FC2ブログ
Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【年末恒例企画 #2】My Best Albums of 2019 (完結編, 3-1位)

さて年末恒例企画の第2弾、僕の2019年ベストアルバム、いよいよトップ3での7枚は女性ボーカル4枚、男性ボーカル3枚とやや女性優勢で来てますが、男女の決着やいかに。

その前に11位以下20位までのランキングも一応紹介しておきましょう。

11. Two Hands - Big Thief
12. On The Line - Jenny Lewis
新旧お宝アルバム!でのレビューのリンクはここhttp://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-467.html
13. Pony - Rex Orange County
14. I Am Easy To Find - The National
15. i, i - Bon Iver
16. Hollywoods Bleeding - Post Malone
17. Green Balloon - Tank And The Bangas
18. Free Spirit - Khalid
19. No. 6 Collaborations Project - Ed Sheeran
20. Igor - Tyler, The Creator

何ともとっちらかった感じのランキングになってしまいましたが(笑)この10枚も含めて、上位20枚はホントに今年を通じてよく聴いたし(レックス・オレンジ・カウンティなんて買ったの11月なのにそれ以来パワロテ状態ですw)、また今年から立川で毎週水曜日のDJ初めてぐっと回数の増えたDJ活動でもあちこちでかけまくったレコード達ばかり。

あともう一つ、11位のビッグ・シーフ18位のボン・イヴェールは、やはりネットで洋楽情報とコメンタリーをサンパウロから発信してる澤田太陽くんのブログを読まなければ多分年間ランキングには登場してなかった(多分ビッグ・シーフなんてアンテナにもかかんなかったかも)盤です。いずれも今の音楽シーンで、真面目に音作り、作品作りに向き合って自分の思うことを素直に表現しているミュージシャン、そういう彼らの盤に耳を向けさせてくれた澤田くんにはただただ感謝です。

さ、というわけでMy Best Albums of 2019、最後のカウントダウン、まず第3位から。


3. Ventura - Anderson .Paak Aftermath Entertainment)

Ventura.jpg

はい、2016年の傑作アルバム(2010年代の僕のランキングには絶対入りますね)『Malibu』に巡り会って以来というもの、本デケイドのアーティストでは多分トップ3に入るくらい気に入ってしまったアンダーソン・パークの最新作『Ventura』です。4位のヴァンパイア・ウィークエンド同様、昨年のフジロックで初めてライヴを体験して(断続的な雨の中だったけど)、レコードだけでは分からない、ドラマーらしいビートをとことん強調したパワフルなステージに大いに興奮させられたのがつい昨日のよう。

彼のクリエイティブ・パワーもここ数年全開のようで、『Malibu』の後一年も開けずにやはりケンドリック・ラマー人脈のプロデューサー、ナレッジ(本名グレン・アール・ブース)とのユニット、NxWorries(ノー・ウォリーズ)名義でこれまたタイトなアルバム『Yes Lawd!』をリリース。そして自己名義でも昨年の『Oxnard』(2018)に続いてこの『Ventura』と、ほぼ毎年1枚のペースでアルバムを発表してます

今時のシンセ打込みを基調とした浮遊感満点の音像によるヒップホップ、ファンク、R&B、ディスコが一体となったアンダーソン・パーク流の「グルーヴ・ミュージック」のクオリティは、そうした立て続けのリリースにもかかわらず一定以上をキープしていて、昨年の『Oxnard』もこの年間アルバムランキングのタイミングまでに聴きこんでいれば結構上位に入れたんじゃないか、と思うほど。ケンドリック・ラマーとコラボしたファンク・ヒップホップ・ダンスナンバーの「Tints」なんて最高で、何度もDJでプレイしました。

今回の『Ventura』は今最前線の音響派的なサウンドによるヒップホップ・ファンク・ソウル路線だった前2作とちょっとアプローチが違ってて、昔ながらのR&Bに思いっきりリスペクトと愛情を表現した作品になっているところが「おっ」と思わせるところ

アルバムの中でラップが登場するのは、冒頭のドリーミーな「Come Home」の後半で例のアブない感じのアンドレ3000のラップが挿入されるくらいで、あとは基本全編男と女の関係を歌ったテーマとしては普遍的な楽曲を、レイラ・ハサウェイ、ジャズミン・サリヴァン、ブランディといった実力派のR&B女性シンガー達と絡みながら歌うという、アンダーソン・パークとしては多分これまでで一番伝統的なアプローチによる素敵なR&Bアルバムに仕上がってるのがまた彼の新しい面を見せてくれてていいところ。

特に個人的に大いに胸が熱くなったのは、御大スモーキー・ロビンソンとのコラボで共作もして、アンダーソン・パークのスモーキーへのリスペクトがビンビンに伝わってくる「Make It Better。最初彼はもう少し今風の情欲を前面に出した歌詞を考えてたらしいけど、スモーキーから「そらあかんで。歌詞はもっとロマンティックにいかな」と指導されて、この微笑ましくも心暖たまるRBラブソングが出来上がったらしい。いいなあ、こういう話。

今のヒップホップR&Bシーンの先端を突っ走るアンダーソン・パークもいいけど、時々こうして、立ち止まってみて、過去からのR&Bやヒップホップのレガシーにリスペクトを払ったこんな作品を作ってくれると、多分彼はずっと僕のフェイバリット・アーティストの一人であり続けるだろうな。そしてこのアルバム、今回のグラミー賞最優秀R&Bアルバム部門にもノミネート、エラ・メイちゃんと激突してるけど、2年前『Malibu』で取れなかったグラミーをここで彼が取ってくれるといいな。


2Turn Off The News (Build The Garden) - Lukas Nelson & Promise Of The Real (Fantasy)

Turn off the news

僕の年間アルバム2位は、あのウィリーの息子のルーカス・ネルソン率いるプロミス・オブ・ザ・リアルコンコード・レーベルからの2枚目『Turn Off The News (Build A Garden)』です。

ウィリーの息子がバンドやってて、親父とツアーとか一緒に回ってるというのは何となく知ってたけど、彼のレコードを聴いたことはこれまでありませんでした。その彼の名前がひょっと目に入ったのは、9月に買ったシェリル・クロウの新旧の有名アーティスト達と全曲共演している新作『Threads』収録の「Cross Creek Road」にニール・ヤングと共にクレジットされてたから。「やっぱオヤジと声そっくりだなあ」と当たり前のことを思いながらいろいろ調べてみると、ルーカスがあのレディ・ガガブラッドリー・クーパーの映画『アリー/スター誕生』でブラッドリーがミュージシャンらしい演技ができるようなコンサルティングをしながらサントラ収録曲の半数をガガと共作してる、ということを知りました。

折から彼のこの新譜がリリースされて、YouTubeで聴いてみたところ、まずはタイトル曲のストレートなアメリカーナ・ロック・サウンドにリフレッシュされるような魅力を感じただけでなく、歌詞を読むと、これがストレートな今のアメリカの混迷状況(そしてトランプ政権の引き起こしている数々の状況)に対して「そんな下らないニュースに一喜一憂するのはやめて、子供達のために、未来のために、僕たちのための庭を造ろう」というメッセージ。

新旧お宝アルバム!」のブログにも書きましたが、本来あるべき優しい心の人間に立ち戻って、くだらない中傷やネガティヴな争いには背を向けて、ほんとに僕らの未来に取って必要なことをやれば幸せになれる、というメッセージはシンプルだけどストレート、心にグッと迫るものがあります。

新旧お宝アルバム!のレビューのリンクはここ
http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-480.html

そうしたメッセージのポジティヴさと共感できる内容もさることながら、このアルバム、楽曲も演奏もさすがに長年ニール・ヤングのツアー・バンドとして実績を積んだメンバーということもあって、けれん味のないストレートで地に足の着いた素晴らしいアメリカーナ・ロック・アルバムに仕上がっていて、今年このジャンルの作品でアンテナにひっかかるものが少ない中で、自分の年間アルバムベスト20の中では唯一このアルバムだけがアメリカーナ系の作品になりました。

そのアルバムの出来とメッセージ性から、ひょっとしてグラミー賞のアメリカーナ部門、あるいは主要部門にノミネートされるのでは?と期待していたのですが、恐らくボスの作品がノミネーションを逃したのとあまり違わない理由でこの作品は残念ながらノミネートはされず。

各音楽メディアでも特に年間アルバムランキング等には入っていませんが、個人的には今年9月以降では多分最も回数聴いたであろうこのアルバム、ヴァイナル盤には7インチシングルが付いていて、そこではタイトル曲がニール・ヤングのオルガンをバックにアコースティックで演奏されていて、そのメッセージ性が一層ぐっとくる仕掛けになっています。一人でも多くの人に聴いて欲しい、そんなアルバムです。


