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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【年末恒例企画#2】My Best Album of 2018(Part 3 完結編、3 - 1 位)

3位:『Lost & Found』Jorja Smith (FAMM)

Jorja_Smith_-_Lost__Found.png 

さていよいよトップ3、3位は今年サマソニにも来日したジョージャ・スミス

このアルバムもやはりこの【新旧お宝アルバム!】のブログで今年の8月にレビューしてます。各曲ごとの詳しい解説はそちらのブログをご覧下さい。

(新旧お宝アルバム!レビューのリンク)http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-424.html

UK出身のジョージャドレイクの『More Life』(2017)へのフィーチャーがメインストリームへのブレイクのきっかけとなってそこから1年も立たずにリリースしたこのデビューアルバムの『Lost & Found』、新旧お宝アルバム!のブログでも書いたけど、ジャジーなR&Bスタイルの楽曲を浮遊感満点のサウンドをバックに、ちょっと舌っ足らずなUKアクセントがチャーミングなジョージャのコントラルト・ヴォイスのボーカルが最大の魅力。彼女のドリーミーでイメージ想起力の高い表現力を持った歌が既にジョージャにしか作り出せない世界観を持って聴き手に迫ってくるあたり、彼女のアーティストとしての才能を感じます

オープニングの「Lost & Found」ではわくわくするようなメロディ展開で「どうして私達は落ちていくの?」と歌うジョージャに一気にハートを捕まれるし、続く「Teenage Fantasy」では一転メランコリーな曲調でティーネイジャーの女の子の恋に対する切なさをせつせつと歌いながら、エンディングではちょっとふざけて呟くようにくすくすと笑って終わるなんていうキュートなところも見せてくれるし


また一方では「On Your Own」とかパトカーの青いライトに追われる男の子に対し「あなたは何をしたの?」と問い詰める「Blue Light」とかではその舌っ足らずな調子で結構達者なラップを聴かせてくれ、その押さえた感じが同じ年頃のUSのR&Bヒップホップ・女性アーティスト達と比べて一味違うのもまたいい。トム・ミッシュがペンを取ってプロデュースした「Lifeboat (Freestyle)」では、文字通り彼女がフリースタイルを試みるのだけど、USヒップホップでいうフリースタイル、という言葉に感じる攻撃性みたいなものは微塵もなく、自分が常日頃考えていることをトラックに乗せてフロウの形でしゃべってる(そしてここでも「落ちていく」という言葉と「浮かんでいる」という言葉が象徴的に使われてるのが印象的)、ってな風情がどうしようもなく愛おしく聞こえてしまうのは自分がオヤジになってしまったからか(笑)

前回の【新旧お宝アルバム!】でのブログで彼女のこのアルバムを取り上げて以降、いろんな方が彼女のアルバムを「いいんだけどイマイチ」的な論評をされているのを目にして自分的にはすごく違和感があった。それくらいこのジョージャのアルバムは自分にとってとっても聴き心地がよく、歌い手のエモーションとか気持ちとかが曲を通じて如実に感じられる、そんな凄くシンパシーを感じられる作品だったから。正直夏場は彼女のボーカルに清涼感を求めて、というのもあったが、このアルバムが僕のターンテーブルに乗る頻度は極めて高かった

幸いにして事前の僕の予想通り、ジョージャはめでたくグラミー賞の新人賞部門にノミネートを果たした。残念ながら同じ部門のノミニーにはメインの最優秀アルバム部門にもノミネートされてるH.E.R.や、ロックのジャンル部門にもノミネートされてるグレタ・ヴァン・フリートなど強力なメンバーが揃っているので、この部門だけのノミネートのジョージャには厳しいところだけど、ジョージャのチャーミングなキャラとこのアルバムで見せてくれた独特の世界観はきっと次の彼女のステップで大きく成長を見せてくれると信じています。とにかくこのアルバムはホントに自分に取っては2018年、大事なアルバムの一つでした。サマソニに行かなかったことがホントに悔やまれたくらい。


2位:『Golden Hour』Kacey Musgraves (MCA Nashville)

Kacey Musgraves Golden Hour 

そして自分の年間2位アルバムは、今やナッシュヴィル・シーンではカントリーという枠内だけではなく、ナッシュヴィルを本拠地とするアメリカン・メインストリーム・ポップ・アーティストとして唯一無二のステイタスを築き上げた感のあるケイシー・マスグレイヴスの『Golden Hour』

この【新旧お宝アルバム!】でも彼女の前作『Pageant Material』(2015)をご紹介して、そのキャッチーでありながらフォーキッシュなカントリー・ポップな楽曲と、カントリー界のこれまでの常識を覆す、同性愛の率直な肯定やマリファナ嗜好を淡々と語るといったエッジの立った歌詞のアンバランスさに大きな魅力があることをお伝えしましたが、今回の『Golden Hour』では、その楽曲レベルが平均的にグンと上がり、彼女が共作に全てかかわった収録13曲一切捨て曲なし、どれもかなりクオリティの高いポップ・チューンに仕上がっているのがちょっとした驚きでした。いずれの楽曲もキャッチーなメロディをカントリー・ポップのスタイルで組み立てながら、バックのサウンドは全体が靄に包まれたようなとても趣味のいいシンセの使い方と、しっかりとしたビートを刻むリズムが、ちょっと聴いていると今時のシンセポップ寄りのサウンドに聞こえるのですが、そこここにごく控えめにバンジョーの音色があしらわれたりしていることで、辛うじてこのアルバムがカントリーというジャンルに軸足の一部を残していることが判るという感じ。そして一番特筆すべきは、どの曲もケイシーの心地よいコントラルトのボーカルと魅力的なメロディーとリズムで聴く者の気持ちをゆったりと和らげてくれる、そんなアルバムに仕上がっているのです。自分はこのアルバムを聴いて、ルーマーの一連のアルバムを思い出しました。今回のケイシーのアルバムには、あのシンガーの一連のアルバムを想起させるような暖かい音像がふんだんに盛り込まれているのです

