Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
2016年ビルボードHot 100 年間チャート大予想(#11〜#20)
 いやあ早いものでもうあと2日で12月突入。この時期の洋楽チャートファンで欠かせないのが、毎年の年間シングルチャートの予想。残念ながら老舗洋楽CDオンラインショップの「あめりかん・ぱい」さんでは数年前まで毎年年間チャート予想企画をやられてたんですが、最近ではそのイベントもなく、寂しい限りですが、チャートファンとしてはやはり今年もやりました年間チャート予想。

過去の的中率は60%程度とまあ可もなく不可もなくといった感じなんですが、同じメソッド(ビルボード誌Hot 100のチャートアクションや、滞在週数などを加味した集計方法)で今年も予想してみましたので取りあえず発表してみます。本来は、ニールセンの売り上げデータやストリーミングデータ等々を加算して集計するのが正しいと思いますが、そこはチャートマニアのお遊びということで(^^)。

ホンチャンの年間チャートは日本時間の水曜日真夜中くらいにビルボードのサイトにアップされると思いますので、それを見てまた反省会ブログもアップしたいと思います。

では11位〜20位の予想(カッコ内は最高位 - 最高位日付)。

#20:  Stitches ▲4 - Shawn Mendes (#4 - 2015/11/7)
<Hot 100 - 27 wks, Top 40 - 25 wks, Top 10 - 11 wks>


ShawnMendes_Stitches.jpg カナダ出身のネットから出てきたシンガーソングライター、ショーン・メンデスの初のトップ10ヒット。この曲はUKでも大ヒットして今年の1月に2週1位をマークしてます。新しいかたちのポップ・スターということで、今年はこのヒットの余勢を駆って、フィフス・ハーモニーカミーヤ・カベロ嬢とのデュエットヒット「I Know What You Did Last Summer」(最高位20位)、そしてどっか上にランクされてる「Treat You Better」と立て続けにヒットを放ってスターの座を確保してます。アルバム『Handwritten』より。

#19: Heathens - twenty one pilots (#2
- 9/24-10/15)
<
Hot 100 - 21 wks, Top 40 - 21 wks, Top 10 - 14 wks>


twenty one pilots - Heathen - Single (2016) [iTunes Plus AAC M4A]インディーバンドの極みと思っていたこのオハイオ出身の二人組、いやあ今年は見事にブレイクしたねえ。数年前日本にちょこちょこプロモーションで来てた時、面白いバンドだなあ、と嫁さんと言ってたけどこんなにビッグになるとはね。この曲はマーヴェル映画の『Suicide Squad』のサントラからのカットで、ちょっとレディへの「Creep」みたいなギター音が耳に残るけど基本的には地味なロックナンバーながらこんだけ大ヒットになったのは、この後上位に出てくる「Stressed Out」で大ブレイクしたからだね。残念ながら今年のブレイク頭、Chainsmokersの「Closer」のオバケヒットのおかげで2位どまり。

#18: Pillowtalk ▲2 - Zayn (#1
- 2/20)
<Hot 100 - 24 wks, Top 40 - 23 wks, Top 10 - 16 wks>


Zayn_Pillowtalk.jpg ツアーはいやだとごねてワンダイレクションを脱退したゼイン・マリック君、いきなりソロデビュー。で、初登場1位って何なのそれ。何となくジャスティン・ビーバー路線をなぞったような典型的今風エレクトロポップ。で当然というかその後はさっぱり評判を聞きません。こちらも1位を取ったアルバム『Mind Of Mine』より。

#17: Ride ▲- twenty one pilots (#5
- 9/10)
<Hot 100 - 35 wks, Top 40 - 26 wks, Top 10 - 13 wks>


twentyonepilots_Ride.jpgほらまた出てきたトウェンティ・ワン・パイロッツ。こちらは「Stressed Out」に続く彼ら2曲目のトップ10ヒットで、これで彼らの人気は決定づけられたね。どちらかというとこの曲が昔の彼らのイメージに近い、ちょっとくせのあるポップなメロディを持ったオルタナ・ロック・ナンバーで、ちょっとラガマフィン的な味わいもある一筋縄じゃない楽曲。こういう彼らの本分でヒットしたというのが強いところ。アルバム『Blurryface』より。