さて、いよいよ僕の年間アルバム1位は、多分今年最初に買ったアルバムの一枚だったと思う、この作品です。


1. Heard It In A Past Life - Maggie Rogers (Debay Sounds / Capitol)

Heard It In A Past Life

僕の選ぶ、2019年ナンバーワンアルバムは、今年メジャー・デビューを果たした、独得のメロディ感覚とエレクトロな音響センスを見事な楽曲にして届けてくれる女性シンガーソングライターマギー・ロジャースのデビュー作『Heard It In A Past Life』です。

これもアルバムを購入して早々、自分の新旧お宝アルバム!」のブログで熱く語って、「個人的にはこの作品でマギーの来年のグラミー賞新人賞部門(ひょっとするとアルバム部門)のノミネートはかなり堅いものではないかと思うくらいです。」とコメントしたところ、さすがにアルバム部門にはノミネートされなかったものの、見事グラミー賞新人賞部門にノミネート。今年はビリーリゾが受賞、というのはわかっていてもこうやって自分が目を付けたアーティストが評価される、というのは気分のいいものです。

新旧お宝アルバム!のレビューのリンクはここ
http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-460.html

そのブログにも詳しく書いたので、詳細の解説はそちらをお読み頂きたいのですが、彼女のブレイク・ヒットとなり、今年1月にビルボード誌のトリプルAチャート(今はアダルト・オルタナティヴ・ポップ・チャートというらしいですが)で見事1位を獲得した「Light On」に象徴されるように、エレクトロなサウンドながら有機感の高い楽曲と、スペース感と浮遊感、スケールの大きさを感じさせるメロディを、コントラルトからジュディ・コリンズ似のメゾソプラノまでを行き来する音域のボーカルで聴かせるというのが彼女の作品の魅力です。

その時も書きましたが、サンプラーや打込みをほとんど使いながら、楽曲的にアコースティックな味わいを失わない、というのはエド・シーランハイム、さらにはヴァンパイア・ウィークエンドといった今の若い世代のクオリティ高い作品を提供するアーティスト達に共通する点。彼女の場合はそれをメインストリーム・ポップのセンスで、特徴のあるフックのメロディが書ける点が素晴らしいところです。

彼女のブレイクのきっかけとなった「Alaska」を聴いたファレル・ウィリアムスが絶賛したという彼女の魅力は、何と言っても彼女の楽曲を聴いて頂くのが一番ですので、まずはYouTubeで「Alaska」と「Light On」の2曲を聴いてみて下さい。

僕のリストでは15位止まりだったボン・イヴェールの作品は各音楽メディアで大絶賛で、今回もグラミーの主要部門にノミネートされたりしてますが、多分マギーがやっていることは、ジャスティン・ヴァーノンが、彼にしかできない作品の表現方法として、エレクトロサウンドと生楽器のコンビネーションとアブストラクトなアプローチで楽曲を構成していることを、ポップなアプローチでエレクトロなサウンドとフックの魅力的なメロディでやっているのであって、アプローチこそ異なりますが、恐らく同じレベルでの創造性とミュージシャンシップを発揮しているのではないか、と思っています。

先のファレルが「Alaska」に対してコメントしている動画もYouTubeで見れますので是非一度それも見て欲しいのですが、曲を聴いた後彼はただ「ワオ」と呟いた後「君は独自のものを持っていて、それをどうすれば表現できるか分かっている。君の作品のようなものは初めて聴いた」とコメントしており、マギーのそうした特性を捉まえた最大級の賛辞です。

そろそろこのアルバムリリースから一年。次のマギーの作品がどうなるのか、楽しみでしかたがありませんね


ということで【年末恒例企画】の第2弾もめでたく終了。次の第3弾はいよいよグラミー賞各部門受賞予想です!お楽しみに。

スポンサーサイト



テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

【年末恒例企画 #2】My Best Albums of 2019 (Part 2, 7-4位)

7. Love And Liberation - Jazzmeia HornConcord Jazz)

Love And Liberation

去年のライのアルバム同様、まずこのアルバムも完全にジャケ買い。ブラック・ミュージックが少しでも好きな人で、このハッとするような美しいジャケに目を引かれない人はまずいないんじゃないか。熱帯植生とおぼしき緑豊かなガーデンの中にたたずむ、赤いトールターバンを巻いた、明らかにアフリカ民族的なテーマの鮮やかなスーツとアクセサリーで身を包んだ涼しげな顔をして花を愛でるしゅっとしたたたずまいのエリカ・バドゥを思わせるアフリカン・アメリカン女性。個人的にジャケ買いは6割方内容を伴う、と信じてるので、このジャケを見た瞬間に音が聴きたくなってアップル・ミュージックさんのお世話になったところ、これがまた素晴らしいジャズボーカルのレコード。しかもジャズメイアはまだこのアルバムが2枚目のほぼ新人ながら、既にダウンビート誌の賞や、サラ・ヴォーン・インターナショナル・ジャズ・ボーカルコンテストでも2013年に優勝しているというから、スタイルと実力の両方を持ってる期待のアーティストらしい。

このアルバムも既に新旧お宝アルバム!」のブログで詳しく紹介しているので、詳細はそちらをご覧頂きたいのですが、彼女のボーカルスタイルは、いわゆる最近よくある(特に白人女性ジャズボーカリスト)耳障りのいいスタンダード・ナンバーや、ロックやポップスのカバー曲を小綺麗に歌ってるような、毒にも薬にもならない類のものではなく(あ、そういうアルバムにもいいものはあると思いますが、自分に取ってはそうだということでお許しを)、ジャケのファッションにも窺えるように、アフリカ出自であり、ブラックであることの誇りを品格を以て表現しながら、スタンダード然とした楽曲も自作でやるし、時には延々とスキャットを繰り出して楽曲を支配してしまう、そんな凜々しさとしなやかさを感じる、ジャズボーカル・スタイルなのです

新旧お宝アルバム!のリンクはこちら

http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-481.html

で、実は彼女、先週の木金と、丸の内のコットンクラブで初来日ライブやってたんですよ!しまったー!上記のリンクのブログを書いた時に来日の情報を知って「絶対行かなきゃ!」と言ってたのにもかかわらず、プライベートで何かと気になることが多いここ数ヶ月の中でまんまと抜けてしまってたのでした。うー残念。先週実際に観に行かれた佐藤英輔さんのブログによると、それはもうワイルドなジャズメイアのボーカルバトルが楽しめたんだそう。演奏はピアノトリオの単純な楽器構成で管もなし、あとはただひたすらジャズメイアが9割方はスキャットの猛攻撃だったとか。(佐藤さんのブログhttps://43142.diarynote.jp/201912070741544808/)うーん、一生の不覚。かくなる上は次の来日をとにかく待つしかないかなあ….

実は彼女、今回のグラミー賞の主要4部門の新人部門にもノミネートされるかも、とひそかに思ってたんですが、それはなかった代わりに、最優秀ジャズ・ボーカル・アルバム部門にしっかりこのアルバムがノミネートされてました。ただ同じ部門にエスペランザ・スポールディングの『12 Little Spells』(こちらもかなりいい出来です)もノミネートされてて、この激突はかなり厳しいのでジャズメイアの取れる確率は正直高くない気もするけど、この2枚だったら圧倒的に自分はジャズメイアのアルバムの方を推したいので見事受賞してくれるといいなあ、と思いながら繰り返しこのアルバムを聴くのでありました。


6. Norman F***king Rockwell! - Lana Del Rey Polydor

Norman Fucking Rockwell

ラナはメジャーデビュー盤の『Born To Die』(2012)から今回初めてこのアルバムでグラミー賞主要部門(アルバム、ソング・オブ・ジ・イヤー)にノミネートされるまで、アルバムごとに確実にカリスマ性とシーンでの存在感を増して来ているのは間違いのないところ。前作の『Lust For Life』(2017)を新旧お宝アルバム!」のブログでカバーした時にも書いたけど、ラナのモデル顔負けの美貌とアメリカン・クラシック・ビューティーなイメージと、ゴシックでドリーミーな音像を持った楽曲をバックに、同じく夢の中から語りかけるようなハスキーなボーカルで、swear wordsも交えたビッチでギャングスタで破滅性も感じさせる内容の歌を歌うというこのギャップが彼女独得で最大の吸引力で、この度合いがいろんな意味でアルバムごとにレベルアップしているのがラナの凄さ

