Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【新企画】新旧お宝アルバム!#45 「Barbara Keith」 Barbara Keith (1972)

#45Barbara KeithBarbara Keith (Reprise, 1972)


この週末から今日の月曜にかけてはアメリカはメモリアル・デイ・ウィークエンド。夏の到来をいち早く喜び全米各地ではバーベキューなどの屋外イベントで大いに賑わう休日であるのと同時に、メモリアル・デイというのは軍隊の活動で殉死したアメリカの軍人達を慰霊する休日でもあります。

そうしたタイミングに先週広島に訪問して核兵器のみならず戦争という非人間的な活動を我々自身の英知で回避するよう努力しなければならない、と感動的なスピーチを行ったオバマ米大統領。まさしくその言葉通りに今後の日米の指導者達は世界を率先して行動していかねばならないのですが、正しい方向に向けて行動していくリーダーにトップに立ってもらうためにも、我々一人一人が、候補者達を十分に見極めて必ず投票日には投票をする、という基本的な権利と義務を実行することが重要だと思います。


さて、ちょっと堅くなりましたが今週の「新旧お宝アルバム!」は「旧」のアルバムのご紹介。今週はアメリカがベトナム戦争の惨禍から戦争反対に向けての国民レベルの活動が盛り上がっていた時期にひっそりとリリースされ、その後一部のミュージシャン達に曲を取り上げられる以外はメジャーな注目を集めることがなかった、とはいえすべての曲が瑞々しい感性と素晴らしいメロディと演奏で作り上げられた、女性シンガーソングライター、バーバラ・キースの知る人ぞ知る名盤『Barbara Keith』をご紹介します。


Barbara Keith (Front)


バーバラ・キースは1960年代後半、NYのグリニッジ・ヴィレッジのカフェで、後にロック・グループのマウンテンを結成するドラマーのN.D.スマート2世や、後にオーリアンズを結成するギターのジョン・ホールカンガルーというバンドでライヴ活動をしていたのが音楽活動の始まり。その後バンドを離れて1969年にソロ・デビュー・アルバム『Barbara Keith』(今日ご紹介するアルバムと同タイトルでややこしい)をリリース。今回ご紹介するこのアルバムは2枚目のソロアルバムになります。


このアルバムは、冒頭のあのあまりにも有名なボブ・ディランのナンバー「All Along The Watchtower(見張り塔からずっと)」の他は全曲バーバラ自身のペンによるもの(最後の「A Stone's Throw Away」のみ夫のダグ・ティブルスとの共作)で、これらの楽曲の繰り広げる世界がすなわち当時のバーバラが紡ぎ出していた世界ということになります。

その楽曲の作り出す世界は、いかにも70年代初頭のシンガーソングライターらしく、フォーク、ゴスペル、カントリー、そして当時の音楽シーンの重要なサウンドの流れの一つとしてエリック・クラプトン、ジョージ・ハリスン、デラニー&ボニーといった英米のミュージシャン達がこぞって取り上げていたいわゆる「スワンプ・ロック」的な味わいを色濃く持っているのが大きな特徴です。


冒頭の「見張り塔からずっと」はアップテンポなアコギから始まり、途中からデヴィッド・コーエン(元カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ)とトニー・ペルーソカーペンターズの「Goodbye To Love」でのファズ・ギター・ソロで有名)の二人のギタリストの絡み合いで激しく盛り上がっていくバージョン。当然ジミヘンデイヴ・メイソンらのロック・ギタリスト達のバージョンとは異なりますが、彼女のボニー・レイットばりのソウルフルなボーカルが前面に出る「ロックな」アルバムのオープニングになっています。バックを固めるのは、ドラムスがジム・ケルトナー、ベースがラス・カンケル、エレピがスプーナー・オルダムといった当時アメリカのセッションミュージシャンシーンでは、名うての連中。


続く「Rolling Water」では一転して繊細な歌声でバラードを聴かせた後、「The Bramble And The Rose」では最初ピアノのみをバックにゴスペル調のローラ・ニーロ的に歌い出したかと思うと、ツーコーラス目からはスティール・ギター入りのカントリー的演奏をバックにまるでタニヤ・タッカーのような筋金入りの力強い歌声。バーバラは書く楽曲の良さもさることながらこの3曲で、ボーカル・テクニック的にも卓越したところがあることが判ります。この曲はベテラン・カントリー女性シンガーのパティ・ラヴレスが2009年にカバーするなど、やはりカントリー・アーティスト達にも人気のある曲のようです。


 

その次の「Burn The Midnight Oil No More」は、バーバラ自身のピアノ弾き語りにこれも名手リー・スクラーのベースとニック・デカロのアレンジによるストリングスが絡むだけ、というシンプルな演奏スタイルがかえってバーバラの曲の素晴らしさを引き立てている、このアルバムのハイライトの一つといっていい情感があふれるバラード。

もう一つのハイライト曲「Free The People」は当時のスワンプ・ロックの代表選手、デラニー&ボニーが『To Boney From Delaney』(1970)で取り上げてバーバラの名前をシーンに知らしめるきっかけとなった有名曲。彼ら以外にもバーブラ・ストライザンド、オリヴィア・ニュートン・ジョンらがカバーしているこの曲を、バーバラは1曲目と同じベテラン・セッション・ミュージシャン達をバックに女性ゴスペルコーラスをバックに実にそれこそスワンプっぽくドラマティックに歌っています。