#16: This Is What You Came For ▲2 - Calvin Harris Featuring Rihanna (#3 - 8/6 & 20-27)
<Hot 100 - 28 wks, Top 40 - 28 wks, Top 10 - 19 wks)


This_Is_What_You_Came_For_cover.png ふられた男のパワー侮るなかれ。テイラー・スイフトにあっと言う間にふられてしまったカルヴィン、当代一のポップ・スター、リアーナと組んで2016年を代表するポップ・ダンス・ナンバーをヒットさせちゃった。でもこの曲の作者に名前を連ねているN. Sjobergというのが実はテイラーの変名だということらしく、実はカルヴィン、ふられた訳ではなかったのか?夏頃にダンス・チャート首位を3週マークした大ヒットとなったこの曲、来年リリース予定のアルバムに収録の予定らしい。

#15: Work From Home ▲3 - Fifth Harmony Featuring Ty Dolla $ign (#4 - 6/11-18)
<Hot 100 - 34 wks, Top 40 - 31 wks, Top 10 - 15 wks>


Work_From_Home_(featuring_Ty_Dolla_$ign)_(Official_Single_Cover)_by_Fifth_Harmony.png UKのX-ファクター卒業生の女の子5人組、フィフス・ハーモニーが去年の「Worth It」のブレイクに続いて今年当てたのがこの曲。LAのラッパー、タイ・ダラ・サインをフィーチャーしてちょっといけない風にしたのが当たったか、この曲、まず本国UKで4月に2位の大ヒットとなるや、すぐUSに飛び火して大ヒットに。あの「♫Work, work, work, work」というフレーズが確かに耳につく。この後彼女らは同様の路線を狙って今度はフェティ・ワップをフィーチャーした「All In My Head (Flex)」(最高位24位)を出すがちょっと下降気味かな。アルバム『7/27』より。

#14: I Took A Pill In Ibiza ▲2 - Mike Posner (#4 - 5/21)
<Hot 100 - 37 wks, Top 40 - 30 wks, Top 10 - 14 wks>


Mike_Posner_-_I_Took_a_Pill_in_Ibiza.png マイク・ポズナーといえば2010年に「Cooler Than Me」(最高位6位)でいきなりブレイクした後、しばらく声を聴かなかったのだけど、この「イビーザ島でクスリやっちゃったよ」っていうかなりヤバイだろう、それ!っていうこれもジャスティン・ビーバー風の曲で見事カムバック。この曲UKでも大ヒットで3月から4月にかけて4週1位を記録。その勢いでUSでもヒットした格好。アルバム『At Night, Alone』より。

#13: Can't Stop The Feeling! ▲3 - Justin Timberlake (#1
- 5/28)
<Hot 100 - 27 wks, Top 40 - 27 wks, Top 10 - 15 wks>


Justin_Timberlake_-_Cant_Stop_the_Feeling.png ゼインの「Pillowtalk」と並んで2016年初登場1位だったジャスティンのこの曲、この間11月に公開されたアニメ映画『Trolls』のサントラからの無茶無茶先行シングルカット。いつものジャスティンの80年代R&B風の洒脱なノリのダンス・ポップ・ナンバーが気持ちいい。映画ではアナ・ケンドリックス、ゾーウィ・デシャネル、ラッセル・ブランドなんていう楽しい面子と声の出演もしてるらしいジャスティン、ニューアルバムが待たれます。

#12:Needed Me ▲2 - Rihanna (#7 - 7/2 &16-8/6)
<Hot 100 - 41 wks, Top 40 - 31 wks, Top 10 - 16 wks>