(前作『Lust For Life』の「新旧お宝アルバム!」のリンクはここです

http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-389.html

前作では今のポップ・ミュージックの最先端トレンドともいうべきヒップホップ・トラップ系のアーティスト達の音像をまとい、共演しながらもあくまでもラナの世界のコントロールを渡さないあたりに、改めて彼女の凄さを感じて、もう完全にセント・ヴィンセントとかこの分野の先達を超えたなあ、と思い「次はラナはどこに行くんだろう?」と思ったもの。

そうして届けられた今回の『Norman F***king Rockwell』、まずタイトルが最高(笑)、アメリカの伝統的な有名イラストレイターの名前に4文字言葉をあしらうという、ラナのスタイルを端的にこれだけ強烈に表現したタイトルもないよね。で、内容も相当イッちゃってるんだろうな、と思って聴くとこれが全く違う意味で驚かされる内容

前回がトラップヒップホップだったんで、今回はノイズかアヴァンギャルドか?と思って聴くと、これが拍子抜けするくらいの王道ポップスタイルの楽曲が並ぶ内容。ただいわゆるヒットソング的なポップではなく、これがあくまでラナのゴシックでドリーミーなイメージをきっちり体現した、ゆったりとしたメロディと楽曲構成に、シンセやピアノやギターがごくごく控えめに配されて、ラナの歌声があの夢の中から聞こえてくるような感じを最大限に引き出すような音作りになってるのです。そして、前作であれだけヒップホップ・トラップのビートを強調していたのに、今回のアルバムは全体を通じてビートがゆるいしだるそうだし(笑)

結果としてこのアルバム、オープニングのタイトルナンバーから、9分にも及ぶ「Venice Bitch」、いかにもラナな(笑)「F**k It I Love You」、そしてシングルカットされた90年代ミクスチャーロックの名曲、サブライムの「Doin’ Time」のだるそうなカバーまで、聴き進めるほどにクセになり、繰り返し聴いてしまうという、一種の中毒性を発揮してます。シーンでの評価も今回大変高いようで、Allmusicローリングストーン誌が星4.5、ピッチフォークが9.4点、NMEが星5と最大級の評価で、今年の年間アルバムランキングでもピッチフォークなど9誌で年間1位、ローリングストーン誌で3位、TIME、アンカット、ビルボード、Mojoなどで年間トップ10に入るなど、大絶賛状態です。

今年のグラミーの主要賞はビリー・アイリッシュリゾの対決だと思ってるけど、アルバム部門あたりことによるとラナが取るかも。そうなったら面白いなあ、と密かに楽しみにしてます。


5.Western Stars - Bruce Springsteen(Columbia)

Western Stars

さて、そのグラミー賞の主要部門どころか全ての部門でガン無視されてしまっている(笑)ブルース・スプリングスティーンのアルバムです。今回のアルバム、多くの人がボスの作品に対して持っている楽曲イメージ、つまりギターサウンドを中心にしたバンドによるロック楽曲、というイメージを見事に裏切っている、カントリーやテックスメックス的アレンジや、ストリングスやオーケストラを多くの曲に配して、あたかも映画のサントラ盤のようなイメージを提示しているのは皆さんご承知の通り。このサントラ盤的感触というのは、このアルバムを題材にしたドキュメンタリー映画がアルバムリリース後に劇場公開されたということで、ああなるほどね、と納得がいったものだった。

そしてこの従来と異なるサウンド・アプローチで作られた、ロックというよりはよくできたポップ・アルバム的なこのアルバムは、概ね音楽メディアの評価も高く(NME、ローリング・ストーン、Qで星4ピッチフォーク7.8点)、好意的に迎えられていたし、「The Wayfarer」「Tuscon Train」「There Goes My Miracle」「Hello Sunshine」「Moonlight Motel」といった楽曲群の出来もかなりいいな、と思ったので当然グラミーの最優秀アルバム部門の2003年第45回の『Rising』以来のノミネートは確実だろうし、ひょっとすると初受賞もあるかも、と思ってたのであのガン無視は大変驚いた

これはやはり昨年のチャイルディッシュ・ガンビーノROY/SOY受賞に見られたように、グラミーの選考コミティーの若い層の支持と多様性を大きく重視した観点からは、このアルバムは外れてしまったということなんだろうけど、これだけの作品を評価まったくしない(せめてロック部門くらいでノミネートしろよ!)というのもちょっとやり過ぎのような気が凄くするのは僕だけではあるまい

若い音楽ファン達には「オッサン臭い音楽」に聞こえるのかもしれないけど、一曲一曲が演奏される順番や流れなど、サウンドアプローチを別にしても一幅の絵画や映画を見せてもらっているような、そんな胸が温かくなるような感動を与えてくれるこのアルバム、個人的には『Born To Run』(1975) や『Nebraska』(1982)、そして『The Ghost Of Tom Joad』(1995)といった、ボスが自らの心情やあふれ出る楽曲を素直にさらけ出す様子が感動を呼ぶアルバムに匹敵する作品だと思うのだけど


4. Father Of The Bride - Vampire Weekend (Columbia)

Father Of The Bride

一昨年のフジロックヴァンパイアを見て、次のアルバムへの期待がグッと高まっていたところにドロップされたこのアルバム、オープニングからいきなりガツン!とアフロビートが来るかと思ったらさにあらず、ボーカルのエズラハイム3姉妹ダニエル・ハイムの甘ーいポップ・ラブソングのデュエット「Hold You Now」でスタートするというあまりこれまでヴァンパイアのアルバムでなかったパターンダニエルフジロックでも後半登場してエズラと一緒にシン・リジーの「The Boys Are Back In Town」とかを歌ってたから、ここで登場するのもなるほど、と思ったがこのアルバムではこの他にも中盤でエレクトロな感じの「Married In A Gold Rush」と、終盤でスコットランドあたりの民族管楽器をフィーチャーした「We Belong Together」と、アルバムの要所要所でダニエルとのボーカルが配されていて、アルバム全体にこれまでのヴァンパイヤのレコードと違う雰囲気を一本通すのに重要な役割を果たしてる。何でもエズラコンウェイ・トウィッティロレッタ・リンのレコードを聴いて「ああいうカントリーの男女デュオっぽい感じで」ということでやったらしい。

事ほどさようにこのアルバムでは、これまでのアフロビートやワールドミュージック風のサウンドアプローチだけでなく、ヒップホップ、トロピカル、カントリー、エレクトロなど様々なスタイルの音楽の要素をそれこそごった煮のようにぶち込んでるかなり意欲的な造り。それでもアルバム全体、ヴァンパイアのレコードだ、と思うのはやはりお馴染みのエズラのちょっとにやけた(いい意味ですわw)感じのボーカルがあるから。傑作と言われた前作『Modern Vampire Of The City』(2013)から6年、その間バンド創設メンバーでエズラの相棒、ロスタムの脱退とか、エズラ自身もガールフレンドのラシーダ・ジョーンズあのクインシー・ジョーンズの実娘!)との間に息子を授かったりとか、それもあってNYからロスに居を移したりとかいろいろな変化があったってことも、今回のアルバムで今まで以上に様々な音楽的なトライアルをした要因だと思うし、それらのトライアルは概ねにおいてプラスの方向に働いて、このアルバムをキャリアで最も音楽的に多岐に亘った作品にしてると思う。音楽的多岐性という意味ではビートルズホワイト・アルバムに通じるものがあるけど、あそこまでとっちらかってバラバラという感がなく、ヴァンパイアの作品としての不思議な統一感があるのもやはりエズラのボーカルのなせる業か。そして単純に聴いてて楽しい曲が多い。

ダニエルとのデュエット以外でも、イントロのギターから「ん?これってBrown Eyed Girl」とオールドロックファンならヒクッと反応するはずの「This Life」のアップビートなヴァン・モリソンっぽさや、ボトルネックギターっぽいサウンドがジョージ・ハリソンか?という「Big Blue」なんかはクラシック・ロック・テイストをヴァンパイヤ風に消化してるのがとにかく楽しい。一方ビッグ・ビート風のトラックのバックでフラメンコ風のギターとパーカッションが鳴ってる「Sympathy」なんて多分エズラの新境地だし、このアルバムのもう一人の重要ゲスト、ジ・インターネットスティーヴ・レイシーとコラボってる「Sunflower」「Flower Moon」あたりは二人の才能がマッシュアップされててとっても不思議な感じの楽曲に仕上がってるのも面白い。

そして何と!「2021」では細野晴臣が昔無印良品の店内BGM用に書いたという「Talking」を全面的にサンプリングして(というかバックトラックに使って)ダーティ・プロジェクターみたいな感じの曲に仕上げてて、あ、そうだったエズラダーティ・プロジェクターロングストレス兄弟って仲いいんだったなあ、と思ったり。

いずれにしても、これまでのヴァンパイアを聴いて来たファンにとっては一曲一曲に新しいフレッシュな発見と魅力が感じられると思うし、初めてヴァンパイアを聴くという音楽ファンでも、先進性を備えていながら従来からの音楽の提示する可能性へのリスペクトをバランス良く自分の音楽に消化しているこのアルバムは多分いろんな刺激を与えてくれる、そんなアルバムだと思います。要はこのアルバムを聴かずして、2019年を語るなかれ、ということ。そしてこのアルバムもラナ同様グラミー賞の最優秀アルバム部門にノミネートされてて、ひょっとすると受賞するかも、と密かに思っています。


ということであと3枚。明日にはアップしたいと思っているので、お楽しみに!

