Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【新企画】新旧お宝アルバム!#47 「Sister Kate」 Kate Taylor (1971)

#47Sister KateKate Taylor (Cotillion / Atlantic, 1971)


梅雨入りはしたものの、ここのところ雨はあまり多くない代わりに蒸し暑い日々が続いていますが皆さん体調など崩されずに元気に洋楽聴いてますか?


先週はお休みを頂いたこの「新旧お宝アルバム!」。今週は「旧」のアルバムをご紹介する番ですが、前々回の旧のアルバムでご紹介したバーバラ・キース同様、70年代初頭にリリースされた女性シンガーソングライターの作品をご紹介したいと思います。ただしこのアーティスト、ただのシンガーソングライターではなく、あのジェイムス・テイラーの実妹のケイト・テイラー。その彼女のデビュー・アルバムである『Sister Kate』をご紹介します。


Sister Kate (Front) 


長兄のアレックス(1947生)を筆頭にジェイムス(1948生)、今回ご紹介するケイト(1949生)、リヴィングストン(1950年)そしてヒュー(1952年)の5人のテイラー兄妹はいずれもシンガーソングライターやパフォーマーとしてそれぞれのキャリアを残していて、一番有名で人気・実績の高いジェイムスを筆頭にそれぞれ様々な作品を残しています。

ちょうど兄弟紅一点のケイトがこのアルバムをリリースした1971年は、お兄さんが『Sweet Baby James』(1970)、『Mud Slide Slim And The Blue Horizon』(1971)と立て続けにアルバムチャートのトップ3に上る大ヒットを放ち、キャロル・キングの「きみの友だち(You've Got A Friend)」で全米ナンバーワンを放っていた最も人気を博していた頃。

そうした大スターの妹のデビューアルバム、ということで注目を集めたであろう一方、正当に彼女の作品が評価されにくい環境でもあったことは容易に想像がつきます。

しかしこのアルバム全体を通じて感じるのは、ちょっとジュディ・コリンズを思わせる線の細めな声質にもかかわらず、一つ一つの歌を結構ソウルフルに歌い上げるシンガー、ケイトの力強さです。当時マネージャーで、兄ジェームスの大ヒットアルバムも手がけたピーター・アッシャーのプロデュースで作られたこのアルバム、楽曲の選択もそれぞれの曲のアレンジも、そうした彼女の歌唱スタイルを最大限に生かすべく、ストレートであまり技巧を凝らさない楽曲アレンジとちょっとゴスペル的な風味を漂わせるもので統一されていて、70年代前半のシンガーソングライターに取って良き時代であった頃の雰囲気に乗せて、ケイトの魅力を伝えてくれます。


そしてバックを固めるのは、キャロル・キング(ピアノ)と当時の夫チャールズ・ラーキー(ベース)、そして後にウェスト・コースト・シーンで重要な役割を果たすダニー・コーチマー(ギター)の3人(彼らはこのアルバムとほぼ同時にリリースされて大ヒットとなったキャロルの『つづれおり(Tapestry)』(1971)の前にThe Cityとして活動)を中心に、リー・スクラー(ベース)、ラス・カンケル(ドラムス)といった後にセッション・ミュージシャン・スーパー・グループ、ザ・セクションを組む当時のアメリカン・ロックの腕利きミュージシャン達。

と、ここで気がついた方もおられると思いますが、このメンバー、その『つづれおり』のバックを固めるメンバーをほとんどそっくりそのまま持ってきたもの。つまりケイトはあの大ヒットアルバムと同じ演奏スタッフをバックにこのアルバムを作ったことになるわけです。

そんなプロダクション・スタッフとしては申し分のない布陣のもと、ケイトの伸び伸びとしたソウルフルな歌声が楽しめるアルバムになっています。


Kate Taylor


そうした布陣を最大限に生かすために、アルバムの冒頭「Home Again」とLPだとB面1曲目(7曲目)の「Where You Lead」はどちらもその『つづれおり』からのナンバーのカバー。全く同じメンバーでの演奏ですから、『つづれおり』の雰囲気そのままですが、上述のようにケイトの歌声はよりソウルフルな雰囲気をこの2曲に与えています。そして後者は特にオリジナルよりも遙かにダイナミックでソウルフルなアレンジで、この曲に全く異なる表情を与えています。


