Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#97「Your Favorite Record」Linus Of Hollywood (1999)

#97『Your Favorite Record』Linus Of Hollywood (Franklin Castle, 1999)


先週のお盆の週は「戻り梅雨か?」と思うほど雨や曇りの日が多く、真夏とは思えない天気が続きましたが皆さんは体調など大丈夫だったでしょうか。自分は夏休みの週ということであちこちに出かける予定もあったのですが、天気のおかげでお出かけの代わりに家の片付けなどをする日も多く、思わず家の中が整理されて良かったような悪かったような(笑)。先週末のサマソニも雨に見舞われたりとなかなか苦労した方も多かったのかも。

さて今週の「新旧お宝アルバム」はいつもよりはぐっと最近のレコードで。折しも9月初旬にほぼ10年ぶりの来日ライヴを東京・大阪で行う予定の、ライナス・オブ・ハリウッドことケヴィン・ドットソンが1999年にリリースした、珠玉のポップ・レコード、『Your Favorite Record』をご紹介します。


Your Favorite Record 

あの大富豪、ウォーレン・バフェットが住んでいることで有名なネブラスカ州オマハ出身のケヴィン(ステージ・ネームの由来は彼が20代にLAに移り住んだ時、よくあのピーナッツ・コミックスライナスが着てたようなストライプのシャツを着てたかららしい)がインディ・レーベルからこのアルバム、ブライアン・ウィルソンロジャー・ニコルス、ヴァン・ダイク・パークスそしてピーター・ゴールウェイといったいわゆるパイド・パイパー・ハウス系のアメリカン・ポップ・ソングがお好きな洋楽ファンであれば、きっとニヤニヤしながら楽しんで聴けて、結果大満足してもらえること間違いなし!というレコードです。

そもそもタイトルからして『君のお気に入りのレコード』なんて、遊び心いっぱいのネーミングで、ジャケもタンテに乗っけたレコードの写真というまあそのものズバリのお遊び感覚満点の作品。


アルバム冒頭の「Say Hello To Another Goodbye」からそうしたポップ・センスが溢れるような、無茶苦茶ポップなヴァン・ダイク、といった感じのバラードで、「さよならよ、またこんにちは」なんていう、ちょっと屈折した歌詞をちょっとファルセットっぽいボーカルで聴かせるあたり、既にここでニヤリとするリスナーも多いのでは。そして続く「Heavenly」。イントロのオルガンのリフからして、こりゃビーチ・ボーイズの「Good Vibrations」ではないの、と爆笑。でも楽曲の作りはアメリカン・スタンダード・ポップ・ナンバーのスタイルを忠実に守り、所々にメジャー7thコードなども散りばめた、とてもポップな作品。

ピアノの半音降下コードで始まる「Nice To Be Pretty」も、アコギとリズム・セクションだけのバックでXTCあたりを思わせる、随所に変拍を織り交ぜたマイナーコードでミディアム・アップで、後半ビートルズ後期を思わせるSEが入る「The Man Who Tells The Crazy People What To Say」も、そしてピアノ弾き語りの「Thankful/It's Over Now」もどれもこれも、60年代後半~70年代前半にかけて輝きを放っていたパイド・パイパー・ハウス系のソフト・ロック・サウンドのオンパレードで、これ絶対どっかで聴いたことある!と思わせる既視感(既聴感?)いっぱいの楽曲ばかりです。



このアルバムでライナスは自作曲だけでなく、彼がこのアルバムで再現しようとした60年代後半のソフト・ロック・サウンドの作者の一人、マーゴ・グリヤンの曲を2曲カバーしています。マーゴは60年代女性ポップ・シンガー、ジャッキー・デシャノンクローディン・ロンジェらが歌った「Think Of Rain」(1967年)や、同じく60年代のドリーミー・ポップ・グループ、スパンキー&アワ・ギャングが歌ってヒットした「Sunday Morning」(1968年全米最高位30位)などを書いたソングライター。

