Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
恒例!第58回グラミー賞大予想 #3〜R&B部門〜

さてさて予想通りポリープ発見→切除となって金曜日から3日間安静となったので、この機にせっせとグラミー予想、アップしたいと思います。続いてはR&B部門。


13.最優秀R&Bパフォーマンス部門

  If I Don't Have You - Tamar Braxton

Rise Up - Andra Day
Breathing Underwater - Hiatus Kaiyote
  Planes - Jeremih Featuring J. Cole
Earned It (Fifty Shades Of Grey) - The Weeknd

TheWeeknd-EarnedIt.png

ここのところの数回はこの部門、かなりアカデミーも意識してかフレッシュなメンバーのノミネートが目立ってます。昨年57回こそメジャーどころが顔を並べてビヨンセが「Drunk In Love」で余裕の受賞でしたが、その前56回が昨年9月にもブルー・ノート・ジャズ・フェスティヴァルで来日してキレとグルーヴ満点のステージを見せてくれたスナーキー・パピーレイラ・ハサウェイ、その前55回は受賞はアッシャーに譲りましたが、ロバート・グラスパールーク・ジェイムスといった新しい面々がノミネートされてました。
その傾向は今年も顕著なのですが、いかんせんROYと最優秀アルバム部門の主要2部門にノミネートされて光りすぎてるのがウィークンド。この部門では映画「Fifty Shades Of Grey」の主題歌「Earned It」でのノミネートですが、この曲昨年のホットR&Bチャートでも14週1位という大ヒットだけにここは強力な本命◎候補。しかし、そこに待った!をかけて来ると見ているのが2組の新興勢力。
対抗◯には、クリスマスのAppleのコマーシャルでスティーヴィー・ワンダーと共演して一気にマス・アピールを果たした、大物新人女性R&Bシンガー、アンドラ・デイがかなりくると見てます。ちょっとハスキーな声と風貌がニーナ・シモンを彷彿とさせるレトロな感じが大向こうに受ける可能性大(僕もかなり気に入ってますw)。
としては、こちらも去年9月のブルー・ノート・ジャズ・フェスティヴァルで初来日、その個性的なサウンドでの力強いパフォーマンスを見せてくれたハイエイタス・カイヨーテを推したいところ。彼らは前々回のこの部門で「Nakamarra」でノミネートされた時にとてもインパクトがあって注目、という風に書いたのですがこんなにグラミー・ノミネーションの常連になってくるとは。いずれにしてもこの部門、激戦が予想されます。

14.最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス部門

  He Is - Faith Evans

Little Ghetto Boy - Lalah Hathaway
Let It Burn - Jazmine Sullivan
Shame - Tyrese
  My Favorite Part Of You - Charlie Wilson

さあこの部門も結構激戦ですぞ。というのも、この後の最優秀R&Bソング部門にノミネートされた曲2曲がしのぎを削っているから。今回フェイス・エヴァンスや、僕の年間アルバムランキング3位に挙げた『Forever Charlie』からの「My Favorite Part Of You」でノミネートのチャーリー・ウィルソンといったベテランもノミネートされてますが、前の部門同様、ここも新興勢力が最近のしてきている部門。
で、そのしのぎを削ってる2曲のうちでも、ややフレッシュさでは分があり、アルバム『Reality Show』が評論筋でも評判のいいジャズミン・サリヴァンが本命◎では、というのが僕の予想。対抗◯は最近シンガーというより『ワイルド・スピード』シリーズでの俳優としての露出の方が多かったタイリースが久々に出したR&Bアルバム『Black Rose』からの「Shame」に。
そして穴はもはやグラミー常連になってきたレイラ・ハサウェイの「Little Ghetto Boy」に。あーでもチャーリーに穴くらい付けたかったなあ。

15.最優秀R&Bソング部門(作者に与えられる賞)

  Coffee - Miguel (Brook Davis & Miguel Pimentel)

Earned It (Fifty Shades Of Grey) - The Weeknd (Ahmad Balshe, Stephan Moccio, Jason Quenneville & Abel Tesfaye)
Let It Burn - Jazmine Sullivan (Kenny B. Edmonds, Jazmine Sullivan & Dwane M. Weir III)
Really Love - D'Angelo & The Vanguard (D'Angelo & Kendra Foster)
  Shame - Tyrese (Warryn Campbell, Tyrese Gibson & DJ Rogers Jr.)



R&Bの部門は、通常のパフォーマンス、トラディショナル・パフォーマンス、そしてアーバン・コンテンポラリーと3つの切り口からの受賞設定がされている、主要ジャンル部門の中でも一番多面的な部門。普通に考えるとそれぞれの部門でノミネートされている曲・アーティストから選ばれた楽曲がこのソング部門にノミネートされるはず。
ところが今年のこの部門の特異なのは、他のR&B関連楽曲部門にはノミネートされてないのに、このソング部門にノミネートされている曲が一曲。そう、ディアンジェロの「Really Love」。で、この曲が主要賞のROYにもノミネートされているとなると、そちらで取るのはキツそうなので、必然的にこの部門では本命◎確実、と見てます。結構地味な曲ではありますが、アコースティックでアナログなグルーヴで、腹の底をかき回されるようなソウルを感じる曲ですね。
対抗◯はこちらも主要部門でノミネートされているザ・ウィークンド、穴は残り三曲の中では一番来そうなジャズミン・サリヴァンに付けておきましょう。


16.最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門

  Ego Death - The Internet

  You Should Be Here - Kehlani
Blood - Lianne La Havas
Wildheart - Miguel
Beauty Behind The Madness - The Weeknd

TheInternet-EgoDeath.jpgKehlani-YouShouldBeHere.jpgLianneLaHavas-Blood.jpegMiguel-Wildheart.jpgTheWeeknd-BeautyBehindMadness.jpg

ホントのこというと、この部門こそピカピカの新しいイキのいい連中が取るべき部門なので、オッド・フューチャー一派のミュージシャンやラッパーが集まって作ったユニットのジ・インターネットとか、『America's Got Talent』出身のマルチ・エスニックながらアーリア入っているケーラニちゃんの全曲自作ミックス・テープ・オンリー(iTunesでダウンロード可)のアルバムとかが取って欲しいんだけどなあ。どっちもかなりいいし、ケーラニちゃんなんて自主制作でこのレベル、凄い!と思うんだけど。



でもこの部門、何だかんだ言いながら毎回メインストリームの売れ線アルバムが取ってて、そうでなかったのは3年前の55回、何故か3枚しかノミネートがなかった時のフランク・オーシャンくらい。それでいくと今回ザ・ウィークンドが取っちゃいそうなんだけど、ここは敢えて彼は穴で我慢してもらって、僕は昨年プリンスのアルバムでの客演で一躍注目を浴びて、各音楽誌で軒並み評価が高かったリアンヌ・ラ・ハヴァス嬢に本命◎を付けたい。このアルバム、僕自身の去年の年間アルバムランキングの10位に入れたくらい惚れ込んだ作品でとにかく独特の世界を持ってる作品なので一聴をおすすめします。
で、対抗◯は、前回『Kaleidoscope Dream』という強力な作品でこの部門にノミネートされながら、フランク・オーシャンがいたために涙を呑んだミゲル君に進呈しましょう。

17.最優秀R&Bアルバム部門

  Coming Home - Leon Bridges

Black Messiah - D'Angelo & The Vanguard
Cheers To The Fall - Andra Day
  Reality Show - Jazmine Sullivan
Forever Charlie - Charlie Wilson

LeonBridges-ComingHome.jpgDAngelo-Black_Messiah.jpgAndraDay-CheersToTheFall.jpgJazmineSullivan-RealityShow.jpgCharlieWilson-Forever_Charlie.jpg