続く「Detroit Or Buffalo」はアコギとベースとドラムスに時々こちらも名手スニーキー・ピートのスティール・ギターが絡むシンプルな演奏に乗って歌われるいかにも70年代フォーク・カントリー系シンガーソングライターっぽい漂泊感満点の歌。バックでボトルネック・ギターを雰囲気満点に弾いているのはご存じリトル・フィートの故ローウェル・ジョージ。こちらもフォーク系のシンガーソングライター、メラニーが後にカバーしています。

もう一つの自己のピアノ弾き語り曲「The Road I Took To You」もリンダ・ロンシュタットを思わせるような豊かな歌声でバーバラが「私はボロボロになりながら歩き回っていたけど/私が家に戻れる道というのは/そもそも私が家を出るために取った道だったことすら気がついていなかったの」と歌う、こちらも漂泊感を湛えたバラード。


Barbara Keith 


またまた冒頭曲と同じメンツのセッション・ミュージシャン達にローウェル・ジョージのギターを加え「Smackwater Jack」あたりのキャロル・キングっぽいソウルフルな曲調で聴かせる「Shining All Along」とこちらはバーバラ自身のアコギのストロークにスプーナーのエレピとリーのベースが絡むだけのシンプルながらこれもスワンプ・テイスト満点の「Rainy Nights Are All The Same」を経てアルバム最後を締めるのは夫ダグ・ティブルスとの共作曲「A Stone's Throw Away」。ここでローウェルスプーナーと共にバックでドラムスを叩いているのはデレク&ザ・ドミノスジム・ゴードンブリル・ビルディングス・メロディー・ミーツ・LAスワンプ、といった趣のこのナンバーは、後にLA出身のシンガー、ヴァレリー・カーターが1977年のデビュー作で取り上げ、アルバムタイトルにもしてしまった、LAミュージックファンに取っては超有名曲。このアルバム全体を包む雰囲気を総括するようなアレンジで、女性コーラスをバックにバーバラが気持ちよく歌っています。


Barbara Keith (Back)


正直言ってこのアルバム、キャロル・キングの『つづれ織り(Tapestry)』(1971)や以前ここでも取り上げたボニー・レイットの『Give It Up』(1972)といった当時も今も極めて評価の高いこの頃のシンガーソングライターの作品と比較しても、そのサウンドスタイルの類似性や楽曲レベルの高さからいって、もっともっと高く評価されていいと思うのです

ただ残念なことにこのアルバムリリース時までに、バーバラダグは音楽業界に嫌気がさしてしまったようで、家庭を中心に生活するためにリプライズ・レーベルからの前払金を返却してしまうなどのトラブルもあってこのアルバムはほとんど当時プロモーションされなかったようです。

それでも彼女の楽曲を多くのアーティスト達がこぞってカバーしているあたり、彼女の実力は十分に証明されていると言っていいでしょう。


今回このコラムを書くにあたり調べたところ、何とバーバラダグは養子のジョンと共に、2000年頃からThe Stone Coyotesというグループ名義で音楽活動を再開しているらしく、既に10枚以上のアルバムをリリース。2001年の『Born To Howl』は「AC/DCパッツィ・クライン(カントリー界のレジェンドと言われる反体制的な歌詞の曲で有名な大御所女性シンガー)と合体したような」(Allmusic)サウンドで評価が高い、というから聴いてみるのが楽しみです。ちなみにこのアルバムで、バーバラ自身の「Detroit Or Buffalo」をセルフ・カバーしているらしく、約30年を経て同じ曲がどのような進化を経ているか、これも楽しみ。


Born To Howl 

ワーナーさんの「名盤探検隊シリーズ」で2000年に世界初CD化を成し遂げたこのアルバム、今でもCDストアで比較的手に入りやすい作品です。是非次ぎ店頭で見かけた時には取り上げて、70年代前半に作られたバーバラの素晴らしい作品を楽しんでみて下さい。


<チャートデータ>

全米全英ともチャートインなし

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【新企画】新旧お宝アルバム!#44 「Monterey」 The Milk Carton Kids (2015)

 #44MontereyThe Milk Carton Kids (ANTI-, 2015)


日一日と暑い日が増えてきている今日この頃、梅雨入り前の五月の素晴らしい気候の中、皆さんイベントに、コンサートに、そしていい音楽に出会いに活動にいそしんでいることでしょうね。自分も週末二週続けてDJイベントや、アナログレコードの聴き比べ会など音楽にどっぷり浸かっております。今年もいいアーティストが多く来日するようなのでライブに忙しい方も多いでしょう。いずれにしてもいい季節!目一杯音楽を楽しみましょうね。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は「新」のアルバムをご紹介。昨年から今年にかけていわゆるアメリカーナ、と言われる分野の素晴らしいレコードが多くリリースされており、このコラムでもいくつかご紹介してきましたが、今回ご紹介するのもそうしたアルバムの一つで、2010年代のサイモン&ガーファンクル、なんていう呼ばれ方で大きな評判を呼んでいるアコースティック・デュオ、ザ・ミルク・カートン・キッズの4枚目のスタジオ・アルバムになる『Monterey』をご紹介します。


