Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
■第52回グラミー賞大予想
 さていよいよグラミーの授賞式も明日に迫り、毎年恒例のグラミー賞予想の季節になりました。今回は授賞式前からグラミー賞のウェブサイト(ここから行けます)でブログがアップされたり、いろんなプリイベントのビデオがアップされたりと、前盛り上がりが凄いことになってます。さらに今年はグラミーのサイトをFacebookとかツイッターでシェアできるサービスも提供しており、登録しておくと、いつでもFacebookやツイッターの自分のスレッドにグラミーの最新情報が届けられるという、まあソーシャルサイト全盛の今の時代をちゃんと押さえたパブリシティをしているあたり、グラミーもなかなか侮れません。興味のある人は、グラミーサイトにアップされているいろんなセレブやミュージシャンたちのインタビューとかを見るだけでも相当時間がつぶせそうです。何か面白いやつがあったら随時紹介しますね。今年のグラミー賞授賞式NeilYoungGrammy.jpgの目玉は、噂ではあの!マイケル・ジャクソン・トリビュートで3D映像が配信されるとのこと。ホントかなあ?だいたい普通の家庭でどーやって見るんだ?あと、功労賞では何とあのニール・ヤングが表彰される予定とのことで、どのような授賞式になるか今から(といっても明日だけど)楽しみです。ちなみに今年も平日AMの放送になってしまうんですが、たまたま明日午後から海外出張ということでちゃんと午前半休取りました!これで2年ぶりの生グラミーブログができそう(最後までカバーできるかは怪しいが....)です。お楽しみに。

 さて本番の各賞予想そろそろ行きましょう。まずはポップ部門から。

1.最優秀女性ポップボーカル部門

× Hometown Glory - Adele
○ Halo - Beyonce
  Hot N Cold - Katy Perry
  Sober - Pink
◎ You Belong With Me - Taylor Swift

TaylorSwift_YouBelongWithMe.jpg はい、アデル、ケイティー・ペリー、ピンクの3人は去年からの連続ノミネートですね。ケイティーは今やステディの中のイギリスのコメディアン、ラッセル・ブランド(ほら、去年のアメリカン・ミュージック・アウォードの司会やってた、ヒゲの小汚いイギリス人ですよ)と当日は出席の予定の様ですが、僕はこの3人はいずれも対象外、と見ています。というのも残りの2人、ビヨンセ(10部門ノミネート)とテイラー・スイフト(8部門ノミネート)があまりにも強力なので。で、もう少し言うと、僕は今回のグラミーはテイラー・スイフトがビヨンセを凌駕するのでは、と思ってます。つまりビヨンセは10部門と最多ノミネートだけど、彼女はR&B部門以外での大きな受賞はないのではないか、ということ。予想としては大きなギャンブルなのですが、ビヨンセは過去レコード・オブ・ジ・イヤーに2度ノミネートされてますが(50回の「Irreplaceable」と46回の「Crazy In Love」)いずれも受賞を逃していて、これまでのところ受賞は全てR&B部門に限られています。つまりはそういうふうな位置づけでアカデミーの評価を受けている、という風に僕は理解してます。だからここは本命テイラー・スイフト、対抗がビヨンセ、という予想。去年この部門で嬉しい受賞を果たしたアデルの「Hometown Glory」(これ、とてもいい曲)を一応穴に押しておきましょう。なお、このグラミー予想を僕がブログで始めたのは49回(2007年2月発表)からですが、これまでこの部門は本命1回(去年)、対抗1回(49回のアギレラAin't No Other Man」)、穴1回(50回のエイミー・ワインハウスRehab」)という成績なので、何とか2勝目をマークしたいです、はい。

2.最優秀男性ポップボーカル部門

  This Time - John Legend
○ Love You - Maxwell
◎ Make It Mine - Jason Mraz
  If You Don't Know Me By Now - Seal
× All About The Love Again - Stevie Wonder

JasonMraz_MakeItMine.jpg うーん難しい、今年のこの部門。本命がいない(笑)。この部門は僕が予想し始めてから過去3回のうち何と2回ジョン・メイヤーが受賞しているという(去年の「Say」と49回の「Waiting On A World To Change」)ジョン・メイヤー部門。その前も2回(45回の「Your Body Is A Wonderland」と47回「Daughters」)ですから完璧独占状態です。一昨年の50回はジャスティン・ティンバレークがそのジョン・メイヤーを破って「What Goes Around....Comes Around」で、レコード・オブ・ジ・イヤーを取れなかった代わりに貰っているということで、ある意味主要4賞の予備部門的な位置づけの側面もあるようで。となると今年はマックスウェル?ということになるのだけど、ここ10年でR&B系でこの部門取っているのは48回のスティーヴィー・ワンダー(「From The Bottom Of My Heart」)のみ。この時も本命ない状態だったんだよね。と、いろいろ考えたんだけど、ここは去年ソング・オブ・ジ・イヤーを逃したジェイソン・ムラーツあたりが本命でくるんじゃないかと。一応マックスウェルも「Pretty Wings」でなく違う曲なので対抗止まりにしておきます。何故か不気味なスティーヴィーは敬意を表して穴扱い。ちなみにシールはこの部門ノミネート常連さん(50回、47回)ですが取ったのは「Kiss From A Rose」でROY、SOYを独占した38回の時だけ。アカデミーは一度脚光を浴びた人には面倒見がいいということなんでしょう。

.最優秀ボップデュオ・グループ部門(ボーカル付)

◎ I Gotta Feeling - The Black Eyed Peas
○ We Weren't Born To Follow - Bon Jovi
  Never Say Never - The Fray
  Sara Smile - Daryl Hall & John Oates
× Kids - MGMT

BEP_IGottaFeeling.jpg この部門で過去3回で何と言っても印象に残っているのは、49回でBEPフレイOver My Heard (Cable Car)」やキーンIs It Any Wonder?」を押さえて何とこともあろうにあの「My Humps」で受賞したこと!こういうところを見ると、今年あれだけヒットした「I Gotta Feeling」でこの部門、取らないわけがないような気がするのは僕だけ?ま、ここで賞取ってもらって、ROYではおとなしく引っ込んでおいてもらうというのも悪くないけどね。対抗のボン・ジョヴィはこの部門での受賞経験はないんだけど、何やらグラミーのサイトに最近よくフィーチャーされてるのでもしや?ということで対抗にしときます。しかし何で今更ホール&オーツの「Sara Smile」なんだ?いかにもアカデミーらしいノミネートだけど。ちなみにMGMTの穴は、もしMGMTが取るようなことがあったら面白すぎる、ということで。なおこの部門過去3回の予想は、穴(BEP)、対抗(マルーン5「Makes Me Wonder」)、穴(コールドプレイ「Viva La Vida」)ということで決して得意な部門ではないので、今回は何とか押さえたいところ。

4.最優秀ポップ・コラボレーション部門
(ボーカル付)

  Sea Of Heartbreak - Rosanne Cash & Bruce Springsteen
× Love Sex Magic - Ciara & Justin Timberlake
◎ Lucky - Jason Mraz & Colbie Caillat
○ Baby, It's Cold Outside - Willie Nelson & Norah Jones
  Breathe - Taylor Swift & Colbie Caillat

JasonMraz_Lucky.jpg この部門、去年から予想を始めたんだけど、去年は本命マドンナ4 Minutes」に対して、圧倒的な強さのロバート・プラント&アリソン・クラウスRich Woman」が持っていった部門でした。ただしこの部門はその年のかなり印象的な曲がない限りは、大御所が持って行きやすい部門で、過去も49回トニー・ベネット&スティーヴィー・ワンダー、47回レイ・チャールズ&ノラジョン、43回B.B.キング&Dr.ジョン(!)、41回エルヴィス・コステロ&バート・バカラックといったところが持っていってます。で今年ですが、何とかかろうじて「Lucky」がこうした大御所構成を交わす程度の評価をアカデミーから取るのではないか、ということで本命、大御所路線のウィリー・ネルソン&ノラジョンを対抗にしてます。穴は最近ジョン・メイヤーと並んでグラミーのお気に入りであるジャスティン・ティンバレークのフィーチャーされてる「Love Sex Magic」ということで。

 取りあえず第一弾予想はここまで。この後家の中でちょっと場所を変えて、主要4賞を含む他の予想もアップします。しばしお待ちを!
 
