Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#94「Lindsey Buckingham / Christine McVie」Lindsey Buckingham & Christine McVie (2017)

 #94Lindsey Buckingham / Christine McVieLindsey Buckingham & Christine McVie (LMJC / Merry Go Round / East West / Atlantic, 2017)


いよいよ学校の夏休みも始まり、梅雨も明けて、連日暑い日々が続く夏全開の今日この頃、皆さんは元気に洋楽ライフ、楽しんでますか?いよいよ今週末からフジロックも始まり、夏の音楽三昧の日々で盛り上がっている方も多いと思います。くれぐれも体調だけは気を付けて行きましょう。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は新しいアルバムをご紹介する番ということで今年の新譜。といっても70年代以来の音楽ファンにはすでにお馴染みのあのフリートウッド・マックの二人、リンジー・バッキンガムクリスティーン・マクヴィーが先月リリースしたデュエット・アルバム、既に耳にされている方も多いと思われる、その名も『Lindsey Buckingham / Christine McVie』をご紹介しましょう。


Buckingham_McVie.jpg 


70年代からのフリートウッド・マックのファンの皆さんにとってはここ数年何かと話題が尽きないマック周辺。2013年にはあの70年代を代表するメインストリーム・ポップの名作『噂(Rumours)』(1977)の未発表音源を含むCD3枚組のデラックス35周年エディションがリリースされ、久しぶりにマックの話題でシーンが盛り上がったところへ、1998年にグループ脱退、「ふつうの人」に戻っていたブルース・マック時代からポップ・マック最盛期にかけての中心メンバーの一人、クリスティーン・マクヴィーが2013年に行われたマックのツアーのロンドンでの最終2公演に突然参加、翌2014年にグループ復帰をアナウンスするという展開に。同年9月からは『ファンタスティック・マック(Fleetwood Mac)』(1975)~『Tango In The Night』(1987)のマック最盛期のメンバー5人(リンジー、クリスティーンに加えてスティーヴィー・ニックス、ミック・フリートウッド、ジョン・マクヴィー)が揃ってUS、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドをまわり(残念ながら日本公演はなし)、計120公演、1年以上にわたる「On With The Show」ツアーを敢行し、世界中のマック・ファンにマック再始動の実感をいかんなく与えてくれたもんです


このツアーは『』当時のファンだけでなく、その子供達の世代で『』の頃のマック・サウンドはクラシック・ロックFM局では聴いたことがあるけど生で聴くのは初めて、という観客にもマックのこの黄金期メンバーのサウンドが届けられ、当時のサウンドが次の世代にもリアリティを持って伝えられたという点で大きな意義があったと言えます。ツアー当時、このメンバーでの新作発表予定もアナウンスされ、ツアーが終了した2015年末には2016年にはほぼ30年ぶりにこのメンバーでのマックの新作が出る、と期待に胸を膨らませていたファンも多かったでしょう。

事実、そのツアーの直前、クリスティーン復帰直後の数ヶ月、リンジーはあの大作『Tusk』(1979)を録音したLAのスタジオに入って、クリスティーンと曲作りのセッションを始めていて、その出来に手応えを感じていたといいます。ツアー前までに、結果今回のデュオアルバムに収録される曲も含む8曲を、ジョンミックのリズム・セクションを加えた形で仕上げていたのです。ただその後、ツアー中約束されたマックの新作に彼らと共に取り組んでいたはずのスティーヴィー・ニックスが自分のソロ作のツアーに出てしまい、5人マックでのアルバムの仕上げが難しくなるという事態に。

もうこれ以上待てない、ということでリンジークリスティーンが2016年末から2年前に仕上げていた8曲を元に今回のアルバムを作り上げたのです。


Lindsey Christine


リンジークリスティーンのデュオ・アルバムといっても、バックにジョンミックのリズム隊が入っていますから、実質本作はスティーヴィー抜きのマックの新作、と言ってもいいでしょう。そして『』の「Dreams」のような典型的スティーヴィー楽曲が当然含まれていないのですが、それがほとんど気にならないほど、アルバムとしての完成度は高いものがあります

収められた楽曲は一曲ごとにリンジークリスティーンが交互にリードを取るという構成で、自分のリード曲は基本自分の作品、または自分の作品を元にもう一人が共作で仕上げたという機能的な共同作業の形を取っています。

