューン「Finesse」の12週を上回る名実ともに昨年のR&Bシーンを代表する曲。なのでここは文句なしの本命◎でしょう。
難しいのは対抗○なんだけど、ここはやはりこちらも主要部門の最優秀アルバム部門にノミネートのH.E.R.のこちらも70年代以来脈々とつながっているR&Bシンガーソングライター達の系譜をしっかり受け継いでいる素晴らしい楽曲「Focus」で決まりですね。本来であればミゲルJ.コールサラーム・レミと組んだ「Come Through And Chill」なんてかなり凄いR&Bイベントなんだけど、それをサラリと上回ってしまうH.E.R.の楽曲とパフォーマンスも素晴らしいです。

穴×は本来であれば昨年同様こいつもグラミーの台風の目になってしかるべきなチャイルディッシュ・ガンビーノの「Feels Like Summer」で。




16.最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門

◎ Everything Is Love - The Carters
  The Kids Are Alright - Chloe X Halle
  Chris Dave And The Drumhedz - Chris Dave And The Drumhedz
× War & Leisure - Miguel
○ Ventriloquism - Meshell Ndegeocello


The CartersChloe Halle The Kids Are AlrightChris Dave and The DrumhedzMiguel.jpegMeshell Ndegeocello Ventriloquism

さあ昨年この部門は、カリードやらチャイルディッシュ・ガンビーノやらSZAやら、時のアーティスト達が満載の中、何だか昔に比べると気が抜けたような作品をここのところ出してるウィークンドが何故か取ってしまって「あれえ?」って感じだったんですが、今年はどうか。実は個人的に一番取って欲しいのは、カマシサンダーキャット同様、LAのジャズシーンの最先端で活躍してるクリス・デイヴの初リーダー作。でもちょっとこのメンツの中では地味だと思うので印は付けてません。
一方予想的に本命◎を付けたのは、やはりグラミー・ダーリンのビヨンセ+ジェイZ夫妻のユニット、ザ・カーターズですかねえ。このアルバムは各音楽誌でもそこそこ評判は悪くないようですが、正直このアルバム、メインのアルバム部門でもノミネートされるのではと個人的には思っていたので、ここではさすがに取るでしょう、ということで本命。
対抗○は、それに劣らず各音楽誌での評価が圧倒的に高い、ミシェル・ンデゲオチェロの意欲的なカバーアルバムに。いやいやプリンスやらジョージ・クリントンやらTLCやらシャーデーやらリサリサやら、そのカバー曲の選曲センスにノックアウトされただけでなく、そのパフォーマンスも素晴らしいこのアルバムザ・カーターズを押さえてこの部門取っても全くおかしくない、そんな力作ですねえ。
そして穴×は、世が世ならこの部門で楽々受賞してもおかしくない、ミゲル君の素敵なアルバムに。


17.最優秀R&Bアルバム部門

  Sex & Cigarettes - Toni Braxton
○ Good Thing - Leon Bridges
× Honestly - Lalah Hathaway
◎ H.E.R. - H.E.R.
  Gumbo Unplugged (Live) - PJ Morton


Toni Braxton Sex CigarettesLeon Bridges Good ThingLalah Hathaway HonestlyHER.jpgPJ Morton Gumbo Unplugged

2018年はここ近年では一番ブラック・ミュージックを聴いた量が多かったなあ、というのが個人的な実感で。自分の年間ナンバーワンアルバムは白人のトム・ミッシュだけどあれも完璧ブルーアイドだしね。で、この部門のノミニーを見ると、トニブラ以外のアルバムは全部買ってて、どれも好きなアルバムばっかり(^^)
昨年は他のR&B部門も含めてブルーノ・マーズに席巻されてしまったのだけど、今年はブラック本来のアーティストの復権みたいな感じでちょっと嬉しい。その中でやはり本命◎は今年のグラミーの台風の目の一つになるだろうH.E.R.のアルバムかな。このアルバムはもともとそれまでにEPでリリースされていた2枚のアルバムを正規版のアルバムとしてまとめた、ということなんで楽曲の粒揃い度が半端ないです
そしてそれにも増して劣らないのがリオン・ブリッジズのアルバム。これが対抗○です。自分のブログ「新旧お宝アルバム!」でも取り上げたこのアルバム、とにかくサム・クックオーティスのイメージに軒を借りていたファーストに比べると、地に足がついたアルバム作りで、楽曲の幅もクラシックなものから今時のR&Bのスタイルを意識したものまで幅広いし、リオンのパフォーマンスもとってもソリッド。もともと歌が巧い人なのでアルバムのコンセプトと楽曲が良ければ文句なし。穴×はR&B分野全般での実績ではいうことのないレイラ姐さんの今回はちょっと今風のR&Bにも色目を使った「Honestly」に進呈しておきましょう。



さてさて、この三連休中にこの予想ブログ、ぐいぐいと進めて行きたいと思ってますので乞うご期待。では!

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【年始恒例企画 #3】恒例!第61回グラミー賞大予想 #2 〜ダンス&ロック部門〜

皆様明けましておめでとうございます。もう三が日が過ぎてお屠蘇気分もどこへやら、今日から仕事という方も多いでしょうねえ。さあ、今週のうちにとっととグラミー予想少しでも進めたいと思います。ということで次はダンス部門とロック部門です。


6.最優秀ダンス・レコーディング部門

  Northern Soul - Above & Beyond Featuring Richard Bedford
× Ultimatum - Disclosure Featuring Fatoumata Diawara
○ Losing It - Fisher
◎ Electricity - Silk City & Dua Lipa Featuring Diplo & Mark Ronson
  Ghost Voices - Virtual Self

Above Beyond Northern SoulDisclosure UltimatumFisher Losing ItSilk City Dua Lipa ElectricityGhost Voices Virtual Self

今年のこの部門、去年見事に受賞したLCDサウンドシステムとか、この部門ここ10年ほど常連のスクリレックスケミカルズといった大御所アーティストたちは陰を潜め、若手のDJユニットやリミキサーたちの作品がノミネート。そして次の最優秀ダンス・アルバム部門のノミネートと一つも被ってない、と今年はこのジャンルの若手アーティスト・オンパレードの感のあるノミネーションになっています。