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■2009年My Best Albums - #1 発表!
 さあ、やっと1位の発表です....

My Top 10 Albums of 2009
#1: Bible Belt - Diane Birch (S-Curve)

DianeBirch_BibleBelt.jpg さあ長いことかかってしまった2009年マイ・ベスト・アルバム・カウントダウンもやっと1位まで来ました。ふー。で、1位はというと、昨年突然現れたミシガン州出身の女性シンガー・ソングライター、ダイアン・バーチの『Bible Belt』です。この見た瞬間ハッとしてしまうどアップのジャケ、去年の秋口から年末にかけて、都内のCDショップとかで見かけた人も多いんじゃないかな。最近CDショップでもあまり知られていないアーティストのアルバムを取り上げてPOPを工夫して展示している、というケースを良く見るけど、彼ら販売店スタッフの見る目もなかなか侮れないものがあり、1、2曲試聴してジャケ買いしてみて拾いものをすることも結構あったりする。このダイアン・バーチのデビュー・アルバムもそんな一枚。確か去年の夏の終わりに、いろんなことがあって疲れ切った気持ちを抱えながら立川のHMVをうろうろしていたら、店頭でこのジャケに惹かれて、冒頭の「Fire Escape」を試聴してみたところ、そのスケールの大きな楽曲と彼女のややかすれたソウルフルなボーカルに一発でノックアウト。素早く購入し、それから完璧にiPodのパワープレイリストにどっかり腰を落ち着けてしまった。

 全13曲が全てダイアン自身のペンによるこのアルバム、まず全体を聴いて強く感じるのはゴスDianeBirch.jpgペルを基盤としたアメリカ中南部を感じさせるソウルフルな曲調、かたやローラ・ニーロキャロル・キングといった60年代後半から70年代前半にかけて傑作を次々に発表したティンパン・アレー系のソングライター達の曲を彷彿とさせるちょっとレトロなポップ・センスだ。もう「Valentino」のようにスワンプやケイジャンも感じさせるナンバーもあるかと思うと、もろにローラ・ニーロを彷彿とさせる静かなピアノ弾き語りの「Magic View」やメロディ展開が素晴らしい「Nothing But A Miracle」もあり、かたやエルトン・ジョンの妹?と思わせるようなピアノを基調にしたポップ・センスがみずみずしい「Ariel」、そして極めつけ終盤にゴスペルコーラスを従えて若くて白いアレサさながらに盛り上げる「Photograph」などなど....とにかく一曲一曲それぞれがきらめくようなソウルネスとポップマナーに満ちていて、捨て曲がない。彼女の曲によってはちょっと蓮っ葉に聞こえる、そしてちょっとフェイクしながらファルセットを交えてソウルフルに歌うボーカルもこのアルバム、そしてダイアン・バーチというアーティストの大きな魅力になっている。この声、ホント好きだなあ。
 
DianeBirch2.jpgまた上述した「Fire Escape」など、一曲目からいきなり情景がありありと浮かび上がってくる曲を繰り出すあたり、作曲の才能にも非凡なものがある。僕はこの曲のサビを聴いて、その60年代レトロ風のサウンドも相まって、映画『The Big Chill~再会の時』(1983)での本編では姿を現さない(もともとはウィリアム・ハートが演る予定だったらしい)アレックスの葬儀の場面でしめやかに、しかし何故か華々しくストーンズの「無情の世界」が鳴り渡るシーンを思い出していた。そう、正にあの映画の「今なんだけど妙にレトロで懐かしくて、胸が締め付けられる」ような雰囲気がこのアルバムには充ち満ちている。そしてそうした要素が僕の音楽のツボをつきまくってくれるので、これほどはまりこんでしまうのだと思う。そんな彼女のTV初ライブの映像があったのでちょっと見て欲しい。


 何でも彼女の父親は宣教師で、その関係でティーンエイジャーの頃はアメリカ国内はもとより世界を転々とし、ジンバブエや南アフリカ、オーストラリアなどで過ごした時期もあったらしい。そういう小さい頃の経験が、このアルバムの遙かに広がる地平線に沈む太陽を見ているような感覚を起こさせる楽曲作りに如実に反映されているのだろう。またこのアルバムは全国のCDショップの店員が投票する2009年CD大賞(「本屋大賞」のCD盤かな?)にも選ばれたそうで、日頃いろんなCDを聞き慣れているCDショップの店員さん達にも新鮮に響いたというのも大いによく判る。英米で大いに売れたわけでもなければ、評論家から受けがいいとかいうことは全くないのが不思議なのだが。大体ソウルフルでレトロなハスキーボイスの女性ボーカル、というのは僕の弱点で、2008年の年間1位に選んだシェルビー・リンとか、レイチェル・ヤマガタとかまあ典型なのだけど、そういう好きなボーカリストがまた一人増えたと言うことで個人的には次作(結構一発のみでこの後は出なかったりしても全然驚かないんだけど)に期待している。

 どうでしたか。あなたが2009年に気に入ったアルバム、どこかに入ってたでしょうか。長々とお付き合い頂きありがとうございました。明日はいよいよグラミー前夜ということで、恒例の主要賞の予想をアップします。お楽しみに。
■2009年My Best Albums - #2
My Top 10 Albums of 2009
#2: BLACKsummers'night - Maxwell (Columbia)

Maxwell_BLACKsummersnight.jpg マックスウェルって、90年代以降のR&Bシーンでちょっとユニークな立ち位置を一貫して保持してきている。オールド・スクールなコブシの入った正統派R&Bシンガーでもなければ、アッシャーのようにマイケル・ジャクソンの直系的メインストリームR&Bシンガーでもない。最近のメインストリームにありがちなヒップホップ・テイストをちりばめて売りを狙う、ということもしてこない。眠そうな目をした風貌のアフロのお兄ちゃんが醸し出すのはむしろどっちかというとプリンスとかそっちの方のやや中世的かつ隠微な雰囲気で「官能的」という表現がしっくりくるイメージだ。実際ケイト・ブッシュあのナイン・インチ・ネイルズの曲をカバーしたりとか、あまりR&Bシンガーらしくない楽曲センスとそれでいて自分のキャラクターの魅力を最大限に抽出できるトータル感の高いサウンド・作品作りとの微妙なギャップが気になる、そんなアーティストとして認識してきたように思う。

 作品のクオリティの高さはだいたい一定してきた。デビュー作『Maxwell's Urban Hang Maxwell_UrbanHangSuite.jpgSuite』(1996)はレオン・ウェア(あの!マーヴィン・ゲイI Want You』で有名)とのプロデュースによる正にマーヴィンの世界を下敷きに、彼のしなやかな歌声とサウンドプロダクションがマッチした完成度の高い作品だったし、その後も是非生で聴きたかった『Unplugged』(1997)、『Embrya』(1998)、『Now』(2001)と5年ほどの間に標準以上の作品を出してきた。ただ作品を重ねるにつれ、あのファーストの神通力がさほど凄みを持って迫ってきてないかなあ、という不満があったのも事実。そして彼は長考に入った。前作からブランクを置くこと8年。そして昨年夏の終わりに、今後順次発表されるという、『BLACKsummers'night』『blackSUMMERS'night』『blacksummers'NIGHT』三部作の第一弾という意欲的なんだか冗談なんだかよー判らん(笑)、でも本人としては力が入っていることがこれだけでも判るこのアルバムが届けられたが、僕は正直言ってあまり期待せずに常連買い的な感覚で聴いてみた。