この他にもちょうどこの年の初めに大ヒットアルバムとなった、当時まだブレイクしたてのシンガーソングライターだったエルトン・ジョンの『エルトン・ジョン3(Tumbleweed Connection)』に収録されていた「Ballad Of A Well Known Gun」と「Country Comfort」の2曲のカバーもそれぞれA面・B面の中心的なナンバーとして収録されています。前者はファンキーなダニー・コーチマーのギターとタイトなバックの演奏、そしてローリング・ストーンズの「ギミー・シェルター」でのミック・ジャガーとの共演で有名な黒人シンガー、メリー・クレイトンらをバックに従えたオリジナルよりもテンポを上げてとっても「黒い」アレンジで、オリジナルに勝るとも劣らないカッコいいバージョン。

そして後者はオリジナルのエルトンのバージョンはピアノで切々と弾き語り後半ゴスペル風に盛り上がる王道パターンのバラードなのですが、ケイトはこれを冒頭からバンジョーとアコーディオンをバックに、カントリー・ジャグ・バンド風のアレンジからソウルフルな展開に持って行くあたりが技ありの一本。こちらのバックにはあのリンダ・ロンシュタットがコーラスに入ってます。



兄弟たちももちろん万全のサポートで、ジェイムスはあちこちの曲でギターやバックボーカルで支える一方、ヒットしたばかりのアルバム『Mud Slide Slim...』からの「You Can Close Your Eyes」を提供している一方、プロデューサーのピータージェイムスのブレイクアルバム『Sweet Baby James』収録の「Lo And Behold」を、ザ・バーズドゥービー・ブラザーズのバージョンで有名な「Jesus Is Just Alright」とマッシュアップした「Lo And Behold / Jesus Is Just Alright」でアルバム後半の盛り上げのアクセントとしています。

また弟のリヴィングストンもピアノとベースを中心にしたシンプルなバラード「Be That Way」を提供。ここでのケイトの歌も、他のソウルフルな楽曲群とはちょっと違った感じを醸し出しています。




でもこのアルバムを一番象徴するのが3曲目の「Handbags And Gladrags」。そう、ロッド・スチュワートの初期のバージョンで有名で、2001年にはウェールズ出身のロックバンド、ステレオフォニックスのバージョンでUKでヒットとなった、いかにも60年代後半から70年代初頭のR&Bロックの雰囲気をプンプン言わせているこのソウルフルな名曲を、ケイトはまるで昔から自分の持ち歌だったかのように自然に歌いこなしています。バックにはキャロル・キング、リンダ・ロンシュタット、メリー・クレイトンといったそうそうたるシンガー達を従えて。


アルバムの最後はキャロルのピアノをバックにせつせつと歌うバラード「Do I Still Figure In Your Life」に続いて、女性ギタリストベヴァリー・マーティンのブルージーなロック曲「Sweet Honesty」で終わります。


Sister Kate (Back) 

ケイトは、アルバムチャートのトップ100に入るスマッシュヒットとなったこのアルバムの後、『Kate Taylor』(1978)、マッスルショールズ・スタジオで録音の『ケイト・テイラー・スクラップ・ブック(It's In There)』(1979)と良質なアルバムを着実にリリースしていましたがどれもチャートインすることもなく、その後、2人の娘の子育てのために音楽活動を休止。

次にシーンに戻ってきたのは2003年の『Beautiful Road』で夫のチャーリー・ウィザムとの共作曲を中心としたアルバムでしたが、残念なことにチャーリーはこのアルバム制作中に病気となり、リリース前に急逝するという悲しい復帰作となってしまいました。その後2009年に『Fair Time!』というアルバムをリリースしているようですが、残念ながら現在活動しているかどうかは不明です。


このアルバムは10年ほど前にイーストウェスト・ジャパン(現ワーナー・ミュージック・ジャパン)さんの「名盤探検隊」シリーズでめでたく世界初CD化されましたが、再び今、ワーナー・ミュージック・ジャパンさんの「新・名盤探検隊」シリーズの6月発売作品のうちの1枚として正に今月発売されたところ

CD屋さんでこのちょっと垢抜けない風貌のケイト姉さんのジャケを見たら、迷わず手にしてみて下さい。70年代初頭の『つづれおり』に代表される、R&Bテイスト満点のアーシーなシンガーソングライター作品がお嫌いでなければ、きっと気に入って頂けると思いますので。


<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位88位(1971.3.27~4.3付)