一方楽曲の歌詞の内容は、昨年末の結婚というプライベートな環境の変化を反映してか、これまでのようにエッジの強い内容の歌詞はそれほど見られません。むしろ新しい愛を発見した喜びを吐露する「Golden Hour」や「Butterflies」(この曲は夫のラストン・ケリーとナッシュヴィルのブルー・バード・カフェで出会って付き合い始めた頃のことを歌ってるとケイシーが認めてます)、週末に愛する人がそばにいないことの寂しさをポップなメロディに乗せて歌う「Lonely Weekend」、何故か今回のアルバムに頻出するヒーロー達に愛する人を見立てて様々な感情を歌う「Space Cowboy」「Velvet Elvis」「High Horse」(歌詞の最初のところで「あなたは自分のことをジョン・ウェインだと思ってるでしょ/颯爽と登場して悪者を残らず仕留めるそんなヒーロー」と歌ってます)などなど、ケイシーラストンと付き合っていた2017年に書かれた今回のアルバムの殆どの曲は、基本的に自分と自分が大事に思う人との様々な距離感を歌にした楽曲で満ちあふれています


今回アルバムのプロデュースは、彼女をブレイクした2枚のアルバム『Same Trailer, Different Park』(2013)と『Pageant Material』でケイシーと共にプロデューサーチームを組んでいた、ナッシュヴィルのポップ・カントリー界での多くの実績を持つルーク・レアードシェイン・マクナリーというベテラン・チームではなく、ナッシュヴィルでポップ・ロック・バンドで活動していたダニエル・タシアンイアン・フィチャックという新しいチームによるもので、このチームの変更が全体のサウンドをよりポップ・ロック路線に寄り添わせている最大の要因なのでしょう。収録された曲も13曲中この2人と共作しているのが7曲と最多を占めています。もちろんルークシェインとの共作も「Butterflies」「Space Cowboy」「Rainbow」とありますが、今後はこのケイシー/ダニエル/イアンというチームでしばらく新しいケイシーの世界を聴かせ続けてくれるのだろうと思われます

今年の夏のフジロックに来た時は他のステージとかぶって見逃してしまいましたが、観に行った友人達が口を揃えて素晴らしいステージだったと言ってて悔しい思いをしたのを思い出しました。この楽曲、そして彼女自身のプライベートの充実を思えば当然でしたね。惜しいことをしました

そしてこのアルバムはシーンでも評価が高く、今年11月に開催されたカントリー界のグラミー賞、第52回CMAではクリス・ステイプルトンキース・アーバンらを押さえて堂々年間最優秀アルバムを受賞してますし、Apple Musicが選ぶ2018年のベスト・アルバムにも選ばれました。そして今回の第61回グラミー賞でも、カントリー部門ではなく、主要部門の最優秀アルバム部門にノミネートされていますドレイクブランディ・カーライル、ジャネル・モネイといった強力なメンツを見事押さえて初の主要部門受賞なるか?個人的にはかなり期待しています

同じカントリーからポップに踏み出したテイラー・スウィフトが、最近感情の大きな起伏とエッジの立ったリリックでどちらかというと挑戦的な楽曲を発表しているのに比べると、このアルバム、正しくケイシーが今人生の「ゴールデン・アワー」にいるな、というのが肌で伝わってくる、聴いてるだけで幸せに近づけるような気がする、そんなアルバムです。とにかくどの曲を取っても、思わず聴き入ってしまうような魅力ある曲ばかりで、メロディのフックが素晴らしく思わずハッとしてしまう「Happy & Sad」など、完全に70年代ポップを思わせる、世代を超えてアピールできる曲ですので、是非Apple MusicSpotifyなどで聴いて見て下さい。あなたのパワープレイリストの仲間入りすることは間違いなし。お勧めです!


ここまでゾッコンに惚れ込んだケイシーのアルバムを上回るMy Best 10 Album of 2018のナンバーワンアルバムとは?それはこれです(^^)


1位:『Geography』Tom Misch (Beyond The Groove)


Tom Misch Geography 

トム・ミッシュ。ロンドン出身、白人、23歳。ロンドンのR&Bシーンでギタリスト、セッション・ボーカリスト、プロデューサーとして2014年頃から本格的に活動、自らも2本のミックステープや3枚のEPを昨年までにリリースする傍ら、様々なインディー系のUKR&Bアーティストのシングルに客演したり、リアン・ラ・ハヴァス、マイケル・キワヌカといった(自分の大好物のw)今のUKR&Bシーンを代表するアーティスト達のシングルをリミックスしたりと、マルチな活動を展開、徐々にそのシーンでの存在感を確立。

今年に入って、このMy Best Album of 2018の4位にランキングしたジョージャ・スミスの『Lost & Found』収録の「Lifeboat (Freestyle)」の作・プロデュースを行い、プロデューサーとしてもステップアップするのとほぼ同時期に自らの初フル・アルバム『Geography』をリリース、全英アルバムチャート8位に送りこむブレイクを果たす

と、レコードのライナーノーツ風に書いて来ましたが、このトム・ミッシュのアルバム、おそらく70年代後半から80年代にかけての英米のR&B・ソウルが好きで、かつブルー・アイド・ソウルのアーティストに目がない方であれば、はっきり言って無茶苦茶気に入ると思います!