Monterey (Front) 


ザ・ミルク・カートン・キッズは、共にカリフォルニア出身のケネス・パッテンゲールジョーイ・ライアンの二人組。それぞれソロで活動していたのだが芽が出ず、ある日ジョーイケネスのライヴを見に行って気に入り、デュオを組むことを提案、2011年にはその年に地元で行ったライヴを収録した最初のアルバム『Retrospect』(2011)をリリース(最初の作品なのに『回顧録』と言うタイトルを付けるあたりのセンスがにくい)。

続いて同年にリリースした2作目のスタジオ録音『Prologue』(2011)と、これに続く全米ツアーで静かな人気を呼び、シンガーソングライターのサラ・バレイエスがこのアルバムをツイッターで賞賛したりしたことがプラスに働いて、ザ・ミルク・カートン・キッズの名前がこのジャンルのファンの耳に届くことに。

The Ash Clay 

その後ルーツ・ミュージック系を多くリリースするインディー・レーベルANTI-と契約、3作目の『The Ash & Clay』(2013)をリリース。このアルバムが第56回グラミー賞で最優秀トラディショナル・フォーク・アルバム部門でノミネートされることで、更に彼らの名前と音楽が広く知られることになりました。

そして昨年リリースされたのがこの『Monterey』。


彼らのサウンドを一言で言うと「シンプルで力強かった60~70年代のフォーク・ミュージックを現代の感覚をにじませながら再現しているサウンド」とでもいいましょうか。音楽プレスの中には「ギリアン・ウェルチ&デイヴ・ローリングス(現在のフォーク系アメリカーナを代表するシンガーソングライター・コンビ)とサイモン&ガーファンクルを掛け合わせて、エヴァリー・ブラザーズの雰囲気を乗っけた」なんていってるものもあり、二人がアコギを弾きながら、美しいコーラスをふんだんに使った楽曲を演奏する様は、確かにあのS&Gを彷彿とさせるのです。



アコースティック・ギターの音色はそれだけで聴く者の精神を落ち着かせてくれますが、そこにケネスジョーイのコーラスによるちょっとメランコリーな歌声が重なることによってマジックが生まれる様は、冒頭の「Asheville Skies」でいきなり堪能することができます。またケネスのギターピッキングも大変達者なもので、ちょっとマリアッチを思わせるイントロが異国情緒とトロピカル気分を醸し出す「Getaway」でも彼の奏でるオブリガードとジョーイがつま弾くベーシックなスリーフィンガーの組み合わせと、ここでも控えめながらゴージャスな二人のコーラスワークがこのシンプルな曲をとてもふくよかなものにして、聞き惚れてしまいます。続く「Monterey」も同じようなアレンジで同じようなコンセプトの曲で、メキシコにほど近いモンタレーの素晴らしい自然を歌うにふさわしい楽曲。



やはりグラミー賞フォーク部門ノミネートの経験があり、先日ピーター・バラカン氏主宰のライヴイベント「Live Magic」にアメリカーナ女性トリオのI'm With Herの一人として来日した、サラ・ジャローズとの共作曲「Secrets Of The Stars」は冒頭三曲のゆったりとしたシンプルなアコギナンバーとは異なり、ややテンポの早いフォーク・ナンバー。とはいっても使われているのは二人の弾くアコギと二人のコーラスのみというのは変わりません。その組み合わせが一番このアルバムでふわっとS&Gのイメージを浮かび上がらせるのが「Freedom」。ここでの二人のコーラスの付け方はまさにポールアートを彷彿とさせる素晴らしさです。




早弾きめのギターイントロで軽快にしかし流れるように歌われる「High Hopes」、また少し異国情緒を漂わせるギターオブリガードが印象的な「Deadly Bells」や「Shooting Shadows」など、これだけの曲がすべてアコギとコーラスのみで演奏されると飽きてしまいそう、と思われるかもしれませんが全くそんなことはなく、聴き進めるほどに彼らの声に、ギターの心地よさに引き込まれてしまうのが彼らの素晴らしいところ。今年2月の第58回グラミー賞で最優秀アメリカン・ルーツ・パフォーマンス部門にノミネートされた「The City Of Our Lady」はこのアルバム2曲目のアップテンポ・ナンバーですが、ヨーロッパ民謡的なマイナー調の「Sing, Sparrow, Sing」を経て、アルバムラストは明るい感じのギターフレーズが印象的な、そしてやはりコーラスが美しいスローバラード「Poison Tree」で完結します。


Monterey (Back) 


このようなトラディショナルなスタイルで、シンプルな音楽を演奏する彼らですが、最初の2枚のアルバムを、自らのウェブサイトで無料でダウンロードしてリスナーファンに提供するなど、今のアーティストらしいプロモーションを行うなど、ただのナイーヴなフォーク・デュオではないな、と思わせるところもあります。

そもそもグループ名の「ミルク・カートン・キッズ」というのも、よくアメリカでは行方不明になった子供の顔写真をミルクのパックの横に印刷して「見かけた方はここに報告して下さい」という人捜し広告に使う、というのをネタにしたもの。自分達のことを行方不明の子供たちに例えるあたり、なかなか乾いたユーモアセンスの持ち主達と言わねばならないでしょう。