その中でこの部門一際光るのは、この中では実は一番大御所のシルク・シティ。実はこれ、「Uptown Funk」やエイミー・ワインハウスのプロデュースで今やつとに有名なマーク・ロンソンと、これまでもメイジャー・レイザージャックÜスクリレックスとのコラボ)といったワンタイム・ユニット名で数々のダンスヒットを放ってきたDJデュプロのデュオ・チームの名前です。そこに今年最優秀新人部門ノミネートのデュア・リパがフィーチャーされたこの「Electricity」、2003年のアメリカ東北部の大停電(この時自分はNYに住んでたんですが旅行中で帰ったら冷蔵庫の中が酷いことになっててビックリしました)をモチーフにして、デュア・リパ嬢が踊りまくるPVがなかなかいい感じのパワー・ダンス・トラック。全英では最高位4位、全米でもダンス・クラブ・チャートで1位をマークした、まあガチガチ本命◎臭いナンバーです(笑)。

これに対抗○なのは、オーストラリア出身のハウス系のプロデューサーのフィッシャーことポール・ニコラス・フィッシャーの「Losing It」。フィッシャーのアルバムは2018年の各音楽誌でもなかなか評価が高く、各誌の年間ベストアルバムリストにもちらほら顔を出します。「Losing It」は90年代後半のビッグ・サウンドなハウス・トラックを彷彿とさせるなかなかなクラブ・チューンです。そして穴×にはこの部門では過去に2015年第57回でノミネート経験のあるハワードガイローレンス兄弟ユニット、ディスクロージャーがアフリカはマリ出身の女性歌手、ファトウマタ・ディアワーラをフィーチャーした「Ultimatum」に。



7.最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバム部門

◎ Singularity - Jon Hopkins
  Woman Worldwide - Justice
× Treehouse - Sofi Tukker
  Oil Of Every Pearl's Un-Insides - SOPHIE
○ Lune Rouge - TOKiMONSTA

Jon Hopkins SingularityJustice Woman WorldwideSofi Tukker TreehouseSophie Oil Of Every PearlTokimonsta Lune Rouge

この部門もフレッシュな顔ぶれがずらりと並びました。この中で自分が注目したいのは、イギリス出身の中堅エレクトロ・ミュージック・メイカーのジョン・ホプキンスの『Singularity』。過去にはブライアン・イーノコールドプレイのアルバムに参加したこともあるという、90年代後半に流行ったドラムン・ベースっぽいリズムに浮遊感たっぷりの音像系トラックでビートを作り出す、と思えば広大な自然を映像に想起させるようなアンビエント系のトラックを聴かせる、といった感じのスタイルのようです。このアルバムも各音楽誌で評価が高く、ピッチフォーク誌の年間リストでは16位に入っていて、NME(ニューミュージカルエクスプレス)誌のレビューでは100点を取ったというバズりぶり。なんで、これを本命◎に。

対抗○には、LA在住のコリアン・アメリカンの女性DJ、トキモンスタことジェニファー・リーの『Lune Rouge』へ。K-Popの世界がサウンド的にはUSの最新の音像系浮遊感たっぷり系のサウンドとヒップホップ・テイストをかなり取り入れて昨年はUSチャートにもかなり進出したのはご存知の通りですが、アンダーソン・パークらとのコラボもやっている彼女のサウンドもその当たりのスタイルを意識しながら、微妙に彼女の出自を思わせるようなエキゾチックなテイストを感じさせるサウンドを聴かせます(「ビビンパ」って曲はエレクトロニックなR&Bテイストの民族音楽ベースの楽曲って感じでなかなかクールです)。で、穴×は、一昨年の2017年第59回のダンス/レコーディング部門でもノミネートされたNYベースのデュオ、ソフィ・タッカーに。



8.最優秀ロック・パフォーマンス部門

○ Four Out Of Five - Arctic Monkeys
× When Bad Does Good - Chris Cornell
  Made An America - The Fever 333
◎ Highway Tune - Greta Van Fleet
  Uncomfortable - Halestorm


Arctic Monkeys Four Out Of FIveChris Cornell When Bad Does GoddFever 333 Made An AmericaGreta Van Fleet Highway TuneHalestorm Uncomfortable

さてさて歴史的に毎年必ず1曲は2曲「うーんこれ、ロック部門?」っていうノミネートがあるこの部門ですが、ことしはがっちりとしたロック本道のノミニーが揃いました。その中でもやっぱり光ってるのは、去年そのツェッペリンを彷彿とさせるパフォーマンス・スタイルで、当のジミー・ペイジロバート・プラントが絶賛したという、ミシガン州出身のキズカ3兄弟+従兄弟のダニー・ワグナーの4人組、グレタ・ファン・フリート。去年サマソニにブッキングされながら来日ドタキャン、今月その仕切り直しで初来日を果たすこのグループ、取りあえずYouTubeとかで聴いて下さい、クラシック・ロックのファンなら絶対ぶっ飛ぶから。今回グラミー賞最優秀新人賞部門にも見事ノミネートされた彼ら、ここでノミネートされた彼らのデビューシングルでもある「Highway Tune」でのボーカルのジョッシュ君(ギターのジェイク君と双子w)のパフォーマンスは殆どロバプラが憑いているといってもいいくらい。間違いなく僕的には本命◎です。ひさびさの王道ロック、場外満塁ホームラン!という感じです。もちろん僕は来日公演、見に行きますよ。

そしてこの部門では過去2回ノミネート経験のあるUKのアークティック・モンキーズ。90年代後半から2000年代にかけてのストレートなロック・スタイルに比べて、昨年リリースの新作『Tranquility Base Hotel + Casino』は何だかラウンジ・ミュージックになっちゃったような「大人の」サウンドになって、従来のストレートなロックスタイルのファンを戸惑わせたものですが、今回このアルバムの各音楽誌の評価は「Q」誌年間1位、「Mojo」「NME」誌年間2位と極めて高いのです(ちなみにロッキングオン誌では年間7位w、ミュージック・マガジン誌ではイギリス部門堂々年間1位でした)。この独特のクールなスタイルを聴かせる「Four Out Of Five」もどこかボウイを思わせるロックのダンディズムを表現してますね~ということで対抗○。穴×は一昨年秋に自殺?で他界したクリス・コーネルが去年に続いて今年もノミネートされてるのでこちらに進呈。ところでどうでもいいけど、久しぶりに出てきたラップコア・バンド、フィーヴァー333まるであのリンプ・ビズキットを彷彿させてPV見てて凄く懐かしくなりました。ご興味ある方、YouTubeでどうぞ(^^)