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【新企画】新旧お宝アルバム!#46 「Family Dinner, Volume One」 Snarky Puppy (2013)

 #46Family Dinner, Volume OneSnarky Puppy (Ropeadope, 2013)


関東地方もいよいよ梅雨入り。これからしばらく鬱陶しい天候の日々が続くのかと思うと気分も沈みがちではありますが、是非いい音楽を聴き、いいライヴに行って、気持ちだけはハイで夏の到来を待ちつつ、楽しい音楽ライフをエンジョイしたいものですね。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」、「新」のアルバムご紹介の順番ですが、既に2013年以来毎年来日、日本のジャズやR&Bのファンの間に既にファンを増やし始めている、NYはブルックリンを中心に活動する、様々な若手ジャズ・R&Bミュージシャン集団で構成されるユニークなグループ、スナーキー・パピーがメインストリームのリスナーにもブレイクするきっかけとなった2013年の7枚目のアルバム『Family Dinner, Volume One』をご紹介します。


Family Dinner Vol 1 


自分がスナーキー・パピーの名前を知ったのは、このアルバムに収録された、あの有名なR&Bシンガーであるレイラ・ハサウェイ(ご存知ロバータ・フラックとの共演アルバムで有名な故ダニー・ハサウェイの娘)とのコラボレート曲「Something」が2014年の第56回グラミー賞最優秀R&Bパフォーマンス部門見事受賞したとき。

毎年グラミー賞主要部門の予想をブログにアップしている関係で、この部門もノミネート作品をチェックしていて「ん?レイラ・ハサウェイは知ってるけどスナーキー・パピーって誰だ?」と思いYouTubeでチェックしたところ、大学の音楽大教室のようなところで10人以上の様々な楽器を演奏するミュージシャン達に囲まれて素晴らしい歌唱を披露しているレイラの映像が。

レイラの歌唱の素晴らしさもさることながら、その音楽スタイルたるや、オーガニックR&Bジャズとでもいえばいいのか、ごくごくスタンダードな楽器の音をメインにして、自然に生まれるグルーヴをそのまま音楽に封じ込めた、といった最近あまり耳にしないタイプの演奏スタイルだったので、即このアルバムをチェックしたという次第。

そしてこのアルバムの内容が、その「Something」も含めて、2013年にヴァージニア州のジェファーソン・センターでライヴ収録された、それぞれに異なるボーカリスト(ほとんどはR&B系のシンガー)をフィーチャーした8曲を収録したというもので、そのクオリティの高さにすっかりハマってしまったのでした。

Chantae Cann


アルバムは、インディ・アリーなどのバックの経験もあるR&Bセッション・ボーカリストのシャンテイ・カン嬢のチャーミングなボーカルをフィーチャーした、レイドバックなリズムのフュージョン・ナンバー「Free Your Dreams」でスタート。いかにもジャム・セッション的なゆったりしたグルーヴの中でシャンテイ嬢が気持ちよさそうに歌っていて、こちらも自然に体が動いてくる感じ。ウォームアップ・ナンバーとしては最適か。




2曲目はブロードウェイ・ミュージカル『Rent』や『ヘアスプレー』などに出演、ベット・ミドラーや最近ではリアーナの『Loud』ツアーのバックボーカルとしてのセッションボーカルの経験も豊富なベテランシンガー、シェイナ・スティール嬢の力強いボーカルをフィーチャー、ハードでドラマチックな70年代ブラック・ムーヴィーを彷彿とさせるファンク・ソウルナンバー「Gone Under」。1曲目ではキーボードがフェンダーローズだったのに、この曲ではクラビネットを効果的に配して70年代テイストを醸し出していて、うーん昔のスティーヴィー・ワンダーカーティスのアルバムを聴いている雰囲気。


3曲目はテキサス出身の黒人ジャズソウル・シンガー、ンダンビ(中央アフリカ語で「最高に美しい」の意)をフィーチャーしたちょっと落ち着いた感じの「Deep」。この曲もR&Bテイストががっつり出ている曲ですが、前の曲と異なり、90年代のR&Bルネッサンス期のエリカ・バドゥディアンジェロといった人達のやりそうな楽曲を、楽器の音数もミュート・トランペット、パーカッション、エレピくらいにぐっと抑えて演奏。このあたりにメンバー達のミュージシャンとしての力量が存分に発揮されています。