そして、どの楽曲も聴いてすぐリスナーの頭に浮かんでくるのは『Tusk』から『Mirage』(1982)、『Tango In The Night』(1987)にかけての3枚の頃そのままのマックのサウンドリンジーの奏でる光り輝くようなギターリフに乗るポップ・ナンバー、クリスティーンのたゆとうような、それでいてスケールの大きいメロディと楽曲構成の英米ポップ・ロックの要素が渾然一体となったナンバーなどがふんだんに盛り込まれているこのアルバム、当時のマック・ファンはもちろん、今のメインストリーム・ポップ・ファンにも充分魅力を感じてもらえるそんな素晴らしい作品に仕上がっています。


イントロのギターとボーカル、そして『Tusk』期特有の飛び跳ねるリズムを聴いた瞬間に「あ、リンジーだ!」とすぐ分かってしまう冒頭の「Sleeping Around The Corner」、イントロのキーボードと紛う方なき成熟した歌声はクリスティーンなのだけど、メインのリズムはまたまた『Tusk』期のリンジー色が前面に出ている「Feel About You」、マイナー調のコードの出だしから一気に花が咲き乱れるようなギターフレーズとメロディが『Tango In The Night』で完全に主導権を持っていた頃のリンジーを強烈に感じるポップ・ナンバーの「In My World」と、この最初の3曲を聴いただけで、彼らのサウンドのファンの心を鷲づかみにしてくれるそんなアルバムの出だし。



クリスティーン独特の流れるようなコード進行とメロディ構成が『Tusk』収録の「Think About Me」チックな「Red Sun」、アコギでシンプルに聴かせるリンジーの「Love Is Here To Stay」、『』B-1に入っていた陰のあるロックナンバー「The Chain」を彷彿とする今回のアナログ盤でもB-1の「Too Far Gone」、そして『Mirage』期のリンジーの色が濃く出始めた時の「Hold Me」「Oh Diane」といったナンバーを思い出させてくれる「Lay Down For Free」など、アルバム中盤も一切テンションが緩むことなく、正にポップ職人リンジーと母性で包み込むロックシンガー、クリスティーンのコラボが素晴らしい楽曲群を紡ぎ出していきます。



アルバム上がりの3曲の最初「Game Of Pretend」は、これぞクリスティーンの楽曲という、ピアノの弾き語りで迫り来るようにクリスティーンが歌いかけてくる「Songbird」系の楽曲。この間のツアーのタイトルをそのままタイトルに「僕が立ち続ける限り/君の手を取って僕のバンドと立ち続ける/ツアーに出てショーを続ける以外/他に行くところはない/だからさあ行こう、さあショーをやりに出かけよう」と、リンジーのこれからの音楽活動に向けての決意表明を前向きに歌う「On With The Show」はことに感動的ですが、これに呼応するかのように、ややブルージーにアルバム最後の「Carnival Begin」では「目を開けると海には船が出航している/初めて会う人々、行ったことのない場所/もうそれらを隠すには遅い/私はすべての色とブランコ、新しいメリーゴーランドが欲しい/カーニヴァルの始まりなの」と歌うクリスティーンも同様の気持ちを表明していて、少なくともこのマックの4人はまだまだこれからも新しい音やショーを届け続けてくれるのだな、とファンとしては大変嬉しい実感を持つことができます。


Buckingham McVie (back)


とにかく3年の年月をかけて、いい音や楽曲作りへの完璧主義者ぶりでは定評のある(笑)リンジーが渾身で作り出したハイクオリティのサウンドは隅々まで手が行き届いた職人仕事で、これにもう一人のサウンド職人、ミッチェル・フルームがキーボードとプロデュースで参加してますので、楽曲のみならず音の良さも素晴らしいものがあります。

是非昔からのマック・ファンも、マックは知らないけど最近のHAIMなどの良質で成熟したポップサウンドに興味のある若いファンも、是非このアルバムでリンジーの、そして4人マックのサウンド・コラボの生み出す楽曲を楽しんでみてはいかがでしょうか。


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバムチャート最高位17位(2017.7.1付)