9.最優秀メタル・パフォーマンス部門

  Condemned To The Gallows - Between The Buried And Me

× Honeycomb - Deafheaven
◎ Electric Messiah - High On Fire
  Betrayer - Trivium
○ On My Teeth - Underoath


Between The Buried and MeDeafheaven.jpgHigh On FireTriuvium.jpgUnderoath On My Teeth

さあ今年もやって参りましたさっぱりわからん部門(笑)。そしてまた今年のノミニーは全て初ノミネートというから余計わからん。順番にいくと、「埋葬者と僕の間」っていういかにもおどろおどろしいグループ名のBTBAMはノース・キャロライナ出身の5人組、デフヘヴンはサンフランシスコをベースにした5人組、ハイ・オン・ファイヤはオークランド出身のスリーピース・バンド、トリヴィアムはフロリダはオーランド出身の4人組、そしてアンダーオースはフロリダはタンパ出身の6人組、と今回はオールアメリカンでノミニーが占められてます

はっきり言って気分での予想ですが、本命◎はハイ・オン・ファイヤ、対抗○はアンダーオース、そして穴×はデフヘヴンにしました。全く根拠はないです(笑)。強いて言えば、ハイ・オン・ファイヤのこの曲、ブラック・サバス以来の伝統的なスタイルを忠実になぞってる感じだった(ジャケは思いっきり趣味悪いですがw)のと、アンダーオースはちょっとエレクトロ入ってるあたりが「あ、ちょっと工夫してるやん」った感じだったくらい。デフヘヴンは...聴いてるだけで疲れました(笑)



10.最優秀ロック・ソング部門(作者に与えられる賞)

◎ Black Smoke Rising - Greta Van Fleet (Jacob Thomas Kiszka, Joshua Michael Kiszka, Samule Francis Kiszka & Daniel Robert Wagner)
○ Jumpsuit - twenty one pilot (Tyler Joseph)
  Mantra - Bring Me The Horizon (Jordan Fish, Matthew Kean, Lee Malia, Matthew Nicholls & Olivia Sykes)
× Masseduction - St. Vincent (Jack Antonoff & Annie Clark)
  Rats - Ghost (Tom Delgety & A Ghoul Writer)


Greta Van Fleet Black Smoke RisingTwenty One Pilots JumpsuitBring Me The Horizon MantraSt Vincent MasseducitonGhost Rats

うーん今回のロック部門のノミネーションはようわからんなあ。この最大の部門のノミニー5組中、他のロック部門にノミネートされてるのがグレタ・ヴァン・フリートだけで、他の4組はここで忽然と登場しているという不可解さ。これだったら本命◎は、主要4賞にもノミネートされてるグレタ・ヴァン・フリートしかないやん!というのが人情というもの。

それでも敢えて対抗○を選ぶと、一昨年大ブレイクしてこの部門にも第59回に「Heathens」がノミネートされてたトウェンティ・ワン・パイロッツかなあ。そして穴×は個人的にも一昨年の年間アルバムトップ20のリストに入れてた、セント・ヴィンセントことアニー・クラーク嬢の「Masseduction」に。このアルバム、あまりスポットが当てられてないけど、かなりの出来だと思うんだけど。



11.最優秀ロック・アルバム部門

○ Rainier Fog - Alice In Chains
  M A N I A - Fall Out Boy
  Prequelle - Ghost
◎ From The Fires - Greta Van Fleet
× Pacific Daydream - Weezer


Alice In Chains Rainier FogFall Out Boy ManiaGhost PrequelleGreta Van Fleet From The FiresWeezer Pacific Daydream

それにしても、ロック・ソング部門にもノミネートされてたこのゴーストってバンド、何でこんなに評価高いのかな?スウェーデンのメタルバンドで、メンバーの殆どが同じコスチュームでプロセティック・マスクで顔を隠して身分を明らかにしてないっていうバンドらしいんだけど。ま、どうでもいいや。

さて、自分の今回のロック部門の予想は「グレタ・ヴァン・フリート、ノミネート部門総取り」というもの。だって、他のノミニーと比べても「来てる感」のレベルが全く違うんですもんね。なのでここでも、「Highway Tune」を含む彼らの2枚目のEP『From The Fire』が本命◎です。

対抗は今や90年代のグランジ・ブームから活躍してるメジャーなバンドの中で唯一活動を続けるアリス・イン・チェインズの新作『Rainier Fog』に。やっぱり一昨年のクリス・コーネルの死はシアトル・エリアのロック・アーティストの間にはいろんな影響があったんだろうなあ、と思わせる彼らの新作でしたね。

で、穴×はマイペースで日本人の嫁さんと一緒に日本在住で音楽活動に勤しむリヴァース・クオモ率いるウィーザーのアルバム。日本語のアルバムとかも出してて真面目なんだか不真面目なんだか判らんリヴァースですが、このアルバム、僕も買いましたが結構良かったですよ(^^)



12.最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム部門

× Tranquility Bass Hotel + Casino - Arctic Monkeys
◎ Colors - Beck
  Utopia - Björk
  American Utopia - David Byrne
○ Masseduction - St. Vincent


Arctic Monkeys Tranquility Base hotel Beck ColorsBjork UtopiaDavid Byrne American UtopiaSt Vincent Masseduction

今年も去年に続いてこのオルタナ部門のノミネート作品はいずれも劣らぬ好盤が並んでて予想は結構難しい。でも、ここは今回主要部門でパスされているけども、4年前の第57回では最優秀アルバム賞部門で、ビヨンセ、エド・シーラン、サム・スミスという強豪を押さえて見事『Morning Phase』で受賞したことでグラミー・ダーリンだということが判ったベックに本命◎を。対抗○は、その同じ第57回でこの部門を受賞していて、今回のアルバムも先ほどコメントしたとおり、なかなか素晴らしい出来だと思うセント・ヴィンセントの『Masseduction』。そして穴×は今回の作品で新境地を確立したアークティック・モンキーズに。



さて第2弾予想ブログ、いかがでしたか。来週からはいよいよ新年始動ということで残りの予想も引き続きアップしますのでお楽しみに。

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【年末恒例企画#3】恒例!第61回グラミー賞大予想 #1 〜ポップ部門〜