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

【年末恒例企画 #2】My Best Album of 2019 (Part 1, 10-8位)

さて【年末恒例企画 #2】は例年どおり「My Best Albums of 2019」ですが、その前に先日ポストした年間チャート予想と、実際のビルボード誌のHot 100年間チャートとの答え合わせをしておきましょう。


<年間チャート予想と結果の答え合わせ>

まだ予想のブログをアップしてる最中に発表されてしまったビルボード誌の「The Year In Charts(年間チャート)」のHot 100部門のトップ10はこうなってました(フルの100曲のランキングはこちらhttps://www.billboard.com/charts/year-end/2019/hot-100-songs

1.  Old Town Road - Lil Nas X Featuring Billy Ray Cyrus191位、予想は2位)
2Sunflower (Spider-Man: Into The Spider-Verse) - Post Malone & Swae Lee11位、予想は1位)
3Without Me - Halsey21位、予想通り
4Bad Guy - Billie Eilish11位、予想は5位)
5Wow. - Post Malone2位、予想は4位)
6Happier - Marshmello & Bastille2位、予想は7位)
77 Rings - Ariana Grande81位、予想は9位)
8Talk - Khalid3位、予想通り
9Sicko Mode - Travis Scott11位、予想は12位)
10Sucker - Jonas Brothers11位、予想は6位)

今年も3年連続でトップ109曲の顔ぶれを当てて、更に去年と全く同じく、1位と2位が入れ子で3位の順位を的中してるのですが、今年は8位の「Talk」も当ててるので、去年よりは若干スコアがよくて10点x25点x755、となりました。その他4位と5位も入れ子になってただけなので、トップ5の顔ぶれは完璧に当ててるということで年々成績に進歩が見られてなかなかよろしい(笑)。来年は2017年以来の上位3曲当て、更には2011年の上位7曲当てに匹敵するような結果が出せるよう、また精進します。

さてでは
年末恒例企画 #2My Best Albums of 2019、まずはその10位からです。


10位Little GhostMoonchild Tru Thoughts

Little Ghost_

前作の『Voyager』(2017)をYouTubeで聴いた直後に渋谷のレコファン店頭で運命の出会いをして即ゲットして以来、ここ数年のマイブームでもある、今風の浮遊感たっぷりの音像を持ったオルタナティブR&Bを聴かせてくれるムーンチャイルドは僕のお気に入りのバンドの一つです。その後前々作(事実上ファースト)の『Please Rewind』(2014)を聴いて、彼らが『Voyager』で大きくその音楽スタイルを発展させているのを改めて確認して、次の作品を楽しみにしていたところ、9月に2年ぶりになるこの『Little Ghost』をリリースしてくれました。昨年来日したこともあって、今回はネット上の音楽メディアも「あのタイラー・ザ・クリエイターロバート・グラスパーも賞賛!」とか「トム・ミッシュ好きは今聴くべき!」と結構あおったコピーを見かけて盛り上がってたので、楽しみながら、ちょっと恐る恐る聴いてみたところ、これが何とまた一段進化して、よりタイトでリズミック、ビートをこれまで以上に意識した素晴らしい出来だったんで、大満足。この後ヘビロテで聴いてたのはもちろんのこと、自分がやるDJでもあちこちでこのレコードをかけてました。

詳しいそれぞれの楽曲の解説やバンドの紹介は例によって新旧お宝アルバム!」のブログに書いてますので、そちらをご覧下さい。彼らの特徴はこれだけネオソウルやジャズを意識した黒っぽいサウンド楽曲を造り出していながら、メンバーが3人とも白人だということと、ボーカルのアンバーの囁くような歌唱が醸し出す浮遊感満点のソウルフルネスにつきます。今回はアンバーが買い込んだ新しいシンセを使ったトラックが全体のビート強化につながってるとのことで、次のアルバムではいったいどんな進化を見せてくれるのか、今から楽しみ。

あ、その前にもう一度来日してくれないかな。彼らのサウンドに身を任せて、ゆったりとした音空間に酔いしれてみたい、そんなことを思わせる、素敵なレコードです。

新旧お宝アルバム!のリンク

http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-485.html

個人的なお気に入りのトラックは、オープニングの「Wise Women」とレコードのB1曲目の特にこの中でもビートが効いた「Strength」、そしてメンバーがボン・イヴェールの影響で生楽器とシンセの融合を試みたという「What You're Doing」あたりかな。でもどの曲もすべていいです。


9位Remind Me TomorrowSharon Van Etten Jagujaguwar)

Remind Me Tomorrow

シャロン・ヴァン・エッテンというニュージャージー生まれでNYを中心に活動するシンガーソングライターのことを知ったのは、前作の『Are We There』(2014)を、僕が信頼する洋楽友達の圭さんから「シャロン・ヴァン・エッテン、なかなかいいですよ。阿多さん好きかも」と言われて聴いてみたのが確か初めだった気がする。走る車のドアを開けて風に髪の毛をなびかせているシャロンのモノクロの写真が印象的なジャケのイメージ通り、ロードムーヴィーのサントラ盤を思わせるような、広がりのあるサウンドをバックにインディー・フォーク的な感じの楽曲を、「シュッとした」感じのシャロンのボーカルが歌っているそのアルバムはしばらく自分の愛聴盤になった。フォーキッシュなんだけど、すごくインディーっぽい。インディーっぽいんだけど、かなり意識していると思われるほどにコーラスワーク(おそらくは自分の声を重ねてると思う)を多用して、決してペナペナではないサウンドを作り上げてる、そのゴージャス感が、結構気に入っていた。当時ピッチフォークとか、意識高い系の音楽メディアからは結構高い評価を取っていたと思う。残念ながらリリース後結構経ってから聴いたので、2014年の自分の年間アルバムランキングには入れられなかったんだけど、もし2014年に聴いてたら結構上位にランクしてたと思う。

そのシャロンが、全編新しい楽曲を取りそろえてリリースしたのが、この『Remind Me Tomorrow』。前作との間に出たEPI Don't Want To Let You Down』(2015)は基本的に『Are We There』のアウトテイクを集めたものだったというから、全編新作という意味ではこのアルバムを聴かねばなるまい、ということでリリースされてすぐ買って聴いた。

まずアルバム冒頭の「I Told You Everything」のピアノのサウンドの清冽さにやられた。『Are We There』もサウンドの清冽さ、という意味ではかなりのものがあったけど、これはちょっとレベルが違うかも、と思わせるものがあったからだ。でもこのアルバムはそれだけじゃなかった。その「I Told You Everything」もピアノ以外は音響派的なシンセとか、打込みを大変上手に使ってベック的なコンテンポラリー感を演出しながら、楽曲の叙情性はむしろ高いものを実現してるのだ。それ以外にもこのアルバム、前作で見られたインディー・フォーク的なアプローチとコーラスをうまく使って楽曲を構成しているというアプローチは基本変わってないのだけど、今回はエレクトロな要素や、ギターノイズを心地よく使ったような、サウンド面での進化が著しいのが大きな変化だと思った。「No One's Easy To Love」のシンセや打込みの使い方なんて、Odelay』の頃のベックを彷彿とさせて興奮するし、もともとはピアノ・バラードとして書かれたという「Comeback Kid」なんて、ドカスカドラムをバックにシャロンがロックンロール・クイーン然とした凄みを見せるトラックに仕上がってて、シャロン的には新境地を切り開いてるのがいい。ルシンダ・ウィリアムスを意識して書いたという「Seventeen」も、バックのギターエフェクトとシャロンの時折シャウトするボーカルがルシンダというよりもニコとヴェルヴェット・アンダーグラウンド的なNYアンダーグラウンドな感じを醸し出しているのだけど、楽曲のシャロンらしい清冽さはこれまでとちょっと違う形ながらちゃんと実現してるのがぐいぐいくるんですよね。