同全米ロック・アルバムチャート最高位3位(2017.7.1付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#93「Journey To The Land Of Enchantment」Enchantment (1979)

 #93『Journey To The Land Of EnchantmentEnchantment (Roadshow / RCA, 1979)


この週末は今日の海の日を入れての三連休。この週末からもう夏休みという学校も多いでしょうし、海に山に小旅行と連休を満喫されている方も多いでしょう。そういうレジャーにも是非いい音楽、いい洋楽を携えて楽しんでおられる方も多いことと思います。

さて今週の「新旧お宝アルバム」は久々に70年代に戻り、メインストリームでの商業的成功は今ひとつでありながら、その素晴らしいバラード・ナンバーの数々で当時のR&Bシーンに大きな存在感を残し、後の90年代にR&Bが復興した際、ジェシー・パウエルらの伝統的スタイルのR&Bシンガー達にも大きな影響を与えたデトロイト出身の5人組コーラス・グループ、エンチャントメントの3作目『Journey To The Land Of Enchantment』(1979)をご紹介します。

Jouney To The Land of Enchantment 

エンチャントメント、というと全米トップ40ヒットファンやソウル・ファンの間ではあの名バラード「Gloria」(1977年全米最高位25位)を含むファースト・アルバム、いわゆる「カエルジャケ」で有名な『Enchantment』(1977)や、もう一曲の全米トップ40ヒット「It's You That I Need」(1978年全米最高位33位)を含むセカンド・アルバム『Once Upon A Dream』(1978)の方が知られているかもしれません。いやそれ以前にエンチャントメントというグループ自体、熱心なソウルファン以外にはあまり一般的には知られていないというのが実態でしょう


Enchantment 1st 

エンチャントメントは古くからのソウル・コーラス・グループの伝統的スタイルを受け継いだ、バラード・ナンバーにその素晴らしさを発揮するグループ。しかし彼らのバラード・ナンバーというのはどれも、それはそれは宝石のように輝く素晴らしいナンバーばかりで、そうした卓越したバラード・パフォーマンスこそが彼らの最大の強みであることは間違いないでしょう。

その彼らのスタイルの強みを最大限に引き出しているのが、ファースト以来このアルバムまで3枚の楽曲作りとプロデュースをつとめたマイケル・ストークス。彼の作り出す数々のバラードの名曲とサウンドワークが、エンチャントメントを70年代屈指のバラード・グループにした大きな要因でした。これほどのアーティストを育て上げたマイケル・ストークスですが、エンチャントメント以外ではこれといった実績を残しておらず、エンチャントメントとマイケルの関係がお互い不可欠、ワン・アンド・オンリーであったことが分かります


先ほどにも述べたように、このアルバムの前の2作からは全米トップ40ヒットも生まれていますし、前作はR&Bアルバム・チャートでもトップ10に入るなど、商業的にも盛り上がっていた後のこのアルバムからは前2作ほどの大きなヒットは生まれていません。しかし、このロードショー・レーベル最後、そしてマイケル・ストークスとの仕事最後となったアルバムは、その後半を構成する怒濤のようなバラード・ナンバーの洪水だけを持ってしても、充分「お宝アルバム!」の価値はある作品だと思います



一方時は1979年、ディスコ・ブーム真っ只中の時代であり、アルバムの冒頭「Future Gonna Get You」は明らかにディスコな楽曲も用意しました、的な感じで正直あまり頂けません。2曲目の「Magnetic Feel」も同様の路線ですが、ただこちらはメインリフのクラヴィネットとホーンとベースのフレーズが、この2年後にブレイクするリック・ジェイムスの「Give It To Me Baby」を彷彿させたり、全体的にも70年代中期のテンプテーションズのアップナンバーを思い出させるようなしなやかさで決して悪くありません。このアルバムの最大の特徴は「だんだんよくなるエンチャントメントの3枚目(笑)」というものですが、正にその通りの展開で、次の「Anyway You Want It」はしなやかで洒脱なフレージングがフィリーソウルを思わせる素敵なミディアム・ナンバー。リードボーカルのエマニュエル・EJ・ジョンソンのファルセット気味のテナー・ボーカルが気持ちよく心に響きます。続く「Love Melodies」はちょっとサザン・ソウル風にスワンプ風味のギターとフェンダー・ローズとストリングスがダウン・トゥ・アースな気持ちよさを醸し出すゆったりとしたナンバー。