さあアルバム部門。ここではもう見るからにディアンジェロがギラギラ光ってますねえ。主要部門ノミネートで、各ジャンル部門の主要部門にノミネートされてる場合は、主要部門でかなり強くなければ各ジャンルの主要賞を取る、という法則(勝手に作ってるな、俺)からいくと文句無しに本命◎はディアンジェロ
対抗◯は、こちらも今回いきなりノミネートの感がありながら、ちゃんと最優秀パフォーマンス部門にもノミネートされ、いかにもグラミー好みの感じがプンプンする(いい意味です)アンドラ・デイ嬢に付けようかな。アルバム、さっきアマゾンでポチしちゃったのでこのアルバム聴くの楽しみです。
には残り3人のうちどれが来てもおかしくないのですが、やはりここまでR&B部門のどこにもノミネートがなくてここでポッと出てきてるリオン・ブリッジズ君はかなり目は薄いでしょ。余談ですが、このアルバム、皆さんどう思います?最近日本発売もされて「サム・クックの再来」「ネオ・レトロ・ソウルの旗手」なんて言われてますけど、僕何度も聴いてるんだけど何か全くソウルを感じないのよねえ。確かに音とか歌い方はレトロだけど中身(ソウル)がないっていうか。僕が鈍感なのかしら。
脱線しました。穴は贔屓の引き倒しで、僕の去年のお気に入り、チャーリー・ウィルソン叔父さんのもうこれ以上なくスッコーンと抜けた気持ちのいいR&Bアルバムに進呈します。


ああ、すっかり遅くなっちゃった。明日はラップ部門片付けたいものです。おやすみなさーい。

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追悼ポール・カントナー〜さらば、宇宙船の基幹操縦士〜
 下記は先ほどFacebookにアップしたもの。備忘録として自分のブログにもアップしておくことにしました。今年はホントに重い訃報が多くて気が重い。まだ1月だというのにね。

2016年の訃報ラッシュ、今度はJefferson Airplane/Jefferson Starshipのギタリストで創設メンバーの一人、ポール・カントナーが逝ってしまった。これもボウイグレン・フライ同様、大きく一つのロックの世紀の終わりを象徴する事件だと思う。心よりご冥福をお祈りする。

paul-kantner-jefferson-airplane-billboard-650.jpg 

当然自分は1967年の「Summer Of Love」も、1969年のウッドストックも、まだ神秘的でスリムな美人ボーカルだったグレイス・スリックが歌う「Somebody To Love(あなただけを)」がヒットした頃のジェファーソン・エアプレインを知るわけはない。でも洋楽を聴き始めた頃から、ラジオで60年代末から70年代初頭にかけてのロックが文化的パワーを噴出させた時代を取り上げる時、必ずジャニスジミヘンと一緒にあのグレイスのパワフルなボーカルを聴いていたので、あの曲は耳にとても馴染んでいる。

そこで出会ったのがトップ40と、そこで何と飛行機から宇宙船にグレードアップした彼らがヒットさせていた「Miracles」「With Your Love」といったマーティ・バリンの曲。そして名盤『Earth』のヒットでジェファーソン・スターシップは僕と同時代のロック・バンドとして生き生きと活動していた。そこでいつも黙々とギターを弾いていたのがポール・カントナーだった。


JeffersonStarship Earth

ポールはもっとブルースなロックをやりたかったジャック・キャサディヨーマ・コーコネンエアプレインを抜けてホット・ツナを結成したことで飛行機が宇宙船になった時も、1978年に創設同志のマーティ・バリンが抜けてミッキー・トーマスに変わって、サウンドが次第次第にシンセロックっぽくなっていった時も宇宙船の基幹操縦士であり続けたのだけど、ミッキーグレイスが次第にバンド・コントロールを取るようになり、ついに1984年のアルバム『Nuclear Future』を最後に宇宙船離脱。

その後実は全く知らなかったのだが、1990年頃にはグレースクレイグ・チャキーソ(かつてポールが宇宙船にグレードアップする時にスカウトしたギタリスト)ら宇宙船のオリジナル・メンバー全員が脱退してミッキー・トーマス・バンドとなってしまったスターシップをよそに、ポールは1992年に宇宙船を再結成して基幹操縦士となっていたのだ。まるで『フォースの覚醒』でミレニアム・ファルコン号で華々しく再登場するハン・ソロのようではないか。彼は昔の盟友、ジャック・キャサディパパ・ジョン・クリーチ(惜しくも1994年に没)に若いメンバーを加えて2枚のオリジナルアルバムの他5枚ものライブアルバムをリリースしていたらしいのだ。

JeffersonStarship-DeepSpaceVirginSky.pngJeffersonStarship-WindowOfHeaven.jpgJeffersonStarship-TreeOfLiberty.jpg

その2枚のオリジナルアルバム(上の右2枚)と、ライブも是非聴いてみようと思っている。最後まで、宇宙船の基幹操縦士として本来あるべき、そして僕が70年代後半〜80年代初頭にかけて親しんだ同時代のあのロック・バンドを操縦し続けようとしたポールの最後のレガシーをちゃんと受け止めるために。

R.I.P., Paul - you're definitely one of the rock's heroes and we all thank you for your accomplishments as the chief pilot of Jefferson Starship.


ビルボード誌のポール・カントナー訃報記事はここから読めます(英語)。

恒例!第58回グラミー賞大予想 #2〜ダンス部門・ロック部門〜

前回のブログアップから大分間が空いてしまった第58回グラミー賞予想、授賞式まで後約20日くらいになってしまいました。ちょっとピッチを上げて行きたいと思います。今日はダンス部門から。


Where Are U Now


6.最優秀ダンス・レコーディング部門

  We're All We Need - Above & Beyond f/ Zoë Johnston

Go - The Chemical Brothers
Never Catch Me - Flying Lotus f/ Kendrick Lamar
  Runaway (U & I) - Galantis
Where Are Ü Now - Skrillex And Diplo w/ Justin Bieber

去年のこの部門は、日本でロケしたPVや親しみやすいメロディが人気だったクリーン・バンディット+ジェス・グリンの「Rather Be」が予想通り獲得してましたが、もともとこの部門はここ5年間で、ノミネートされた2回とも受賞しているスクリレックスことソニー・ジョン・ムーア君が最近では強い部門。たまたまここ2年はノミネートされてませんでしたが、今年はEDM界のもう一人の実力者、ディプロことトーマス・ウェズレー・ペンツ君とタッグで、ジャック・U名義で作ったアルバム『Skrillex And Diplo Present Jack Ü』がシーンを席巻した年。しかもここでは今また復活してきてるジャスティン・ビーバーをボーカルにフィーチャーしているという「Where Are Ü Now」がどう考えても本命◎でしょう。全米最高位8位、全英でも最高位3位というヒットぶりからもここは不動。これに対抗◯するとなると、これも過去3回ノミネートで1回受賞という常連ぶりを誇るケミカル・ブラザーズでしょうかね。穴にはアルバム『You're Dead!』が一昨年の各音楽誌の年間ベストアルバムランキングでも高く評価されていたフライング・ロータスことスティーヴン・エリソン君が今最もホットなMC、ケンドリック・ラマーをフィーチャーした「Never Catch Me」かな。

7.最優秀ダンス/エレクトロニカ・アルバム部門

  Our Love - Caribou

Born In The Echoes - The Chemical Brothers
Caracal - Disclosure
  In Colour - Jamie XX
Skrillex And Diplo Present Jack Ü - Skrillex And Diplo

Caribou-OurLove.jpgChemicalBros-BornInTheEchoes.jpgDisclosure-Caracal.jpgJamieXX-InColour.jpgSkrillex_and_Diplo_Present_Jack_Ü

前の部門同様、この部門でも過去ノミネートされれば必ず取ってるスクリレックスが今回3度めのノミネート作品、ディプロとのコラボアルバムで取ってくるだろうと言う読みのもとに本命◎です。対抗◯としては、これも前の部門同様この部門の常連で過去4回のノミネートで2回受賞しているケミカル・ブラザーズ、と行きたいところですが、ここ数年サム・スミスをフィーチャーした「Latch」(全英最高位2位、全米7位)「Omen」(全英6位)や、メアリーJをフィーチャーして昨年のダンス・レコーディング部門にノミネートされた「F For You」(全英5位)など、すっかりEDMを代表する存在に成長、昨年の各音楽誌の年間ベスト・アルバムでも軒並み上位だったディスクロージャーの『Caracal』が強いと見てます。ケミカル兄弟には敬意を表して穴を。ただ、フランスのエレクトロニカ・バンド、XXのリーダー、ジェイミーXXのアルバム『In Colour』もディスクロージャーに肩を並べて昨年の各音楽誌の評価が高く、番狂わせがあるとすればここかも。

続いてロック部門も一気にいきます。


8.最優秀ロック・パフォーマンス部門

Don't Wanna Fight - Alabama Shakes

What Kind Of Man - Florence + The Machine
Something From Nothing - Foo Fighters
  Ex's & Oh's - Elle King
  Moaning Lisa Smile - Wolf Alice