いよいよ2018年も今日で最後。皆さん年末をどうお過ごしでしょうか。自分はここ数日、正月を迎えるための諸準備、大掃除とか買い出しとか年賀状とかを粛々とこなして、今年はあと大晦日に年賀状メールを発信するだけになりました。そこで今日は例年よりも早めに恒例のグラミー賞大予想ブログの一発目をアップします


さて今年もやってきましたグラミーシーズン。今年の最大の話題は、従来基本5候補ノミネートだった主要四部門(最優秀アルバム、レコード・オブ・ジ・イヤー、ソング・オブ・ジ・イヤー、新人賞)のノミネーションが一気に9候補に拡大されたこと

この候補数拡大がノミネート、そして最終受賞動向にどう影響を与えるのか?興味はつきません。

Grammy Logo 

今年もその辺を、音楽評論家の吉岡正晴さんと一緒に、吉岡さん新宿カブキ・ラウンジで定例開催されている「ソウル・サーチン・ラウンジ40」での1/16(水)開催の「グラミー賞大予想」にお邪魔してまたまた大いに語りあうことになりました。これで吉岡さんグラミーでご一緒するのは3年目。今年もいろいろ音源もかけながらグラミー賞予想・解説をしたいと思いますので、是非お立ち寄りを。

詳細は吉岡さんのブログのこのリンクで。予約しておくと安心ですw↓

https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12425996212.html

さて日程その他の関係で、今年1/28のグラミー賞授賞式は何年ぶりかで生ブログはお送りできなかったのですが、来年2月の授賞式は日本では建国記念日の休日放送なので、2年ぶりに生ブログもお届けできそうです。こちらの方もお楽しみに。

その今年1月の第60回予想の結果も簡単におさらいしておきます。

◎(本命予想)で的中=18(的中率 .439)
◎か○(対抗予想)で的中=30(的中率 .732)
×(穴予想)を含む印をつけたものどれかで的中=37(的中率 .902)

ということで、本命的中率は昨年より落ちるものの、総合的中率は昨年と全く同じ.902ということで、昨年同様好調を維持しています。今年は主要部門のノミネーション拡大で予想難易度が一気に上がっていますが、何とかこの水準を維持したいもの。


さてその第61回グラミー賞授賞式は、来年2月10日(日本時間2月11日)、去年のNYからLAに場所を戻していつものステイプルズ・センターで開催。不思議なことに今日時点でホストが誰なのか発表されておらず、2011年の第53回以来のノーホスト状態なのか、それとも昨年まで2年続けてホストを務めたジェームス・コーデンがまたその役を担うのか、不明の状態

一方、再三コメントしているように、今回主要四部門のノミネーション数拡大が、当日の受賞状況にどう影響するのかが最大の話題ですが、その他の注目すべき点は、

A Star Is Born

★ ノミネート発表前から一部のグラミー賞予想通たちの間では話題になっていたが(どーいう人たちの集まりや、それ?)やはり、という感じで主要賞中ROYとSOYの堂々2部門ノミネートとなった、レディー・ガガとブラッドリー・クーパーの映画『アリー/スター誕生(A Star Is Born)』からの主題歌「Shallow」。サントラ盤のアルバム発売は10月だったのに、この曲のみグラミーノミネート対象期限の9月末直前にデジタル・リリースされたことから「これは明らかにグラミー狙い」との評判でもちきりだった。今回のROYSOYそれぞれ9曲ずつノミネートされていずれも強力曲だけど、この経緯から言っても、映画とガガの評判からいっても、本命視されることは間違いないところ

★ そのガガ+クーパーROYSOY部門で激突するのは同じく両部門ノミネート、そして同じく映画(「ブラック・パンサー」)の主題歌のケンドリック・ラマーSZAのデュエット「All The Stars」、そしてあっと驚くアルバム部門も含めて主要3部門ノミネートされたアメリカーナ・カントリーのブランディ・カーライルの「The Joke」、2部門ノミネートの今年1番のヒット、ドレイクの「God's Plan」とチャイルディッシュ・ガンビーノの「This Is America」と、いずれ劣らぬ意欲作が並んだ主要賞争い、激しいことになりそうで、予想する側としては悩む悩む

★ 一方アルバム部門のノミネートもあっと驚くものブランディ・カーライルと『ブラック・パンサー』サントラはROYSOYがらみで順当だし、ドレイクポスト・マローンもある程度予想できた。カントリーのケイシー・マスグレイヴス今年のCMAで最優秀アルバムを取っているのである意味順当。ところが、ジャネル・モネイ、H.E.R.といった若手R&B女性シンガー達、そして極めつけは確かに今年の顔といえば顔のカーディBのアルバムがノミネートされたのは嬉しい驚き。個人的にはケイシーを推してますが、正直受賞戦線は全く混沌としています。

★ 最優秀新人賞部門も今年から9アーティストということなのですが、なぜか事前に本命候補として予想していたカミラ・カベロや、主要部門にノミネートされてるカーディB、そして同じくSOYにノミネートされてる対抗候補だったエレ・メイちゃんといった強力な連中がすっぽりノミネートから抜けているという、やっぱりグラミー絡め手できてます(笑)。一方で嬉しい誤算はボーダーラインだと思っていたH.E.R.のノミネートと、何と今回セカンド・アルバムになるマーゴ・プライスが何故か忽然とノミネート(笑)。こちらも混沌とした賞レースになってます。

★ そして毎年豪華ラインアップで届けられる、その年物故した大物アーティストの追悼トリビュート・ライヴ。今回は当然のごとく、女王アレサのトリビュートが『Aretha! A Grammy Celebration For The Queen Of Soul』と銘打たれて行われることが発表されてます。1/13にLAのシュライン・オーディトリアムで収録される予定のこのトリビュートでは、ジョン・レジェンド、パティ・ラベル、アリシア、ジェニファー・ハドソンらR&Bの大御所達や、ヨランダ・アダムス、シャーリー・シーザー、ビービー・ワイナンズといったゴスペルの大御所達に加え、ケリクラ、アレッシア・カーラ、ブランディ・カーライル、H.E.R、ジェネル・モネイ、SZAといった今年のグラミー賞のノミニー達も交えた一大イベントになる予定。こちらの模様も授賞式の際に見られると思いますのでこれは見物です。