MilkCartonKids.jpg

そんな一筋縄では行かない部分もありながら、やはり彼らの本分は何度もここで述べているように、シンプルなアコギ2本によるベース・アルペジオと表情豊かで時折エキゾチックさも漂う素晴らしいオブリガード・フレーズの組み合わせによる豊潤な楽曲に、こちらもシンプルながら美しくもゴージャスなコーラスワークを乗せていき、ギター2本と人の声だけでできた楽曲だとはなかなか思えないほどの複雑で繊細かつ重厚な楽曲を紡いでいること。

単なる歴史修正主義的な観点でフォーク・ミュージックをやっているだけではない、何かを秘めた彼らの音楽に一度癒やされてみてはいかがでしょうか。


<チャートデータ>

ビルボード誌全米ヒートシーカー・アルバム・チャート(メインのアルバムチャートで100位以下最高位でかつメインのアルバムチャートにチャートイン歴のないアーティストのアルバムによるチャート) 最高位5位(2015.6.6付)

同全米ロック・アルバム・チャート 最高位27位(2015.6.6付)

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【新企画】新旧お宝アルバム!#43 「Natural Progressions」 The Bernie Leadon & Michael Georgiades Band (1977)

#43Natural ProgressionsThe Bernie Leadon / Michael Georgiades Band (Asylum, 1977)


日ごとに20℃越えの気温の日が多くなってきて、半袖姿もよく見かけるようになった今日この頃、素晴らしい気候のもと皆さん洋楽ライフを楽しんでますか?

今週の「新旧お宝アルバム!」は「旧」のアルバムのご紹介の順番ですが、そうした気持ちのいい五月晴れの日にぴったりな、さわやかでしみじみと胸に迫る楽曲でいっぱいの作品のご紹介です。今年中心メンバーであったグレン・フライが他界してしまったイーグルス、その初期からバンドのキャリアの頂点に駆け上がる過程において、バンドのサウンドメイカーとして中心的な役割を果たしたバーニー・レドンが、1976年にイーグルス脱退後友人のマイケル・ジョージアディスと組んでリリースした、地味ながら珠玉の名盤『Natural Progressions(歌にくちづけ)』です。


Natural Progressions 2 


あまりにも有名なイーグルスのアルバム『Hotel California』(1976)以降イーグルスを知った洋楽ファンの皆さんで、その時は既にバンドを離れていたバーニー・レドンのことはあまりご存知ない、と言う方も多いでしょう。しかしバーニーがいなければそもそもイーグルスというバンドがファーストアルバム『Eagles』(1973)で、当時としては新しい感覚のカントリー・ロックというアプローチを取ろうというアイディアが生まれていたか、ひいてはバンドとしてブレイクできたかも怪しいですし、あの名作『Desperado(ならず者)』(1974)や彼らのスーパースター級のアーティストとしての地位を確立した傑作『One Of These Nights(呪われた夜)』(1975)が作られた過程でも、バーニーのソングライター、ギターのみならずバンジョーやマンドリンなど様々な楽器の演奏者、そしてアルバムサウンドの統一感を確保するための貢献度には非常に大きいものがあったのです


イーグルス結成当時、既に確立されたグループでの経験を持っていたのはカントリー・ロック・バンドの大御所であったフライング・ブリトー・ブラザーズに所属していたバーニーと、これもカントリー・ロックの中堅バンドとして成功していたポコ所属だったランディ・マイズナーの二人だけでした。

当時彼らのファースト・アルバムをプロデュースしたイギリス人の著名レコード・プロデューサー、グリン・ジョンズレッド・ツェッペリンのファーストや、フーの『Who's Next』(1971)などのプロデュースで有名)は当時のことを振り返って、当時のメンバーはバーニー以外は何をどうやっていいかよくわかっておらず、バーニーが音楽的な面を引っ張っていた、とコメントしています。また、『ならず者』の後3枚目の『On The Border』(1975)の制作中に、ドン・ヘンリーグレン・フライグリンと対立して、グリンは首になってしまうのですが、この時のことをグリンは「ドングレンはカントリーよりももっとロックンロールをやりたがっていた。しかしロックンロールでは他にも凄いバンドが山ほどいるから、彼らのベストであるカントリー系のロックに徹しろ、と言ったんだけどね」と言っています。


その後『呪われた夜』のリリース後、同じようにカントリーをベースにしたロック・サウンドメイキングでバンドを支えてきたバーニーが脱退。


そのバーニーが、ジョニー・リヴァースのバックをやっていたギタリスト、マイケル・ジョージアディスに声をかけ、ベースのブライアン・ガロファロ、キーボードのスティーヴン・ゴールドスタイン、ドラムスのデヴィッド・ケンパーを加えた「バーニー・レドン&マイケル・ジョージアディス・バンド」を結成、そのアルバム制作のプロデュースを任せたのは、他ならぬグリン・ジョンズでした




このアルバムでは、バーニーイーグルスの『ならず者』や『呪われた夜』で模索していたと思われる、カントリーをベースにした、より先進的なロックの形を作り出そうとしているのがよくわかります。