Maxwell.jpg 冒頭の「Bad Habits」イントロのティンバレスの音色とマックスウェルの全く変わらぬファルセットボーカルを聴いた瞬間、僕は思った。「初心に戻ったな」そう、このアルバム、ファースト以来久々にダウン・トゥ・アースなトラックに乗せてマックスウェルの官能のソウルの世界がマーヴィン・ゲイ的マナー(まさに『Let's Get It On』~『I Want You』あたりの流れ)で展開されるという、意欲作なのだ。トラック・楽曲の出来も良い。この曲のホーンセクションのリフといい「Cold」の70年代初期モータウン・サウンドを彷彿とされるコアなリズム・セクションといい、ビルボードR&B/ヒップホップチャートで14週間1位を独走したPretty Wings」のゆっくりと聴く者を解きほぐしてくれるようなメロディといい、カッコいいホーンリフをバックに、変リズムやさざ波のように後から後から波状攻撃でリフが押し寄せてきてカタルシスに持って行ってくれる「Help Somebody」といい、アルバムの2/3ほどまではあっという間に聴き進んでしまえるような力をこの作品は持っている。

 アルバム後半は前半に比べるとよりレイドバックした、マックスウェルお馴染みといえるセンシュアルなナンバーが続くが「Fistful Of Tears」のようにちょっとメロディにメリハリを効かせたナンバーやアコギで切々と歌う「Playing Possum」といった曲も織り込むあたりが軽い変化も与えていて、本作を何度も聞き込める作品にしている。そして、タイトルにもあるように、ジャンプナンバー的な作品、ムーディーなマックスウェル的トラック、静かなバラードなど、いろんな角度から「ブラックネス」を感じさせるナンバーで満載されたアルバムは最後70年代ニューソウル・ムーヴメントの頃を彷彿するようなインスト・ナンバー「Phoenix Rise」で幕を閉じる。


 次作はゴスペルにベースを置いた、しかしおそらくマックスウェルらしい料理を施した作品になるとのこと。8年の沈黙を破り、きれいにアフロを刈り込んで、自分の原点の一つであるマーヴィン・ゲイ的スタイルをもう一度取り入れた入魂とも言える本作品は、ニューヨーク・タイムズ誌の選ぶ2009年ベスト・アルバムに選出された。ブルックリン出身の彼に取ってこれほどふさわしい評価もないだろうし、これだけの充実作を届けてくれたマックスウェルの三部作第二弾には大きな期待を持っている。それまではこの作品の届けてくれる、ニューヨークの街角を思い出させてくれるブラックネスの世界に浸ることにしよう。

 さあ、あといよい一枚。頑張って今日中にアップしようっと。
■2009年My Best Albums - #3
My Top 10 Albums of 2009
#3: Wilco (The Album) - Wilco (Nonesuch)

Wilco_TheAlbum.jpg さていよいよトップ3です。3位は僕にしてみれば言わずと知れたウィルコのセルフ・タイトル・アルバム。あのラクダ(ラマという説もある)のジャケのやつです。ウィルコと言えば僕の好きなライアン・アダムスと共にここ10年くらいのオルタナ・カントリーというかアメリカーナというか、アメリカのカントリー、ブルース、ロック、フォークといったあたりを渾然一体と融合させた音楽スタイルの代表選手として頑張ってきた、ジェフ・トウィーディー率いるシカゴ出身の6人組。1996年に『Being There』で一躍認められたんだけど、僕は例によってというか音楽仲間のN坂君に教えてもらってその次の『Summerteeth』(1999)からリアルタイムで聴き始めた。もともと知る人ぞ知るアメリカーナの伝説的バンド、アンクル・テュペロが1994年に解散してその代表メンバーの一人だったジェフが結成したのがこのウィルコ。もう一つの分家バンド、サン・ヴォルトに比べてロック寄りのWilco_YankeeHotelFoxtrot.jpgアプローチだったが、その後レーベルと作品方向性で対立して大手のワーナーを離脱、『ブエナ・ヴィスタ・ソーシャル・クラブ』で有名なインディ系のナンサッチから、シカゴ音響派の雄、ジム・オルークと組んだ実験的なサウンドを含む名盤『Yankee Hotel Foxtrot』(2002)『A Ghost Is Born』(2004)を発表する、なんていう波瀾万丈の時期もあった。ちなみに僕は『Yankee...』の頃NYに駐在していて、セントラル・パークのSummer Stageという夏期アウトドア・ライブ・シリーズ・イベントで、この頃のウィルコを生で見るというラッキーな体験もしたこともあって『Yankee...』は未だに僕のウィルコフェイバリットだ。

Wilco.jpg その後2枚組ライブの『Kicking Television: Live In Chicago』(2005)を境にしてジム・オルークから離れたこともあってか、この間の『Sky Blue Sky』(2007)では複雑でやや実験的なサウンドからアメリカーナ王道系に戻ってきた感じがあった。まあそういう経緯を経ての今回のアルバム、しかもセルフ・タイトル作である。大体アーティストがセルフ・タイトル作を(しかもデビュー作じゃなくてキャリアの途中で)出す時、というのは何らかの意図があるのが普通だ。ビートルズしかり、ジェネシスしかり....あと思いつかないけど(笑)でも、大体これまでとちょっと方向性を変えてみたりしたい時に勝負の意味を込めているケースが多いんじゃないだろうか。で、このウィルコのアルバムはというと...いや、勝負というよりは、実に肩の力がすっと抜けたとても親近感のわく、それでいて一本筋の通った楽曲と演奏がズラズラと並んでいて嬉しくなってしまった。大体冒頭からセルフ・タイトル曲(「Wilco (The Song)」)だし。オープニングとしてふさわしく無骨ながら暖かみのあるミディアムナンバーのこの曲で、ジェフはこう歌い出す。「何だか自分のものじゃない人生を生きてるような気がするかい?/落ち込んでどうしようもない?/誰かに攻撃されて、背中をブッスリやられてるような気分かい?/じゃあこのこと、知ってほしい/ウィルコ/ウィルコ/ウィルコは君を愛してるよ、ベイビー」....そう、これがこのアルバムの全てを物語っている。ウィルコはこのアルバムの曲を聴いて、聴き手に気持ちよくなってもらいたいのだ。

 このメッセージはアルバムを通じて一貫している。あの「1, 2, 3, 4」のファイスト嬢との気wilco2.jpgだるくも気持ちのいいジェフとのデュエットが聴ける「You And I」も、明らかにメロディといい、ギターリフといい、ピアノの入り方といい、まんまジョージ・ハリソンの「マイ・スイート・ロード」じゃん!という楽しくてウキウキしてくる「You Never Know」も、ぐっとアーシーなリズム・セクションとジェフの裏返ったボーカルがメンフィス・サウンドを彷彿させて気持ちええ「Country Disappeared」も、そしてアコギとハモンドオルガンとペダルスティールの響きがナッシュヴィル的な「Solitaire」も、もうぜーんぶ全ての楽曲がとても素敵なポジティブなオーラに充ち満ちているのだ。それでいてなーんも難しいことはしていない。いやむしろ、週末のジャムセッションのテープの残りなんではないか、と思うくらい好き勝手気ままに演奏した内容をテープに落とした、という気の置けない感じが凄くいい。それでも最後はちょっと思索的になって、ラストナンバーの「Everlasting Everything」ではちょっとしんみりしたアコギのイントロからジェフはこう歌う。「生きとし生けるものは全て死ぬ/空に向かってそびえる建物もいつかは倒れる/でも永遠の愛が嘘だなんて言わないで/悲しいことだけど/物事には善し悪しに関わらず必ず終わりがある/全ては積み重ね/永遠の愛こそ君の持っていたもの/永遠に続く全てのもの/どんなものでも結局意味はなくなるもの」これだけほんわかにポジティブに来たのに最後でこういう虚無的なことを歌うのがジェフらしいのだが。でもこのアルバムの聴後感はそれでもとてもポジティブだ。なお本作は今回のグラミーから新設された最優秀アメリカーナ・アルバム部門ボブ・ディランルシンダの作品とともにノミネートされているが、僕は当然これが本命だと思っている。