★ 今回のグラミー賞では、日本人アーティストのノミネーションは残念ながらないものの、最優秀アルバム賞ノミネートH.E.R.H.E.R.』のエンジニアに横浜出身、NY在住のエンジニアのツツミ・ミキさんがノミネート。また、オルタナティヴ・ロック・アーティスト、Mitskiこと宮脇ミツキのアルバム『Be The Cowboy』のパッケージ・デザインが最優秀レコーディング・パッケージ部門にノミネートされている(アートディレクターはMary Banas)。また、吉岡さんもブログに挙げられているが、最優秀コンテンポラリー・ブルーズ・アルバム部門にノミネートのファンタスティック・ネグリートのアルバム『Please Don't Be Dead』にギタリストのマサ小浜さんが参加していることも見逃してはいけない

また、アジア関係ということでいくと、最優秀ダンス・エレクトリック・アルバム部門にコリアン・アメリカンのトキモンスタことジェニファー・リーのアルバム『Lune Rouge』がノミネート、またK-PopのBTS(防弾少年団)のアルバム『Love Yourself: Tear』のジャケットがミツキ同様ノミネートされているのが興味を引くところ。

Aretha Tribute

そして、毎年話題になる「どうしてこのアーティスト、作品がノミネートされてないの??」ですが、今年の主なものとしては、
☆ アリアナ・グランデの主要部門ノミネーション逃しアリアナは、ビルボード誌の選ぶ今年のウーマン・オブ・ジ・イヤーにも選ばれるなど、昨年のマンチェスターでの自分のライヴでの爆弾テロ事件以来、ファン達に辛い記憶もあるけれど強く生きよう!といったメッセージで連帯を呼びかけたり、女性としての尊厳を強調する曲をヒットさせたりなどして社会的にもヴィジブルな存在だったし、「No Tears Left To Cry」(3位)「God Is A Woman」(8位)そして現在1位の「Thank U, Next」などのヒットも連発していただけに彼女が全く主要部門にいないのも違和感あり。特にボーイフレンドのマック・ミラーを今年亡くしているだけに残念。

☆ カマシ・ワシントン、グラミーはまったく無視。自分が年間ベストアルバムの4位に入れたから言うわけではないけど、数々の音楽誌等でも今年を代表する傑作アルバムの一つとして評価の高い『Heaven And Earth』が、僕が予想していた最優秀アルバム部門はおろか、ジャズ部門でもまったく無視されているってこれ、どういうこと?

☆ テイラーの『Reputation』はグラミーに嫌がられた?通常であれば、グラミー・ダーリンのはずのテイラー・スイフト、昨年末リリースのアルバム『Reputation』は今回主要部門からははずれ、辛うじて最優秀ポップ・ボーカル・アルバム部門にノミネートされたのみ。

ということで今年のグラミーも新しい意味で楽しみ。ではここからは恒例の予想、まずはポップ部門です。


1.最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス部門

× Colors - Beck
○ Havana (Live) - Camila Cabello
◎ God Is A Woman - Ariana Grande
  Joanne (Where Do You Think You're Goin?) - Lady Gaga
  Better Now - Post Malone

Beck ColorsCamila Cabello HavanaAriana Grande God Is A WomanLady Gaga JoannePost Malone Better Now

今年のグラミー予想の軸は、前述のように「ガガ+クーパーのROY、SOY総ざらい」ということなんですが、このポップ部門には、本来であれば主要賞で名前が出ていておかしくない人がいろいろ顔を出していて、自ずからそういった人たちが有力候補なのかな、と。

具体的には、上述した、主要部門から漏れているアリアナがやはりここは取ってくるだろう、ということで本命◎。そして新人賞部門から何故かこれも名前が漏れていたカミラ・カベロの「Havana (Live)」。何でわざわざライヴバージョンなのかな(笑)という疑問が大きく残りますが、実はこの部門では過去にも、ファレル・ウィリアムスの「Happy」のライヴ・バージョンが2015年第57回で、アデルの「Set The Fire To The Rain」のライヴ・バージョンが2013年第55回で受賞しているという、ライヴ・バージョンが有利な部門(ってどんなんやw)。なので、彼女の新人賞もれも踏まえて対抗○。そしてこちらも場合によってはアルバム部門ノミネートもあり得たベックの『Colors』に穴×を付けておきます。



2.最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門

  Fall In Line - Christina Aguilera Featuring Demi Lovato
  Don't Go Breaking My Heart - Backstreet Boys
× 'S Wonderful - Tony Bennett & Diana Krall
◎ Shallow - Lady Gaga & Bradley Cooper
  Girls Like You - Maroon 5 Featuring Cardi B
  Say Something - Justin Timberlake Featuring Chris Stapleton
○ The Middle - Zedd, Maren Morris & Grey

Christina Aguilera Fall In LineBSB Dont Go BreakingTony Bennett Diana KrallGaga Cooper ShallowMaroon 5 Cardi B Girls Like YouJustin Timberlake C Stapleton Say SomethingZedd Maren Morris The Middle

さて、主要4部門のノミネーション多様化のあおりなのか、この部門は今年多めの7作ノミネート。5部門でノミネートが収まらなかったのは、1997年第39回の6作ノミネート以来、7作ノミネーションは史上初となります。内容的にみると「わざわざ7作にする必要があったのか?」と思う、アギレラバックストリート・ボーイズなんかもありますが、ここでやはり本命◎視せざるを得ないのはガガ+クーパーの「Shallow」なんでしょうなあ。ここ数年は強い作品は、主要賞とジャンル賞の両方を持って行ってしまう、というのがやや傾向なので、ここも「Shallow」が行ってしまうのではないかと。それを阻止する可能性があるのは、やはりROYSOYにノミネートのゼッド/マレン・モリス/グレイの3アーティストによる「The Middle」。主要賞でもそうなんですが、「Shallow」がいなかったらその楽曲のキャッチーさとマレン嬢の歌唱力の力強さで、軽々グラミーを持っていく力のある作品だと思うのですが、今回は相手が悪い。というので対抗○。穴×はなぜかこのポップ部門に登場したトニー・ベネット御大。後述するトラディショナル部門ではぶっちぎりの本命の彼とダイアナ・クラールのこの曲、ちょっと不気味なので穴をつけときます。