アルバム全体があの時期のソウル・ミュージック、ダンス・ミュージックへのオマージュに溢れていてその手がお好きな方は聴きながら頬っぺたが緩むのを抑えられないでしょう。かくいう自分もそうなんです(笑)。そしてそれでいて今のR&B作品らしく、要所要所に上手にヒップホップの味付けもしていて、それがまたスマート。



シックを想起せざるを得ないタイトでファンキーなカッティング・ギターとスリリングなシンセ・トーンでまんまあの頃のダンス・チューンを再現している「South Of The River」や、聴いた瞬間に体が動かずにはいられないその名も「Disco Yes」、デヴィッド・T・ウォーカーっぽい音色のギターリフとビートの利いた、ゴールドリンクのラップをフィーチャーした「Lost In Paris」、昔のモノクロ映画の一場面を再現したかのようなスキットから、今度はスロウでデヴィッド・T・ウォーカーばりのエロいギターリックをバックにトムが洒脱なソウルネスを湛えて歌う「Movie」、何とあのデ・ラ・ソウルをフィーチャーした、シャッフル・リズムでメランコリー・ファンクとでも言うべき魅力満点の「It Runs Through Me」などなど、特にレコードA面からB面途中までは一気に聴かせてしまう、何とも強力なアルバムなのです

実は自分がトムのことを知ったのは結構遅く、何となく名前は聞いてたけど、と言う程度の認知度だったのが、彼が作・プロデュースのジョージャ・スミスの「Lifeboat (Freestyle)」を聴いて、そのオールド・スクールのヒップホップをリスペクトしながら今どきのR&B感覚の利いたサウンドに興味を持ってちょっと聴いてみたら、あっという間にハマったというわけ

そしてケイシー・マスグレイヴスフジロックでミスし、サマソニに来ていたジョージャ・スミスとこのトムをミスするという、今年の年間ランキングに入れてるアーティスト、軒並みライヴを見逃してるというのも、このアルバムへの執着度を高めたもう一つの理由だったかも(笑)。とにかく夏の終わり頃から秋にかけて、このレコードを聴かない週は多分なかったといっても過言ではないほどで、この時点での年間アルバム1位は当確でした。

とにかく自分がウダウダ言うよりも、Apple MusicSpotifyでこのアルバム、聴いてみてください。あなたがソウル・ミュージック、R&B系ダンス・ミュージック、そしてブルー・アイド・ソウルのファンなら、絶対気に入って頂ける自信があります。

このアルバム、メインのアルバムチャートにはランクインしなかったものの、ビルボード誌コンテンポラリー・ジャズ・アルバム・チャートで2位に入るという成績だったので、自分は密かにこのグラミー賞新人賞部門アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門にノミネートされるのでは、と期待していたのですが、残念ながらそれはなし。でも、次トムが来日したら絶対観に行こう!と心に決めてます。そしてこの後トムが、自分の作品も含めてどんな仕事をしてくれるか、今から楽しみです。



さあ、My Best 10 Album of 2018、いかがだったでしょうか。もしまだお聴きになってないアルバムがあったら、是非一度ストリーミング等で視聴されてみて下さい。あなたの年末年始を彩る新たなアルバムになるかもしれません。さてここで11位以下20位までもリストしておきます。

11. Out Of The Blues - Boz Scaggs
12. Dirty Computer - Janelle Monáe
13. Piano & Microphone 1983 - Prince
14. Hive Mind - The Internet
15. Zapp VII: Roger & Friends - Zapp
16. Isolation - Kali Uchis
17. Collagically Speaking - R+R=Now (Robert Glasper & Others)
18. The Future And The Past - Natalie Prass
19. See You Around - I'm With Her
20. Scorpion - Drake


ということでこの【年末恒例企画#2】も完結。次はいよいよメインイヴェントの【年末恒例企画#3】第61回グラミー賞大予想!を来週くらいから順繰りにブログアップしていきますのでお楽しみに。

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【年末恒例企画#2】My Best Album of 2018(Part 2, 7 - 4 位)

さて、続いてMy Best Album of 2018、7位です。


7位:『Dear Annie』Rejjie Snow (300/Brace Face/BMG)

Rejjie Snow Dear Annie 

レジー・スノウっていう名前を初めて聞いたのはうちのヒップホップ・トラップ・ヘッズの息子から。去年だったか、毎日チキチキハイハットのトラップトラックを聴きまくり、自分でもトラックを作り始めてた息子は、今時のR&Bの新しいアーティストへの耳も早くて、ブレイク前からThe InternetとかSZAとかジョージャ・スミスとかは「オヤジが好きそうだぜ」と教えてくれててなかなか重宝していたので「今何かお勧めある?」と聞いたら帰ってきたのがこの名前。当時はまだミックステープを出したばっかりだった彼の「D.R.U.G.S.」って曲をYouTubeで聴いたところ、何しろ最近のヒップホップにしてはトラップっぽさが皆無(笑)で、サウンドのアプローチも90年代あたりのネイティヴ・タン系のポップ感覚溢れる感じ(PVもそんな感じのアニメなのも好感度だった)で、当時気に入ってたチャンス・ザ・ラッパー系の明るさが即気に入り、当時の「Song Of The Day」にもすぐアップしたくらい。(Song Of The Day #853)