 ウィルコはこの春、単独アクトとしては初めてでフェスへの参加を含めると通算2回目の来日を果たす。今からジェフ率いるウィルコの連中のインティミットな、ポジティブなオーラに包まれた演奏をライブで聴きにいくのがとっても楽しみだ。
■2009年My Best Albums - #4
My Top 10 Albums of 2009
#4: 21st Century Breakdown - Green Day (Reprise)

GreenDay_21stCenturyBreakdown.jpg このアルバムの数少ない欠点の一つは、全18曲聴き通すと70分に及ぶ長尺で、真剣に向き合うと疲れてしまうこと。21世紀のアメリカにおける問題を描き出そうとする社会的メッセージ作を目指したのであればこれは下手をすると致命的な欠点になり得た。そしてこのアルバムの数多い優れた点の最たるところは、そうした長尺のアルバムを、一曲一曲を比較的短めに維持して(もともとほら、グリーン・デイってパンクだから。忘れてた?)早めのテンポで曲が移り変わっていく構成にしたことと、その曲のほとんどが一定以上の楽曲クオリティで、かつ健全なポップさを確保して洋楽ロックリスナーなら誰が聴いても(一部のへそ曲がりな音楽評論家や『Dookie』(1994)命!の時代感覚のややずれたグリーン・デイファンを別にすれば)楽しめるというレベルを維持していること。これは多くのロックレコードにおいて楽曲クオリティのばらつきが避けられないことを考えると実は大変なことだ。今回前作で優れたプロデューサー・ワークを発揮した今やシーンを代表するプロデューサー、ロブ・カヴァロと袂を分かち、かのブッチ・ヴィグニルヴァーナソウル・アサイラムスマパンガーベッジ等)にプロデューサーを任せたのが裏目に出ないかと懸念されたが、その心配も全くなかった。

 前作の『American Idiot』(2004)で当時のブッシュ政権を小気味いいほどまでにコケにしGreenDay_AmericanIdiot.jpgながらアメリカという国が直面している70年代80年代とは違う価値観が世界地政体系を覆いつつある、という問題を提示して見せてから、グリーン・デイというアーティストの表現スタンスは明らかに進化を遂げている。しかもこれが商業的成功のみならず(US・UK共にアルバムチャートNo.1初登場)、第48回グラミー賞では山作が最優秀ロック・アルバム賞、そしてシングル「Boulevard Of Broken Dreams」が見事レコード・オブ・ジ・イヤーを獲得するという形で評価を受けたわけなので、もう彼らが『Dookie』の頃に戻れないところまで来てしまったのは明らかだ。こうなってくると大向こうの期待に応えるレベルの作品を出し続けなければ、というプレッシャーがかかったことは容易に想像が付く。グリーン・デイ松井やイチローと同じ次元での自分たちの才能との戦いの次元に入ったといっていい。

greenday.jpg 前作から5年を待たなければいけなかったというのはそのプレッシャーの現れだが、そうやって発表された本作のクオリティは期待に見事に応えている。ケレン味たっぷりに演奏されるタイトルナンバーやピアノでビッグ・ナンバーっぽく始まって一転、ステージで絶対盛り上がるグリーン・デイ真骨頂の怒濤の展開にもって行く「Viva La Gloria」、まるでメロ構成がポール・マッカートニーを彷彿させる「Last Night On Earth」などなど、楽曲の出来というかソングライティングのクオリティはあっぱれだ。でも個人的にこのアルバムのベスト・トラックは、60分を超えてそろそろ聴き疲れた頃にドロップされる「21 Guns」だ。シングルにもなったこの曲は理屈抜きに僕の音楽的ツボを深層的なところでガンガン突いてくれる鳥肌曲。これをライブで機関銃のようにハードナンバーをやった後でいきなりポーンとやられた日には、ちょっとヤバイ。そして一度アルバムを聴いてこの曲が最後から3曲目にあることが判ると、2度目からはここにつながっていく楽曲の紆余曲折盛り上がりがまた違った形で楽しめるようになるから不思議なものだ。

 ラジオボイスの「Song Of The Century」でアルバムが始まって、同じラジオボイスのこの曲や「Viva La Gloria」の一節などこのアルバムの断片を含む「American Eulogy」(アメリカへの弔辞)でアメリカの現状に徹底的に悲観的な止めを刺したか、と思わせながら最後は「See The Light」で一応未来に希望をほの抱かせて終わる、というロック・オペラ的アルバム構成自体は予定調和のようにも見える。ただ繰り返すが前作の成功を踏まえてプレッシャーに応えてこのレベルの作品を、手堅くでもとても躍動感溢れクオリティ楽曲構成で届けてくれたビリー・ジョーと仲間達の仕事ぶりは評価に値するだろう。「グリーン・デイはここ5年同じような曲しか書いてねえからつまらん」という昔のグリーン・デイ・ファンの声も聞こえてくるが、それでいいのだ。同じような「クオリティの高い」楽曲を、このレベルのミュージシャンシップで届けてくれ続けるのであれば。


 今年のグラミーでは、本作が最優秀ロック・アルバム部門、「21 Guns」が最優秀ロックソング部門、最優秀デュオ/グループ・ロック/パフォーマンス部門と3部門にノミネートされている。主要3賞にノミネートされなかったことが腑に落ちないが、少なくともこの3部門は総なめにしてもらいたいもんだ。
■2009年My Best Albums - #6 & #5
TeddyPendergrass.jpg みなさん一週間ぶりのご無沙汰です。実は前回アップの時にあの偉大なソウル・シンガー、テディ・ペンダーグラス逝去(1/13)のニュースに反応するのをすっかり忘れてしまいました。あのハロルド・メルヴィン&ブルーノーツ時代の「If You Don't Know Me By Now」(ご存知シンプリー・レッドのカバーで1998年No.1)「Wake Up Everybody」等数々の名唱を聴かせ、ソロになってからも「Close The Door」「Turn Off The Lights」「Love T.K.O.」などセクシーだけども露骨ではない、というR&Bシンガーの一スタイルを完成させたソウル・レジェンド。1982年交通事故で下半身不随で車椅子生活になったにも関わらず、まもなく演奏活動に復帰、1984年には当時無名だったホイットニー・ヒューストンをフィーチャーした「Hold Me」(彼女の実質のデビュー作です)を含むアルバム『Love Language』を発表して復帰、1985年フィラデルフィアで行われたライブ・エイドのコンサートでは車椅子に乗ってあの熱唱を聴かせてくれたのがまだ記憶に新しいところ。享年59歳だからまだまだ若いのに....また世界は偉大な才能を失ってしまったなあ。R.I.P, Teddy.