4曲目はフランス語のボーカルでマグダ・ジャンニコウ嬢が軽快に、アコーディオンを抱えながらアップテンポ・ボサのリズムに乗って楽しく聴かせてくれる「Amour T'es La?」(ダーリン、そこにいるの?)。

そして5曲目は冒頭でも触れた、レイラ・ハサウェイとのコラボ「Something」。もともとブレンダ・ラッセルのペンによるオーセンティックなR&Bバラードですが、レイラのソウルフルなボーカルとスナーキー・パピーのメンバーのジャジーなグルーヴ満点の演奏が相乗効果して、後半に行くに従ってどんどんカタルシスに昇り詰めていく感じが素晴らしいのです。この曲の映像を見ていると、クライマックスのところでレイラあたかも一人でハーモニー・ボーカルを出しているかに聞こえるところがあり(生理学的にそんなことは不可能らしいのですが)バンドのメンバーがびっくりする、というシーンがあり、彼らが実に一体となってこのコラボ演奏が生み出すカタルシスを楽しんでいる様子が見て取れてワクワクすること請け合い。





6曲目はUKのシンガーソングライター、ルーシー・ウッドワード(2003年全米最高位30位のヒットとなったステイシー・オリコの「(There's Gotta Be) More To Life」の作者の一人として知られる)をフィーチャーした、こちらはぐっと重たい雰囲気の陰のある感じのナンバー「Too Hot To Last」。

7曲目は、本作唯一の男性ボーカルで、ノラ・ジョーンズビル・フリゼルらとのセッション経験のあるギタリスト、トニー・シェアーをフィーチャーした「Turned Away」。ぐっと雰囲気を変えてブルース・ジャズ風な曲調と、トニーの特徴のある歌い方が印象的な曲で、テキサスかテネシーあたりの小さなライブハウスにいるような気分にさせてくれます。

アルバム最後はこちらも黒人R&Bシンガーのマリカ・ティロリエン嬢のワイルドでしなやかなボーカルでどんどん盛り上がっていくドラマティックなソウルナンバー「I'm Not The One」で幕を閉じます。


Family Dinner Back 


スナーキー・パピーは2004年に北テキサス大学出身のマイケル・リーグ(ベース)を中心に結成され、2006年にアルバム『The Only Constant』でインディーからデビューしたグループ。そのメンバーはマイケルを含む13名ほどの中心メンバー以外はアルバムやツアーごとに参加するメンバーが入れ替わり、延べでこれまで合計40名ほどのミュージシャンがメンバー経験を持つという、とてもユニークな音楽集団。今回のこのアルバムには参加していませんが、日本人のパーカッショニスト、小川慶太も初期のアルバムから参加しており、最新作の『Culcha Vulcha』(2016)でも彼のパーカッションを聴くことができます。

自分は昨年9月、横浜赤煉瓦広場で行われたブルー・ノート・ジャズ・フェスティヴァルに参加した彼らを生で見ることができましたが、既にその時点で3回目の来日だった彼らのステージを取り巻くファンが開演30分前からぎっしりいるのにびっくり。始まった演奏はそれはもうメンバーが演奏を楽しみきっているのがビンビンに伝わってくる内容で、正直言ってメインのジェフ・ベックパット・メセニーよりも楽しかったかも、という出来でした。


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Something」で初のグラミーを受賞後、昨年にはオランダのメトロポール・オーケストラとのコラボ作『Sylva』(2015)を発表、これも今年2月に発表の第58回グラミー賞最優秀コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム部門を受賞するなど最近アゲアゲの彼ら。

そして実は彼ら、今2016年極東ツアーの真っ最中で、来週6/16(木)赤坂ブリッツ、17(金)横浜ベイホールでのライヴが目前に迫っています。このアルバムに同梱のDVDにはアルバム曲の演奏の様子のPVと、更には7曲のビデオのみボーナストラックも収録されていて、それらを改めて観ると彼らの昨年の楽しかったライヴの様子が蘇ってきます。来週の彼らの来日、チケット代も最近のライヴにしては割安なので、梅雨入りした天気を吹っ飛ばすためにも、このアルバムや最新作をチェックの上、ライヴを覗きに行かれてはいかがでしょうか?

Sylva.jpg 


<チャートデータ>

ビルボード誌全米ジャズ・アルバム・チャート 最高位4位(2013.10.11付)

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