昨年は僕の予想が大外れで本命にしてたベックや対抗にしてたライアン・アダムスを押さえて、グラミーのお気に入りアーティストの一人、ジャック・ホワイトが取ったこの部門。そもそもロック部門は主要4部門のうちの楽曲部門(SOY、ROY)でもノミネートはされるもののそこでは当て馬のケースがほとんどで、去年のホージャー、55回のブラック・キーズ、54回のボン・イヴェールなど、主要部門では取らず、ロック部門で受賞する、というのが一つのパターン。そうなってくると今年の主要部門でノミネートされてるロック系といえば最優秀アルバム部門にノミネートされてるアラバマ・シェイクス。去年のベックみたいにあの部門で取れればいいのだけど、対抗するのがテイラーケンドリック・ラマーなんでさすがにあの部門では穴止まりにしてます。なんでこの部門では彼らが本命◎。対抗◯にはこれも歴史的にグラミーには強いフー・ファイターズのもう一昨年のアルバム『Sonic Highway』(何で今年ノミネートなのか?)からの「Something From Nothing」が順当でしょう。穴は、今年ブレイクした久しぶりの大物女性ロック・シンガー、エレキングウルトラセブンの怪獣か?)という線もあるのですが、久々に出した新作『How Big, How Blue, How Beautiful』が比較的各音楽誌の評価が高い(僕自身はイマイチだと思ったんですが)フロレンス+ザ・マシーンに付けておきましょう。

9.最優秀メタル・パフォーマンス部門

  Identity - August Burns Red

Cirice - Ghost
512 - Lamb Of God
  Thank You - Sevendust
Custer - Slipknot

Slipknot-Custer.jpg

タダでさえ独自の世界を進んでいて毎年さっぱり傾向が掴めないこの部門、昨年なんて全く無印にしてたコメディアンのジャック・ブラックが片割れのテネシャスDが受賞してしまって「この部門はシャレでやっとんのか!」と呆れてしまったのですが、今年はもっと判らんノミネートです。ブラック・サバスとかフーファイとかがノミネートされてればとても判りやすいのですが。まあ本命◎は去年も付けたスリップノットで行くかなあ。それ以外もどれが来るかさっぱり判らんのですが、ボーカル3人がみんな骸骨メイクでローマ法王のコスプレ、バンドメンバーは名前がなくてみんな記号で呼ばれてるという、ホントついて行けませんわの世界のスウェーデンのヘビメタバンド、その名もゴーストに対抗◯、3年前にも一度ノミネート経験のあるラム・オブ・ゴッドに穴を付けときましょうか。あー疲れるな。

10.最優秀ロック・ソング部門(作者に与えられる賞)


Don't Wanna Fight - Alabama Shakes (Alabama Shakes)

  Ex's & Oh's - Elle King (Dave Bassett & Elle King)
Hold Back The River - James Bay (Iain Archer & James Bay)
  Lydia - Highly Suspect (Richard Meyer, Ryan Meyer & Johnny Stevens)
What Kind Of Man - Florence + The Machine (John Hill, Tom Hull & Florence Welch)

何せ去年のロック部門予想は、アルバムのベック以外は軒並み無印が来ちゃって最悪だったんですが、この部門でもライアン・アダムスベックか、と思っていたら思いっきり圏外のパラモアの曲が取っちゃったという部門でした。で今年ですが、さっきも書いたように、主要賞が取れないアラバマ・シェイクスがロック部門をガッチリ取っていくというシナリオにもとづいて、ここは本命◎アラバマ・シェイクス「Don't Wanna Fight」。対抗◯は突如最優秀新人部門にもノミネートの、イギリスのシンガーソングライター、ジェイムス・ベイがひょっとしてくるかな、と思ってます。若いのに結構渋目の曲をやる人ですが、メインストリーム系のメディアからかなり評判いいので。穴はフロレンス+ザ・マシーンの「What Kind Of Man」へ。ここでの番狂わせの可能性としてはエレキングかな。

11.最優秀ロック・アルバム部門


Chaos And The Calm - James Bay

  Kintsugi - Death Cab For Cutie
Mister Asylum - Highly Suspect
Drones - Muse
  .5: The Gray Chapter - Slipknot

JamesBay-ChaosAndCalm.jpgDeath_Cab_For_Cutie_-_Kintsugi.jpgHighlySuspect-MisterAsylum.jpgMuse-Drones.jpegSlipknot-5TheGrayChapter.jpg

で、すごーく不可解なのはここにアラバマ・シェイクスがいないこと。主要アルバム部門にノミネートされているのにロック・アルバム部門にノミネートされてない、というのは53回、アーケード・ファイアの『The Suburbs』以来。で、その年はアーケード・ファイアが主要アルバム部門、取っちゃってるんだよねえ。その前の51回のロバート・プラント&アリソン・クラウスRaising Sand』もそう。てことになると、アラバマ・シェイクス、やっぱ最優秀アルバム賞取るのかなあ。う~ん判らん。とにかくこの部門の顔ぶれでいくとどう見ても53回『Resistance』でも受賞してるミューズが本命◎で良いと思うけど、それ以外が判らない。まあスリップノットはないとしても(笑)、ひょっとして新人でノミネートされてるジェイムス・ベイが対抗◯で来るかもしれないね。で、穴ですが、去年のiTunesが推す新人バンドに選ばれた、マサチューセッツ出身の兄弟と従兄弟のハードロック・バンド、ハイリー・サスペクトに付けてみました。クイーン・オブ・ザ・ストーン・エイジロイヤル・ブラッドに比較されるということでどっちも好きな僕はApple Musicで聴いて見たところ、確かに結構カッコいい、重たいハードサウンドのバンド。上記の2つのバンドに比べるとやや軽量だけど、確かにメインストリーム・ハードロック・ファンには受けそうな連中なので、ここでちょっと穴を付けてみたいと思います。しかしデスキャブはこれまでずっと次のオルタナティブ部門にノミネートされてたんだけど(48回、51回、52回、54回)何で今年はこっちなのかなあ。不可解。

12.最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム部門

Sound & Color - Alabama Shakes

  Vulnicura - Björk
  The Waterfall - My Morning Jacket
Currents - Tame Impala
Star Wars - Wilco

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そうかそうか、アラバマ・シェイクスここにいたのね。だったらこの部門で絶対取るよなあ、このアルバム。ということで本命◎はアラバマ・シェイクスの『Sound & Color』で。で対抗◯ですが、マイ・モーニング・ジャケット以外の3枚は正直横一線なんですよね。どれもロック系の音楽誌の昨年の年間ベストアルバムランキングでは、最上位ではないにしてもどれもそこそこいいところに付けているアルバムばかり。そういう場合は贔屓のアルバムということで去年秋に突然発表されたウィルコの『Star Wars』に付けてみました。タイトルとジャケが極めてアンバランスのこのアルバム(笑)久々の快作だったと思うから。穴は2年前にもノミネートされたテイム・インパラの、その2年前のサウンドから一気にメインストリームっぽくなった『Currents』に。これもなかなか良かったね。なお、これが7回目のこの部門ノミネートになるビョーク、過去に一度も取ってないんですよねえ。究極の当て馬候補、可哀想に。


ということで、今日は内視鏡検査でちょっと体調万全ではなかったんですが頑張ってアップしてみました。週末までにR&B部門もカバーしたいもんです。では。

【新企画】新旧お宝アルバム!#29 「On The Border」 Eagles (1974)

#29On The BorderThe Eagles (Asylum, 1974)


2016年はこれまで洋楽ファン、特に70年代に一生懸命洋楽を聴いていたシニアの洋楽ファンには辛い日々が続いています。1/8、69歳の誕生日に最新アルバム『★』リリースで華々しい復活を見せたその翌々日にある意味シアトリカルな形で逝ってしまったデヴィッド・ボウイ。そのショックが癒える間もなく、今度はアメリカン・ロックのシニアリスナー達を襲ったイーグルスグレン・フライの67歳での訃報。いずれもあまりにも急な、そして早過ぎる他界の報に思わず耳を目を疑った方も多いでしょう。

今週の「新旧お宝アルバム!」は、そのグレン追悼のためにイーグルスのアルバムを取り上げますが、彼らのアルバムの中でも、初期のカントリー・ロック然とした作風からカントリーの域に留まらない、名実共にアメリカン・ロックシーンの屋台骨を背負うことになる『呪われた夜(One Of These Nights)』(1975)以降大きく変貌する直前のバンド状況を記した重要なアルバムでありながら、何故か他のアルバムに比べると陽の目を見ることの少ない1974年の名盤『On The Border』をご紹介します。