 さてなかなか進行がはかどらないMy Best Albumのカウントダウンですが、よく考えたらもうグラミー賞授賞式まで1週間ちょっとしかないことに気がつきました。早くこちらを片付けないとグラミー賞予想が出来ん!ということで今日も頑張って5位と6位発表、いきたいと思います。

My Top 10 Albums of 2009
#6: Middle Cyclone - Neko Case (Anti)

NekoCase_MiddleCyclone.jpg これ、ちなみにネコではありません。ニーコ、と読むのが正しいみたい。実はこの前のアルバム『Fox Confessor Brings The Flood』(2006)をN坂君に勧められて初めて聴いてみるまでは、てっきり「ネコ・ケースって、ウルセイ・ヤツラとかみたいに日本語っぽい名前を付けて喜んでるインディー系のパンク・バンドか何か?」(笑)と思ってました、マジで。で、『Fox...』を聴いてみると若干ハスキーながら無茶苦茶透明感の高い、フォークというかアメリカーナというか、僕のもろストライク・ゾーンの女性シンガーだったんでびっくり、というのは前にも書きました。残念ながら『Fox...』は発表後1年以上経って聴いたので年間ランキングに入れられなかったのだけど、もしリアルタイムに聴いていたら多分確実にトップ10に入れていたでしょう。

 で、今回の新作『Middle Cyclone』。前作のジャケが何やら童話風のイラストだったのに、NekoCase_FoxConsessor.jpg今回はレトロな自動車の上にニーコ嬢がクラウチング・スタイルで乗っかり、手には何と槍らしきものを構えているの図。なんだなんだ、今度はひょっとしてハードなサウンドなのかしら、と思って冒頭の「The Tornado Loves You」を聴くと、そんなことはなくて相変わらず引き込まれるような透明感に充ち満ちたニーコの声とアコースティックなサウンドで、いきなり納得。しかし彼女の場合、全体的にメランコリックというか、3曲目の「People Got A Lotta Nerve」なんかもアップテンポの楽しい曲なんだけど(♪マンマンマン~マンマンマンイーター♪)彼女の透き通るような声で歌われると何やらもの悲しさを感じてしまう、というのがとても印象的というか、アルバム全体の感触がとてもアーシーな感じがするのです。アルバムのテーマはというと、何とあのスパークスの1974年の曲をカバーしている「Never Turn Your Back On Mother Earth」とか「I'm An Animal」とかでまんま歌っているように、自然と一体化しているというか、自然のNekoCase.jpg生み出す音や空気や動物たちとかそんなことを強く意識した曲が大半。でも別にグリーン・ピースとか「自然破壊反対!」とか言ってるわけでもなさそうで、ごく自然に自然との関係で生まれてくるうたを歌っている、という感じで嫌みがないのがよろしい。最近買ったという、バージニアの農場の納屋で録音した(まるでこの間のブラック・クロウズと作品作りのアプローチが似てるが)というだけあって、曲のそこここにバックグラウンド・ノイズ的にいろんな音が入っているのもご愛敬。そういえばこのアルバムのクロージングナンバーは「Marais La Nuit」(フランス語で「夜の沼」)という、正にこれ、自分の農場の近くの沼で録音しただけだろ!という、31分にわたって延々と蛙と鈴虫の鳴き声が流れる、という代物だ。徹底してるというか何というか。


 何しろニーコの声が気持ちいいし、彼女の曲やバンドの演奏も地に足が付いているし、自然をテーマにした、とかいう歌詞とか判らなくても音像が聴いててくっきり浮かんでくる。去年の春から夏にかけてはかなりiPodでパワーローテーションでした。これも前に書いたけど、エミルー・ハリスとかキャスリーン・エドワーズとかボーカルの立ったオルタナ・カントリー系が好きな方には絶対お勧めのアルバムです。前作も一緒に聴くとなおいいかも。

My Top 10 Albums of 2009
#5: The Resistance - Muse (Warner Bros.)

Muse_TheResistance.jpg アルバムはUKチャートNo.1、そしてUKのみならずアメリカでも「Uprising」がトップ40入りの上、オルタナティブ・ロック・チャートでほんの先週まで通算17週間1位を記録するなど、いきなりの大ヒットで去年は結構唐突感があるほど日本のメディアにも取り上げられ、今年の正月早々来日公演も果たしたUKの3人組、ミューズの『The Resistance』が僕の年間5位です。ミューズというと僕はこの前の『Black Holes And Revelations』(2006、砂漠でオジサンたちがテーブル囲んで座ってるヒプノシスのジャケのやつ)で初めて聴いたんですが、何かすごい力入ってるハード・プログレ・バンドだなあ、というのが正直な感想で、あまり楽曲に面白みを感じなかったので、結構評判はよかったんだけど個人的には評価できなかった。同じハードプログレっぽいのでも、マーズ・ヴォルタみたいに突き抜けたところがないというか、中途半端というか。

 で、今回シングルの「Uprising」がいきなりヒットしてきたので聴いたところ、前作の時の印Muse_BlackHoles&Revelations.jpg象と違って「えらいポップじゃん」。さっそくアルバムを買って聴いてみると、おおこれはまたえらく楽曲の作りがキャッチーになったなあ、と思わずつぶやいてしまった。タイトルの「Resistance」とか何か歌謡曲メロ的なピアノイントロリフとサビのマーズ・ヴォルタ系のカッコイイリズムに乗ったワッショイコーラスとその後のU2かお前は!という感じのブリッジとのアンバランス感が気持ちよかったり。次の「Undisclosed Desires」はマドンナかはたまたデュラン・デュランか?という感じのもろメインストリーム・エレクトロ・ダンスナンバー的アプローチだったりして思わずニヤリとしてしまうし、ピアノで静かに始まる「United States of Eurasia / Collataral Damage」なんていうまた大ほら吹き的な尊大なタイトルの曲(明らかにアメリカに対抗してる)なんて、途中ブライアン・メイがやってるのかと思わずクレジットを見直してしまったくらいクイーンちっくな展開で、しかも最後は実は最近僕が密かにはまっている(明らかにのだめの影響です)ショパンの「ノクターン作品9-2」に変貌していく、という個人的なツボも思いっきりついてくれる展開にきっちりはまってしまったのでした。

muse.jpg アルバムの締め3曲はまたクラシック風ピアノをふんだんにフィーチャーした「Exogenesis: Symphony Part 1」「Part 2」「Part 3」といかにもの構成でしめられるが、クラシックを使うというか、クラシックへの劣等感を楽曲に取り込んでしまうことによって昇華しようというのはELPリック・ウェイクマンとかの昔から古今東西プログレの常套手段なのだけど、ここでのミューズのやり方はもっとキャッチーなメロと楽曲がどんどん変化していく展開で聴き手のツボをついてくる、という手法なので、むしろ(昨日の飲み会でM本さんが言ってて、ああそうだなあ、と思ったが)『オペラ座の夜』のクイーンだという見方が正しいと思う。ただプログレにせよ、クイーンにせよ、この作品でのミューズは聴き手を盛り上げて楽しませることにとことん徹してくれてるような気がして、僕は前作より百万倍も気にいってしまったのでした。


 先日のライブに行ったYazさんの話によると、やはり彼らはステージングに長けているというか、客を楽しませるのがうまかったようで大いに盛り上がったとか。またレーザー使いまくりのヴァリライト使いまくりで80年代のジェネシスのステージみたいだった(笑)ということなので、実は僕ら世代のオジサンロックファン向けなのかも。しかしそんなだったらライヴ見ときたかったな。ところで実は昨日本屋で『ロッキング・オン』の2009年年間アルバムランキングを見たところ、このアルバムが堂々年間2位にランキングされてた。去年オアシスを1位にしていた雑誌なのでいかにも、という感じなのだが、そうした王道メインストリーム系のロックを評価する雑誌の年間2位だから、まだ聴いてない人、先入観なしに聴くと結構気に入っちゃうかもよ。

 さあ頑張ってこの週末もう少しアップするぞ。
■2009年My Best Albums - #8 & #7
kesha.jpgいやあまたちょっと間が開いてしまってすいません。この間にレギュラー・チャートの方は1/2付のHot 100でジェイZ+アリシアの「Empire State Of Mind」をキシャ嬢「Tik Tok」が蹴落としてから既に4週目の1位をキープしているという状況。おまけにアルバムの方でも年末から6週連続1位と圧倒的な強さを誇っていたスーザン・ボイルおばさんを蹴落としてアルバム『Animal』が今週(1/23付)初登場1位、という、アリシアメアリーJもできなかったことをしでかしてます。この子、2010年の台風の目になるような気も。まあ1位に敬意を表して「Tik Tok」のPVでも見てやってください。結構最近これ耳についてきて、結構気に入ってるかも。

Kesha - Tik Tok - (Official Music Video) (HD)

さて、ちょっと止まってる2009年My Best Albumのカウントダウン、今日は一気に7位と8位をいきます。まずは8位から。

My Top 10 Albums of 2009
#8: Stronger With Each Tear - Mary J. Blige (Matriarch/Geffen)