結構90年代のインディーロックやベックあたりの音像音響派的オルタナロックの意匠をそこここに偲ばせながら、最近のボン・イヴェールとかジェイムス・ブレイクとかに通じる感じも根底の部分にあって、2010年代の今の作品アプローチとしてはこういうアプローチが有効なんだ、ということを実感させてくれるそんな不思議なアルバム。シャロンも当分目が離せない存在ですね。


8位:『Youre The ManMarvin GayeTamla/Motown/Universal)

Youre the Man

いえいえ、これはね、リイシュー盤じゃないですよ。厳然としたマーヴィン・ゲイの未発表曲を集めた「新譜」なんです。ただ普通の「新譜」と違うのは、この音源は全て彼があの名作『What's Going On』(1971)の後、創作的にも一番盛り上がってて、脂も乗っていた時期に録音されたもので、当時リリースも予定されてたのだけど、シングルリリースしたタイトル・ナンバーの「You're The Man」(1972年最高位50位)の受けがよくなかったので、マーヴィン自身がお蔵入りにしてしまった、という因縁付きのアルバムだということ。

で、改めてこのアルバム聴いて思うのは「マーヴィンはどうしてこれをお蔵入りにしたんだろう?」ということ。シングルの受けが悪かったからって言ったって、自分の作品に自信があれば『What's Going On』の大ヒットの後だし出しゃあいいのに、と思うんだけど、そう思っちゃうほど、このアルバムの出来は素晴らしいの一語。「You're The Man」の「トラブル・マン」的なグルーヴも素晴らしいけど、いきなり正統派ソウルシンガー然として熱唱する「Piece Of Clay」なんてほれぼれするし、かのG.C. キャメロンもカバーした、バックコーラスとの掛け合いも楽しい「I'm Gonna Give You Respect」なんてホントライヴで聴きたいなあ、と思うくらいウキウキする出来。そしてこのアルバムのハイライトの一つである、サラーム・レミがリミックスした「My Last Chance」「Symphony」「I'd Give My Life For You」なんていずれもマーヴィンのオリジナルのボーカルを最大限美しく聴かせることに徹していて素晴らしい。My Last Chance」のマーヴィンのボーカルなんて、リトル・アンソニー&インペリアルズあたりの正統派ドゥーワップを根底においたR&Bボーカルの素晴らしいパフォーマンスで、ここでのマーヴィンのとろけるようなボーカルだけでもこのアルバムの価値はあるなあ。

とにもかくにも、もう同時代性を経験できないマーヴィンという偉大なR&Bシンガーの素晴らしいパフォーマンスを、50年近い時を超えて今回アルバムリリースにつなげてくれた関係者の皆さんの尽力に、一ソウルファンとして心より感謝する、それしか言葉はありません。ありがとう!


さて、My Best Album of 2019の第一弾はここまで。7位から上も明日以降アップしますのでお楽しみに。

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

【年末恒例企画#2】My Best Album of 2018(Part 3 完結編、3 - 1 位)

3位:『Lost & Found』Jorja Smith (FAMM)

Jorja_Smith_-_Lost__Found.png 

さていよいよトップ3、3位は今年サマソニにも来日したジョージャ・スミス

このアルバムもやはりこの【新旧お宝アルバム!】のブログで今年の8月にレビューしてます。各曲ごとの詳しい解説はそちらのブログをご覧下さい。

(新旧お宝アルバム!レビューのリンク)http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-424.html

UK出身のジョージャドレイクの『More Life』(2017)へのフィーチャーがメインストリームへのブレイクのきっかけとなってそこから1年も立たずにリリースしたこのデビューアルバムの『Lost & Found』、新旧お宝アルバム!のブログでも書いたけど、ジャジーなR&Bスタイルの楽曲を浮遊感満点のサウンドをバックに、ちょっと舌っ足らずなUKアクセントがチャーミングなジョージャのコントラルト・ヴォイスのボーカルが最大の魅力。彼女のドリーミーでイメージ想起力の高い表現力を持った歌が既にジョージャにしか作り出せない世界観を持って聴き手に迫ってくるあたり、彼女のアーティストとしての才能を感じます

オープニングの「Lost & Found」ではわくわくするようなメロディ展開で「どうして私達は落ちていくの?」と歌うジョージャに一気にハートを捕まれるし、続く「Teenage Fantasy」では一転メランコリーな曲調でティーネイジャーの女の子の恋に対する切なさをせつせつと歌いながら、エンディングではちょっとふざけて呟くようにくすくすと笑って終わるなんていうキュートなところも見せてくれるし


また一方では「On Your Own」とかパトカーの青いライトに追われる男の子に対し「あなたは何をしたの?」と問い詰める「Blue Light」とかではその舌っ足らずな調子で結構達者なラップを聴かせてくれ、その押さえた感じが同じ年頃のUSのR&Bヒップホップ・女性アーティスト達と比べて一味違うのもまたいい。トム・ミッシュがペンを取ってプロデュースした「Lifeboat (Freestyle)」では、文字通り彼女がフリースタイルを試みるのだけど、USヒップホップでいうフリースタイル、という言葉に感じる攻撃性みたいなものは微塵もなく、自分が常日頃考えていることをトラックに乗せてフロウの形でしゃべってる(そしてここでも「落ちていく」という言葉と「浮かんでいる」という言葉が象徴的に使われてるのが印象的)、ってな風情がどうしようもなく愛おしく聞こえてしまうのは自分がオヤジになってしまったからか(笑)

前回の【新旧お宝アルバム!】でのブログで彼女のこのアルバムを取り上げて以降、いろんな方が彼女のアルバムを「いいんだけどイマイチ」的な論評をされているのを目にして自分的にはすごく違和感があった。それくらいこのジョージャのアルバムは自分にとってとっても聴き心地がよく、歌い手のエモーションとか気持ちとかが曲を通じて如実に感じられる、そんな凄くシンパシーを感じられる作品だったから。正直夏場は彼女のボーカルに清涼感を求めて、というのもあったが、このアルバムが僕のターンテーブルに乗る頻度は極めて高かった

幸いにして事前の僕の予想通り、ジョージャはめでたくグラミー賞の新人賞部門にノミネートを果たした。残念ながら同じ部門のノミニーにはメインの最優秀アルバム部門にもノミネートされてるH.E.R.や、ロックのジャンル部門にもノミネートされてるグレタ・ヴァン・フリートなど強力なメンバーが揃っているので、この部門だけのノミネートのジョージャには厳しいところだけど、ジョージャのチャーミングなキャラとこのアルバムで見せてくれた独特の世界観はきっと次の彼女のステップで大きく成長を見せてくれると信じています。とにかくこのアルバムはホントに自分に取っては2018年、大事なアルバムの一つでした。サマソニに行かなかったことがホントに悔やまれたくらい。


2位:『Golden Hour』Kacey Musgraves (MCA Nashville)

Kacey Musgraves Golden Hour 

そして自分の年間2位アルバムは、今やナッシュヴィル・シーンではカントリーという枠内だけではなく、ナッシュヴィルを本拠地とするアメリカン・メインストリーム・ポップ・アーティストとして唯一無二のステイタスを築き上げた感のあるケイシー・マスグレイヴスの『Golden Hour』

この【新旧お宝アルバム!】でも彼女の前作『Pageant Material』(2015)をご紹介して、そのキャッチーでありながらフォーキッシュなカントリー・ポップな楽曲と、カントリー界のこれまでの常識を覆す、同性愛の率直な肯定やマリファナ嗜好を淡々と語るといったエッジの立った歌詞のアンバランスさに大きな魅力があることをお伝えしましたが、今回の『Golden Hour』では、その楽曲レベルが平均的にグンと上がり、彼女が共作に全てかかわった収録13曲一切捨て曲なし、どれもかなりクオリティの高いポップ・チューンに仕上がっているのがちょっとした驚きでした。いずれの楽曲もキャッチーなメロディをカントリー・ポップのスタイルで組み立てながら、バックのサウンドは全体が靄に包まれたようなとても趣味のいいシンセの使い方と、しっかりとしたビートを刻むリズムが、ちょっと聴いていると今時のシンセポップ寄りのサウンドに聞こえるのですが、そこここにごく控えめにバンジョーの音色があしらわれたりしていることで、辛うじてこのアルバムがカントリーというジャンルに軸足の一部を残していることが判るという感じ。そして一番特筆すべきは、どの曲もケイシーの心地よいコントラルトのボーカルと魅力的なメロディーとリズムで聴く者の気持ちをゆったりと和らげてくれる、そんなアルバムに仕上がっているのです。自分はこのアルバムを聴いて、ルーマーの一連のアルバムを思い出しました。今回のケイシーのアルバムには、あのシンガーの一連のアルバムを想起させるような暖かい音像がふんだんに盛り込まれているのです