この後アルバムはやや中だるみとなり、ムーディなミディアム・スロー「Oasis Of Love」、これもややディスコ仕様だけど凡庸な「I Wanna Boogie」、そして何故かイントロにサーカスの呼び込みのメロディがあしらわれて、ややオールド・タイム・ミュージック風を狙っているような「Fun」の3曲が続きますが、正直この3曲は全体の流れを止めてしまっていて熱心なファン以外は飛ばして聴いて頂いても大丈夫です(笑)





そしていよいよ怒濤の後半がスタートするのは「Let Me Entertainment You」。ここではまだ凄さはありませんが、エマニュエルを中心に60年代のテンプスか、70年代のフォートップスか、というくらい完璧にコーラスワークを決める5人のボーカルが、心地よくリスナーの耳を包み込んでくれるミディアム・ナンバー。「ここから思い切り楽しんでくれ」という彼らの決意表明のようにもきこえます。そしてホーンとストリングスとリズムセクションが刻むイントロが入ってきた瞬間に素敵な時間を予感させる彼ら屈指の名バラード「Forever More」。アルバムジャケにメンバーのバックに写る星空から降ってくる流れ星のような音をシンセで散りばめながら抑えたバックトラック、コーラスもやや抑えめにリードのエマニュエルの素晴らしいテナー・ボーカルに寄り添ったパフォーマンス。「君の愛と一緒にいると素晴らしい/僕はずっと永遠に君の愛を大事にするよ」というベタベタのラヴソングなのですが、ここでの彼らのパフォーマンスこそ素晴らしいの一言

そしてこのアルバムの実質のラスト・ナンバー「Where Do We Go From Here」。知り合ったばかりの男女が二人きりになったのだけど、このまま何もなかったかのように立ち去るべきか、それともお互いに手を取って何が起こるのか試してみるべきなのか、ねえ君、これからどうすればいいんだろう、と歌うこの歌は、ギターとシンセによるスペーシャスなトラックをバックにゆったりと始まります。ここでもひたすらエマニュエルの素晴らしいファルセット・テナー・ボーカルとそれにぴったりと寄り添うコーラスによるエンチャントメントのパフォーマンスは、正に「クワイエット・ストーム」という言葉がぴったり。

曲はそのままアルバムクロージングの「Journey」になだれ込みますが、これは先ほどのスペーシャスなトラックがまた前面に出てきて2分ほど流れてフェードアウトする、というもの。



自分が1991~93年にNY駐在の頃、地元のブラック専門FM局、WBLSをよく聴いていましたが、週末の夜10時頃からやっていた名物番組「Quiet Storm」のDJだったヴォーン・ハーパーバリー・ホワイト顔負けのロー・バリトン・ヴォイスの名DJ、惜しくも昨年71歳で他界)はよく番組の最後にこの「Where Do We Go From Here」から「Journey」の流れを使っていました。彼の「Journey」にかぶせてしゃべる「昨日から今日に時間が変わる真夜中...あなたにお届けしてきたQuiet Storm...(城達也かw)」というMCが本当に印象的で、このアルバムを聴くたびにあのヴォーン・ハーパーのセクシーなMCを思い出すということもあり、自分にとっては特別なアルバムなのです。


Journey To The Land Of Enchantment (back)

一部の曲は今聴くとやや時代を感じてしまうものもあるのですが、後半の一連のバラード曲は今聴いても全く古さを感じさせない、名ソウル・コーラスグループ、エンチャントメントの真骨頂とも言える素晴らしさだと思います。夏の夜、ジャケにあるような星空を見ながら、ソウル・バラードの神髄を楽しむには絶好の盤だと思いますので、是非一度聴いてみて下さい。

 <チャートデータ> 

ビルボード誌
全米アルバムチャート最高位145位(1979.4.28付)

同全米ソウル・アルバムチャート最高位25位(1979.4.7-14付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#92「Waiting On A Song」Dan Auerbach (2017)

 #92Waiting On A SongDan Auerbach (Easy Eye Sound / Nonesuch, 2017)