アルバム冒頭の「Callin' For Your Love」はアコースティックでリリカルな曲調が後半レイドバックなジャムセッション的に発展していき、リトル・フィートあたりを思わせるよりジャンルレスな曲を目指している意欲作ですし、続く「How Can You Without Love?」は美しいバーニーマイケルのハーモニー・ボーカルと、靄のかかったような幻想的なアコースティック・サウンドが、『呪われた夜』に収録されていたバーニーの曲「I Wish You Peace」あたりを彷彿とさせる曲で、この2曲でこのアルバムでバーニーがやりたかったことの軸が大きく二つ見えてきます。


一方で「Breath」や「Rotation」といった、相棒のマイケルが書く曲は、とてもオーセンティックなカントリー・アコースティック・テイストが漂うシンガーソングライター的なナンバーが多く、事実「You're The Singer」では「人生は謎なんかじゃない/ただ必要なところに愛を注いで/一つの長い終わりのない交響曲の中では/君が歌い手で人生が歌/誰もが一緒に歌ってくれるそういう歌の歌い手」と、このアルバムでことに自分達にとって最もしっくりくる「うた」を大事にしたいのだ、という思いが伝わってきます。




ちょっと重めのドラムスとリズムが印象的なロック色の強いマイケルのナンバー「Tropical Winter」を経て、ゆったりとしたピアノの弾き語りでバーニーがあたかも諭すような静かなトーンで「僕らは皆欲望の赴くまま世界中に夢を求める/僕らの運命が星に刻まれていると信じて/でも栄光はそれぞれ異なる明るさの光で輝いてるのさ/そして僕らはそれらの栄光をすべてつかまなくとも人生を送れる」と歌う「As Time Goes On」は、どこかイーグルスでの経験を踏まえて、自分に言い聞かせて自分を鼓舞するかのように聞こえます。


バーニーのちょっとトロピカル風味の漂うレイドバックしたナンバー「The Sparrow」、マイケルのブルース的なエレキギターのリフがロックしている「At Love Again」と楽曲は続き、アルバム最後は再びバーニーが得意とするプログレッシヴ・カントリー・ロックとでもいうべき幻想的なメロディとギターフレーズを持つ「Glass Off」で静かに幕を閉じます。




イーグルスが自分が追い求める音楽の形と異なる方向に向かう中、意を決して袂を分かち、自らの求める音楽の形を信頼する友人と共に極めようとしたバーニー。このアルバムで聴かれるサウンドと楽曲からは、そうした彼の静かな信念のようなものが感じられます。残念ながらこの後、このバンドで2枚目のアルバムを作ることはありませんでした。

Natural Progressions (back) 

その後バーニーは自らのルーツでもあるブルーグラスやカントリーをベースとしたバンドや、カントリー・ロックの有名バンド、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドへの参加などの活動を経て、1998年にイーグルスがロックの殿堂入りの際、昔のイーグルスのメンバーと再び演奏をしたのをきっかけに、2013年から行われた「History Of The Eagles」ツアーにも参加、このところは昔のイーグルスの面々と一緒にライヴ活動も行っていたようです。

しかしグレンが他界した今、もはやイーグルスとしてのバンド活動はありえないのでしょう。そうした状況のもと、バーニーは今もナッシュヴィルに居を構え、セッション・ミュージシャンとしてマイペースの活動を続けているようです。そんなバーニーが、一時期新たな音楽を作り出すという思いに燃えていたと思われる頃に作られた、この珠玉の一枚に是非とも耳を傾けてみてはいかがでしょうか。


<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位91位(1977.9.17付)

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【新企画】新旧お宝アルバム!#42 「Ghost On The Canvas」 Glen Campbell (2011)

#42Ghost On The CanvasGlen Campbell (Surfdog, 2011)


見事に好天に恵まれた今年のゴールデン・ウィーク、皆さんはいかが過ごされたでしょうか。自分は近くの山ハイクやハーフプレイのゴルフに行ったり、たまったレコードや音楽データを整理したり、家族とBBQしたりと久しぶりにゆったりとした時間を過ごして充電することができました。今週からは皆さん忙しい日々に戻られていると思いますが、風薫る五月、音楽も忘れずに公私ともにエンジョイして下さい。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は「新」のアルバムのご紹介の順番ですが、年初から続く有名ミュージシャン達の訃報の中、5年前に自身のアルツハイマー病発症を受けて自分の最終スタジオ作品として見事なアルバムを作り上げた、60~70年代を通じてロック・カントリーの分野で活躍した巨人、グレン・キャンベルが2011年にリリースした、その最終スタジオ作品『Ghost On The Canvas』を取り上げます。