On The Border (Front)


イーグルスの代表作というと、あなたはどのアルバムを挙げるでしょうか。自分の大学時代の洋楽サークルなどでもアルバムの人気投票を行うと、イーグルスといえばどうしても『ホテル・カリフォルニア(Hotel California)』(1976)が大体ダントツの知名度と人気を持って選ばれることがほとんど。昔からのイーグルスに親しんだシニア・リスナーでも、リンダ・ロンシュタットらのカバーで有名な「デスペラード」を含む『ならず者(Desperado)』(1973)や『呪われた夜』を挙げる方が多いでしょう。間違ってもこの『On The Border』が挙げられることはまずないのでは。

ことほどさようにこの『On The Border』というアルバムは、ある意味「わりを食っている」アルバムですが、下記の3つの理由でイーグルスのキャリアの中で大きなターニング・ポイントとなった、極めて重要なアルバムなのです。


1.イーグルスに取って初の全米No.1ヒットを含むアルバムであること。


リンダ・ロンシュタットのバック・バンドとなったことでメジャーブレイクのチャンスを手にしたドン・ヘンリー(ボーカル、ドラムス)とグレン・フライ(ボーカル、ギター)は、ポコ出身のランディ・マイズナー(ベース)、フライング・ブリトー・ブラザーズ出身のバーニー・レドン(ギター、マンドリン、バンジョー)を加えて1972年『Eagles(イーグルス・ファースト)』でデビュー。グレンジャクソン・ブラウンとの共作「テイク・イット・イージー(Take It Easy)」のヒット(1972年最高位12位)で華々しいスタートを切ったイーグルス、その後も「魔女の囁き(Witchy Woman)」(同9位)のトップ10ヒットはありましたが、彼らが全米No.1ヒットを勝ち取ったのは、この『On The Border』収録の「我が愛の至上(The Best Of My Love)」が初めてでした。

ドン、グレンJ.D.サウザーのペンによる、失われてしまったがかつては確かに存在していた恋人との素晴らしい愛を思い、振り返り、悔やむという、恋に悩む者の心に響く歌詞を持つこの美しいバラードで全米1位を獲得したイーグルスは、この時クリエイティビティ面でも、バンドメンバー間の結束という意味でもピークに向かうアップトレンドを突き進んでいた時代でした。1位のヒットを飛ばすということは、それに「メインストリームを代表するアーティストの一人」という勲章を得ること。その意味からこのアルバムは彼らのキャリアで最重要の位置を占める作品と言ってもいいでしょう。



2.イーグルス最盛期のメンバーが初めて全員顔を揃えてほぼ全員がリードボーカルを取ったアルバムであること。


不動の4人でファースト、2作目の『ならず者』を発表してきたイーグルスが、この『On The Border』収録の「地獄の良き日(Good Day In Hell)」のスライド・ギターのために呼んだドン・フェルダー(ギター、スライド・ギター)を、正式に5人目のイーグルスとして追加。これで、イーグルスの商業的・クリエイティブ的な頂点になる『ホテル・カリフォルニア』のメンバーが全員揃ったことになり、最盛期のメンバーが出揃ったという意味でもこのアルバムは重要です。

そのドン・フェルダーは後に「ホテル・カリフォルニア」の有名なギター・ソロでバンドでの存在感の頂点を打つのですが、彼が加入のきっかけとなったスライド・ギターは、同じ『ホテ・カリ』収録の「Life In The Fast Lane」(1977年最高位11位)で新加入のジョー・ウォルシュが超絶のプレイを見せたことが、その後のドン・フェルダーとメンバー間の不仲の原因となったことは誠に皮肉なことと言わねばなりません。

またこのアルバムではドン・フェルダー以外の各メンバーがそれぞれ作曲とリードボーカルを綺麗に分けあっており、グレンが2曲(「過ぎた事/誓いの青空(Already Gone)」「ジェイムス・ディーン(James Dean)」)、ドンが3曲(「恋人みたいに泣かないで(You Never Cry Like A Lover)」「On The Border」「わが愛の至上」)、ランディが2曲(「Midnight Flyer」「Is It True?」)そしてバーニーが1曲(「My Man」)を担当しています。また、グレンドンのダブル・リード・ボーカルで「地獄の良き日」とトム・ウェイツ作のバラード「Ol' 55」を歌っており、バンドの結束感を如実に物語っています。


Already Gone 


3.カントリー・ロックサウンドからハードなロックサウンドに大きく舵を切った、イーグルスのその後の路線を確定したアルバムであること。


イーグルスはファーストアルバムと2作目『ならず者』を、オール・アメリカンのイメージを持たせながらもイギリス人のプロデューサー、グリン・ジョンズレッド・ツェッペリン、フー、ハンブル・パイらのプロデュースで有名)を起用、ヒットに繋げました。しかし彼らは明らかにバンドのサウンドを次のレベルに持って行きたかったのだと思います。その一つの現われが、エッジの聴いたスライド・ギターを弾くドン・フェルダーの新加入、そしてプロデューサーに60年代からB.B.キングジョー・ウォルシュなどR&B、ロックの各分野で力強いサウンドメイキングに定評のあったビル・シムジクを迎えたことでしょう。

デビュー以来、当時70年代前半アメリカ・ロック・シーンのメインストリームであったカントリー・ロックをスタイルとしてきたイーグルスのメンバー、特にドングレンの二人に取って、更に大きくバンドとして成長するためにサウンド面の変革は不可欠であったはずです。そんな中、前2作の成功でカントリー・ロック・フォーマットを継続しようとしたグリン・ジョンズとバンドが対立、よりエッジの効いたサウンドを求めたバンドがジョンズを解雇し、シムジクを起用したというわけ。

ビル・シムジクのプロデュースとよりハードな路線を求めるバンドの意欲は、後のジョー・ウォルシュ参加曲を思わせるようなハードなエレクトリック・ギター・サウンドが顕著な「On The Border」「地獄の良き日」に明らかであり、全面にバンジョーがフィーチャーされたこれまでのイーグルス路線の「Midnight Flyer」とバラードの「Ol' 55」「我が愛の至上」を除き、全ての楽曲でエレクトリック・ギターの音が全面に出されています。つまりここから『呪われた夜』『ホテル・カリフォルニア』『ロング・ラン』に続くハードなロック路線が始まったのです。



上記のような本作の歴史的意義もさることながら、このアルバムを構成する楽曲はバラエティに富んでいながら、アルバム全体の作品としてのバランスには素晴らしいものがあります。

従来のイーグルスのロック的側面を象徴する突き抜けるような爽やかロックサウンドの「過ぎた事/誓いの青空」「ジェイムス・ディーン」「Is It True?」、しめやかなバラードで聴くものの感動を呼ぶ「我が愛の至上」やトム・ウェイツの渋ーいバラードを完璧なコーラスワークでゴージャスなイーグルス作品に仕上げている「Ol' 55」、バーニー・レドンのバンジョーワークが軽快なカントリー路線の「Midnight Flyer」、バーニーがこの前年ドラッグ過剰摂取で26歳の若さでこの世を去ったカントリー・ロック界のレジェンド、グラム・パーソンズを偲びながらせつせつと歌う「My Man」、そして新しいイーグルスを象徴するハードな「On The Border」「地獄の良き日」。デビュー作のひたすら爽やかカントリー路線や、『ならず者』の西部のならず者を描いたコンセプト・アルバム路線から、一気にアルバムとしての多様性が顕著となっており、初めて聴く人でもいろんな側面を楽しめる出来になっています。


On The Border (Insert)


実は自分がイーグルスのアルバムで最初に買ったアルバムがこの『On The Border』。当時、こんなにいいアルバムなのにあまり評判にもなっておらず、No.1ヒットの「我が愛の至上」も日本ではあまりラジオでもかかっていなかった記憶があります。このアルバムの一般的なリスナーに取っての位置づけは今でもあまり変わっていないようですが、グレンが他界した今、彼がドンと共に新しいイーグルスを模索していたこのアルバムを聴いて、当時の彼の情熱に思いを馳せる、そういう聴き方も彼への追悼としてふさわしいのではないのでしょうか。


<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位17位(1974.6.1付)

RIAA(全米レコード協会)認定ダブル・プラチナ・ディスク(200万枚売上)