Rihanna-Needed-Me.jpg 何だかリアーナの曲にしてはあんまり派手にヒットしてるって感じがしなかったこの曲、実は41週もHot 100にいて結構なヒットになってました。どちらかというと今年のリアーナドレイクをフィーチャーした「Work」の大ヒット(オバマ大統領もお気に入りだったらしいw)や、カルヴィン・ハリスの「This Is What You Came For」やドレイクの「Too Good」といった人のヒットにフィーチャーされてた曲なんかの印象が強かったかな。アルバム『Anti』より。

#11: 7 Years ▲3 - Lucas Graham (#2
- 4/9-23 & 5/7)
<Hot 100 - 36 wks, Top 40 - 27 wks, Top 10 - 15 wks>


7-Years-by-Lukas-Graham.jpg 何とデンマーク出身の4人組、ルーカス・グラハム(人の名前ではない)がUKで2月から3月にかけて5週間No.1ヒットとしたこの曲、すぐさまUSでも大ヒット。ちょっと人生のストーリー的な歌詞と、ちょっとノスタルジックなメロディのポップさが広く受けてこの大ヒットに。リアーナの「Work」とデザイナーの「Panda」に阻まれて惜しくも1位はならず。アルバム『Lucas Graham』より。

さあ、遅くなっちゃった。水曜日のホンチャンの年間チャート発表までに残りトップ10の予想アップできるかな。


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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#66「Ology」Gallant (2016)

66.OlogyGallant (Mind Of A Genius / Warner Bros., 2016)


サンクスギヴィング・ホリデーも終わり、世界的にいよいよクリスマスホリデーシーズンへと入っていく今週ですが、先月も最後になってリオン・ラッセルレナード・コーエンという、ある意味60年代後半から70年代にかけての英米の音楽シーンで活躍し、その後80年代以降今日に至るまでの若いアーティスト達に大きな影響を与え続けた二大巨星が逝ってしまうという、ボウイーの衝撃的な他界に始まった2016年を象徴する月となってしまいました。今年もあと一ヶ月。これ以上年末までは残念な知らせが増えないように願いたいものです。


ということで年末に向かう今日この頃、そろそろ自分の年間トップ20アルバムなども選ばなければなりませんが、その中で確実に上位に入ってきそうなのが、今週の「新旧お宝アルバム!」でご紹介する素晴らしいR&Bシンガーのアルバム。その歌唱力があのマックスウェルと並び称されるという、アメリカはワシントンDC生まれのギャラントことクリストファー・ギャラントのデビュー・アルバム、『Ology』です。


Gallant Ology 


2010年代に入ってからのR&Bシーンは、これまでの正統派R&B(またはいわゆる「オーガニック・ソウル」)やヒップ・ホップ・ソウル、エレクトロニック・ソウル等々のサブジャンルに加えて、いくつかの新しいスタイルのR&B楽曲、シンガーの登場で更にその多様化を進めてきています。その中の最も顕著な新しいスタイルは、フランク・オーシャンジ・インターネットといったいわゆる「オッド・フューチャー」軍団にゆるーく所属するアーティストたちによる、残響音や幻想的な音響サウンドを多用する、ある曲では幻想的に、ある曲では耽美的に、そしてある曲ではドリーミーな楽曲を展開するスタイルです。昨年や一昨年話題を集めたJ.コールミゲルといったアーティストたちの作風も(ややヒップホップ寄りではありますが)このスタイルにかなり近いものがありますし、今年のフランク・オーシャンの新作『Blonde』、チャンス・ザ・ラッパーの『Coloring Book』、そして先頃来日も果たし、以前にこのコラムでも取り上げたアンダーソン・パークの2枚のアルバムなどもまさしくこのスタイルをベースとした作風で、いずれも2016年の注目作となっています。


このスタイルが、まるで新しいR&Bのスペーシャスな空気を作り出しているように感じられることから、自分は勝手に「アトモスフェリック・ソウル(atmospheric soul、大気のようなソウルの意)」と呼んでいますが、このスタイルのある意味正統派の決定版として登場したのが今日ご紹介するギャラントの『Ology』です。