そのレジーが満を持して今年初フル・アルバムをリリースした。これは買わねばなるまい、ということで即ヴァイナルで購入。このアルバムの収録曲20曲は、アルバムリリース前に2枚のEPに分けて発表されたもの。その楽曲はどれもこれも「D.R.U.G.S.」同様、ヒップホップアルバムとしては90年代あたりのクラシックなスタイルで、3曲にフィーチャーされているデイナ・ウィリアムス嬢などのR&Bシンガーも多数フィーチャーした、70年代っぽいR&B色もかなり濃厚な、クオリティも高い楽曲がずらり並んでいて、我々のように70年代ソウルを下敷きにして、90年代ヒップホップやR&Bに慣れ親しんだリスナーにはたまらない内容。でもそれでいて古臭さは全くなく、使われているサウンドスタイルや音像系は間違いなく今の時代のもの。カリードとかともサウンドは似てるけど、もっとオールドスクールヒップホップの香りと、90年代UKアシッド・ソウルなんかの影響も感じる

とにかくヒップホップが楽しかった時代の記憶を随所で呼び起こさせてくれる楽曲揃いで、デ・ラ・ソウルのトラックにありそうな、メロウでリズミックなトラックに乗ってデイナ嬢のドリーミーナボーカルと去年ブレイクしたラッパー・デュオのアミネのフロウをフィーチャーした「Egyptian Luvr」とか、アルバムラストのシンガーのマイカー・ウィリアムスをフィーチャーした「Greatness」なんかでは「ママは俺が生まれた時スティーヴィー・ワンダーに夢中で/Superstitionを一晩中かけてた」なんてなフロウがぽろっと出てくるあたりも楽しい。キャロライン・スミス嬢をフィーチャーした「23」ではレジーも歌いながら、ドリーミーでラヴリーなサウンドとメロディに乗って口笛なんか吹いてる。「Spaceships」とかも『ファースト・フィナーレ』の頃のスティーヴィー・ワンダーまんまのご機嫌なソウル・ジャムだし。とにかく今時のヒップホップっぽくないけど、ヒップホップとR&Bの楽しさのエキスがぎっしり詰まってるようなそんなアルバムだ。多分このアルバム最初に通して聴いてたとき、自分はニヤニヤしてたと思う(笑)

レジーって、ナイジェリア人の父親とアイリッシュ・ジャメイカンの母親の間に、アイルランドのダブリンに生まれ、フロリダに移り住む18歳までそこで育ったらしい。道理で普通のUSのヒップホップっぽくないわけだ。凄く音の素性がコスモポリタンな感じで、UKアシッド・ソウルの香りがあるのも納得できる。そのレジー、USには数年だけいて、今はダブリンに戻ってそこで活動を続けているらしい。

音的にはチャンスとか、ケイトランダとか、タイラー・ザ・クリエイターとか、最近のフィールグッドなスタイルのヒップホップのまた新しいアーティストが出てきたぞ、こいつはフォローしなきゃ、という感じですので、最近のチャンスとか90年代のネイティヴ・タン系のヒップホップとかがお好きな方には100%お勧めします!




6位:『Good Things』Leon Bridges (LisaSawyer63 / Columbia)


Leon Bridges Good Thing 

こちらは現代におけるネオ・クラシック・ソウルの旗手、という鳴り物入りで2015年に『Coming Home』でデビューしたリオン・ブリッジズの2作目。こちらも今年の5月にここのブログ「新旧お宝アルバム!」でレビューしてますので、詳しい曲ごとの解説とコメントはそちらをご覧下さい。

(新旧お宝アルバム!のリンク)http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-420.html

その時のブログにも書いたのだけど、『Coming Home』の時、あまりに「現代のサム・クック、オーティス」的に売り出されて、ジャケやアルバムの楽曲などもそれをえらく意識しすぎた(と自分は感じた)ために、当時は全くピンと来なかったけど、今回のこの『Good Things』は「クックオーティスの先達の系譜を汲んでリスペクトしてるけど、自分は《いま》のソウルシンガーなんですよ!」という表明をするかのように、クラシックなスタイルの「Bet Ain't Worth The Hand」(こちらは今回の第61回グラミー賞の最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス部門に、自分が8位に挙げたベティ・ラヴェットと共にノミネートされてる)や「Beyond」「Mrs.」など前作の意匠を継続するナンバーだけでなく、シックのダンクラ・チューンかと思うほど軽くモダンでファンキーな「If It Feels Good (Then It Must Be)」や「Forgive You」「You Don't Know」といった70年代後半スタイルの軽快で洒脱なナンバーも軽々とモノにしてるところが素晴らしいところ。結果として、何度聴き返してもその都度発見があり、飽きずに繰り返し聴くことができるアルバムになっていると思う。