Already Gone(過ぎた事/誓いの青空)

ビルボード誌全米シングル・チャート(Hot 100)最高位32位(1974.6.29付)

James Dean(ジェイムス・ディーン)

同 最高位77位(1974.10.12付)

The Best Of My Love(我が愛の至上)

同 最高位1位(1975.3.1付)

【新企画】新旧お宝アルバム!#28 「Sometimes I Sit And Think, And Sometimes I Just Sit.」 Courtney Barnett (2015)

#28Sometimes I Sit And Think, And Sometimes I Just Sit.Courtney Barnett (Milk! / Marathon Artists / Mom + Pop, 2015)


1月も早二週間が過ぎ、既に世間は通常ペースに戻る中、ようやく冬らしい寒さが出てきた今日このごろ、皆さんは風邪などひいていませんか?暖かくして素敵な音楽を聴きながら、身も心もいたわって楽しい洋楽ライフをお過ごし下さい。

さて、今週の「新旧お宝アルバム!」は「新」のアルバムご紹介の順番。今回は、昨年New Musical Expressを始めとする海外の各音楽誌で高い評価を集め、来月発表のグラミー賞の新人賞部門にもノミネートされている、オーストラリアはメルボルン出身今年28歳の新進ロック・シンガーソングライター、コートニー・バーネットのデビュー・フル・アルバム『Sometimes I Sit And Think, And Sometimes I Just Sit.』を取り上げます。


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コートニーの音楽は、一般的にはいわゆる「インディ・ロック」に分類されるタイプのストレートなロック。シンプルなギターとベースとドラムスの構成のバンドをバックに、自らエレクトリック・ギターをかきならしながら(ちなみに彼女は左利き)、その昔の80年代のパンクやニューウェイヴの香りを感じさせる、リズムのリフが特徴的なストレートでアップテンポな楽曲を、彼女独特の半分しゃべりのようなルースな感じの歌で聴かせるという、一度聴くとなかなか頭から離れないタイプの楽曲を聴かせてくれます。

一方、テンポを落とした楽曲では、そのしゃべりと歌の中間のような歌い方が例えばパティ・スミスとか、プリテンダーズクリッシー・ハインドといった先達のクールな女性ロッカーたちを彷彿とさせます。でもやってる音楽はいわゆるポスト・グランジというやつで、単純なニューウェイヴとかパンクではなく、R&Bやオルタナ・カントリーやブルースといったありとあらゆる要素をごった煮にして裏ごししたような感じ。

そして何よりも彼女の楽曲がユニークで魅力満点なのはそのクレヴァーで、ドライなユーモア満載な歌詞。例えばノイジーなギターリフととてもポップなリズムでいきなりアルバムオープニングで彼女のルースなボーカルが炸裂する「Elevator Operator」の冒頭の歌詞をご紹介すると、


”20歳のオリヴァー・ポールは毛はふさふさだけどハゲるのを恐れてる

915分に起床して、96番の地下鉄に何とか乗り込む

また今日も走りながらの朝食なので、醤油味のヴェジマイト・サンドイッチのクズをそこら中に撒き散らしているのは判ってる


自分のコンピューター見た途端気分悪くなりながら、スワンストンの通勤客をかき分けながら進む

やおらネクタイを引きちぎると、メトロバス停の隅に座るホームレスに渡し

「今日は仕事なんかしないぞ!電車が何分運行遅延してるかを数えながら

コカコーラの缶でできたピラミッド型の建物の前の芝生に座るんだ」



とまあこんな感じ。この後オリヴァー・ポールはエレベーターの中でスネーク革のバッグと亀甲のネックレスを胸の谷間にぶら下げて、髪をひっつめすぎて頭蓋骨が見えるんじゃないかって感じの女性に遭遇するのです。


そもそもアルバム・タイトルからして「時々座って考える、そして時々ただ座ってる」なーんて人を喰ったタイトルでそれだけでも楽しいというかロックしてるっていうか。そしてビートルズの連中が2010年代にいたら書いてたかも、という感じのこういうウィットに富んだ歌詞が、ストレートでパンクでポスト・グランジなロックに乗ってるのも聴いてて気持ちいいのです。



もう一曲、こちらもシンプルなリズムリフのギターが印象的な「Dead Fox」という曲はこういう歌詞です。


ジェンは買うなら絶対有機野菜っていうけどあたし最初ちょっと疑問だった

ちょっとくらい農薬使ってたって死ぬわけじゃなし

だいたいそんなお金持ちだったためしがないから

スーパーで買うのは安いけどクソみたいな添加物山盛りのものばかり

友達がいうにはリンゴにはニコチンが注入されてるって


あなたが私のこと見えないんなら

私もあなたのことは見えない


SometimesISitAndThink_back.jpg

とにかく日常の風景を彼女なりの独特の視点から、ウィットに富んだ歌詞でシンプルなロックンロールな楽曲に乗っけて歌う彼女は、一部のロック・アーティストが長年の間創りだしてしまってきている教条主義的というか難解こそ至上、的な価値観を鼻で笑いながらただひたすら楽しくロックしてる、っていうのが伝わって来て、聴いてて思わずニヤリ、としてしまうのです。


こんなコートニーですが、ジャケのセンスは可愛らしいし、風貌も極めて健康的でキュート。この飄々とした楽曲や歌で今後もガンガン行って行って欲しいし、既に次のアルバムが楽しみ。冒頭に述べたようにグラミー賞の新人賞部門にもノミネートされていますが、今年のノミニーの顔ぶれだと、ひょっとして彼女が取ってしまうかも、とすら思わせてしまうコートニー、今後目を離せないアーティストであることは間違いないです。

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既に英米の各音楽誌も注目度大で、昨年の年間アルバムランキングでは、スピン誌2位、Q6位、ローリング・ストーン誌6位、アンカット誌7位、ピッチフォーク誌9位、MOJO12位、NME22位と高い評価を集めてます。日本にも昨年10月にいち早く来日、一気にファンを増やしている模様。取り敢えずはグラミーの結果を見守りながら、このアルバムを楽しみましょう。


<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位20位(2015.4.11付)

同全米ロック・アルバム・チャート 最高位1位(2015.4.11付)

同全米オルタナティブ・ロック・アルバム・チャート 最高位1位(2015.4.11付)

恒例!第58回グラミー賞大予想#1〜ポップ部門〜

58thGrammy.pngさて今年もグラミー賞の時期が近づいて来ました。それに合わせて毎年行っているグラミー賞主要部門の予想も今年がちょうど10年目。毎回主要各部門の予想受賞者・作品を◎本命、◯対抗、穴で予想してますが、これまで10年のトータル成績が、

◎で的中….565

◎か◯で的中….760

印をつけたものどれかで的中….873


と、半分以上の予想部門で本命的中なのでなかなかの成績ではないかと(自画自賛)。今年も頑張って予想してみますのでお付き合い下さい。また今年から予想部門をこれまでの33部門からプロデューサー部門やヴィジュアル・メディア部門などを加えた39部門に拡張することにしたのでこの辺もお楽しみに。


しかし今年のグラミーもいろんな意味で忘れられないイベントになりそう。主な見どころとしては、

◯ 2年前の56回グラミーでマッケルモア&ライアン・ルイスに最優秀ラップ・アルバムを持って行かれた雪辱を、今回11KendrickLamar.jpg部門でノミネートのケンドリック・ラマーがどれだけ晴らすか?(ちなみに最多ノミネート記録は1983年のマイケル・ジャクソンと1996年のベイビーフェイスの12部門)

◯ ソング・オブ・ジ・イヤー(SOY)レコード・オブ・ジ・イヤー(ROY)で激突しているエド・シーランテイラー・スイフト、それにケンドリック・ラマーウィークンド、マーク・ロンソン、「See You Again」などが四つ巴、五つ巴で、サム・スミスで決まりだった昨年とは様変わりの混戦模様の主要4賞、誰が勝ち残るか?

◯ 予想部門ではないですが、若干12歳の天才ジャズピアニスト、ジョーイ・アレクサンダーがジャズ界のベテラン達を押さえて見事最優秀ジャズ・インストルメンタルアルバム部門と最優秀アドリブ・ジャズ・ソロ部門を受賞するのか?

◯ 今年主要部門にノミネートされている、評論筋に評価の高いディアンジェロ、アラバマ・シェイクス、ケンドリック・ラマーといったあたりがそれぞれのジャンル賞だけでなく主要4賞の一角を切り崩すのか?