Ghost On The Canvas 


自分の誕生日に最新作を発表した直後にこの世を去る、という劇的な形でこの世を去ったデヴィッド・ボウイの自分のアーティスト人生とのけじめの付け方がいかにもボウイらしかったように、既に70年代までに功成り名を成し遂げた感のあったグレンが、自らの病を知ってすぐに制作に着手したのがこの『Ghost On The Canvas』。そのアルバムを包む雰囲気は、自らの状況や既に老齢期にあることによる懐古的なトーンはあっても、決して陰鬱になることなくむしろグレンの歌声の張りとアップビートさには驚きを覚えるほど。アルバム収録曲も、この前のアルバム『Meet Glen Campbell』(2008、これも素晴らしいアルバムです)のスタイルを踏襲し、「いま」の若いミュージシャン、それもロック系のミュージシャン達の楽曲を取り上げたものがほとんどで、いずれもグレンの力強く瑞々しい歌声で、グレン自身のうたとして、説得力を持って迫ってくるものばかりです。


前作の『Meet Glen Campbell』ではフー・ファイターズ、トム・ペティ、ジャクソン・ブラウン、トラヴィス、U2、グリーン・デイといった自分より遙かに若い世代のミュージシャン達の楽曲を取り上げ、それぞれを強く説得力と解釈力に富んだボーカルで自分のものとして表現しきっていたグレン

今回はより今の時代のインディー・ロックやオルタナティヴ・ロックのミュージシャンの曲を多く取り上げながら、前作でも全面的にバックを固めていたロバート・マニングJr.(90年代のアメリカ・インディ・ポップ・シーンを代表するバンドの一つ、ジェリーフィッシュのリーダー)が明らかにビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』(1966)を彷彿するような、各楽曲をつなぐインストゥルメンタルの短いインタールードを提供していて、これがアルバム全体のトータル性を高めています。




アルバム冒頭はグレン自身のペンによる、アコギのスリーフィンガーによる短い「A Better Place」。自分の人生を振り返りながら、自分はいろいろ恵まれてきたが「より良い場所が待っている」と歌うグレンが自分の運命を受け入れながらこのアルバムを作ったことがこの冒頭のナンバーではっきり示されています。

続くアルバムタイトルナンバー「Ghost On The Canvas」は、80年代のインディ・ロック・シーンで活躍したリプレイスメンツのリーダー、ポール・ウェスターバーグのナンバー。もともとはポールの2009年のEPに収録されていたもののカバーですが「自分は生と死の間の場所を知っている」という歌い出しのこのドラマチックなバラードは、ポールのソングライティングの素晴らしさもあいまって、あたかもグレンのために用意された曲であるかのように、正しくこのアルバムのトーンをセットするナンバー。




短いインスト・セグメントの「The Billstown Crossroads」を挟んでグレンとプロデューサーのジュリアン・レイモンドの共作による「A Thousand Lifetimes」は力強いリズムにグレンの驚くほど力強いボーカルが乗ったロック・バラード。「一つ一つの呼吸は自分にとって授かり物/決して当然のこととは思っていない」というリフレインがこの歌を歌うグレンの気持ちを表現しています。

グレン自作の「It's Your Amazing Grace」はトラヴェリング・ウィルベリーズなどを思わせる、力強いギターストロークが印象的なナンバー。その歌の中で「私が君を常に思っていることは君に取って驚くべき恵み(Amazing Grace)なんだよ」と語りかけるグレンは、既に自分が去った後のことを考えているかのよう。


再びロバート・マニングJr.の短いインスト「Second Street North」を挟んで、ニック・ロウあたりを思わせるロカビリー調の「In My Arms」では、クリス・アイザック、元ストレイ・キャッツブライアン・セッツァー、そして60年代サーフロック・ギターの大御所、ディック・デイルをバックに従えてロケンロールしているグレン。とてもアルツハイマー患者とは思えません。この曲はあのUKフォーク・ロックの伝説的グループ、フェアポート・コンヴェンションのメンバーだったリチャード&リンダ・トンプソンの息子のテディ・トンプソンのペンによるもの。




再びマニングのインスト「May 21, 1969」を挟み、アコギの弾き語り的に歌われるのは、ジェイコブ・ディランの曲「Nothing But The Whole Wide World」のカバー。またまたマニングのインスト「Wild And Waste」を挟んで歌われるのは「Hold On Hope」。「誰もが希望にすがっている/それが僕をまともに支えてくれている最後のものなんだ」と、あくまでポジティヴなボーカルで歌うグレンのパフォーマンスには軽い感動すら覚えます。


映画のサントラのようなマニングのインスト「Valley Of The Son」に続いて歌われるのは、再びポール・ウェスターバーグのナンバー「Any Trouble」。とても明るい曲調でアコースティック・シャッフルのトラックにのってグレンは「面倒なことには近づくな/僕がもう長くないことは君も知ってるだろ/息を止めるように僕を抱きしめて/僕が死ぬまで僕のことを頼りにしていい/君の周りの面倒なことが消えてなくなるまで」と歌います。自分の人生の終わりを見つめながら、こんなに明るく、他の人への思いやりを歌えるグレンの素晴らしさにまたまた感動してしまいます。

次の自作の「Strong」ではオレゴン州出身のインディ・ロック・バンド、ダンディ・ウォーホルズと共演して歌うこのうたで、「君にはとにかく強くあってほしい/何かあったら僕がいるから」とあくまで自分のことより周りのことを気遣っているグレンの思いが伝わってきます。