一方楽曲の歌詞の内容は、昨年末の結婚というプライベートな環境の変化を反映してか、これまでのようにエッジの強い内容の歌詞はそれほど見られません。むしろ新しい愛を発見した喜びを吐露する「Golden Hour」や「Butterflies」(この曲は夫のラストン・ケリーとナッシュヴィルのブルー・バード・カフェで出会って付き合い始めた頃のことを歌ってるとケイシーが認めてます)、週末に愛する人がそばにいないことの寂しさをポップなメロディに乗せて歌う「Lonely Weekend」、何故か今回のアルバムに頻出するヒーロー達に愛する人を見立てて様々な感情を歌う「Space Cowboy」「Velvet Elvis」「High Horse」(歌詞の最初のところで「あなたは自分のことをジョン・ウェインだと思ってるでしょ/颯爽と登場して悪者を残らず仕留めるそんなヒーロー」と歌ってます)などなど、ケイシーラストンと付き合っていた2017年に書かれた今回のアルバムの殆どの曲は、基本的に自分と自分が大事に思う人との様々な距離感を歌にした楽曲で満ちあふれています


今回アルバムのプロデュースは、彼女をブレイクした2枚のアルバム『Same Trailer, Different Park』(2013)と『Pageant Material』でケイシーと共にプロデューサーチームを組んでいた、ナッシュヴィルのポップ・カントリー界での多くの実績を持つルーク・レアードシェイン・マクナリーというベテラン・チームではなく、ナッシュヴィルでポップ・ロック・バンドで活動していたダニエル・タシアンイアン・フィチャックという新しいチームによるもので、このチームの変更が全体のサウンドをよりポップ・ロック路線に寄り添わせている最大の要因なのでしょう。収録された曲も13曲中この2人と共作しているのが7曲と最多を占めています。もちろんルークシェインとの共作も「Butterflies」「Space Cowboy」「Rainbow」とありますが、今後はこのケイシー/ダニエル/イアンというチームでしばらく新しいケイシーの世界を聴かせ続けてくれるのだろうと思われます

今年の夏のフジロックに来た時は他のステージとかぶって見逃してしまいましたが、観に行った友人達が口を揃えて素晴らしいステージだったと言ってて悔しい思いをしたのを思い出しました。この楽曲、そして彼女自身のプライベートの充実を思えば当然でしたね。惜しいことをしました

そしてこのアルバムはシーンでも評価が高く、今年11月に開催されたカントリー界のグラミー賞、第52回CMAではクリス・ステイプルトンキース・アーバンらを押さえて堂々年間最優秀アルバムを受賞してますし、Apple Musicが選ぶ2018年のベスト・アルバムにも選ばれました。そして今回の第61回グラミー賞でも、カントリー部門ではなく、主要部門の最優秀アルバム部門にノミネートされていますドレイクブランディ・カーライル、ジャネル・モネイといった強力なメンツを見事押さえて初の主要部門受賞なるか?個人的にはかなり期待しています

同じカントリーからポップに踏み出したテイラー・スウィフトが、最近感情の大きな起伏とエッジの立ったリリックでどちらかというと挑戦的な楽曲を発表しているのに比べると、このアルバム、正しくケイシーが今人生の「ゴールデン・アワー」にいるな、というのが肌で伝わってくる、聴いてるだけで幸せに近づけるような気がする、そんなアルバムです。とにかくどの曲を取っても、思わず聴き入ってしまうような魅力ある曲ばかりで、メロディのフックが素晴らしく思わずハッとしてしまう「Happy & Sad」など、完全に70年代ポップを思わせる、世代を超えてアピールできる曲ですので、是非Apple MusicSpotifyなどで聴いて見て下さい。あなたのパワープレイリストの仲間入りすることは間違いなし。お勧めです!


ここまでゾッコンに惚れ込んだケイシーのアルバムを上回るMy Best 10 Album of 2018のナンバーワンアルバムとは?それはこれです(^^)


1位:『Geography』Tom Misch (Beyond The Groove)


Tom Misch Geography 

トム・ミッシュ。ロンドン出身、白人、23歳。ロンドンのR&Bシーンでギタリスト、セッション・ボーカリスト、プロデューサーとして2014年頃から本格的に活動、自らも2本のミックステープや3枚のEPを昨年までにリリースする傍ら、様々なインディー系のUKR&Bアーティストのシングルに客演したり、リアン・ラ・ハヴァス、マイケル・キワヌカといった(自分の大好物のw)今のUKR&Bシーンを代表するアーティスト達のシングルをリミックスしたりと、マルチな活動を展開、徐々にそのシーンでの存在感を確立。

今年に入って、このMy Best Album of 2018の4位にランキングしたジョージャ・スミスの『Lost & Found』収録の「Lifeboat (Freestyle)」の作・プロデュースを行い、プロデューサーとしてもステップアップするのとほぼ同時期に自らの初フル・アルバム『Geography』をリリース、全英アルバムチャート8位に送りこむブレイクを果たす

と、レコードのライナーノーツ風に書いて来ましたが、このトム・ミッシュのアルバム、おそらく70年代後半から80年代にかけての英米のR&B・ソウルが好きで、かつブルー・アイド・ソウルのアーティストに目がない方であれば、はっきり言って無茶苦茶気に入ると思います!

アルバム全体があの時期のソウル・ミュージック、ダンス・ミュージックへのオマージュに溢れていてその手がお好きな方は聴きながら頬っぺたが緩むのを抑えられないでしょう。かくいう自分もそうなんです(笑)。そしてそれでいて今のR&B作品らしく、要所要所に上手にヒップホップの味付けもしていて、それがまたスマート。



シックを想起せざるを得ないタイトでファンキーなカッティング・ギターとスリリングなシンセ・トーンでまんまあの頃のダンス・チューンを再現している「South Of The River」や、聴いた瞬間に体が動かずにはいられないその名も「Disco Yes」、デヴィッド・T・ウォーカーっぽい音色のギターリフとビートの利いた、ゴールドリンクのラップをフィーチャーした「Lost In Paris」、昔のモノクロ映画の一場面を再現したかのようなスキットから、今度はスロウでデヴィッド・T・ウォーカーばりのエロいギターリックをバックにトムが洒脱なソウルネスを湛えて歌う「Movie」、何とあのデ・ラ・ソウルをフィーチャーした、シャッフル・リズムでメランコリー・ファンクとでも言うべき魅力満点の「It Runs Through Me」などなど、特にレコードA面からB面途中までは一気に聴かせてしまう、何とも強力なアルバムなのです

実は自分がトムのことを知ったのは結構遅く、何となく名前は聞いてたけど、と言う程度の認知度だったのが、彼が作・プロデュースのジョージャ・スミスの「Lifeboat (Freestyle)」を聴いて、そのオールド・スクールのヒップホップをリスペクトしながら今どきのR&B感覚の利いたサウンドに興味を持ってちょっと聴いてみたら、あっという間にハマったというわけ

そしてケイシー・マスグレイヴスフジロックでミスし、サマソニに来ていたジョージャ・スミスとこのトムをミスするという、今年の年間ランキングに入れてるアーティスト、軒並みライヴを見逃してるというのも、このアルバムへの執着度を高めたもう一つの理由だったかも(笑)。とにかく夏の終わり頃から秋にかけて、このレコードを聴かない週は多分なかったといっても過言ではないほどで、この時点での年間アルバム1位は当確でした。

とにかく自分がウダウダ言うよりも、Apple MusicSpotifyでこのアルバム、聴いてみてください。あなたがソウル・ミュージック、R&B系ダンス・ミュージック、そしてブルー・アイド・ソウルのファンなら、絶対気に入って頂ける自信があります。

このアルバム、メインのアルバムチャートにはランクインしなかったものの、ビルボード誌コンテンポラリー・ジャズ・アルバム・チャートで2位に入るという成績だったので、自分は密かにこのグラミー賞新人賞部門アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門にノミネートされるのでは、と期待していたのですが、残念ながらそれはなし。でも、次トムが来日したら絶対観に行こう!と心に決めてます。そしてこの後トムが、自分の作品も含めてどんな仕事をしてくれるか、今から楽しみです。



さあ、My Best 10 Album of 2018、いかがだったでしょうか。もしまだお聴きになってないアルバムがあったら、是非一度ストリーミング等で視聴されてみて下さい。あなたの年末年始を彩る新たなアルバムになるかもしれません。さてここで11位以下20位までもリストしておきます。