雨が降らないとつぶやいてたら先週は九州地方を襲った台風の影響で悲しい災害が発生、多くの方々が被害を受けてしまいました。被災者の方々、そして不幸にも水害の犠牲になってしまった方々には心よりお悔やみ申し上げると共に、日常への一日も早い復旧を願っています


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は久々に今年発売された新譜を。2017年も折り返し点を過ぎて、各音楽誌や音楽情報サイトでは今年前半のベストアルバム、なんて企画もちらほら目にする最近、自分的にはかなりそういったリストの上位に入ってくるのではないかと思っているのが、オハイオ州アクロン出身のブルース・オルタナティブ・ロックバンド、ブラック・キーズのリーダーで、2013年には自分たちの作品やDr.ジョンのアルバムなどの仕事でグラミー賞最優秀プロデューサー賞も獲得しているダン・アウアーバックのソロ・アルバム『Waiting On A Song』。ドカスカビートと骨太のブルースっぽいロックを聴かせるブラック・キーズのサウンドとはひと味違った魅力を持つこのアルバムを今週は紹介しましょう。


Waiting On A Song 


ダンがソロ・アルバムを出すのはまだブラック・キーズが大きくブレイクする前の2009年の『Keep It Hid』以来8年目、2枚目になります。今回のソロ・アルバム制作のきっかけは、その後ブラック・キーズが大きくブレイクすることになったアルバム3枚『Brothers』(2010)、『El Camino』(2011)、『Turn Blue』(2014)の大ヒットとそれをサポートするツアー続きでほとほと疲れてしまったダンが、2014年から2015年にかけてレイ・ラモンターニュラナ・デル・レイ、ケイジ・ジ・エレファントらのアルバムをプロデュースした後2015年に再婚、そして2016年夏に休養宣言をしたことが実は始まりだったとか。


El Camino 

早くから南部の音楽のメッカ、ナッシュヴィルに移り住んでいたダンは、ひたすらレコーディングに、ツアーに、そしてプロデュースワークで駆け抜けた後はゆっくりアンプラグして過ごすつもりだったようですが、それまで時間なく交流がなかなかできなかった地元のミュージシャンや音楽関係者と交流するうちに、このアルバムを作ることになる二人の重要なパートナーと知り合ったといいます。

一人はこのアルバムのプロデューサーでもあり、このレコードが録音されたナッシュヴィルのEasy Eye Soundスタジオのオウナーでもあるデヴィッド・ファーガソン。彼はメンフィスのサン・スタジオを創始者のサム・フィリップスと共に支えた伝説のプロデューサー、”カウボーイ”ジャック・クレメントの直弟子で、90~2000年代にこちらも名プロデューサーのリック・ルービンの手腕で復活したジョニー・キャッシュアメリカン・レコーディング・レーベルから発表したその時代のアルバムのサウンド・エンジニアを務めた、ナッシュヴィルでも大御所のサウンド・プロデューサーです。

そしてもう一人が、デイヴィッドと親しくなったダンが連れて行かれたナッシュヴィルのライヴハウスでのジョン・プライン(70年代にカリスマ的人気を誇ったシンガーソングライター)のライヴで、バンドのマンドリンを弾いていたパット・マクラフリン。彼は80~90年代にスティーヴ・ウォリナータニヤ・タッカー、ゲイリー・アランなどカントリー・シンガー達に数々の曲を提供してきて、ナッシュヴィルでも有数のシンガーソングライターとしての実績を持っていましたが、2010年にジョン・プラインのツアーの前座をやったのをきっかけにジョンのバンドに時折参加していたとのこと。巡り合わせというのはこのこと。

意気投合した3人は「とにかく曲を書こう」ということで毎日ダンの家に集まり、朝9時から夕方までとにかく共作で曲を書きまくったといいます。週の前半は曲を書き、後半はその曲のデモを録音する、というのを続け書き上がった曲は、他のバンドメンバーとの共作も含め200曲に上ったというから驚きです。