Gallant.png


ギャラントの歌唱スタイルは、ある意味60年代から脈々と続く正統派R&B・ソウル・シンガーのあるスタイルを愚直に踏襲しています。それはファルセット・ヴォイス。古くからスモーキー・ロビンソン、エディ・ケンドリックス(元テンプテーションズ)、ラッセル・トンプキンスJr.スタイリスティックス)そして最近では惜しくも今年他界してしまったプリンスに至るまで、ファルセット・ヴォイスはR&Bの伝統的な歌唱スタイルの一つ。このアルバムでのギャラントは、アトモスフェリックなサウンドをバックに、その歌唱スタイルを技巧的にも情感的にも存在感たっぷりに駆使して、自作の素晴らしい楽曲の数々を更に表現豊かなパフォーマンスで我々に聴かせてくれるのです。


映画のオープニングのようにドラマティックなSEで始まる「First」に続く「Talking To Myself」はいきなりこのファルセットが炸裂、スペーシャスなサウンドをバックに早くも感動を演出。「Shotgun」では珍しく基本地声でのボーカルを披露した後、「Bourbon」ではイントロから教会音楽的な遠くから聞こえるコーラスと電子音SEに続いて、80年代のR&Bクラシック、エムトゥーメイの「Juicy Fruits」のシンセベース・リズムトラックを基調にしたフランク・オーシャン的なトラックに乗って、ギャラントのまさにプリンなどの卓越したボーカリストを彷彿させる歌唱が楽曲の幻想的な盛り上がりを演出。続く「Bone + Tissue」も同じスタイルのトラックですが、こちらはトラックの作りはかなり音数少なく構成されていて、幻想的サウンドとサビでのギャラントのファルセット・ヴォイスが際立つ作り。



何重にも重ねられた重厚な女性コーラスをフィーチャーした短い「Oh, Universe」に続くのは、間違いなくこのアルバムのハイライトであり、シングルの「Weight In Gold」。90年代のソロテディ・ライリーがプロデュースしたR&Bグループ)のアルバムを思い出させるような、ストリート・ドゥーワップ・コーラスを電子的に再現したこんな音になるのでは、と思わせる近未来的な感覚と50年代60年代の古いR&Bを思わせるような不思議なイントロから、ギャラントのファルセットが歌い奏でる楽曲は、明らかに構成的にはトラディショナルR&Bの歌曲。それでいて特にサビの部分で一気に宇宙にも届くかのようなカタルシスを与えてくれる素晴らしさ。イギリスの新聞『ザ・ガーディアンス』が評して「これが未来のR&Bのかたちなのであれば未来は限りなく明るい」と書いたのも素直にうなずけるというものです。



この「Weight In Gold」を境に、アルバムの楽曲の傾向は多様化に向かいます。このアルバムではかなりメインストリーム・ポップ的なメロディの「Episode」は曲調といい、バッキングのギターやコーラスの付け方といい、80年代のUKブルー・アイド・ソウル・グループ達の曲を彷彿とさせ、自分などは前回ここでご紹介したケイン・ギャングの曲を思い出しました。なぜか日本語の「Miyazaki」というタイトルのミディアム曲はまたちょっと幻想的な曲調に戻りますが、歌っている歌詞は90年代R&Bグループ、グルーヴ・セオリーの大ヒット曲「Tell Me」の歌詞をかなり大胆に本歌取りしたもの。スペーシャスなバラードの「Counting」はサビに聞こえてくるヘリウム・ヴォイス的な相の手が楽曲の幻想性を高めていますし、「Percogestic」での90年代UKのアシッド・ソウル的な味わいのトラックに乗って堂々と歌うギャラントの歌唱は、70年代初期の個性的R&Bシンガー、ビル・ウィザーズのイメージが被ります。「Jupiter」「Open Up」とまた幻想的でスペーシャスなナンバーの後、後半のハイライト、やはり最近活躍中の女性R&Bシンガー、ジェネイ・アイコとのデュエット曲「Skipping Stones」がひとつ違った雰囲気を醸し出しています。ここではそれまでのスペーシャスなサウンドは陰を潜め、スタンダードなR&B楽曲アレンジで、地声とファルセットを行ったり来たりするギャラントのボーカル・テクニックとジェネイ嬢とのボーカル・コラボをいかんなく堪能することができます。やっぱギャラントって歌うまいなあ、としみじみ感じます。