そしてアルバムを締める「Georgia To Texas」は南部テキサス出身であるオンの出自を表現するかのように、極めてダウン・トゥ・アースで、黒人霊歌的なフィーリングを持つ楽曲でこれをリオンが静かに、しかしエモーショナルに歌い上げるのを聴くと、今回のアルバムでリオンの引き出しが二重にも三重にもなって、いろんな表現力を発揮できるシンガーになったな、と如実に感じる。そして全曲に共作者として関わっているところも重要。今回グラミー賞最優秀R&Bアルバム部門へのノミネートも順当で、僕はH.E.R.の『H.E.R.』(2017年10月のアルバムなので、今回の自分の2018ランキングに入れられなかったのが残念)との争いになると見てます。早くも次作が楽しみなリオン、ソウル好きであれば聴くべしです。




5位:『Indigo』Kandace Springs (Blue Note / Capitol)


Kandace Springs Indigo 

ブラック・アーティストのアルバムが続きます。5位はついこの間東京国際フォーラムでの素敵なライヴを観てきたばかりの、キャンディス・スプリングスブルー・ノートからの2枚目、『Indigo』。デビュー・アルバムの『Soul Eyes』はややメインストリームR&Bっぽいポップ寄りの王道派のジャズ・ボーカル・アルバムという感じで、あのプリンスYouTubeにアップされていたキャンディスのパフォーマンスを見て気にいって、自分のペイズリー・パークでの『Purple Rain』30周年記念ライヴに特別に招待した、というエピソードで想定されるような凄さはあまり感じなかったもんだ。歌は巧いし、声は魅力的なんだけど。

で、今回のアルバムを聴いてその印象がガラッと変わっていたのにまずおっ、と思った。今回も基本はジャズ・ボーカル・アルバムなんだけど、寄り添っているのがメインストリーム・ポップではなく、かなりヒップホップの気配を感じさせたり、「Piece Of Me」などはシャーデーあたりも想起させるスタイルになっている一方、先頃惜しくも他界したジャズ・サックス奏者ロイ・ハーグローヴをフィーチャーした「Unsophisticated」などは前作を上回るレベルの王道ジャズ・チューンだったりする。チェックしてみると、まず前作はジョニ・ミッチェルの80年代の旦那さんで、彼女の当時の一連作品のプロデュースで知られるメインストリーム系のプロデューサー、ラリー・クラインだったのに対し、今回のアルバムは、あの伝説のヒップホップ・サウンドメイカー、J・ディラの影響を公言して憚らず、同じく90年代以降のヒップホップ・アイコンであるコモンのアルバムに必ずプロデュースで毎回参加している、それでいて本職はジャズ・ドラマーのカリエム・リギンズ。自ずから楽曲やサウンド、アレンジメントへのアプローチが全く違うのも納得だ。

そして、よりジャズのプレイヤーの視点やヒップホップ風ソウル的なグルーヴを重視したカリエムの今回のプロデュース・アプローチの方が、キャンディスのボーカルスタイルの良さをより効果的に引き出していると思う。

そうしたジャズとヒップヒップ風味のグルーヴを作り出しているカリエムの仕事に加えて、このアルバムにアーシーなR&Bの風合いをうまく加えているのが、4曲を作曲、2曲のプロデュースを担当している、NYベースのソングライティング・デュオ、カール・スターケンイヴァン・ロジャーズ。全米トップ40ファンには1991年の全米No.2ヒット「P.A.S.S.I.O.N.」を放ったリズム・シンディケイトの中心メンバーとして知られる彼らは、その後ソングライティング・プロデュース・チームとしてアギレラケリクラのデビュー作に曲を提供したり、あのリアーナを見つけてきたりして数々の新しいアーティストを育ててきたのだけど、ナッシュヴィル出身のキャンディスを見つけてきてドン・ワズのブルー・ノートと契約させたのも彼ら。前述の「Piece Of Me」や「Unsophisticated」、そしてピアノ弾き語りでジャジーなボーカルを聴かせる「Fix Me」など彼らのペンによる曲が、カリエムのプロデュースとうまく調和してキャンディスのパフォーマンスを更に引き立てていると思う。

先日のライヴでキャンディスは基本的にピアノを弾いて歌うのが大好きな一方、その彼女に影響を与えたのはアート・テイタムオスカー・ピーターソンといったジャズの偉大なアーティストだ、というのが判り、改めてこのアルバムを聴くとその彼女の歌への、ピアノへの思いがしっかりプロダクションに反映され、彼女を最大限に表現しているのがわかる。そしてその究極が、ライヴでもアンコールで演って、このアルバムの終盤を飾るロバータ・フラックの「The First Time Ever I Saw Your Face」のカバー。プリンスが彼女をペイズリー・パークに呼んだ時に、彼女をピアノに座らせてリクエストしたというこの曲、多分その時と同様、この歌の静かなパワーが乗り移ったようなパフォーマンスが素晴らしい。引き続き、その動向から目が離せない、そんなアーティストです。



4位:『Heaven And Earth』Kamasi Washington (Shoto Mas / Young Turks)