MaryJBlige_StrongerWithEachTear.jpg 時は2009年師走。世間では48歳のスーザン・ボイルのアルバム『I Dreamed A Dream』が売れに売れてテイラー・スイフトの『Fearless』を抜いて年間最多売上アルバムになるんじゃないかとか、スーザン・ボイルが紅白に出るとかで音楽の話題は一身にこのスコットランドのオバチャンが集めていた頃、同時期にリリースされたアリシア・キーズの新譜『The Elements Of Freedom』に比べても全く日本メディアでは取り上げられずヒッソリと(でもUSでは初登場2位...ボイルオバチャンがいたからね(涙))ドロップされたのがこの女王メアリーJの2年ぶりの新作『Stronger With Each Tear』。2枚前の『The Breakthrough』(2005)の時にどこかに書いた記憶があるのだけど、このアルバムくらい以降、メアリーJのアルバムはいー感じで情念が少し抜けて円熟味と本格派R&Bシンガーとしての歯ごたえがミックスされた絶妙のパフォーマンスを見せてくれるように成ってきたと思う。あの久々の大ヒットになった「Be Without You」(2006年最高位3位)がそうだったし、かのアルバム以降はスターゲイトニーヨクリス・”トリッキー”・スチュアート+ザ・ドリームのコンビなどに音作りを任せるなど、全体的にメインストリームポップとのクロスオーヴァーを意識した(でも完全にはそっちに行ってない)音作りになってきた。コアなR&Bファンにはこのあたり眉をひそめる向きもあろうが、あの結婚に失敗し、パフ・ダディに捨てられドロドロ情念的に盛り上がった20代~30代の迫力もメアリーJなら、そこから一枚も二枚も成熟したR&Bシンガーとして皮がむけ、メインストリーム系の音にノリながらも圧倒的な存在感を見せている今のメアリーJも僕は支持したいと思う。少なくとも情念系の曲で埋め尽くされたアルバムよりもこうしたアルバムの方がより多くの(そして『What's the 411?』(1992)の凄さを知らない若い世代でも)リスナーがメアリーJの凄さを知ってもらえることの方が大事だ。ちょうど『This Is It』がきっかけでうちの息子とか若い世代が改めてMJの凄さを知ったように。

 で、今回の『Stronger With Each Tear』。タイトルを見て「ありゃりゃ、また情念の世界に逆戻りかよ」と思いながら聴き始め、冒頭のエイコンのプロデュースの「Tonight」や続くロドニー・ジャーキンス・プロデュースでかのドレイクをフィーチャーした、年齢差15歳(!)のコラボ曲The One」(そーいえばそういうタイトルのU2とのカバー・コラボあったな)あたりまではちょっと重たいのと、前作『Growing Pains』(2007)で今風サウンド路線がやや強めになってたのを思い出して「うーんエイコン、ドレイクってちょっとミスマッチかなあ」という違和感がむくむくと。でも4曲目のニーヨ・プロデュース、T.I.をフィーチャーの「Good Love」からは一転して『The Breakthrough』でファンを引きつけたあの華やかでかつ極太のメアリーJが!まるでハラリとモノトーンのドレスを脱ぎ捨て、華やかなドレスで登場した歌姫といっPreciousMovie.jpgた感じで、そのままノンストップでつながる「I Feel Good」そしてシングル曲の「I Am」といったスターゲイト作品で僕の満足度は一気に頂点に。メアリーJのしなやかで存在感のあるボーカルといい、プロダクションチームの彼女の魅力を心得た楽曲構成といい、後半は一気に盛り上がっていって聴く者の耳を離さない。特に80年代~90年代にかけてメアリーJと共に青春を過ごしたソウル・ラヴァー達にはたまらない内容。ただ盛り上がりだけではなくスチュアート+ザ・ドリームによるメアリーJらしい情念リリックの「Kitchen」を経て、最後はあのラファエル・サーディクの手による映画『Precious』(2009, 現在ゴールデン・グローブ賞3部門のノミネートされている、マライアも出演しているブラック・ムーヴィー)よりの匂い立つようなバラード「Color」をメアリーJがアーシーに、そして情念たっぷりに歌い上げてアルバムの幕を閉じる。

最初の3曲がちょっと若いリスナーを意識しすぎてちょっと全体から浮いているのが惜しいが、12月発表という土壇場とはいえ、同時期リリースされたアリシアの新譜や年初出たキーシャ・コールのアルバムなんかと比較しても、2009年のR&B作品では数少ない一押しできる出来だと思う。

My Top 10 Albums of 2009

#7: Before The Frost...Until The Freeze - The Black Crowes (Silver Arrow)

オール・オリジナルのロックのライブ・アルバム、というとかのBlackCrowes_BeforeTheFrost.jpgジャクソン・ブラウンRunning On Empty』(1978)とかが思い浮かぶ。オール・オリジナルでなくとも、オールマンの『フィルモア・イースト・ライヴ』(1971)とかピーター・フランプトンの『フランプトン・カムズ・アライヴ!』(1976)など、それまで世にあまり知られていなかった曲をライヴでやってブレイクしたアルバム、というのは作品クオリティの高い、いわゆる名盤が多い。しかしだ。ブラック・クロウズの場合、一時かなり人気を集めたが今はメジャー・レーベルからも切られてインディで頑張っているルーツ系ロック・バンド、という立ち位置だし、いきなり「オール・オリジナルの(しかも)2枚組ライヴ盤」と言われて、さすがのクロウズ・ファンの僕も俄に食指が動かなかったのは事実。彼らのこの前のライブ盤『Live』(2002)も良かったけど、あれは既出曲のライブで、曲の出来とかも判ってたわけだし。結局アルバムリリースは9月だったのに、意を決して買ったのは11月。

blackcrowes.jpg でも、冒頭一曲目の「Good Morning Captain」の最初数小節を聴いて、僕の不安は一瞬に消え去った。ファズのかかったギターのストローク、ディキシー・ピアノの音色、そして地面に音をおろしたかのような腹にずんずん響くリズムーそう、この曲調といい、リズムといい、そしたクリス・ロビンソンのいつになくしゃがれた、まるであのレヴォン・ヘルムが乗り移ったようなボーカルと言いーこれ、まるでザ・バンドじゃないの!後で聴いたところによると、実際にこのライヴ、NY州北部にある、レヴォン・ヘルム所有の納屋(!)を改造した会場で録音されたというから、音やボーカルがザ・バンドしているのも当然なのかも。しかしこの一曲一曲、最初の一音が鳴った瞬間にほわーっと、胸の中が熱くなるような感じは何なんだろう。まるで古くからの仲間達で集まって、昔話をしながら、時々そこらにある楽器を取り上げたヤツが奏でる音に和みつつ、ゆったりとした時を過ごしている、という感じがして、オジサン・ロック・ファンとしては真に至福の時が過ごせるサウンドと、演奏と、ボーカルと、楽曲がぎっしり詰められているアルバムなのだ、これは。陳腐な表現を許してもらえれば、アルバム全体にバーボンの香りが漂っているというか。例えば5曲目の「I Ain't Hiding」。いきなり冒頭からピョンピョン跳びはねるディスコ風ベースリズムで「何じゃこりゃ、まるでストーンズの『Emotional Rescue』じゃん。今更ロックバンド的ディスコやってみました、じゃないだろう」とこのアルバムで唯一イラッとする瞬間なのだが、これが後半にかけて単なるディスコ・リズムのロック曲から一気にブルース・ハード・ロック的なリフにとっても自然に飛び込んでいく瞬間、やられた、と思ってしまうこの心地よさ。ここまで仕掛けに凝ってなくても「Appaloosa」「A Train Still Makes A Lonely Sound」「Houston Don't Dream About Me」「And The Band Played On」と、往年の激しさはないもののいー感じでまったりとした、クロウズのイギリス南部とアメリカ南部のブルースやカントリー等々をごった煮にしたような真のルーツロック的なナンバー一つ一つが何回聴いても胸にしみてくるーうー気持ちええ。