このレコードのもう一つのポイントは、バックをつとめるバンドのメンバーがほぼ全曲不動であるということ。ギターのラス・パール、ベースのデイヴ・ロー、キーボードのボビー・ウッド、ドラムのジェフ・クレメンスの4人はダンと共にこのアルバム収録の10曲のほとんど全部を不動のメンツで固めて、骨太でタイトで、それでいてしなやかな演奏を聴かせてくれます。スペクター・サウンドの成功のバックにレッキング・クルーが、モータウンの成功のバックにザ・コーポレーションが、そしてスタックスの成功のバックにブッカーT&MGズが、と古来成功したサウンド・プロダクション・チームには不動のバンドメンバーがいましたが、このアルバム制作にあたってはそれを念頭に置いていたとダンは言います。そしてそれに加えてゲスト参加しているミュージシャンはすべてレジェンド級のアーティストばかり。ラウンジっぽいギター音のレゾナンスが聴いた瞬間に彼と分かるデュアン・エディ、マーク・ノップラー、そしてブルーグラスの世界でドブロ・ギターと言えばこの人、ジェリー・ダグラスなどがダンデイヴィッドパットのペンによる楽曲のレベルを一段と上げているのです。



サウンドは、ブラック・キーズのドカスカビートのブルース基調のロック・サウンドを想像するといい意味で大きく裏切られます。このアルバムのきっかけとなったジョン・プラインとの共作曲でオープニングのタイトルナンバー「Waiting On A Song」はマイアミ・ソウル風のベース・リフで軽快に始まり「おっ、何だこれは」と思ううちに、思いっきりカントリーに寄り添ったジョン・メイヤー、といった感じのオーガニックなブルー・アイド・ソウルに転じていく、実にオープニングにふさわしい目の前に道が開けていくような曲(PVも映画風で楽しいですね)。ストリングをバックに構えながらメンフィス・ソウル風なリフがこれも心地よい「Malibu Man」、ニック・ロウか、トラヴェリング・ウィルベリーズかといった軽快なロカビリー基調の軽快なサウンドの途中に紛う方無きデュアン・エディ御大の骨太のギターが登場して、思わず体が動く「Livin' In Sin」といったあたりを終わる頃にはこのアルバムの虜になっていました。


続く「Shine On Me」もジュース・ニュートンの「Queen Of Hearts」やトラヴェリング・ウィルベリーズに共通するロカビリー・タッチのとてもポップなリフのキャッチーな曲。ここでのメイン・リフのギターを弾いているのはマーク・ノップラーですが、バンドメンバーと一緒に楽しんでプレイしているのが目に見えるよう。

ひとしきりビートの軽快なナンバーが続いた後は、ムーディなナッシュヴィル・ソウル歌謡、といった感じの「King Of A One Horse Town」からダンラスのアコギとデイヴのアコースティック・ベースにこちらもナッシュヴィル・レジェンドのジェリー・ダグラスのドブロが絡む「Never In My Wildest Dreams」にかけては、いわばこのアルバムのレイドバック・セット。「Cherrybomb」は妖しげな魅力をたたえた女性とその冷たさを歌うというカントリーでは定番のテーマの歌詞を、60年代のゾンビーズあたりを思わせるミステリアスな雰囲気のサウンドに乗せて歌うというもの。


アルバム終盤の3曲はまたちょっとアップテンポのビートに戻って、カントリー・クラシックに対するオマージュとも思えるタイトルの「Stand By My Girl」、ちょっとダウンテンポながらノーザン・ソウルの雰囲気をたっぷり称えたソウルフルなナンバー「Undertow」、そしてハンドクラッピングとジャンプするような軽快なリズムに乗って軽々とダンが思わせぶりな女の子に「その気があるなら態度で見せてくれ/その気がないのならいい加減僕を自由にさせて/僕の気持ちは最初から見せている/ねえ君、君の気持ちを見せて」と歌う「Show Me」でほんわかしたムードでアルバムは完結。

Waiting On A Song (back)


このアルバムに入った10曲以外にも190曲のストックがまだあるわけで、この3人のソングライティング・チームの楽曲のクオリティの高さからいって、このセッションの2弾目、3弾目も今後出てくるのではないかと期待させます。そんな期待を膨らませてくれるほど、このアルバムはいつも変わらないバンドメンバーが集まって普通に楽器を弾いて、キャッチーだけど単純ではなくレベルの高い楽曲を演奏しているダン達の楽しさが伝わってくる好盤。是非ともストリーミングで、そしてCDショップで実際に聴いて見て下さい。アメリカン・ルーツ・ミュージック(含むR&B)がお好きな方であれば絶対お気に入りの一枚になると思いますので