アルバム最後のセグメントはマニングのインスト「The Rest Is Silence」(休息とはイコール静寂だ、という意味深なタイトル)に続いて「There Is No Me...Without You」。スマッシング・パンプキンズビリー・コーガン、チープ・トリックリック・ニールセン、ブライアン・セッツアーといった錚々たるロック界の面々を従えてグレンが「天国は二人のための場所/僕らはいつまでも二人一緒/だって君なしの僕なんてあり得ないから」と切々と歌う様子を聴きながら、思わず目元がうるむのは私だけでしょうか。


Ghost On The Canvas (Back)


このアルバムには、上記に言及した他にもグレンをリスペクトするミュージシャン達が多数参加しています。ロジャー・マニングジェリーフィッシュで共に活動したこともある90年代のアメリカを代表するインディ・ロック・シンガーソングライターのジェイソン・フォークナー、プリンスレヴォリューションのギタリストとしても有名なウェンディ・メルヴォイン、ポップ・カントリーの大スターであるキース・アーバンなどなど、多士済々のアーティスト達が、グレンの人生最後のスタジオアルバムであるこの作品をサポートしているのです。優れた作品になって当たり前でしょう。

Ghost On The Canvas (Insert)


このアルバムリリース後、グレンは「Good Times - The Final Farewell Tour」と銘打って、自分のアルツハイマーが悪化する前にと2011年8月から2012年11月まで1年以上にわたり北米とヨーロッパのツアーを敢行しています(観たかった!)。そして2013年にグレンは最後の曲「I'm Not Gonna Miss You」を録音、この曲は翌年に公開されたドキュメンタリー映画『Glen Campbell: I'll Be Me』にフィーチャーされ、2014年の第57回グラミー賞で最優秀カントリー・ソング部門を受賞、同年の第87回アカデミー賞でも最優秀オリジナルソング部門にノミネートされるという、最高の結果となりました。


現在はナッシュヴィルのケア施設で静かに暮らしているというグレン、既にもう判断能力はかなり失われているということですが、5年前にリリースされたこのアルバムでのグレンは、あたかもキャリア絶頂期にいるかのような素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれています。この偉大なミュージシャンの訃報を聴く前に、是非この魂の作品を一度聴いて見て頂ければと思います。


<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位24位(2011.9.17付)

同全米カントリー・アルバム・チャート 最高位6位(2011.9.17付)

全英アルバム・チャート 最高位27位(2011.9.4付)

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【新企画】新旧お宝アルバム!#41 「As Segundas Intenções Do Manual Prático...(パーティ・マニュアル2)」 Ed Motta (2000)

#41As Segundas Intenções Do Manual Prático...Ed Motta (Mercury / Universal Brasil, 2000)


ゴールデンウイークも半分が終わりましたが皆さんは大型連休をエンジョイされているでしょうか。基本的に天候もずっといいようなので、旅行、アウトドアなどには最高のお休みになってるんじゃないでしょうか。

そんな中、洋楽フレンドの企画でワールド系の音源を持ち寄るリスニングパーティーに行ってきたのですが、そのネタで選んだ盤が久し振りに聴いたらえらく良かったので今週の「新旧お宝アルバム!」で取り上げることにしました。


このコラムでご紹介する初の非英語圏のアーティストとなる、ブラジルの新しいポップ音楽シーンを代表するシンガーであり、著名なレコードコレクターとしてもその筋では有名なエヂ・モッタの2000年の作品As Segundas Intenções Do Manual Prático...(邦題:パーティ・マニュアル(2)』です。


Ed Motta Party Manual 2 


ジャケを観るとどういう音楽をやるのか皆目検討がつかない、おつむは落ち武者のごとく薄くあご髭をたっぷりと蓄えた、お世辞にもスマートとはいえない体型と風貌のエヂ・モッタ。ところがこのアルバムの楽曲を一度聴くとその風貌と、作り出すサウンドのギャップに大抵の方は驚かれるはず。大変スタイリッシュでオシャレなAORチューンや、ライト&メロウながらダンサブルなR&Bっぽいライトファンク・チューン、果てはデヴィッド・フォスターかお前は!という感じのフュージョン・ジャズ的なアダルト・コンテンポラリー楽曲など、とにかくスイートでキャッチーな曲が満載のアルバムなのです。かのライト&メローがメイン・フィールドの音楽評論家、金澤寿和氏が以前ブログで「ブラジルのクリストファー・クロス」と評したのもむべなるかな。そして実は日本のシティ・ポップやジャズ通でもあるというエヂ、楽曲のそこここに山下達郎角松敏生といった、日本を代表するシティ・ポップ・アーティスト達の雰囲気をふんだんに湛えているのも、我々日本のリスナーには非常に親近感がわくところ。


エヂは、日本でも90年代にニュー・ミュージック・マガジン誌(現ミュージック・マガジン誌)あたりを中心に盛り上がったカエターノ・ヴェローソらと並び称されて、ブラジルのポスト・ボサノヴァ的音楽ムーヴメントであるMPB(Musica Popular Brasileira)の騎手の一人であるような言われ方をすることも多いようですが、そのキャリアのスタートは何とヘビメタ・バンド。その後R&Bやファンクを経由してジャズについての造詣を深め、その過程で徹底的に自分の好きな音楽のレコードやCDを買い集めて今は数万枚のコレクションを持っているらしいというから凄い。もっと凄いのは、日本のジャズ・レコード(こちらについても大変造詣が深いらしい)を掘る過程で山下達郎に遭遇、日本のシティ・ポップのクオリティの高さにいたく感動して以来、日本のシティ・ポップやジャズのレコードも数千枚規模で所有しているというからぶったまげる