Kamasi Washington Heaven Earth 

このアルバムを最初聴いた時の圧倒的な迫り来るような楽曲と演奏のテンション、そしてそれらの楽曲やパフォーマンスの完成度から、「これはジャンル関係なしに今年を代表するアルバムだし、絶対グラミーのアルバム部門ノミネートは間違いないな」と思ったものだけど、蓋を開けるとアルバム部門どころか、ジャズ部門でもまったくの蚊帳の外だったのはとても意外だった。同じケンドリック・ラマー人脈のロスのコンテンポラリー・ジャズ・シーンのアーティストで、このカマシのアルバムでも1曲「Agents Of Multiverse」を共作しているクリス・デイヴの『Chris Dave & The Drumhedz』なんかは最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門にノミネートされてるのに、同じ人脈・シーンでよりハイ・プロファイルで評価も高いカマシが蚊帳の外、というのも腑に落ちない。ヴァイナルだと長尺5枚組、CDで3枚組(うち1枚はカッターでジャケを切り開かないと出てこないという隠し盤w)という大層さが嫌がられたのか、それともジャズの最先端シーンであるNYから距離を置いてロスでの活動にこだわるカマシに対する一部の批判層のなせる業なのか。

自分は正直ジャズは門外漢に近い。いろいろな洋楽ジャンルは聴き倒してきたが、ジャズについては奥深い森過ぎて下手に足を踏み込むとずるずるになってしまうのでは、という懸念からフュージョンとかを中心に表面的にしか関わってこなかった。その考えを変えたのは13年前、自分が最初に転職する時に部下から贈られたマイルスの『Milestone』で、理屈なしにすっと胸に入ってくる感じが思わぬ快感だった。以来、機会あるごとにジャズの名盤なるものには触れるようにしている。

そんなまだまだジャズ初心者の自分が、今特に同時代性を感じることができるのがこのカマシであり、ロバート・グラスパーでありサンダーキャットといった連中。彼らはケンドリック・ラマ人脈ということでヒップホップ好きの自分に取って何となくシンパシーを感じるところも多い。

そんなカマシの今度のアルバムのオープニング「Fists Of Fury」を聴いて驚いたのが、もはやこれはジャズの範疇を超えて、ビッグバンドによる壮大なエピックの映画スコアのようにこみ上げてくる怒りや哀しみなど様々な感情を表現した圧倒的なトラックであったこと。そして後にこれがあのブルース・リーの映画『ドラゴン怒りの鉄拳』のテーマ曲のリメイクだ、という話を聞いて妙に納得したものだ。

ヴァイナルでは最初2枚、CDでは最初のディスクが「Heaven」、次のヴァイナル2枚、ディスクが「Earth」、そして最後の隠しディスクが「The Choice」と名付けられたこの大作、冒頭の「Fists Of Fury」以降はジャムセッション的スタイルの正統派コンテンポラリージャズ、といった楽曲が次から次に抑えたクールネスを持って登場する。Heavenディスクは、途中スロウな「Connection」やバンドが縦横無尽にジャムってオーセンティックなグルーヴを醸し出す「Tiffakonkae」など、50年代スタイルのジャズ・トラックで気持ち良くしてくれるかと思うと、不協和音や複雑なコードを駆使したノイズ的なカマシのソロからメロウな本編になだれ込む「The Invincible Youth」など、いろんなアプローチでカマシ自作の楽曲群が聴く耳を楽しませてくれる

Earthディスクのスタートは、冒頭の「Fists Of Fury」ほどのインパクトはないものの、またまた大人数のコーラスをバックに壮大な映画スコアのような「The Space Travelers Lullaby」で始まり、Heavenディスクがインストのみだったのに対し、電子処理したボーカルをフィーチャーしたうねる波のような「Vi Lua Vi Sol」、夜のイメージのカマシのソロとピアノでスタートしてパトリス・クインの神に懇願するようなボーカルが入る「Journey」などボーカル入りのジャズ・トラックが4曲フィーチャーされている。そうした王道ジャズ・トラックの中でやや異彩を放っているのが、エレクトロなリズムリフをベースにまたまた映画スコアのようなコーラスをバックにタイトなグルーヴを聴かせる「Street Fighter Mas」。

そして最後の5曲入りThe Choiceディスクは、やはり大コーラスをバックにした「The Secret Of Jinsinson」に始まり、キング/ゴーフィン作で有名な「Will You Still Love Me Tomorrow」とファイヴ・ステアステップスの「Ooh Child」のカバーを含むが、全社は極端にテンポを落としたトーチ・ソング風(ボーカルはパトリス)、後者はサビのフレーズのコーラスループ以外はまったく原曲をとどめず、延々続くジャズのジャムセッション、といった内容。

全体はいわゆるオーセンティックなスタイルのコンテンポラリージャズだし、いくつかのカバーへのユニークなアプローチ以外は、カマシがこのアルバムで取り立てて何か新しいことをしているわけではない。ただこれだけの大作の楽曲のほとんど(21曲中15曲)を一人で書き、アレンジしてこれだけの全体感、楽曲の存在感を実現しているというのは並大抵ではないことはジャズ門外漢の自分でもよく判る。

このジャズアルバムは、小洒落た青山の焼き鳥屋とか代官山のイタリアンとかでBGMで流れるような類のジャズではなく、しっかりと向き合って聴くことを求めるタイプの作品なので、重たいといえば重たいのだけど、ある意味今年の重大なミュージカル・イベントの一つであり、今年の重要作品の一つだと思うのです




さて、My Best Album of 2018のトップ3、遅くとも今週のどこかではアップしますね。お楽しみに。

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

【年末恒例企画#2】My Best Album of 2018(Part 1, 10 - 8 位)