このアルバムに収録された曲は既に2015年くらいから、他のアーティストのツアーのオープニングで歌ったり、アメリカの有名音楽フェス、コーチェラの今年のイベントでも、90年代に「Crazy」(1990年最高位7位)やNo.1ヒットの「Kiss From A Rose」(1994)などのヒットでおなじみのシンガー、シールとデュエットで歌ったりと、様々な局面で歌われてきた曲ばかりなので、楽曲とパフォーマンスの完成度が高いのも当然。

特に「Weight In Gold」は、今年5月にアメリカNBCジミー・ファロン司会の『トゥナイト・ショー』で歌った際はその出来の素晴らしさに会場全員がスタンディング・オヴェーションしたというほど(これです↓)


R&Bの未来の最もメインストリームなところをこれから突っ走るのではないか、と大いに期待できる大物シンガー、ギャラントの華々しくも実力満点のパフォーマンスにあふれたこのアルバム、是非CDショップ等で手に取って見て下さい。年末に向けてのあなたの愛聴盤となることうけあいですから。

Ology Back (CD)


<チャートデータ>

ビルボード誌全米R&B/ヒップホップ・アルバム・チャート 最高位39位(2016.4.23付)

同全米R&Bアルバム・チャート 最高位18位(2016.4.23付)

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【BoonzzyMusic】新旧お宝アルバム!#65「Miracle」Kane Gang (1987)

#65『Miracle』Kane Gang (Capitol, 1987)


先週の最大の事件は米国大統領選で大方の予想に反して何とドナルド・トランプが勝利してしまったこと。中流層白人、特にラスト・ベルトと呼ばれる米国東北地域のミシガン、ペンシルヴァニア、ウィスコンシンといった従来民主党支持基盤だったはずの州がこぞってトランプ支持に回ったことが大きかったわけですが、これはここ四半世紀にわたる白人以外の人種についての逆差別の反動だとか、ヒラリー・クリントンの経歴や行動に対して信頼感を置けない層が消去法的にトランプに回ったのだとかいろんな分析がなされていますが、一つ言えるのは、大統領が誰になってもオバマ政権時代に積み重ねてきた弱者保護、外交努力といったものを新しい政権が次のステップに持って行く努力は米国のみならず世界にとって必須であり、それをしない場合は再度国民の審判が下されるだろう、ということ。我々はその間、アメリカの偉大なバリューである、多様性重視や、少数民族や社会的弱者に対して平等に接し、同じ成功機会を与えることの素晴らしさなどが犯されることがないよう見守り、可能なところでしかるべき行動を取っていかねばならないと考えています


ちょっといきなり堅くなってしまいましたが、今週の「新旧お宝アルバム!」は、気分を変えて今の秋の季節になると聴きたくなるアルバム、ということで、このブログでは珍しいのですが80年代の作品をご紹介します。お届けするのは、このセカンドアルバムの後は自然消滅してしまった格好ですが、USのR&Bへの憧憬をあらわにし、80年代っぽい打ち込みサウンドをベースにしながらも、見事に有機的なポップ・アルバムを作りだしたイギリスの3人組、ケイン・ギャングの『Miracle』です。


Kane Gang Miracle

いわゆる全米トップ40ファンの方には、ケイン・ギャングというとこのアルバムからのシングル「Motortown」が1987年に全米36位のヒットとなった一発屋、という印象が強いかもしれません。しかしこのバンドはいろいろな顔を持った優れた楽曲やカバー・バージョンをいろんな形でヒットさせている、ある意味マルチ・ヒット・メイカーでもあったのです。