◯ そして今年に入って相次いで他界した大物アーティスト、ナタリー・コールデヴィッド・ボウイのトリビュートで会場はエモーショナルな盛り上がりを見せるのか?(トリビュートがあるかどうかは未アナウンス

といったところでしょうか。


一方いつものように「え?何でこれノミネートされてないの?」という、2015年を色んな意味で飾ったり、音楽誌等で評判がいいのに完全に無視されているアーティストが今年もありました。個人的に気になったのは、

WalkTheMoon-ShutUpAndDance.png※ 去年の夏から秋にかけてUSに行った時、ラジオでガンガンにかかりまくっていて、ホット・ロック・トラックチャートでも27週間1位を独走した「Shut Up And Dance」のWalk The Moonがポップ部門も、新人部門も影も形もないこと。

※ 同じく新人部門やポップ部門に入っていて全くおかしくない「Fight Song」が大ヒットしたレイチェル・プラッテンも完全無視。同じく「See You Again」にフィーチャーされ一躍ブレイクしたチャーリー・プースも新人部門にノミネートされず。

※ 2015年を席巻したトラップ・ラップ。その旗手ともいえるフェティ・ワップ(3曲のHot 100トップ10ヒットを飛ばした)が僅か2部門ノミネートに留まり、No.1アルバムを放ったフューチャーに至っては全く無視。

※ 各音楽誌で大変評判のよかったカーリー・レイ・ジェプセンの新作『Emotion』も完全無視。


あと今年はこれまで現地の日曜日の夜(日本時間月曜日朝)に行われていた授賞式が初めて月曜日、2/15の夜(日本時間2/16火曜日朝)に行われるという点で特殊な授賞式になります(現地は2/15月曜日がPresident's Dayの休日のため、というのが理由らしい)。この関係もあり、またたまたまこの週の月曜から外せない香港出張が入ってしまったこともあって、残念ながらここ数年続けてきたグラミー授賞式の生ブログは今年は諦めざるを得ない状況です、残念!

でも出張から返ってきたら録画を見ながらの実況ブログ(鮮度は落ちますけど)を水曜日にはアップしたいと思ってますのでよろしくお願いします。今年のグラミーは混戦が予想されるので、ホントは例年通り生でブログアップしたいのだけどね。


ということで、今年も第58回グラミー賞予想のスタート!まずは例年通りポップ部門から。


1.最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス部門


  Heartbreat Song - Kelly Clarkson

Love Me Like You Do - Ellie Goulding

Thinking Out Loud - Ed Sheeran

  Blank Space - Taylor Swift

Can't Feel My Face - The Weeknd


KellyClarkson-HeartbeatSong.jpgEllieGoulding-LoveMeLikeYouDo.pngEdSheeran-ThinkingOutLoud2.pngTaylorSwift-BlankSpace.pngTheWeeknd-CantFeelMyFace.jpg


54回(2012.2授賞)以降男女部門が一本に統一されて以来アデル→アデル→ロード→ファレル・ウィリアムスと圧倒的女性上位のこの部門、今年ノミネートの女性陣もテイラーを筆頭に強力な布陣ですが、僕の今年のグラミーのシナリオの一つは「エド・シーランようやくグラミーを席巻する」というものなので、主要賞を含め、この部門でもエドくんががっちり取ってくるという読み。従ってエド君◎。

何しろエド君は55回ではSOYで「The A Team」がファンの「We Are Young」に、56回では新人部門でマッケルモア&ライアン・ルイスに(この順番もおかしいが)、そした昨年57回ではアルバム部門「X」はベック、ポップボーカル部門はサム・スミスにやられるなど、実はこれまで一度もグラミー受賞してないんです。信じられる?

従って今年は希望もこめてエド君にこの部門も取ってもらいたい。対抗◯は、これも2015年を代表するヒット曲の一つなのに、ここと「ヴィジュアル・メディア向けに書かれた最優秀ソング」部門だけのノミネートの、エリー・ゴールディングLove Me Like You Do」に。穴はレコード・オブ・ジ・イヤーでエドとしのぎを削ってる、こちらも2015年の顔の一人、ウィークンドに付けておきましょう。


2.最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門


  Ship To Wreck - Florence + The Machine

  Sugar - Maroon 5

Uptown Funk - Mark Ronson Featuring Bruno Mars

Bad Blood - Taylor Swift Featuring Kendrick Lamar

See You Again - Wiz Khalifa Featuring Charlie Puth


FlorenceTheMachine-ShipToWreck.jpg Maroon5-Sugar.jpg MarkRonson-UptownFunk.jpgTaylorSwift-BadBlood.png WizKhalifa-SeeYouAgain.jpg 

この部門は、2015年を象徴する曲としての存在感としてはリスト下の3曲が飛び抜けているのは明らか。その中では話題性や組み合わせの斬新さという点でも、そしてPVの豪華さ(こちらは最優秀音楽ビデオ部門にもノミネートされてる)でも、そして他の主要賞にノミネートされてないという点からも本命◎は「Bad Blood」で決まりでしょう。対抗◯はSOYでエド君と激突している映画『Furious 7(邦題:ワイルド・スピード・スカイミッション)』にフィーチャーしてこれも2015年を代表するヒットの一つとなった「See You Again」。そして穴というにはおこがましいけど、ROY部門の最右翼候補、マーク・ロンソンの「Uptown Funk」で。


3.最優秀コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム部門


Guitar In The Space Age! - Bill Frisell

  Love Language - Wouter Kellerman

Afrodeezia - Marcus Miller

Sylva - Snarky Puppy & Metropole Orkest

  The Gospel According To Jazz, Chapter IV - Kirk Whalum


BillFrisell-GuitarInTheSpaceAge.jpgWouterKellerman-LoveLanguage.jpgMarcusMiller-Afrodeezia.jpgSnarkyPuppy-Silva.jpgKirkWhalum-GospelAccToJazzIV.jpg 


この部門は毎回なかなか読めない部門で、54回以降の予想で◎◯が当たったのは54回のブッカー・T・ジョーンズThe Road To Memphis」くらい。その後はスムーズ・ジャズ・サックスのクリス・ボッティ、大御所ハーブ・アルパート、そして去年は今年もパンチ・ブラザーズのメンバーとして最優秀アメリカン・ルーツ・パフォーマンス部門にノミネートされてるマンドリンのクリス・タイルとベースのエドガー・マイヤーのデュオアルバムと、全く傾向がわかりません(汗)。こういう時は好きなもの、感が働くものを選ぶしかないので、本命◎は、昨年9月に横浜赤レンガ野外ステージで見てその素晴らしいパフォーマンスに感動したブルックリンベースの職人ミュージシャン集団、スナーキー・パピーがオランダのジャズ・ポップ・オーケストラとコラボしたアルバム『Sylva』に。このアルバムまだ聴いてないのでチェックしたいと思います。対抗◯はこちらも既に大御所ベーシストのマーカス・ミラーブルー・ノート・レーベルからのデビュー作『Afrodeezia』へ。こちら日本でもタワーとかで大々的にプッシュされてて評判も良かった模様。穴はカントリーやフォーク分野とジャズをつなぐジャンルレスの活動で有名なギタリスト、ビル・フリゼールバーズキンクスビーチボーイズらの60年代の曲を新解釈でプレイしてるいう企画の『Guitar In The Space Age!』に。


4.最優秀ポップ・ボーカル・アルバム部門


  Piece By Piece - Kelly Clarkson

  How Big, How Blue, How Beautiful - Florence + The Machine

Uptown Special - Mark Ronson

1989 - Taylor Swift

Before This World - James Taylor


KellyClarkson-PiecebyPiece.pngFlorenceTheMachine-HowBig.pngMarkRonson-UptownSpecial.pngTaylorSwift-1989.jpgJamesTaylor-BeforeThisWorld.jpg 


この部門は去年のサム・スミス、その前のブルーノ・マーズ、4年前のアデルなどのように、その年を代表するヒット・アルバムで、かつその年の主要賞にもノミネートされている作品が取る、という傾向が強い、まあポップフィールドの看板部門。その線で行くとこの中で唯一今年最優秀アルバム部門ノミネートのテイラーの『1989』が本命◎ということになります。余談ですが、このアルバムを、曲順をそのままに、しかし自分流のアレンジとスタイルでまんまアルバムごとカバーしてしまったライアン・アダムスの『1989』もかなりいいアルバムだったと思います。テイラーファンも一聴をおすすめします。グラミーからは完全無視だけど(笑)。