3.最優秀コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム部門

× The Emancipation Procrastination - Christian Scott aTunde Adjuah
◎ Steve Gadd Band - Steve Gadd Band
  Modern Love - Julian Lage
○ Laid Black - Marcus Miller
  Protocol 4 - Simon Phillips

Christian Scott Emancipation ProcrastinationSteve Gadd BandJulian Lage Modern LoveMarcus Miller Laid BlackSimon Phillips Protocol 4

すいません、正直言って最初のクリスチャン・スコット、知りません(汗)。ニューオーリンズ出身の若手ジャズ・トランペッターらしく、バイオを読むとなかなかバークリー出身の新進気鋭のジャズ・ミュージシャンという、何年か前にいきなり出てきて新人賞を取ったエスペランザ・スポールディングスとよく似た感じなので、何となく穴×を付けてみました。音をちょっと聴いてみると意外とオーセンティックなスタイルのプレイヤーのようです。

で、本命◎ですが、これはよく知ってるというだけでスティーヴ・ガッド・バンド(笑)ジミー・ジョンソンマイケル・ランドーといったどちらかというとロック系のギタリスト達をフィーチャーした、やや硬派なフュージョン、といった感じのアルバム。そして対抗○は、これもよく知ってるということと、年末年始を日本で過ごす模様のマーカス・ミラー(笑)ブルーノート移籍第1弾となるこのアルバムは、ルーサーの相棒だったあのマーカスではなく、ジャズ・ミュージシャン・マーカスといった感じでよりファンキーなグルーヴを聴かせる新境地のアルバムのようです。



4.最優秀ポップ・ボーカル・アルバム部門

× Camila - Camila Cabello
  Meaning Of Life - Kelly Clarkson
○ Sweetener - Ariana Grande
  Shawn Mendes - Shawn Mendes
  Beautiful Trauma - Pink
◎ Reputation - Taylor Swift

Camila Cabello CamilaKelly Clarkson Meaning of LifeAriana Grande SweetenerShawn Mendes AlbumPink Beautiful TraumaTaylor Swift Reputation

そしてこのポップ・ボーカル・アルバム部門。今回テイラーはこの部門だけのノミネートという異例な状態なので、まあ順当ならテイラーが本命◎ということになります。対抗○としては、こちらも今回グラミー主要部門から漏れてしまっているアリアナの大ヒットアルバムに。そして穴×はこちらも新人賞部門もれのカミラ・カベロ、と何だかこの部門、主要部門に漏れた残念賞部門みたいになってしまいました(笑)。その主要部門のSOYにノミネートの黒一点、ショーン・メンデスくんもいるのですが、この顔ぶれの中ではいかにも陰が薄い...



5.最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム部門

◎ Love Is Here To Stay - Tony Bennett & Diana Krall
○ My Way - Willie Nelson
× Nat "King" Cole & Me - Gregory Porter
  Standards (Deluxe) - Seal
  The Music...The Mem'ries...The Magic! - Barbra Streisand

Tony Bennett Diana KrallWillie Nelson My WayGregory Porter Nat King Cole and MeSeal StandardsBarbra Streisand The Music

何と言ってもこの部門では過去16回のノミネートで14勝2敗と圧倒的な強さを誇っているトニー・ベネット御大。その2敗を食らったマイケル・ブブレは今回ノミネートされていないとなると、もうこれ、自動的に本命◎。ましてやダイアナ・クラールとの取り合わせですから取りあえず無敵ですね。対抗○は迷うところですが、昨年第59回でディランや今回ノミネートのバーブラを押さえて見事受賞のウィリー・ネルソン御大のシナトラ・トリビュート・アルバムに。そして同じトリビュート・アルバムということで、若き重鎮ジャズ・シンガー、グレゴリー・ポーターによるナット・キング・コールのトリビュート作に穴×を付けておきましょう。


さていよいよ明日は元旦。皆さんもいいお正月をお迎え下さい。この続きは新年に。

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【年末恒例企画#2】My Best Album of 2018(Part 3 完結編、3 - 1 位)

3位:『Lost & Found』Jorja Smith (FAMM)

Jorja_Smith_-_Lost__Found.png 

さていよいよトップ3、3位は今年サマソニにも来日したジョージャ・スミス

このアルバムもやはりこの【新旧お宝アルバム!】のブログで今年の8月にレビューしてます。各曲ごとの詳しい解説はそちらのブログをご覧下さい。

(新旧お宝アルバム!レビューのリンク)http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-424.html

UK出身のジョージャドレイクの『More Life』(2017)へのフィーチャーがメインストリームへのブレイクのきっかけとなってそこから1年も立たずにリリースしたこのデビューアルバムの『Lost & Found』、新旧お宝アルバム!のブログでも書いたけど、ジャジーなR&Bスタイルの楽曲を浮遊感満点のサウンドをバックに、ちょっと舌っ足らずなUKアクセントがチャーミングなジョージャのコントラルト・ヴォイスのボーカルが最大の魅力。彼女のドリーミーでイメージ想起力の高い表現力を持った歌が既にジョージャにしか作り出せない世界観を持って聴き手に迫ってくるあたり、彼女のアーティストとしての才能を感じます

オープニングの「Lost & Found」ではわくわくするようなメロディ展開で「どうして私達は落ちていくの?」と歌うジョージャに一気にハートを捕まれるし、続く「Teenage Fantasy」では一転メランコリーな曲調でティーネイジャーの女の子の恋に対する切なさをせつせつと歌いながら、エンディングではちょっとふざけて呟くようにくすくすと笑って終わるなんていうキュートなところも見せてくれるし


また一方では「On Your Own」とかパトカーの青いライトに追われる男の子に対し「あなたは何をしたの?」と問い詰める「Blue Light」とかではその舌っ足らずな調子で結構達者なラップを聴かせてくれ、その押さえた感じが同じ年頃のUSのR&Bヒップホップ・女性アーティスト達と比べて一味違うのもまたいい。トム・ミッシュがペンを取ってプロデュースした「Lifeboat (Freestyle)」では、文字通り彼女がフリースタイルを試みるのだけど、USヒップホップでいうフリースタイル、という言葉に感じる攻撃性みたいなものは微塵もなく、自分が常日頃考えていることをトラックに乗せてフロウの形でしゃべってる(そしてここでも「落ちていく」という言葉と「浮かんでいる」という言葉が象徴的に使われてるのが印象的)、ってな風情がどうしようもなく愛おしく聞こえてしまうのは自分がオヤジになってしまったからか(笑)