ケイン・ギャング(グループ名はもちろん、オーソン・ウェルズのあの有名な映画「市民ケーン(Citizen Kane)」から取ったもの)は、イギリス東北部のシーハムという小さな港町の三人の若者、ボーカルのマーティン・ブラマーポール・ウッズ、そしてマルチインストゥルメンタリストのデイヴ・ブルーウィスが1982年に結成、1984年にはメジャーのロンドン・レコードと契約してデビューアルバム『The Bad And Lowdown World Of The Kane Gang』(1985)をリリース、ここからは全英12位まで昇る美しいバラードヒット「Closest Thing To Heaven」と、あのUSゴスペル・ファミリー・グループのステイプルズ・シンガースの「Respect Yourself」(全英21位)がヒットして一躍シーンの注目を集めることに。

そして1987年、セカンドとしてリリースされたのがこの『Miracle』です。


Kane Gang Miracle (UK)


これもトップ40ファンには名の知られたピート・ウィングフィールド(1975年に「Eighteen With A Bullet」が全米15位のヒット)が、前作同様プロデュースしたこのアルバム、ピートのポップ・プロデュース職人ともいえるサウンドメイキングと、メンバーのペンによるモータウンやノーザン・ソウルの影響を感じさせる優れたポップ・チューンの組み合わせによって、いかにも80年代らしくローランドヤマハのシンセサイザー音や打ち込みサウンドも多用されていながら、ある曲は哀愁あふれるバラード、またある曲はウキウキするようなR&Bポップ・チューンなどバラエティに富んだ有機的ポップ・アルバムに仕上げられているのです。


何しろA-1がタイトルからしてモータウンへのオマージュたっぷりの「Motortown」。全米で唯一のトップ40ヒットとなったこの曲、イントロのシンセのフレーズとギターのリフの組み合わせからして、思わず楽しくなってしまうポップなナンバー。全面を通じてシンセドラムやシンセのリフがトラックのベースを作っているのですが、不思議に無機的にきこえないところが早くも彼らの真骨頂ですね。ちょっとスティーリー・ダン的なセンスも強く感じる佳曲です。続く「What Time Is It」は、ノーザンソウルっぽいコーラスをバックに、サビの部分でタイトルを歌うあたりなどポップ作品としてかなり質の高さを感じさせるミディアム・ナンバー。

自分の持っているUS盤では、この次にファースト収録の最初のヒット「Closest Thing To Heaven」が入っていて、その後がベースのカッコいいフレーズとラテンっぽい感じのリズムで聞かせる「Looking For Gold」、そしてリズムボックスの使い方がいかにも80年代ブラコン・バラード風でフレディ・ジャクソンやグレン・ジョーンズとかを思わせる「Take Me To The World」、そして今度はシャーデーブランド・ニュー・ヘヴィーズといったジャジーなグルーヴ満点なフレーズにやたらポップなメロディが乗るというアンマッチが不思議な魅力の「King Street Rain」といったチューンがアルバム中盤を盛り上げます。



ファーストでステイプルズ・シンガースのカバーをやっていたように、このアルバムでも彼らのUSのR&Bへの傾倒をはっきり示すのが、続く「Don't Look Any Further」。この腹の底に響くようなベースリフが印象的な曲は、テンプテーションズで70年代を通じてリード・ボーカルの一人を務めたデニス・エドワーズの1984年のソロR&Bヒットをほぼ原曲に忠実にカバーしたもの。この曲は90年代に2パック、ジュニアMAFIAといったヒップホップ・アーティスト達がこぞってそのベースラインをサンプリングしまくったという、ブラック・ミュージック・シーンではつとに有名な曲。その曲をケイン・ギャングは見事にカバーしたばかりか、オリジナルよりもビートを強調した彼らのこのバージョンは1988年に全米のダンス・チャートで1位を記録してしまいます