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバムチャート最高位41位(2017.6.24付)

同全米オルタナティヴ・アルバムチャート最高位5位(2017.6.24付)

同全米ロック・アルバムチャート最高位8位(2017.6.24付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#91「How Will The Wolf Survive?」Los Lobos (1984)

#91『How Will The Wolf Survive?』Los Lobos (Slash / Warner Bros., 1984)


先週は一週間US出張の関係でお休みしてしまったこの「新旧お宝アルバム」、帰国してみると成田を立つ前に比べて湿気も増えて、少し梅雨らしくなったなあ、と思ってましたが肝心の雨はそこそこで蒸し暑さだけは全開のここ数日。皆さんも体調崩さぬよう洋楽ライフを楽しんで下さい。

そのUSは正に今独立記念日ホリデーの真っ最中ということで、ゆったりした時間が流れているようですが、ここ東京では週末の都議選の結果が自民惨敗、小池都知事の都民ファーストの圧勝となりました。この後の展開は不透明ですが、奢れる安倍下ろしの一歩になったのであれば国民にとって歓迎すべきことだと思います。


さて今週の「新旧お宝アルバム」は時代を80年代に戻して、自らの民族的ルーツと音楽的表現を試行錯誤しながら見事にオリジナルでカッコいいロック作品を作り上げた、ロス・ロボスのメジャーブレイク作『How Will The Wolf Survive?』(1984)をご紹介します。


How Will The Wolf Survive 

ロス・ロボスというと、全米トップ40ファンの間では1987年の同名映画の主題歌で、その映画の主人公でもあった50年代のロカビリー・スター、リッチー・ヴァレンスのヒット曲のカバー「La Bamba」の全米No.1が最もお馴染みだと思いますが、彼らがロック・シーンにおいてメジャー・ブレイクを果たしたのはその3年前にリリースされたこのアルバム『How The Wolf Survive?』でした。

メンバーはLAで最もラティーノの人口割合が多い(90%以上がラティーノ)イーストLA出身の6人組、特に自らの民族的ルーツをメキシコに持つメンバーが多く、このアルバムにおいて彼らはメキシコの民族性とロック・サウンドの融合による新しくオリジナルなスタイルでのテックス・メックス・ロック(メキシコ音楽とカントリーの融合した音楽スタイル)を見事なサウンド・プロダクションと楽曲で実現しているのです。


Los Lobos


メンバーのうちリーダーのデヴィッド・ヒダルゴ、ルイ・ペレス、セザール・ロサス、そしてコンラッド・ロザーノの4人はギター、ベースといったロック・バンドの基本楽器の他、テックス・メックスに欠かせないアコーディオン、レキント・ハローチョやギタロン、ハラーナ・フアステカといったメキシコ音楽特有の弦楽器の数々を要所要所で駆使しており、これが彼らの独自のサウンドに欠かせないものになっています。

そうしてこうした文化的多様性を内包した音楽性を見事にロック作品として昇華しているのに欠かせないのが、後にコーエン兄弟の映画『オー・ブラザー(O Brother, Where Art Thou?)』(2000) のサントラ盤やアリソン・クラウスロバート・プラントの歴史的コラボ作『Raising Sand』(2007)などでアメリカン・ルーツ・ミュージックを基盤とした音像豊かなロック・プロダクションで知られる名匠Tボーン・バーネットのプロデューサー・ワークです。彼の必要最低限の音数を使い、余計な装飾的なサウンドを一切廃した「引き算」のプロダクションがこのアルバムをとてもタイトに、されどインパクトあるものにしているのです。



アルバムはいきなりストレートでシンプル、でもインパクトのある軽快なロック・ナンバー「Don't Worry Baby」で勢いよくスタート。ロス・ロボスは90年代にこちらも名プロデューサーのミッチェル・フルームを迎えた『Kiko』(1992)『Clossal Head』(1996)といった名盤をものしていますが、そのあたりのサウンドの萌芽を感じさせるような、力強いサウンド。ここでは伝統的なロック楽器のみの演奏ですが、既に何か違うぞ、的なものを期待させてくれるそんなオープニングです。