 考えてみるとルーツ・ロックという(最近の言葉を使うとアメリカーナ、というべきか)音楽black_crowes_Illust.jpgスタイルは何ら新しい要素があるわけでもなく、基本的には1970年代のそれこそザ・バンドオールマンの頃からこっち、ほぼ同じ音楽スタイルでやられていることの繰り返しに過ぎない。ウィルコライアン・アダムスのように、近時代的なシンガーソングライター的アプローチでアメリカーナを料理して素晴らしいアルバムを作っている連中もいいが、クロウズがここでやっているのはそういう余計な味付けは一切なく、ステーキはソルト&ペッパーのみ!といった感じで伝統的なスタイルに徹し、その代わり高度のミュージシャンシップでもって自らの存在感を示しているということだと思う。そしてこんなバンドはそうそういない。聴き手を揺さぶってくれるレベルのパフォーマンスを、こういうスタイルでやってくれるバンドは。

 1枚目の『Before The Flood...』はそうした演奏満載であっという間に聴いてしまえるが、2BlackCrowes_UntilTheFreeze.jpg枚目の『...Until The Freeze』は実はCDではなく、このアルバムのウェブサイトにアクセスして、CDに同梱されているアクセスコードを入力してダウンロードするという、クロウズの音楽スタイルに似つかわしくないほど今的な手法で届けられる。面白い。サイトには、通常のmp3フォーマットの他、FLACという高音質のフォーマット(専用ソフトが必要らしいが)のファイルが用意されている。2枚目の『...Until The Freeze』は1枚目の7曲目「What Is Home」とかに共通するようなアコースティックな、曲によっては「Roll Old Jeremiah」とかCSNYとかを思わせるようなよりカントリー寄りの曲が9曲収録されており、いい意味でレイドバックした、ゆったりと聴ける演奏が満載されている。

BlackCrowes_SouthernHarmony.jpg 『The Southern Harmony and Musical Companion』(1992)がクロウズ初期の元気だった頃の傑作だとするなら、この2枚組ライブは、彼らのキャリア全体を通じて最もコンプリートなクロウズの魅力を内包した、別の意味での傑作だと言えると思う。忙しかった一週間の終わった土曜日の晩とかに、ゆっくりウィスキーをなめながらこのアルバムを聴くと一気に違う世界に持って行ってくれる...少なくとも僕に取ってはそういう特別なアルバムになった。で、どうやらこのアルバムの収録の模様を納めたDVDも出ているらしい。ううむ、そっちの方も買わないといけないではないか。

いかがですか?頑張って次の5位と6位も早めにアップしまーす。では。
■2009年My Best Albums - #9
My Top 10 Albums of 2009
#9: The Blueprint 3 - Jay-Z (Roc Nation)

JayZ_Blueprint3.jpg思えば去年のグラミー賞授賞式でジェイZがいきなりコールドプレイと「Lost!」を競演して(パフォーマンス自体はクリス・マーティンの無様なボーカルで残念な出来だったけど)からこっち、ジェイZ復活の予感がなくもなかった。2007年にリリースした『American Gangster』も悪い出来ではなかったが、嫁さんのビヨンセが横で「Irreplaceable」を年間1位の大ヒットにしたり、『I Am...Sasha Fierce』(2008)をリリース、次から次にヒットを飛ばしてたりするのを見てると「うーむジェイZも頑張らんといかんとでは?」と思っていたところだったので、むしろ復活を期待していた、というのが正しい表現だろう。

そんな中で、新作が2001年と2002年にリリースされた『Blueprint』シリーズのパート3になる10RollingStone.jpgと発表されて期待が高まらないわけはない。何せ1作目の『The Blueprint』(2001)はかのローリング・ストーン誌が先頃発表した2000年代のベスト・アルバム100(ここをクリックすれば飛べます)の第4位(1位はレディヘの『Kid A』)に堂々ランキングされるなど、ヒップホップがそのエッジをやや失って極端にメインストリーム化してしまったこのデケイドで、正統派ヒップホップの代表作の名盤だったからね。昨年7月に一足先に届けられ、いきなりHot100の24位に初登場してきたシングル「D.O.A. (Death Of Auto Tune)」(最高位24位)は、折からポップ・チャートを席巻していたTペインカニエの曲などで多様されているオート・チューン(声にエフェクトをかけ、音程とシンクロさせた技法)を批判するという、ジェイZらしい矜持に溢れた内容とサウンドだったからよけい期待は高まった。

JayZAliciaKeys.jpg届いた作品はその期待を裏切らない出来だった。何より1曲目の「What We Talkin' About」から「Thank You」、上記の「D.O.A.」、リアーナカニエを従えての「Run This Town」そして彼がメイン・クレジットとしては初のナンバーワンヒットとなった(フィーチャリングでは過去3曲あり)、アリシア・キーズをコーラスにフィーチャーし、モーメンツの「Love On A Two Way Street」のピアノ・リフを見事にループ使いしたニューヨーク賛歌「Empire State Of Mind」(この曲のPVのカッコ良かったこと!)までの前半5曲までは、言わばジェイZの圧倒的な横綱相撲。このうち「Empire...」以外はカニエがいかにもジェイZのために音、作りました!といったNY正統派ヒップホップといった趣のトラックに乗って、堂々とした圧巻のフロウを聴かせてくれ「よっ!ジェイZ!」と声をかけたくなるほどの安定感が素晴らしい。中盤からは一転してヤング・ジージー、キッド・カディ、そして今一番活きのいいドレイクといった若手ラッパーたちとの競演を順々にこなし、それぞれトラックのスタイルは異なるものの、若手の力士たちのぶつかり稽古を難なくあしらいながらかつ自分の存在感を際だたせるという大横綱ぶり。アルバム終盤はカニエ(いかにもな変態サウンドの「Hate」)やファレル(こちらもネプチューンズらしいゴージャスなトラックに乗った「So Ambitious」)といったサウンドメイカーたちとのコラボを経て、静かながら段々盛り上がっていくロック系トラックに乗ったMr.ハドソンとのコラボ「Forever Young」で幕を閉じる。

もちろんジェイZのこと、リリックの内容も貫禄と矜持がそこここに伺え、「D.O.A.」でオートjay-z.jpgチューンに物言いを付けながら、「Thank You」では「最近のラッパーどもをやっつけてやろうと思ってたけど/やつら勝手に自滅しやがる」と半端なラッパーたちを痛烈に批判。「On To The Next One」ではMJオバマに言及、「A Star Is Born」では今に至るヒップホップの実力者たち(パフ・ダディ、Dr. ドレ、エミネム、50セント、ウータン、ローリン・ヒルそしてリル・ウェイン、ドレイクに至るまで)たちの功績を称えるなど、彼のコメンタリーはブラックベリーからケイティ・ペリーまでポップ/ヒップホップ・カルチャーを取り巻くありとあらゆる今の社会状況に渡っている。ジェイZナスと並んでクールなリリシストとリスペクトされる所以であり、英語の勉強も兼ねてリリックを読み込んで見るのも興味深い。


ことほど左様に完成度の高いアルバムながら、何故か今回のグラミーでは、最優秀ラップ・アルバム部門にノミネートすらされてないのはどうしたことかフロ・ライダのアルバムとかノミネートするなっつーの!)?しかし、本作からは最優秀ラップ・ソング部門では「D.O.A.」と「Run This Town」が、最優秀ソロ・ラップ・パフォーマンス部門では「D.O.A.」が、最優秀ラップ/歌唱コラボ部門では「Run This Town」が(ここも本来「Empire...」だと思うんだけど)それぞれノミネートされていて複数受賞が期待出来そうだ。デケードが改まった今、本来NYラップが進むべき方向を改めて指し示してくれる作品として、そして王者ジェイZの渾身作として、フロ・ライダとか聴いて喜んでる方々に是非聴いてもらいたい作品だ。
■2009年My Best Albums - #10
皆さん明けましておめでとうございます。お正月はいかがお過ごしでしたか??なんて、もう日付は1/10になっちゃってて「とっくにもう正月気分なんてないよ」ってな声が聞こえてきそうですが、年末にかなり気合いを入れて「独自集計Decadeランキング発表」を怒濤のようにやったもんで、ちょっと力尽きてまして。あと今年の年末年始はカレンダーもあまり良くなくて、休みが短かったのもあって2010年初めてのブログアップが今日になってしまいました。お許しを。