前回の【新旧お宝アルバム!】でのブログで彼女のこのアルバムを取り上げて以降、いろんな方が彼女のアルバムを「いいんだけどイマイチ」的な論評をされているのを目にして自分的にはすごく違和感があった。それくらいこのジョージャのアルバムは自分にとってとっても聴き心地がよく、歌い手のエモーションとか気持ちとかが曲を通じて如実に感じられる、そんな凄くシンパシーを感じられる作品だったから。正直夏場は彼女のボーカルに清涼感を求めて、というのもあったが、このアルバムが僕のターンテーブルに乗る頻度は極めて高かった

幸いにして事前の僕の予想通り、ジョージャはめでたくグラミー賞の新人賞部門にノミネートを果たした。残念ながら同じ部門のノミニーにはメインの最優秀アルバム部門にもノミネートされてるH.E.R.や、ロックのジャンル部門にもノミネートされてるグレタ・ヴァン・フリートなど強力なメンバーが揃っているので、この部門だけのノミネートのジョージャには厳しいところだけど、ジョージャのチャーミングなキャラとこのアルバムで見せてくれた独特の世界観はきっと次の彼女のステップで大きく成長を見せてくれると信じています。とにかくこのアルバムはホントに自分に取っては2018年、大事なアルバムの一つでした。サマソニに行かなかったことがホントに悔やまれたくらい。


2位:『Golden Hour』Kacey Musgraves (MCA Nashville)

Kacey Musgraves Golden Hour 

そして自分の年間2位アルバムは、今やナッシュヴィル・シーンではカントリーという枠内だけではなく、ナッシュヴィルを本拠地とするアメリカン・メインストリーム・ポップ・アーティストとして唯一無二のステイタスを築き上げた感のあるケイシー・マスグレイヴスの『Golden Hour』

この【新旧お宝アルバム!】でも彼女の前作『Pageant Material』(2015)をご紹介して、そのキャッチーでありながらフォーキッシュなカントリー・ポップな楽曲と、カントリー界のこれまでの常識を覆す、同性愛の率直な肯定やマリファナ嗜好を淡々と語るといったエッジの立った歌詞のアンバランスさに大きな魅力があることをお伝えしましたが、今回の『Golden Hour』では、その楽曲レベルが平均的にグンと上がり、彼女が共作に全てかかわった収録13曲一切捨て曲なし、どれもかなりクオリティの高いポップ・チューンに仕上がっているのがちょっとした驚きでした。いずれの楽曲もキャッチーなメロディをカントリー・ポップのスタイルで組み立てながら、バックのサウンドは全体が靄に包まれたようなとても趣味のいいシンセの使い方と、しっかりとしたビートを刻むリズムが、ちょっと聴いていると今時のシンセポップ寄りのサウンドに聞こえるのですが、そこここにごく控えめにバンジョーの音色があしらわれたりしていることで、辛うじてこのアルバムがカントリーというジャンルに軸足の一部を残していることが判るという感じ。そして一番特筆すべきは、どの曲もケイシーの心地よいコントラルトのボーカルと魅力的なメロディーとリズムで聴く者の気持ちをゆったりと和らげてくれる、そんなアルバムに仕上がっているのです。自分はこのアルバムを聴いて、ルーマーの一連のアルバムを思い出しました。今回のケイシーのアルバムには、あのシンガーの一連のアルバムを想起させるような暖かい音像がふんだんに盛り込まれているのです

一方楽曲の歌詞の内容は、昨年末の結婚というプライベートな環境の変化を反映してか、これまでのようにエッジの強い内容の歌詞はそれほど見られません。むしろ新しい愛を発見した喜びを吐露する「Golden Hour」や「Butterflies」(この曲は夫のラストン・ケリーとナッシュヴィルのブルー・バード・カフェで出会って付き合い始めた頃のことを歌ってるとケイシーが認めてます)、週末に愛する人がそばにいないことの寂しさをポップなメロディに乗せて歌う「Lonely Weekend」、何故か今回のアルバムに頻出するヒーロー達に愛する人を見立てて様々な感情を歌う「Space Cowboy」「Velvet Elvis」「High Horse」(歌詞の最初のところで「あなたは自分のことをジョン・ウェインだと思ってるでしょ/颯爽と登場して悪者を残らず仕留めるそんなヒーロー」と歌ってます)などなど、ケイシーラストンと付き合っていた2017年に書かれた今回のアルバムの殆どの曲は、基本的に自分と自分が大事に思う人との様々な距離感を歌にした楽曲で満ちあふれています


今回アルバムのプロデュースは、彼女をブレイクした2枚のアルバム『Same Trailer, Different Park』(2013)と『Pageant Material』でケイシーと共にプロデューサーチームを組んでいた、ナッシュヴィルのポップ・カントリー界での多くの実績を持つルーク・レアードシェイン・マクナリーというベテラン・チームではなく、ナッシュヴィルでポップ・ロック・バンドで活動していたダニエル・タシアンイアン・フィチャックという新しいチームによるもので、このチームの変更が全体のサウンドをよりポップ・ロック路線に寄り添わせている最大の要因なのでしょう。収録された曲も13曲中この2人と共作しているのが7曲と最多を占めています。もちろんルークシェインとの共作も「Butterflies」「Space Cowboy」「Rainbow」とありますが、今後はこのケイシー/ダニエル/イアンというチームでしばらく新しいケイシーの世界を聴かせ続けてくれるのだろうと思われます

今年の夏のフジロックに来た時は他のステージとかぶって見逃してしまいましたが、観に行った友人達が口を揃えて素晴らしいステージだったと言ってて悔しい思いをしたのを思い出しました。この楽曲、そして彼女自身のプライベートの充実を思えば当然でしたね。惜しいことをしました

そしてこのアルバムはシーンでも評価が高く、今年11月に開催されたカントリー界のグラミー賞、第52回CMAではクリス・ステイプルトンキース・アーバンらを押さえて堂々年間最優秀アルバムを受賞してますし、Apple Musicが選ぶ2018年のベスト・アルバムにも選ばれました。そして今回の第61回グラミー賞でも、カントリー部門ではなく、主要部門の最優秀アルバム部門にノミネートされていますドレイクブランディ・カーライル、ジャネル・モネイといった強力なメンツを見事押さえて初の主要部門受賞なるか?個人的にはかなり期待しています

同じカントリーからポップに踏み出したテイラー・スウィフトが、最近感情の大きな起伏とエッジの立ったリリックでどちらかというと挑戦的な楽曲を発表しているのに比べると、このアルバム、正しくケイシーが今人生の「ゴールデン・アワー」にいるな、というのが肌で伝わってくる、聴いてるだけで幸せに近づけるような気がする、そんなアルバムです。とにかくどの曲を取っても、思わず聴き入ってしまうような魅力ある曲ばかりで、メロディのフックが素晴らしく思わずハッとしてしまう「Happy & Sad」など、完全に70年代ポップを思わせる、世代を超えてアピールできる曲ですので、是非Apple MusicSpotifyなどで聴いて見て下さい。あなたのパワープレイリストの仲間入りすることは間違いなし。お勧めです!