で対抗◯はマーク・ロンソン、穴は普通の年だったら充分最優秀アルバムノミネートされてもおかしくない出来だった、ジェームス・テイラーの『Before This World』に。


5.最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム部門


The Silver Lining: The Songs Of Jerome Kern - Tony Bennett & Bill Charlap

Shadows In The Night - Bob Dylan

Stages - Josh Groban

  No One Ever Tells You - Seth MacFarlane

  My Dream Duets - Barry Manilow & Various Artists


TonyBennett-TheSilverLining.jpgBobDylan-ShadowsInTheNight.jpgJoshGroban-Stages.jpgSethMcFarlane-NoOneEverTellsYou.jpgBarryManilow-MyDreamDuets.jpg 


毎回言ってますが、この部門はトニー・ベネット御大のホームグラウンド的部門で、過去20回で12回ノミネート、うち昨年のレディガガとのデュエットアルバムも含めて10回受賞という独占状態。従って問題なく今回、新進気鋭のジャズ・ピアニスト、ビル・シャーラップとのコラボで、数々の有名ミュージカル楽曲の作者であるジェローム・カーンの曲を歌うという企画アルバムが本命◎でしょう。今年も天敵のマイケル・ブブレもいませんし。そしてその御大を脅かしそうな対抗◯が、ボブ・ディランシナトラの楽曲をラウンジシンガー気分たっぷりでカバーするという『Shadows In The Night』。実は去年がシナトラ生誕100年だったので、ひょっとしたらベネット御大を押さえてこっちが来るかも、という話もあります。結構この部門の結果、楽しみかも。

は、なぜかこの部門54回に続いて2回目のノミネートの映画『TED』のモフモフテディベアの吹き替えで知られるセス・マクファーレンや、バリー・マニローの豪華デュエットアルバムもいいですが、51回のクリスマス・アルバムから7年ぶりこの部門ノミネートのジョッシュ・グローバンのブロードウェイ・ミュージカルナンバーのカバー集に。


というところで今日はここまで。まだ先は長いけど、こつこつ予想アップしていきますのでよろしくお付き合い下さい。

【新企画】新旧お宝アルバム!#27 「Adriana Evans」 Adriana Evans (1997)

#27Adriana EvansAdriana Evans (RCA, 1997)


2016年松の内も終わり、今日は成人式。全国で新たに成人となった若者たちがいろいろなイベントで盛り上がっていることでしょう。一方殆どの方にとっては3連休の最終日。年末年始で疲れた体と胃腸をゆっくりと休めながら明日からの仕事に英気を養っておられることと思います。そういう時に体と気持ちをほぐしてくれる、そんな音楽を今日はお届けしたいと思います。

今週の「新旧お宝アルバム!」は、今から18年前のアルバムですから、「新」でも「旧」でもなくいわば新旧中間のタイミングでリリースされていることもあってか、殆どの方に取っては初めて聴く名前かもしれませんが、作品の内容は自信を持ってお勧めできるネオ・ソウル・シンガー、エイドリアナ・エヴァンスの1997年のデビュー・アルバム『Adriana Evans』をご紹介します。


Adriana Evans (Front)


エイドリアナ・エヴァンスは1974年サンフランシスコ生まれ。母親はカウント・ベイシーディジー・ガレスピーといったジャズの大御所達のシンガーとして多くのレコードも出しているメアリー・ストーリングス。あの有名なジャズ・サックス奏者のファラオ・サンダースが彼女のゴッドファーザー(名付け親)であるなど、音楽、特にジャズやブルースに囲まれた環境に育ったエイドリアナが音楽の道を進もうとしたのは半ば当然。そして、彼女のしなやかで、ヒップなグルーヴ感満点な伸びやかなボーカルを聴くと、従来のひと世代前のアフリカン・アメリカン・アーティストが経由するゴスペルやブルースといった、泥臭さよりも洒脱な、それでいてアーシーな雰囲気を強く感じるのはこうした彼女の生い立ちや環境が大きな要因だというのが判ります。

また一方彼女のボーカルには、90年代のブラック・アーティストが必然的にそうであるように、そこここにヒップホップの香りをまとっていて、それが彼女のボーカルに微妙にコンテンポラリーなニュアンスと独特の魅力を加えています。それもそのはず、このアルバムを含め彼女がこれまでに発表した4枚のアルバム全てにおいて彼女と共にプロデュースをしているのは、彼女が18歳の時(1992年)大学進学のため移り住んだLAで知り合って意気投合して以来、ずっと彼女のサウンド・サポーターとして寄り添っているラッパーのジョナサン・“ドレッド”・スコット。彼はエイドリアナに先駆けてメジャー・レーベルから1994年にアルバムをリリース、エイドリアナをフィーチャーしたシングル「Check The Vibe」がアングラ・ヒップホップ・シーンで小ヒットになるなど、彼なりの活動を行っていましたが、このエイドリアナのデビュー作以降はその活動をほとんど彼女とのソングライティング、プロデュースに徹しています。二人が自然にプライベートなパートナーとなったのは自然の成り行きだったでしょう。

そのドレッドのプロデュースも、彼自身が幼少時ジャズやファンクを浴びるように聴いたという経験もあり、ヒップホップの色合いはあくまで微妙な味付けにうまーく使っている一方、色濃く70年代ソウルや、ジャズのグルーヴを強く感じさせるサウンドにフォーカスすることで、先に申し上げたエイドリアナの洒脱なグルーヴに満ち溢れたサウンドを生み出していることに成功しており、これも彼女の作品のクオリティを高いものにしている大きな要因です。

ヒップホップサウンドメイカーとR&Bシンガーのペアというと、あのアリシア・キーズスイズ・ビーツジェイZ、DMX、イヴ、ビヨンセ、ニッキー・ミナージなどのプロデュースで有名)が有名ですが、彼らのサウンド・アプローチがよりストリート色が強いのに対し、エイドリアナドレッドはあくまでジャズや昔のR&Bを強く意識したアプローチに徹しているのがいいところ。


 

何と言っても冒頭、ゆったりとした南からの朝のそよ風のように始まるイントロがいきなり聴くものの心を奪ってしまうLove Is All Around」がこのアルバム全体のふくよかで素晴らしい雰囲気を開始数秒で定義してしまいます。自分がこのアルバムに最初に出会った時、このイントロ一発でこのアルバムの素晴らしさを確信した、そういうキラー・オープニング・チューンです。

このアルバムはこの「Love Is~」に代表されるようなエイドリアナの伸びやかでしなやかなジャズ・テイストのグルーヴ満載のボーカルと、70年代R&Bを彷彿とさせるネオ・ソウル的なサウンドが楽しめる曲が満載。2曲目の「Seein' Is Believing」のギターソロなんて明らかにジョージ・ベンソンウェス・モンゴメリーあたりのジャズギターを意識してますし、70年代のフィラデルフィアソウルを思わせるゆったりしたフレーズに乗って美しい鳥が飛び立つようにふわっと立ち上がるエイドリアナのボーカルがひたすら美しい「Heaven」、重目のドラムビートに乗ったヴィブラフォンの音色が昔のジャズソウルを思い出させる「Reality」、ギター・ワウの音色が70年代R&Bジャズ・シンガーがクラブで歌っているようなインティミットな雰囲気を醸し出す「Say You Won't」などなど、枚挙にいとまがありません。




また一方、意図的にレコードのスクラッチノイズっぽいSEを入れながらオーガニックなエイドリアナの歌声がグルーヴ満点の「Swimming」やアルバム最後を同様のサウンドアプローチで、エイドリアナの伸びやかな高音ボーカルが清々しい「In The Sun」などは、ドレッドが、ア・トライブ・コールド・クエスト(ATCQ)あたりのクールでありながら日なたの暖かさを感じさせる独特のヒップホップ・サウンドを強く意識しながら、それを使ってエイドリアナのボーカルを引き立てようと言う90年代のソウル・レコードらしい工夫が感じられます。ヒップホップサウンドメイカー、ドレッドの面目躍如といったところ。ATCQなどのネイティヴ・タン一派の都会的なヒップホップサウンドの感じが好きな方であればこの辺も気に入って頂けると思います。