さあいよいよグラミー賞のノミネーションも発表され、ビルボード誌の年間チャートも発表、我々洋楽ファンにとっての年末感がぐんぐん高まってくる今日この頃。それと同時に一気に寒さが増してやっとこれから年末に向かうなあ、という雰囲気が出てきました。自分の【年末恒例企画】も次の「My Best Albums of 2018」に向かうわけですが、その前に、この間発表されたビルボード誌Hot 100 年間チャートと予想との答え合わせとおさらいをしときましょう。今年の年末号の表紙はカミラ・カベロ

2018 Billboard YIM 


<年間チャート予想と結果のおさらい>

今年は自分が予想をアップした直後の12/7に発表されたビルボード誌の「Year In Charts(年間チャート)」、Hot 100部門のトップ10はこうなってました。

Hot 100 年間チャートの発表サイトのリンクはこれ
https://www.billboard.com/charts/year-end/2018/hot-100-songs

1. God's Plan - Drake (111週、予想は2位)
2. Perfect - Ed Sheeran (16週、予想は1位)
3. Meant To Be - Bebe Rexha & Florida Georgia Line (2位、予想3位)
4. Havana - Camila Cabello Featuring Young Thug (11週、予想9位)
5. Rockstar - Post Malone Featuring 21 Savage (18週、ただし集計期間中は3週、予想6位)
6. Psycho - Post Malone Featuring Ty Dolla $ign (11週、予想4位)
7. I Like It - Cardi B, Bad Bunny & J Balvin (11週、予想5位)
8. The Middle - Zedd, Maren Morris & Grey5位、予想7位)
9. In My Feelings - Drake (110週、予想14位)10. Girls Like You - Maroon 5 Featuring Cardi B (17週、予想8位)


今年も去年同様、トップ10のうち9曲の顔ぶれを当てていてそれなりの結果なのですが、残念ながら1位と2位が入れ子になってしまっていて順位も的中したのは3位の「Meant To Be」だけだった、という結果でした。去年と同様の評価式で点数を計算すると、10点x15点x850、ということで、おととしのひどかった結果よりはいいけど、去年のまずまずの結果よりは劣る、まあいたって凡庸なスコアだったということになります。また来年がんばりまーす。


さて、では【年末恒例企画#2My Top 10 Albums of 2018、その10位からご紹介。


10位:『Back Roads & Abandoned MotelsJayhawks (Legacy)

Back Roads Abandoned Motels 

61グラミー賞のノミネーションが発表されて、それまで58回はクリス・ステイプルトン59回はスタージル・シンプソンがそれぞれ最優秀アルバム部門にノミネートされて、アメリカーナというジャンルもいよいよ主要音楽ジャンルとして認知と定着が進んだな、と思ってた矢先の去年60回ではなぜかヒップホップ・ラップ系が3枚もアルバム部門にノミネート、アメリカーナは主要四部門から締め出しを食らっていた。今年は5から8にノミネート数が拡大したこともあって、ブランディ・カーライルケイシー・マスグレイヴスが見事アルバム部門にノミネート。楽しみなグラミーになりそうです

で、19902000年代以降のアメリカーナ勃興に寄与したバンドといえばウィルコやウィスキータウンらと並んで欠かせないのがこのジェイホークス。ご存知の方も多いと思いますが、出世作となった『Hollywood Town Hall(1993)以降、『Tomorrow The Green Grass(1995)等々の名盤をコンスタントにリリースして存在感を築き、ゲイリー・ルイスと共に双頭リーダーの一人、マーク・オルソンが途中脱退するなど紆余曲折を経たものの、再び二人が揃った『Mockingbird Time(2011)ではその変わらぬハーモニーと心和むオルタナ・カントリー楽曲に癒されたものです。

でもその後またマークが抜けて、2016年に出た『Paging Mr. Proust』は正直何だかピンとこない内容でファンとしてはモヤモヤしてたもの。そこへ、昨年あのキンクスレイ・デイヴィーズがアメリカ音楽への憧憬をあらわに綴ったアルバム『Americana(2017)のバックに何とジェイホークスが全面参加してるという面白い展開に。レイの続作の『Our Country: Americana, Act. 2(2018)でもマークをはじめとしたバンドの演奏やコーラス、唯一女性メンバーのカレン・グロトバーグの華やかな歌声も聞こえて、早く彼らのオリジナルアルバムが聴きたいなあ、と思ってたところに届けられたのがこのアルバム。

曲ごとの詳しい解説は、今年の9月にここのブログの【新旧お宝アルバム!】のシリーズで既に書いているので、そちらをご参照頂きたいのですが、基本的な楽曲構成はゲイリーがここ数年他のアーティストに書いたり、誰かと共作したりしてた曲10曲のセルフ・カバーと、2曲のゲイリーの書き下ろしということで、誠にジェイホークスファンにとっては懐かしくもうれしい、力強くも繊細で美しいメロディーとコーラスが満喫できるジェイホークス節炸裂の素敵な盤に仕上がっているというのが最大の魅力と言い切っちゃいます。

(新旧お宝アルバム!のリンク)http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-429.html

個人的にはディキシー・チックスが最初にやった「Everybody Knows」がお気に入りで、この曲ゲイリーのボーカルがめっきり寒くなった今日この頃、心にしみるのです。今年だけでなく、長くジェイホークスのフェイヴァリット作の一つとして聴き続けるだろうな、と思ってます。


9位:『BloodRhye (Loma Vista)