続く「A Finer Place」は70年代ソウルのフィーリングを色濃く感じさせるミディアム・ナンバーですが、アルバムラス前の「Let's Get Wet」は、このアルバムで異色の(というのも変ですが)いかにも80年代シンセ打ち込みポップ・ソングというアップナンバーで、他の曲がアメリカンR&Bポップ風に作られているのでこの曲だけ浮いて聞こえてしまいます。

アルバムラストの「Strictly Love (It Ain't)」はまた全体のトーンに戻り、以前ここでもご紹介した80年代のフォー・トップス(「When She Was My Girl」あたり)の曲を彷彿とさせる、キラキラ・ブラコン・ナンバーでクールダウンする感じで締めくくります。


Kane Gang Miracle_3


個人的には80年代のヤマハローランドといったシンセの打ち込みで作られたサウンドというのは、よっぽど楽曲やアレンジが良くないと、今聴くとどうしても時代を感じさせてしまうものが多くて正直聴く気がしないものが多いのですが、このアルバムは楽曲の出来もよく、アレンジもそうした打ち込み系サウンドの良いところと悪いところを絶妙にわきまえ、上手にオーガニックな楽器の音やボーカルの厚みで補完しているため、今聴いても全く80年代打ち込みサウンドのチープさを感じないところが素晴らしいところ


樹々の紅葉が進み、日一日と肌寒くもキリリとした空気が冬への予感を感じさせるこの時期、ケイン・ギャングのこのアルバムはそのソウルっぽいサウンドであなたの体と心をほわっと暖かくしてくれること間違いなし。もしチャンスがあったらApple MusicSpotifyなどで聴いてみて下さい。


 <チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位115位(1987.12.26~1988.1.2付)

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【BoonzzyMusic】新旧お宝アルバム!#64「Light Upon The Lake」Whitney (2016)

#64Light Upon The LakeWhitney (Secretly Canadian, 2016)


先週最大の話題は何といっても実に108年ぶりにワールドシリーズチャンピオンとなったMLBのシカゴ・カブス。対戦相手のクリーヴランド・インディアンズに王手をかけられてから何と三連勝で逆転優勝。しかも木曜日の第7戦は8回ツーアウトまでカブスが4点リードしていてこのまま楽に優勝するか、と思いきやインディアンズが驚異の粘りで同点にして、延長10回で決着がついたという正に死闘。長くMLBファンやってますが、おそらくこれまで見た中でも1、2を争うポストシーズンベストゲームでした。シカゴカブスとにかくおめでとう!


ということでその興奮も醒めやらない中、今週の「新旧お宝アルバム!」はそのシカゴ出身のインディー・バンドで、今年リリースしたデビュー・アルバムがその地に足のついた、アメリカーナやR&Bの香りもほんのり漂う秋らしいしなやかなロック・サウンド満載ということでロック・メディアの注目を集めているホイットニーの『Light Upon The Lake』をご紹介します。


Whitney_Lights.jpg


ホイットニーといってもヒューストンじゃござんせんホイットニーはギタリストのマックス・カカセックとドラマー&ボーカルのジュリエン・エアリッチのソングライティング・コンビを中心としたリズム・ギターのザイヤッド・アスラー、キーボードのマルコム・ブラウン、ベースのジョサイア・マーシャル、そしてブラス・プレイヤーのウィル・ミラーを含む6人組。

ソングライティング担当の二人が影響受けたアーティストとしてザ・バンドリヴォン・ヘルムとニューオーリンズの大御所、アラン・トゥーサンを挙げていることからも判るように、彼らのサウンドはザ・バンドあたりのフォーク・ロックやアメリカーナ・ロックのスタイルを軸に、シカゴのバンドだけあってブラスを効果的に活かしたソウルやブルーズや、エレクトロ・ポップなどでうまーく味付けをしている、アメリカン・ロック、それも中西部から西のサウンドがお好きな方であればおそらく大変気に入って頂けると思われるもの。

ただそのサウンドとややアンマッチにきこえる一つの大きい特徴はボーカルのジュリエンの不思議な声質。一瞬ファルセットのようにきこえるのですがどうもそうではなく、夢の中で聴いている音楽のボーカルのような、そんな一種独特の魅力を持った声質で、聴いているとまるで催眠術にかけられるかのような感じを持ってしまいます。