11. Out Of The Blues - Boz Scaggs
12. Dirty Computer - Janelle Monáe
13. Piano & Microphone 1983 - Prince
14. Hive Mind - The Internet
15. Zapp VII: Roger & Friends - Zapp
16. Isolation - Kali Uchis
17. Collagically Speaking - R+R=Now (Robert Glasper & Others)
18. The Future And The Past - Natalie Prass
19. See You Around - I'm With Her
20. Scorpion - Drake


ということでこの【年末恒例企画#2】も完結。次はいよいよメインイヴェントの【年末恒例企画#3】第61回グラミー賞大予想!を来週くらいから順繰りにブログアップしていきますのでお楽しみに。

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

【年末恒例企画#2】My Best Album of 2018(Part 2, 7 - 4 位)

さて、続いてMy Best Album of 2018、7位です。


7位:『Dear Annie』Rejjie Snow (300/Brace Face/BMG)

Rejjie Snow Dear Annie 

レジー・スノウっていう名前を初めて聞いたのはうちのヒップホップ・トラップ・ヘッズの息子から。去年だったか、毎日チキチキハイハットのトラップトラックを聴きまくり、自分でもトラックを作り始めてた息子は、今時のR&Bの新しいアーティストへの耳も早くて、ブレイク前からThe InternetとかSZAとかジョージャ・スミスとかは「オヤジが好きそうだぜ」と教えてくれててなかなか重宝していたので「今何かお勧めある?」と聞いたら帰ってきたのがこの名前。当時はまだミックステープを出したばっかりだった彼の「D.R.U.G.S.」って曲をYouTubeで聴いたところ、何しろ最近のヒップホップにしてはトラップっぽさが皆無(笑)で、サウンドのアプローチも90年代あたりのネイティヴ・タン系のポップ感覚溢れる感じ(PVもそんな感じのアニメなのも好感度だった)で、当時気に入ってたチャンス・ザ・ラッパー系の明るさが即気に入り、当時の「Song Of The Day」にもすぐアップしたくらい。(Song Of The Day #853)

そのレジーが満を持して今年初フル・アルバムをリリースした。これは買わねばなるまい、ということで即ヴァイナルで購入。このアルバムの収録曲20曲は、アルバムリリース前に2枚のEPに分けて発表されたもの。その楽曲はどれもこれも「D.R.U.G.S.」同様、ヒップホップアルバムとしては90年代あたりのクラシックなスタイルで、3曲にフィーチャーされているデイナ・ウィリアムス嬢などのR&Bシンガーも多数フィーチャーした、70年代っぽいR&B色もかなり濃厚な、クオリティも高い楽曲がずらり並んでいて、我々のように70年代ソウルを下敷きにして、90年代ヒップホップやR&Bに慣れ親しんだリスナーにはたまらない内容。でもそれでいて古臭さは全くなく、使われているサウンドスタイルや音像系は間違いなく今の時代のもの。カリードとかともサウンドは似てるけど、もっとオールドスクールヒップホップの香りと、90年代UKアシッド・ソウルなんかの影響も感じる

とにかくヒップホップが楽しかった時代の記憶を随所で呼び起こさせてくれる楽曲揃いで、デ・ラ・ソウルのトラックにありそうな、メロウでリズミックなトラックに乗ってデイナ嬢のドリーミーナボーカルと去年ブレイクしたラッパー・デュオのアミネのフロウをフィーチャーした「Egyptian Luvr」とか、アルバムラストのシンガーのマイカー・ウィリアムスをフィーチャーした「Greatness」なんかでは「ママは俺が生まれた時スティーヴィー・ワンダーに夢中で/Superstitionを一晩中かけてた」なんてなフロウがぽろっと出てくるあたりも楽しい。キャロライン・スミス嬢をフィーチャーした「23」ではレジーも歌いながら、ドリーミーでラヴリーなサウンドとメロディに乗って口笛なんか吹いてる。「Spaceships」とかも『ファースト・フィナーレ』の頃のスティーヴィー・ワンダーまんまのご機嫌なソウル・ジャムだし。とにかく今時のヒップホップっぽくないけど、ヒップホップとR&Bの楽しさのエキスがぎっしり詰まってるようなそんなアルバムだ。多分このアルバム最初に通して聴いてたとき、自分はニヤニヤしてたと思う(笑)

レジーって、ナイジェリア人の父親とアイリッシュ・ジャメイカンの母親の間に、アイルランドのダブリンに生まれ、フロリダに移り住む18歳までそこで育ったらしい。道理で普通のUSのヒップホップっぽくないわけだ。凄く音の素性がコスモポリタンな感じで、UKアシッド・ソウルの香りがあるのも納得できる。そのレジー、USには数年だけいて、今はダブリンに戻ってそこで活動を続けているらしい。

音的にはチャンスとか、ケイトランダとか、タイラー・ザ・クリエイターとか、最近のフィールグッドなスタイルのヒップホップのまた新しいアーティストが出てきたぞ、こいつはフォローしなきゃ、という感じですので、最近のチャンスとか90年代のネイティヴ・タン系のヒップホップとかがお好きな方には100%お勧めします!




6位:『Good Things』Leon Bridges (LisaSawyer63 / Columbia)


Leon Bridges Good Thing 

こちらは現代におけるネオ・クラシック・ソウルの旗手、という鳴り物入りで2015年に『Coming Home』でデビューしたリオン・ブリッジズの2作目。こちらも今年の5月にここのブログ「新旧お宝アルバム!」でレビューしてますので、詳しい曲ごとの解説とコメントはそちらをご覧下さい。

(新旧お宝アルバム!のリンク)http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-420.html

その時のブログにも書いたのだけど、『Coming Home』の時、あまりに「現代のサム・クック、オーティス」的に売り出されて、ジャケやアルバムの楽曲などもそれをえらく意識しすぎた(と自分は感じた)ために、当時は全くピンと来なかったけど、今回のこの『Good Things』は「クックオーティスの先達の系譜を汲んでリスペクトしてるけど、自分は《いま》のソウルシンガーなんですよ!」という表明をするかのように、クラシックなスタイルの「Bet Ain't Worth The Hand」(こちらは今回の第61回グラミー賞の最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス部門に、自分が8位に挙げたベティ・ラヴェットと共にノミネートされてる)や「Beyond」「Mrs.」など前作の意匠を継続するナンバーだけでなく、シックのダンクラ・チューンかと思うほど軽くモダンでファンキーな「If It Feels Good (Then It Must Be)」や「Forgive You」「You Don't Know」といった70年代後半スタイルの軽快で洒脱なナンバーも軽々とモノにしてるところが素晴らしいところ。結果として、何度聴き返してもその都度発見があり、飽きずに繰り返し聴くことができるアルバムになっていると思う。

そしてアルバムを締める「Georgia To Texas」は南部テキサス出身であるオンの出自を表現するかのように、極めてダウン・トゥ・アースで、黒人霊歌的なフィーリングを持つ楽曲でこれをリオンが静かに、しかしエモーショナルに歌い上げるのを聴くと、今回のアルバムでリオンの引き出しが二重にも三重にもなって、いろんな表現力を発揮できるシンガーになったな、と如実に感じる。そして全曲に共作者として関わっているところも重要。今回グラミー賞最優秀R&Bアルバム部門へのノミネートも順当で、僕はH.E.R.の『H.E.R.』(2017年10月のアルバムなので、今回の自分の2018ランキングに入れられなかったのが残念)との争いになると見てます。早くも次作が楽しみなリオン、ソウル好きであれば聴くべしです。




5位:『Indigo』Kandace Springs (Blue Note / Capitol)


Kandace Springs Indigo 

ブラック・アーティストのアルバムが続きます。5位はついこの間東京国際フォーラムでの素敵なライヴを観てきたばかりの、キャンディス・スプリングスブルー・ノートからの2枚目、『Indigo』。デビュー・アルバムの『Soul Eyes』はややメインストリームR&Bっぽいポップ寄りの王道派のジャズ・ボーカル・アルバムという感じで、あのプリンスYouTubeにアップされていたキャンディスのパフォーマンスを見て気にいって、自分のペイズリー・パークでの『Purple Rain』30周年記念ライヴに特別に招待した、というエピソードで想定されるような凄さはあまり感じなかったもんだ。歌は巧いし、声は魅力的なんだけど。