エイドリアナの作品は、この次の同様のアプローチでの『Nomadic』(2004)、この作品リリース後、ブラジルに一時期渡っていた頃の影響を感じさせる『El Camino』(2007)、そして最新の『Walking With The Night』(2010)と、いずれも素晴らしいものばかりですので、このアルバムを聴いて気に入って頂けた方はこれらのアルバムも、必ず楽しんで頂けると思います。

Nomadic.jpg

最近の新しいR&Bというと、どうしてもEDM系のサウンドか、ヒップホップそれもミニマルなサウンドの音作りの味付けが濃いものが多く、70年代ソウルやジャズ・ソウルなどに親しんだ方にはちょっと手が出にくいことが多いかとは思いますが、このエイドリアナ・エヴァンスの作品などはそうした方々にも強くお勧めできるものです。

また一方、今回成人式を迎えられる世代の、最近のヒップホップやEDM系のサウンドに慣れ親しんだR&Bリスナーの皆さんにも、エイドリアナの素晴らしい歌声と、無駄な装飾を削ぎ落としたようなオーガニック・ソウル的なサウンドは、きっと新鮮な感動を届けてくれるものと思います。

Adriana Evans (Back)


皆さん、いい音、いいレコードで楽しい洋楽ライフをお送り下さい。


<チャートデータ>

ビルボード誌全米R&Bアルバム・チャート 最高位33位(1997.5.17付)


Seein' Is Believing同全米ソウル・シングル・チャート 最高位50位(1997.5.31付)

Love Is All Around同 最高位65位(1997.9.27付)

【新企画】新旧お宝アルバム!#26 「All Your Favorite Bands」 The Dawes (2015)

#26『All Your Favorite Bands』The Dawes (Hub, 2015)


みなさん明けましておめでとうございます!2016年もいよいよスタート、今日1月4日から仕事始めという方も多いことと思います。昨年25枚のアルバムを紹介させてもらったこの「新旧お宝アルバム!」、今年もよろしくお願いします。

さて、今年最初の「新旧お宝アルバム!」でご紹介する「新」のアルバムは、カリフォルニア州ロサンゼルスをベースに活動する、70年代の西海岸ロックが商業化されて大きくなる前の頃のサウンドを彷彿させるサウンドを聴かせてくれる三人組、ザ・ドーズ(The Dawesが昨年リリースした4作目となるアルバム『All Your Favorite Bands』を取り上げます。


All Your Favorite Bands (Front) 


テイラー(ボーカル&ギター)とグリフィン(ドラムス)のゴールドスミス兄弟と、ベースのワイリー・ゲルバーの3人からなるこのザ・ドーズというバンド(キーボードのテイ・ストラセアンはこのアルバム発表後に脱退)、全てのアルバムをインディ・レーベルからリリースしていることもあり日本盤リリースはまだないようですが、おそらく70年代前半の西海岸ロックに傾倒した経験のあるシニアの洋楽リスナーの方であれば、きっと気に入って頂けるタイプのサウンドと楽曲を聴かせてくれるバンドです。

ステレオタイプを恐れずに言ってしまうと、ザ・バンドを思わせるルーツ・ロック、アメリカーナ・ロックなバンドサウンドに乗せて、そこここでジャクソン・ブラウンを想起させるテイラーのボーカルを中心に、CSN&Yがちょっと入ったフィーリングのボーカル・ハーモニーを聴かせるバンドで、楽曲の歌詞もジャクソン・ブラウンっぽいストーリー性を持たせたものが多く、サウンドだけでなく、テイラーの書く楽曲の歌詞を評価する米国音楽評論筋やファンも多いようです。

フォーク・ロック・バンド、と紹介されることも多いドーズですが、どちらかというと、アメリカーナ・ロック・バンド、と言った方が相応しいそのサウンドは、リヴァーヴの効いたそれでいて弾きまくらないテイラーのギター・ソロや、オルガンやピアノ、ドブロのサウンドなどがアメリカーナでアナログな感触満点で、聴く者に何やら懐かしい気持ちを抱かせてくれるものです。かといって単なる懐古趣味サウンドのバンドでもなく、インディー・バンドらしくウィルコジェイホークスといった前を向いたオルタナ・カントリー・ロックっぽいサウンドも持ったバンドです。

それもそのはず、彼らをシーンでブレイクしたセカンド・アルバム『Nothing Is Wrong』(2011)をプロデュースしたジョナサン・ウィルソンは、カリフォルニアのローレル・キャニオンと呼ばれる一帯を中心に活動するウィルコジェイホークスのメンバーや、ブラック・クロウズクリス・ロビンソン、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズベンモント・テンチらを集めた私的ジャムセッションを2010年前後に開催し、この一帯の音楽シーンの盛り上げの中心人物となった人物。そういう意味では、はアメリカの昔からのルーツ・ロックやアメリカーナ・ロックと2000年代以降のオルタナ・カントリー・ロックの両方の遺伝子を持っているバンドです。

Nothing Is Wrong


この4作目では、プロデューサーにこちらも今を代表するフォーク系シンガーソングライターであるギリアン・ウェルチのギタリストとして有名なデヴィッド・ローリングスを起用。アルバム全体を包む心和むアメリカーナなサウンドに貢献しています。

アルバム冒頭の「Things Happen」は彼らが持つ一つの要素である「今」を感じさせてくれるバンドサウンドに乗ったテイラーの優しげなボーカルが「辛いことや口もききたくない人達など、そうした物事は起きるもの」と諭すように語りかけます。「Somewhere Along The Way」はそれに続く「Don't Send Me Away」共々、サウンドといい、テイラーの歌いぶりといい、このアルバム中最もジャクソン・ブラウンの初期の楽曲を彷彿させる曲たちです。後者は後半のリフレインに緊張感をそこはかとなく掻き立てるコーラスによるハーモニーをフィーチャーし、ドーズの真骨頂を発揮していると言えるサウンドでこうしたCSN&Yとかに通じるサウンドに懐かしさを感じるリスナーをぐいぐい引っ張り込みます。




アルバム・タイトルナンバーの「All Your Favorite Bands」も前2曲同様、テイラーのボーカルはジャクソン・ブラウンをいやがおうにも思わせるものですが、それだけでなく「そのうち監視なしの生活が送れるという君の思惑がその通りになるといいけど/君の兄貴のシボレー・エル・カミーノがずっと走り続けてくれるといいが/君は僕にとってずっといい奴だったから、世間の連中も同じように思ってくれるといいけど/そして君の大好きなバンドが解散せずに続いてくれますように」という一時期を同じ街で、一緒に親しく過ごした古い友人に送るメッセージ的な歌詞がおそらく聴くものの甘酸っぱい青春の想い出を、インディー映画のワンショットのように淡々と描写するあたりが、このバンドがアメリカで手堅く支持されている所以なのでしょう。




プロデューサーのデイヴィッド・ローリングスとそのパートナーであるギリアンもバックに参加した「I Can't Think About It Now」は、淡々と演奏されるバンドサウンドをバックに哀愁を帯びたメロディの曲。そして、あたかもどこか西海岸のライヴハウスあたりでやった演奏を一発取りしたかのような雰囲気のギターとピアノとオルガンのサウンドと、叙情的なメロディの醸し出す楽曲全体がとても懐かしさを掻き立てる「To Be Completely Honest」など、どれを取ってもこのアルバムの楽曲は間違いなく今のバンドの音なのに、いい意味でとてもレトロな肌触りと親しみやすさでいっぱいの楽曲ばかりなのです。


All Your Favorite Bands (Back) 


新しい年を迎えて、今年もまた新しい魅力的なバンド、レコードに巡りあってみたいという熱心な洋楽ファンの方、昔からアメリカン・ロック、特に西海岸ロックに親しんできたけど最近のバンドはよくしらないというシニア洋楽リスナーの方、アメリカーナとかオルタナ・カントリーは興味あるけど、あまりバンジョーとかスティール・ギターとか満載のどカントリーっぽいのはちょっと、という方。このドーズの『All Your Favorite Bands』をチェックしてみてください。ああ、今でもアメリカにはこういうサウンドとこういう楽曲を魅力たっぷりに聴かせるバンドがあるんだ、と嬉しい発見をして頂けること、請け合いです。


みなさん、今年もどうかいい音楽、いいアーティストと巡りあえる、素敵な洋楽ライフをお送り下さい。


<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位37位(2015.6.20付)

同全米ロック・アルバム・チャート 最高位4位(2015.6.20付)

同全米フォーク・アルバム・チャート 最高位1位(2015.6.20付)

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