Whitney.png

アルバム冒頭は、リヴァーヴを聴かせたエレピのイントロにブラスがかぶさり、アコギのストロークをバックにそのジュリエンの不思議なボーカルが乗って歌われる、物悲しげでありながらオプティミスティックな響きのある「No Woman」でスタート。この曲を聴いていると、80年代から90年代にかけてUKから多く出てきたR&Bテイストのインディー・ロック・バンドを思い出します。続く「The Falls」はがらっと雰囲気を変えて、小気味のいいドラム・フレーズのイントロで始まるアップテンポのナンバー。ここでもブラスが効果的に使われて、ウキウキするようなポップ作品になっています。

Golden Days」はジュリエンのハイノートからの歌い出しの高音催眠ボーカルがその威力を存分に発揮した、こちらはもろにザ・バンドあたりを想起させるアメリカーナ・ロック・ナンバー。曲調がとても郷愁に満ちた、70年代的なオマージュに満ちていながら、その音色と曲のイメージは明らかに今の時代を感じさせます。


アコギのオブリガード・フレーズが印象的なフォーキッシュな「Dave's Song」に続いてこちらもCSN&Yあたりの70年代前半のフォーク・ロック・バンド的なイメージ満載のアルバムタイトル・ナンバーでアメリカーナ色はいやが上にも高くなってきます。続く「No Matter Where We Go」は、イントロからエレキとアコギのユニゾンでの力強いストロークで始まる骨太のアメリカーナ・ロックで、この間ご紹介したサン・ヴォルトあたりを彷彿させる曲。曲の力強さとは対照的に、ここでもジュリエンの高音ボーカルが、明らかに別れる直前の恋人達のことを歌っている曲の内容にふさわしい、一種の寂しさと傷つきやすさを表現しています。



ちょっと変則リズムでスワンプっぽい「On My Own」に続いて、タイトなリズムセクションによるロックなリフをバックに、ニューオーリンズのセカンド・ライン的なホーンによるソロがフィーチャーされるという、このアルバム唯一のインスト曲「Red Moon」で、バンドの音楽性の奥深さを垣間見せます。続く「Polly」はこれぞアメリカーナ、これぞザ・バンド!という感じの佳曲で聴く者の心をわしづかみ。この曲が想起させてくれるのは、広大な原野の中を遠く夕陽の中に去りゆく50年代モデルのオープンカーのシボレーをただたたずんで見送る情景、というもの。高らかに鳴り響くホーンで締められるエンディングなど正に昔の映画のエンディングを見るよう。

そしてアルバムはこれもやや70年代レトロ的なハッピーなアメリカーナ・ナンバー「Follow」で余韻を残しながら終わりとなります。



全編を通じて、ロック、カントリー、フォーク、R&B、スワンプ・ロックといった、いかにもなアメリカーナの要素をふんだんに持ちながら、とてもビジュアルなイメージを想起させてくれる曲が満載なこのアルバム。インディー音楽誌「ピッチフォーク」誌も「何も新しいことをやっているわけではないが、ホイットニーは今この時代において完璧なサウンドを作り出している。正に正しい時に正しい場所で作品を作っているという他ない」と絶賛しています。

LIght Upon The Lake (back)


インディーながら特に新奇をてらわず、自分たちの中から生まれてくる音楽を素直に、肩の力を抜いたある意味レイドバックなサウンドで表現しているホイットニー。同様の作風を続けるウィルコドーズ、バンド・オブ・ホーセズ、ジェイホークスといったバンド共々、今後の活動が気になるグループがまた一つ増えました。この秋、彼らのちょっとレトロで心和むロック・サウンドを聴きながら、ゆったりとした時間を過ごしたいものです。


<チャートデータ>

ビルボード誌ロック・アルバム・チャート最高位28位(2016.6.25付)

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