このアルバムに先立ちリリースされたEP『...And A Time To Dance EP』(1983)で買ったGMドッジ・バンで全米ツアー中に、このアルバムの最初の曲として作られた次の「A Matter Of Time」もまだ通常のギター中心のサウンドですが、レイド・バックしたブルース調の楽曲とギターの音色がテックス・メックス色を強く醸し出している気持ちのいいナンバー。


そして次の「Corrido #1」からはアコーディオンとドラムスをバックにしたエキゾチックな演奏で、一気にテックス・メックスの世界に突入。シャッフル調のリズムが心地よい「One Last Night」、ヒダルゴの要所要所を締める巧みなギターリフとアコーディオンのバッキングとレトロな曲調が楽しい「The Breakdown」、そして軽快なギターリフとリズム、そして「昨夜はジン一本ですっかりベロベロ/でも気分は最高/昨夜はウィスキー一本で酔っ払っちゃったぜ/でもそう、俺は気分最高」という楽しい歌詞で思わず踊り出したくなる「I Got Loaded」あたりまでは一気にロス・ロボスの軽快でノリのいいテックス・メックス・ロックの世界に引き込まれてしまいます。


自らの民族性への誇りを思わせる伝統的メキシコ音楽スタイルに徹した演奏で、全編スペイン語の歌詞の「Serenata Norteña」(北部のセレナータ、セレナータというのは夜に女性の窓の下に来て歌う求愛歌)がそうしたロック・サウンドに続いて登場するこのアルバム構成、嫌がおうにも彼らのスタイルの独自性を実感させられますが、続く「Evangeline」「I Got To Let You Know」ではすぐさままた彼らのテックス・メックス・ロックスタイルに戻り、思わず聴きながら体が動いてしまう演奏で盛り上げてくれます。ラス前の短いインスト・ナンバー「Lil’ King Of Everything」ではメンバーがギターやベースをメキシコ音楽特有の弦楽器に持ち替えて、砂漠に開くサボテンの花を思い浮かべるような美しいメロディを聴かせてくれます。



ラストナンバーの「Will The Wolf Survive?」ではまたテックス・メックス・ロックのスタイルに戻り、ヒダルゴのギターリフやメキシコ弦楽器の美しい音色をバックに「果たして俺たち(ロス・ロボスというのはスペイン後で「狼」の意味)はこの厳しい音楽シーンで生き残っていけるのだろうか?」というある意味深刻なメッセージを、極めて明るく開放的なトーンで唄いながら、アルバムを締めます。


このアルバムはリリースされるや、数々のロック評論筋から高い評価を受け、かのローリング・ストーン誌などは1984年に発表した「1980年代で最も偉大なアルバム100枚」の第30位にこのアルバムを挙げるなど「テックス・メックス・ロック」という新しいジャンルを確立した作品として広く受け入れられたそんな作品。

ラ・バンバ」の思わぬヒットでイメージを限定される恐れもあったのですが、その後前述した90年代のミッチェル・フルームを迎えての作品群への高い評価や、2000年代に入って自らプロデュースした『Good Morning Aztlán』(2002)、エルヴィス・コステロトム・ウェイツ、サルサの雄ルーベン・ブラデスらを客演に迎えた『The Ride』(2004)、グラミー賞の最優秀アメリカーナ・アルバム部門にもノミネートされた『Tin Can Trust』(2010)など、コンスタントにクオリティの高い作品をリリース。2015年には17枚目にあたるオリジナル・アルバム『Gates Of Gold』を発表、相変わらず力強くもやや円熟の域に達しつつある、彼ら独特のテックス・メックス・ロックを聴かせてくれます。

Gates Of Gold


先週のUS出張の帰りにLAに立ち寄りましたが、日本と違ってLAは昼間は30度を超す猛暑の毎日で、ロス・ロボスのこういう乾いた、それでいてメキシコの異国情緒を感じさせる音が似合う気候でした。日本はまだ湿気も多くカラッとは行きませんが、これからどんどん暑くなる毎日。ロス・ロボスのレコードでも聴きながら辛いメキシコ料理とビールで夏を乗り切ってみる、というのも乙なのでは?


 <チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバムチャート最高位47位(1985.3.9付)

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