ここまでゾッコンに惚れ込んだケイシーのアルバムを上回るMy Best 10 Album of 2018のナンバーワンアルバムとは?それはこれです(^^)


1位:『Geography』Tom Misch (Beyond The Groove)


Tom Misch Geography 

トム・ミッシュ。ロンドン出身、白人、23歳。ロンドンのR&Bシーンでギタリスト、セッション・ボーカリスト、プロデューサーとして2014年頃から本格的に活動、自らも2本のミックステープや3枚のEPを昨年までにリリースする傍ら、様々なインディー系のUKR&Bアーティストのシングルに客演したり、リアン・ラ・ハヴァス、マイケル・キワヌカといった(自分の大好物のw)今のUKR&Bシーンを代表するアーティスト達のシングルをリミックスしたりと、マルチな活動を展開、徐々にそのシーンでの存在感を確立。

今年に入って、このMy Best Album of 2018の4位にランキングしたジョージャ・スミスの『Lost & Found』収録の「Lifeboat (Freestyle)」の作・プロデュースを行い、プロデューサーとしてもステップアップするのとほぼ同時期に自らの初フル・アルバム『Geography』をリリース、全英アルバムチャート8位に送りこむブレイクを果たす

と、レコードのライナーノーツ風に書いて来ましたが、このトム・ミッシュのアルバム、おそらく70年代後半から80年代にかけての英米のR&B・ソウルが好きで、かつブルー・アイド・ソウルのアーティストに目がない方であれば、はっきり言って無茶苦茶気に入ると思います!

アルバム全体があの時期のソウル・ミュージック、ダンス・ミュージックへのオマージュに溢れていてその手がお好きな方は聴きながら頬っぺたが緩むのを抑えられないでしょう。かくいう自分もそうなんです(笑)。そしてそれでいて今のR&B作品らしく、要所要所に上手にヒップホップの味付けもしていて、それがまたスマート。



シックを想起せざるを得ないタイトでファンキーなカッティング・ギターとスリリングなシンセ・トーンでまんまあの頃のダンス・チューンを再現している「South Of The River」や、聴いた瞬間に体が動かずにはいられないその名も「Disco Yes」、デヴィッド・T・ウォーカーっぽい音色のギターリフとビートの利いた、ゴールドリンクのラップをフィーチャーした「Lost In Paris」、昔のモノクロ映画の一場面を再現したかのようなスキットから、今度はスロウでデヴィッド・T・ウォーカーばりのエロいギターリックをバックにトムが洒脱なソウルネスを湛えて歌う「Movie」、何とあのデ・ラ・ソウルをフィーチャーした、シャッフル・リズムでメランコリー・ファンクとでも言うべき魅力満点の「It Runs Through Me」などなど、特にレコードA面からB面途中までは一気に聴かせてしまう、何とも強力なアルバムなのです

実は自分がトムのことを知ったのは結構遅く、何となく名前は聞いてたけど、と言う程度の認知度だったのが、彼が作・プロデュースのジョージャ・スミスの「Lifeboat (Freestyle)」を聴いて、そのオールド・スクールのヒップホップをリスペクトしながら今どきのR&B感覚の利いたサウンドに興味を持ってちょっと聴いてみたら、あっという間にハマったというわけ

そしてケイシー・マスグレイヴスフジロックでミスし、サマソニに来ていたジョージャ・スミスとこのトムをミスするという、今年の年間ランキングに入れてるアーティスト、軒並みライヴを見逃してるというのも、このアルバムへの執着度を高めたもう一つの理由だったかも(笑)。とにかく夏の終わり頃から秋にかけて、このレコードを聴かない週は多分なかったといっても過言ではないほどで、この時点での年間アルバム1位は当確でした。

とにかく自分がウダウダ言うよりも、Apple MusicSpotifyでこのアルバム、聴いてみてください。あなたがソウル・ミュージック、R&B系ダンス・ミュージック、そしてブルー・アイド・ソウルのファンなら、絶対気に入って頂ける自信があります。

このアルバム、メインのアルバムチャートにはランクインしなかったものの、ビルボード誌コンテンポラリー・ジャズ・アルバム・チャートで2位に入るという成績だったので、自分は密かにこのグラミー賞新人賞部門アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門にノミネートされるのでは、と期待していたのですが、残念ながらそれはなし。でも、次トムが来日したら絶対観に行こう!と心に決めてます。そしてこの後トムが、自分の作品も含めてどんな仕事をしてくれるか、今から楽しみです。



さあ、My Best 10 Album of 2018、いかがだったでしょうか。もしまだお聴きになってないアルバムがあったら、是非一度ストリーミング等で視聴されてみて下さい。あなたの年末年始を彩る新たなアルバムになるかもしれません。さてここで11位以下20位までもリストしておきます。

11. Out Of The Blues - Boz Scaggs
12. Dirty Computer - Janelle Monáe
13. Piano & Microphone 1983 - Prince
14. Hive Mind - The Internet
15. Zapp VII: Roger & Friends - Zapp
16. Isolation - Kali Uchis
17. Collagically Speaking - R+R=Now (Robert Glasper & Others)
18. The Future And The Past - Natalie Prass
19. See You Around - I'm With Her
20. Scorpion - Drake


ということでこの【年末恒例企画#2】も完結。次はいよいよメインイヴェントの【年末恒例企画#3】第61回グラミー賞大予想!を来週くらいから順繰りにブログアップしていきますのでお楽しみに。

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