Rhye Blood 

これは最初は完全にジャケ買いPitchforkのレビュー欄をパラパラと見ていたら、いきなり女性の全裸の背中からの写真(ライことマイク・ミロッシュ君のガールフレンドらしい)に目を奪われ、評価も高かったのでApple Musicでちょっと視聴してみたところ、これがここ数年自分のマイブームである浮遊感満載のR&Bチューン集だったので迷わず購入。これも聴けば聴くほどに結構癖になるタイプのレコードで、一時期かなり自分のパワーローテーションに入ってました。

マイク君がカナダ人の白人で、彼のボーカルもかなり中性的でやや声もコントラルトっぽい高めのトーンでささやくように歌う、っていうこともあるんだろうけど、USの最近のオッド・フューチャーとかアーシーでヒップホップに深く根ざした感じとは全く異なり、どちらかというとエレクトロ系ポップに近い感じで、これをこのままBPMを倍くらいにするとまんまThe 1975やThe XXとかみたいになるんじゃないの?的な感じが聴いてる分に凄く気持ちよいのです。

もともとは2010年にベルリンにいたマイク君とデンマーク人のエレクトロ系アーティスト、ロビン・ハニバルとのデュオでスタートしたというライ、ライと言う名前以外は何も明かさずに二人で共作した楽曲をネット上にアップして人気を呼んでいたところでファーストアルバム『Woman(2013)をリリース。その後USに渡ってマイクのソロ・プロジェクトとなったライとしてのアルバムがこの『Blood』。全編を深い霧のように包むエレクトロな音像と、マイクの官能的ともいえるボーカルで独自の世界を作りあげているのですが、「Please」「Song For You」「Stay Safe」「Phoenix」あたりは特にリズムの使い方に伝統的なR&Bの意匠も感じさせるエレクトロ・ポップに仕上がっていて、いわゆるクラブとかで大音量でかかっていても、薄暗いバーとかで控えめの音量で流れていても聴く者の耳を「ん?」と引くであろう、そんなレコードです。

そう、カリフォルニアで作ってるはずなのに明らかに明るい太陽の下で聴く音楽ではない(笑)。そういう意味では今の季節にぴったりかもしれません。


8位:『Things Have ChangedBettye LaVette (Verve)

Bettye LaVette Things Have Changed 


そしてさっきのライのレコードとは全く180度、対極にあるのがこの大ベテランR&Bシンガー(今年72歳!)ベティ・ラヴェットによる、12曲ディランのカバー集の新作アルバム

いやいやA面冒頭のアルバムタイトル曲「Things Have Changed」からガツーン!とぶちかましてくれるのなんの。このアルバムのプロデューサーで、全面バンドのドラムスを担当するスティーヴ・ジョーダンがパワフルなドカスカドラムス叩きながら冒頭「ベティ、気分いいかい?」というのに「いいわよ!」と吐き捨てて、年を全く思わせないパワフルなボーカルでぶちかますベティひたすらカッコええ!

最近ではボズ・スキャッグスの『Memphis(2013)などのブルース・アルバムのプロデューサーで有名なスティーヴ他のバックのミュージシャンも腕利きぞろい。アメリカーナなギターを弾かせたら一流で、ディランの『Love And Theft』(2001) にも参加してたラリー・キャンベルのギター、ジョン・エントウィッスル没後のフーや、ディアンジェロのバンド、そしてスティーヴと一緒にジョン・メイヤー・バンドで活躍してる僕も個人的に好きなピノ・パラディノのベース、そしてあのヴァン・マッコイからアヴリル・ラヴィーンまで様々なアーティストとの活動経験を持つベテラン、リオン・ペンダーヴィスのキーボードが、一体となってベティの熱くもパワフル、表現力抜群でグルーヴ満点のボーカルを包むようにサポートしてるのが聴いていてひたすら気持ちいい

選曲もこの手の企画にありがちの有名曲に偏るということもなく、新旧様々なアルバムからの曲がベティ自身の自信に満ちた解釈での楽曲に料理されているのがいい。特に冒頭の2曲、映画『Wonder Boys』に提供された「Things Have Changed」から「It Ain't Me Babe」(アメリカ南部のラウンジ・バーで聴くようなリヴァーヴの効いたギターが最高)って、実はディランが今年の夏、フジロックで演奏した時のリストの最初の2曲と同じなんですよね。ひょっとしてディランベティのこのアルバム聴いて刺激受けて意識してたんじゃないかな、なんて妄想するのも楽しいのです(^^)

あと「Political World」(1989の『Oh Mercy』収録)ではキース・リチャードがギターで参加して存在感たっぷりのソロを聴かせてくれますが、ベティは全く手綱を放さず自分の世界をがっちり聴かせてくれます

一昨年はシャロン・ジョーンズのひたすらローでかっこいいR&Bファンク・サウンドにやられた後にシャロンの訃報に寂しい思いをしたので、ベティには是非この調子で当分ガツーンというカッコいいR&Bのアルバムをまだまだ聴かせてほしい。なぜなら自分がベティを知ったのはごく最近で、レコードの師匠の柳沢さんにこのアルバムを教えてもらったのがきっかけだったので、彼女の過去の作品もそして今後の新作も是非聴き倒したいなあ、と思うから。


今日は取りあえずここまで。この週末中に、7位〜4位もアップしますのでこうご期待。
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