というわけで毎年恒例のMy Best Albumsのカウントダウン、そろそろ片付けないとグラミー予想をする日がなくなってくるので(今年は授賞式が1/31と去年より一週間早いし)頑張ってとっとと行きたいと思います。その前に今年も買いました『ミュージック・マガジン』誌の年末MusicMagazine201001.jpg号。当然お目当てはライター陣が選ぶ2009年のベストアルバムだったんだけど...なーんか一言でいうと今年のランキング、特に「ロック[アメリカ/カナダ]」部門のランキングはよく判りません。今回僕が選んだ10枚のうち、共通しているのはわずかに1枚。まあ、3位に入っているディラン先生を回避していたのは不明を恥じるべきなのかもしれませんが、1位がジョー・ヘンリーというのもちょっとコアすぎないか?という感じで。でも一応その後アマゾンで買ったのでボツボツ聴いてみようとは思いますが。ということで去年とかは結構楽しんで読めた『ミュージック・マガジン』年末号、今年は1回目を通してそのまま本棚行きになってしまってます。

まあそれはいいとして、さっそく僕の10位から。

My Top 10 Albums of 2009
#10: Big Whiskey And The Groo Grux King - Dave Matthews Band (Bama Rags / RCA)

DMB_BigWhiskey&GrooGruxKing.jpgデイヴ・マシューズ・バンド(DMB)って言っても、その全米での(特にベイビーブーマー世代から下の連中の間での)絶大なる人気ぶりとは裏腹に、日本ではまだまだ知名度が低い低い。彼らのブレイク作となった『Under The Table And Dreaming』(1994)の後にリリースされた『Crash』(1996)から彼らを知って以来のファンである僕からするとこの状況は歯痒い限りだが、日本のレコード会社が今いちDMBを持てあましている理由の一つは彼らの音楽が、ポップ・フックに溢れた、キャッチーなロックではなく、R&B、ジャズ、ブルース、ルーツロック、ポップ、果てはワールド・ミュージックといったありとあらゆる音楽要素を渾然一体と融合させながら、その卓抜な演奏能力とデブマデイヴの略称です、はい)の鼻づまりっぽくも魅力のあるボーカルでぐいぐい聴かせるという、いわば「オトナのロックバンド」である点なのだろう。従って主要CD購買層である20代~30代には取っつきが悪く、本来こういうサウンドを好むはずのベイビーブーマー世代周辺の40代~50代は「誰それ」と言う感じ、というのが実情になってしまっているのは不幸なことだ。そんなこともあって日本ではフィッシュなどと並べて「ジャムバンド」という文脈で処理されてしまっていることも多いが、(確かにジャムってるライブ盤を山ほどリリースしているのだが)彼らはむしろメインストリームロックを、メロディ構成的アプローチとは逆方向から成立させようとして(ギターとサックスとリズム・セクションがうねるように同期するキメのリフが無茶苦茶カッコよかったりする)きっちり成功させるという、高いミュージシャンシップを持ったバンドである。彼らは決して90年代/2000年代のデッドではないのだ。

前置きが長くなったが、その彼らが2005年の『Stand Up』以来4年ぶりにリリースしたスタジオアルバムがこの『Big Whiskey And The Groo Grux King』だ。はっきりいって彼らの90年代後半から前作『Stand Up』までの数作は一部の作品以外は、ライブ盤も含めて『Crash』の頃に聴かせてくれた生き生きとしてドライヴ感あるサウンドがあまり聴けず、ファンとしてはやや不完全燃焼だった。ところが今回はプロデューサーに起用したロブ・カヴァログリーン・デイとかマイケミとかで皆さんよくご存知の最近いい仕事の多いプロデューサー)もプラスに働いたか、ここのところ彼らのアルバムを包み込んできたよそ行きの飾りのようなものがハラリとなくなり、びっくりするほど抜けたサウンドで往年のDMBのあのグルーヴ感溢れたLeroiMooreOfDMB.jpgタイトな楽曲が戻ってきているのだ。しかしそうした今作の高いクオリティは一つの大きな代償によって成り立っている。バンド結成以来重要な核の一人だった、サックスのレロイ・ムーアが2008年6月に運転していた四輪バギー車が横転した事故での負傷が原因で8月に亡くなってしまったのだ。当時彼を含むバンドはこのアルバムのレコーディング中だったが、彼の死によってレコーディングは中断、バンドは深い悲しみに包まれた。その悲しみを乗り越えて完成されたのがこのアルバムで、事故日当日まで録音されていた演奏も含め、過去にレロイが演奏した音源全てをデブマ自身がチェック・選別し、プロトゥールズなどの録音最新技術を駆使して、レロイのサックスノートをバンドの演奏に見事に一体化した作品に仕上げたというから凄い。

DaveMatthewsBand.jpgきっとエモーショナルな作業であった思われるその制作の成果は、冒頭から明らかだ。イントロ的な「Grux」で聴かれるもの悲しいレロイのサックスのトーンから一気にグルーヴの中に聴き手を叩き込んでくれるようなドライヴ感溢れる「Shake Me Like A Monkey」のホーン・セクションとレッチリフリーのベースワークを彷彿させるステファン・レッサードのブチブチ・ベースを核とした怒濤のリズム・セクションは、いきなり聴き手にちょっとしたカタルシスを感じさせてくれるのだ。まるでレロイの魂が乗り移ったかのような迫力あるサウンドに「おおきたきた、こうじゃなくっちゃ」と思いながら聴き進めると「Why I Am」のようにDMBの十八番ともいえるシンコペ+転リズムで波状攻撃のように攻めてくるグルーヴにのって超キャッチーなフレーズ(メロディではなく)がくる曲や、中間の「♪ズ・ズ・チャ・チャ・ズ・ズ・チャ・チャ♪」というリフがこれまたDMB本領発揮で気持ちいい「Funny The Way It Is」とか、一転してアコギとリズムセクションだけというミニマルながらいかにもデブマらしい「Spaceman」と「You & Me」、思わずイントロがエアロスミスのように超ヘヴィーな「Seven」、またまたアコギとストリングスだけで淡々と聴かせる「Baby Blue」、そしてアルバム最後を飾る、ヘヴィー・リズムとホーン・セクションと何故かバンジョーの組み合わせがこれまたDMBらしい「Corn Bread」と、久々のDMBの快作は重厚な楽曲とアコギ中心の「間」のある楽曲がうまく組み合わされた聞き応え満点の作品になってるのが嬉しい。


幸い音楽プレス関係の評判も上々だった上に、今回はグラミー賞で、最優秀ロック・アルバム部門に加えてなんと最優秀アルバム部門に、テイラー・スイフト、ビヨンセ、レディ・ガガ、BEPといったメインストリーム・ポップ勢に混じって本作が堂々ノミネートされるという快挙も果たしている。予想についてはこのカウントダウンが終わった後に発表のつもりだが、僕はこの部門はテイラー・スイフトデブマの一騎打ちだと見ている。是非取って欲しいものだ。でもデブマ、これを機にそろそろ来日してくれないもんだろうか。BMGビクターさん、よろしくお願いしますよ。

ふー。最初からちょっと飛ばしすぎたかな。ちょっと今日はもう遅いので続きはまた明日アップします。お休みなさい。
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