で、今回のアルバムを聴いてその印象がガラッと変わっていたのにまずおっ、と思った。今回も基本はジャズ・ボーカル・アルバムなんだけど、寄り添っているのがメインストリーム・ポップではなく、かなりヒップホップの気配を感じさせたり、「Piece Of Me」などはシャーデーあたりも想起させるスタイルになっている一方、先頃惜しくも他界したジャズ・サックス奏者ロイ・ハーグローヴをフィーチャーした「Unsophisticated」などは前作を上回るレベルの王道ジャズ・チューンだったりする。チェックしてみると、まず前作はジョニ・ミッチェルの80年代の旦那さんで、彼女の当時の一連作品のプロデュースで知られるメインストリーム系のプロデューサー、ラリー・クラインだったのに対し、今回のアルバムは、あの伝説のヒップホップ・サウンドメイカー、J・ディラの影響を公言して憚らず、同じく90年代以降のヒップホップ・アイコンであるコモンのアルバムに必ずプロデュースで毎回参加している、それでいて本職はジャズ・ドラマーのカリエム・リギンズ。自ずから楽曲やサウンド、アレンジメントへのアプローチが全く違うのも納得だ。

そして、よりジャズのプレイヤーの視点やヒップホップ風ソウル的なグルーヴを重視したカリエムの今回のプロデュース・アプローチの方が、キャンディスのボーカルスタイルの良さをより効果的に引き出していると思う。

そうしたジャズとヒップヒップ風味のグルーヴを作り出しているカリエムの仕事に加えて、このアルバムにアーシーなR&Bの風合いをうまく加えているのが、4曲を作曲、2曲のプロデュースを担当している、NYベースのソングライティング・デュオ、カール・スターケンイヴァン・ロジャーズ。全米トップ40ファンには1991年の全米No.2ヒット「P.A.S.S.I.O.N.」を放ったリズム・シンディケイトの中心メンバーとして知られる彼らは、その後ソングライティング・プロデュース・チームとしてアギレラケリクラのデビュー作に曲を提供したり、あのリアーナを見つけてきたりして数々の新しいアーティストを育ててきたのだけど、ナッシュヴィル出身のキャンディスを見つけてきてドン・ワズのブルー・ノートと契約させたのも彼ら。前述の「Piece Of Me」や「Unsophisticated」、そしてピアノ弾き語りでジャジーなボーカルを聴かせる「Fix Me」など彼らのペンによる曲が、カリエムのプロデュースとうまく調和してキャンディスのパフォーマンスを更に引き立てていると思う。

先日のライヴでキャンディスは基本的にピアノを弾いて歌うのが大好きな一方、その彼女に影響を与えたのはアート・テイタムオスカー・ピーターソンといったジャズの偉大なアーティストだ、というのが判り、改めてこのアルバムを聴くとその彼女の歌への、ピアノへの思いがしっかりプロダクションに反映され、彼女を最大限に表現しているのがわかる。そしてその究極が、ライヴでもアンコールで演って、このアルバムの終盤を飾るロバータ・フラックの「The First Time Ever I Saw Your Face」のカバー。プリンスが彼女をペイズリー・パークに呼んだ時に、彼女をピアノに座らせてリクエストしたというこの曲、多分その時と同様、この歌の静かなパワーが乗り移ったようなパフォーマンスが素晴らしい。引き続き、その動向から目が離せない、そんなアーティストです。



4位:『Heaven And Earth』Kamasi Washington (Shoto Mas / Young Turks)


Kamasi Washington Heaven Earth 

このアルバムを最初聴いた時の圧倒的な迫り来るような楽曲と演奏のテンション、そしてそれらの楽曲やパフォーマンスの完成度から、「これはジャンル関係なしに今年を代表するアルバムだし、絶対グラミーのアルバム部門ノミネートは間違いないな」と思ったものだけど、蓋を開けるとアルバム部門どころか、ジャズ部門でもまったくの蚊帳の外だったのはとても意外だった。同じケンドリック・ラマー人脈のロスのコンテンポラリー・ジャズ・シーンのアーティストで、このカマシのアルバムでも1曲「Agents Of Multiverse」を共作しているクリス・デイヴの『Chris Dave & The Drumhedz』なんかは最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門にノミネートされてるのに、同じ人脈・シーンでよりハイ・プロファイルで評価も高いカマシが蚊帳の外、というのも腑に落ちない。ヴァイナルだと長尺5枚組、CDで3枚組(うち1枚はカッターでジャケを切り開かないと出てこないという隠し盤w)という大層さが嫌がられたのか、それともジャズの最先端シーンであるNYから距離を置いてロスでの活動にこだわるカマシに対する一部の批判層のなせる業なのか。

自分は正直ジャズは門外漢に近い。いろいろな洋楽ジャンルは聴き倒してきたが、ジャズについては奥深い森過ぎて下手に足を踏み込むとずるずるになってしまうのでは、という懸念からフュージョンとかを中心に表面的にしか関わってこなかった。その考えを変えたのは13年前、自分が最初に転職する時に部下から贈られたマイルスの『Milestone』で、理屈なしにすっと胸に入ってくる感じが思わぬ快感だった。以来、機会あるごとにジャズの名盤なるものには触れるようにしている。

そんなまだまだジャズ初心者の自分が、今特に同時代性を感じることができるのがこのカマシであり、ロバート・グラスパーでありサンダーキャットといった連中。彼らはケンドリック・ラマ人脈ということでヒップホップ好きの自分に取って何となくシンパシーを感じるところも多い。

そんなカマシの今度のアルバムのオープニング「Fists Of Fury」を聴いて驚いたのが、もはやこれはジャズの範疇を超えて、ビッグバンドによる壮大なエピックの映画スコアのようにこみ上げてくる怒りや哀しみなど様々な感情を表現した圧倒的なトラックであったこと。そして後にこれがあのブルース・リーの映画『ドラゴン怒りの鉄拳』のテーマ曲のリメイクだ、という話を聞いて妙に納得したものだ。

ヴァイナルでは最初2枚、CDでは最初のディスクが「Heaven」、次のヴァイナル2枚、ディスクが「Earth」、そして最後の隠しディスクが「The Choice」と名付けられたこの大作、冒頭の「Fists Of Fury」以降はジャムセッション的スタイルの正統派コンテンポラリージャズ、といった楽曲が次から次に抑えたクールネスを持って登場する。Heavenディスクは、途中スロウな「Connection」やバンドが縦横無尽にジャムってオーセンティックなグルーヴを醸し出す「Tiffakonkae」など、50年代スタイルのジャズ・トラックで気持ち良くしてくれるかと思うと、不協和音や複雑なコードを駆使したノイズ的なカマシのソロからメロウな本編になだれ込む「The Invincible Youth」など、いろんなアプローチでカマシ自作の楽曲群が聴く耳を楽しませてくれる

Earthディスクのスタートは、冒頭の「Fists Of Fury」ほどのインパクトはないものの、またまた大人数のコーラスをバックに壮大な映画スコアのような「The Space Travelers Lullaby」で始まり、Heavenディスクがインストのみだったのに対し、電子処理したボーカルをフィーチャーしたうねる波のような「Vi Lua Vi Sol」、夜のイメージのカマシのソロとピアノでスタートしてパトリス・クインの神に懇願するようなボーカルが入る「Journey」などボーカル入りのジャズ・トラックが4曲フィーチャーされている。そうした王道ジャズ・トラックの中でやや異彩を放っているのが、エレクトロなリズムリフをベースにまたまた映画スコアのようなコーラスをバックにタイトなグルーヴを聴かせる「Street Fighter Mas」。

そして最後の5曲入りThe Choiceディスクは、やはり大コーラスをバックにした「The Secret Of Jinsinson」に始まり、キング/ゴーフィン作で有名な「Will You Still Love Me Tomorrow」とファイヴ・ステアステップスの「Ooh Child」のカバーを含むが、全社は極端にテンポを落としたトーチ・ソング風(ボーカルはパトリス)、後者はサビのフレーズのコーラスループ以外はまったく原曲をとどめず、延々続くジャズのジャムセッション、といった内容。

全体はいわゆるオーセンティックなスタイルのコンテンポラリージャズだし、いくつかのカバーへのユニークなアプローチ以外は、カマシがこのアルバムで取り立てて何か新しいことをしているわけではない。ただこれだけの大作の楽曲のほとんど(21曲中15曲)を一人で書き、アレンジしてこれだけの全体感、楽曲の存在感を実現しているというのは並大抵ではないことはジャズ門外漢の自分でもよく判る。

このジャズアルバムは、小洒落た青山の焼き鳥屋とか代官山のイタリアンとかでBGMで流れるような類のジャズではなく、しっかりと向き合って聴くことを求めるタイプの作品なので、重たいといえば重たいのだけど、ある意味今年の重大なミュージカル・イベントの一つであり、今年の重要作品の一つだと思うのです




さて、My Best Album of 2018のトップ3、遅くとも今週のどこかではアップしますね。お楽しみに。

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

copyright © 2020 Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生 all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.