実際、つい最近彼自身の選曲によるSoundCloudのプレイリスト「City Pop Vol.2」という1時間半に及びプレイリストがネットにアップされたのですが、これがチャーで始まって小坂忠、桑名晴子ハイファイセットから角松敏生、ブレバタで盛り上がり最後は伊藤銀次村田和人の曲で渋く締められる、という「この人いったいどこの国の人?」と驚愕する代物なのです。ご興味のある向きは是非一度チェックされたし(http://www.waxpoetics.jp/news/edmotta-citypopvol2/)。


Ed Motta Party Manual 


話をエヂ・モッタに戻しましょう(笑)。

このアルバムは、邦題に(2)とあるように、この前にリリースされた『Manual Prático Para Festas Bailes e Afins, Vol. 1(邦題:パーティ・マニュアル)』のある意味続編的アルバムのようで、前作はよりダンス・グルーヴに軸足を置いていた作品のようですが(ちなみにこのアルバム(↑)のジャケのエヂがまた凄く、どう見てもこういう音楽をやるミュージシャンには見えない)、このアルバムでは冒頭に述べたように、よりシティ・ポップ的なアダルト・コンテンポラリー・チューンが多くを占めています。




ナイル・ロジャースを彷彿するカッティング・ギターにアル・ジャロウっぽいエヂのボーカルが絡むアルバム冒頭の「Mágica De Um Charlatão(ペテン師の魔法)」や80年代のファンカラティーナっぽいパーカッションからいかにも山下達郎風のエレピのリフが炸裂して思わずカクテルを手に浜辺のバーのダンスフロアに踊り出したくなる「Colombina」、そしてアーチー・ベル&ザ・ドレルズの「Tighten Up」っぽいカッティング・ギター・フレーズをうまくモチーフに使った「Coversa Mole(気の抜けた会話)」あたりは、このアルバムでのダンス・グルーヴ系を代表する最もアップテンポな楽曲たち。



でも他の曲もダンサブルでアダルトな洒脱なナンバーばかりで、後打ちのリズムがファンキーな「Dez Mais Um Amor(10足す恋は)」、70年代シンガーソングライター的マナーでボビー・コールドウェルあたりをいやでも思い出すバラードの「A Deriva(成り行きに任せて)」、変リズムや複雑なコード進行に載せたファンキー・シャッフルが明らかに達郎の影響を感じさせる「Pisca-Alerta(ハザード・ランプ)」、80年代アメリカ・ブラコンの匂いが色濃く漂う「Uma Vida Interia Pra Mim(人生丸ごと)」あたり、ボビー・コールドウェルなどの80年代ダンサブルAOR、昨年リリースされて日本でライヴもやったメイヤー・ホーソーン率いるタキシードあたりのライト&メロウな線がお好きな向きに取ってはめくるめくような楽曲がてんこ盛りの作品になっています。


アルバム後半は少しジャズ・フュージョン寄りのサウンドにシフトして、本アルバム中2曲だけ英語で歌われる「Suddenly You」「Drive Me Crazy」はアル・ジャロウのアルバムからのカット、と言われてもおかしくない感じの曲。「Assim, Assim(そんな風に)」なんて昔のインコグニート(エヂは2013年にインコグニートとジョイントで来日している)だし、「Outono No Rio(リオの秋)」は正統派スイング・ジャズ、締めの「A Tijuca Em Cinemascope(シネマスコープで見たチジュッカ)」はフリージャズ風のインスト・ナンバー。彼がジャズとシティ・ポップが大好物、という話を裏付けしたアルバム全体の構成といっていいクロージングです。


Perpetual Gateways 


既に述べたように達郎の大ファンで、2013年来日時も達郎の「Windy Lady」を日本語でカバーしたというから恐れ入るのです。そんな彼の日本のシティ・ポップのLPレコード購入第一号は吉田美奈子の『Flapper』(1976)のようです。もちろん日本だけではなく、アメリカのAOR系音楽にも大変興味と造型が深く、以前からアメリカに対する憧憬をあらわにしていたのですが、最新アルバムの『Perpetual Gateways』(2016)は最近話題のR&Bジャズ・シンガー、グレゴリー・ポーターのプロデューサーで知られるカマウ・ケニヤッタをプロデューサーに迎えて初のアメリカはLA録音。バックにはパトリース・ラッシェングレッグ・フィリンゲインズ、ヒューバート・ローズといった、錚々たる80年代のUSブラコンやフュージョン・シーンで名の知られたミュージシャンを配して、スティーリー・ダンを思わせるような作品に仕上げているようです。こちらも是非聴かねばと思っていますが、それまではこの『パーティ・マニュアル(2)』をGW中のホーム・パーティなどのお供に、是非ブラジルの鬼才が作り出した流れるようなソフト&メロウな楽曲群に身を任せてみてはいかがでしょうか。


<チャートデータ>

英米ともにチャートインなし

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

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