ライナスはこのアルバムでその「Sunday Morning」と、そのマーゴ自らバックでピアノを弾く「Shine」の2曲をカバーしてますが、彼の作り出すソフト・ロック・サウンドと見事に一体化しているのには思わず微笑んでしまいます。



マイナーコードのアコギのシャッフル・ストロークで始まり、途中ホーンとコーラスが控えめに入る「When I Get To California」なんて、まんまカリフォルニア・ソフト・ロック・サウンド。「これ、絶対60年代ポップ・ヒットのカバーだろ」と思わせる楽しい「Good Sounds」やニルソンあたりを思わせる「Everybody's Looking Down」もいいですが、アルバム後半の白眉は、イントロから歌い出し、サビのメロディからコーラスの入り方など、ブライアン・ウィルソンや山下達郎の顔が目にちらついてしょうがない「A Song」。この曲は多分このアルバム全体を象徴する完成度を持った珠玉のポップ楽曲といって差し支えないでしょう。

アルバム最後はお風呂の水音のSEをバックにアコギとコーラスだけで、とってもハッピーな感じで締める「Let's Take A Bath」。


Your Favorite Record (back)


ライナスはこうしたドリーミーでハッピーで、美しくも遊び心満点のポップサウンドに辿りつくまでには、パンク・バンドをやったり、ヒップホップのアーティストの作品にバックで参加したり、やはり90年代を代表するパワー・ポップ・バンド、ジェリーフィッシュロジャー・マニングJr.のバックを努めたりとそれこそ幅広い音楽ジャンルをカバーする活動を経験してきたようです。また、日本とも縁が深く、パフィや木村カエラのアルバムに楽曲を提供したりと、とてもユニークで個性的な活動を続けてきています。


この『Your Favorite Record』の後、現在に至るまで5枚のアルバム(最新作は2014年の『Something Good』)をリリースしてきているライナス・オブ・ハリウッド、その織りなすポップ・ワールドは、人によっては「単なるレトロ、懐古主義ではないか」「新しいものはなく、伝統主義的ポップに過ぎない」という批判もあるでしょうが、そうした「伝統主義的ポップ」の作り出すマジックがここには確かにありますし、そうした音楽をこよなく愛する洋楽ファンにとっては、間違いなく珠玉の作品として楽しんでもらえるものだと思います。


Linus Of Hollywood


セミ達がこの夏最後の力を振り絞って鳴く声が、暑さがやや和らいできたこの季節の終わりを感じさせる今日この頃、ライナス・オブ・ハリウッドの素晴らしいポップ・ワールドを堪能して、来る秋を感じるというのも乙ではないでしょうか。


 <チャートデータ> チャートインせず

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#96「Truth Is A Beautiful Thing」London Grammar (2017)

#96Truth Is A Beautiful ThingLondon Grammar (Ministry Of Sound / Metal & Dust / Columbia, 2017)


さて今週はお盆ウィークということで夏休みを取られている方も多いのでは。あいにく今週の天候は雨模様でぱっとしないようですが、蒸し暑い日々が続いたここ数週間を考えると真夏日にならないこういう天気も悪くはないかな、というところ。ところでゴルフ全米プロ選手権での松山選手、優勝まで1打差と迫りながら惜しくも最終日一緒に回ったジャスティン・トーマスに及びませんでした。朝から手に汗握りながら応援していましたが、きっと次のメジャー四大会ではこの悔しさをバネにしてトップを手にしてくれることと信じています。


さて先週一週間お休みしてしまった「新旧お宝アルバム!」、今週はまたは新しいアルバムの中からご紹介する順番。今週ご紹介するのは、イギリスはノッティンガム出身の男女3人組のまだレコードデビュー3年目という若いインディ・ポップ・バンド、ロンドン・グラマーが今年6月にリリース以来、シーンで評判を呼んでいる2枚目のアルバム『Truth Is A Beautiful Thing』をご紹介しましょう。


London Grammar 


ジャケに写るメンバー3人の中でも一際目を引くのは、バンドのボーカルを務める女性シンガー、ハンナ・リードの何やら神秘的な雰囲気を称える魅力的なイメージ。そのハンナに寄り添うように写るギターのダン・ロスマンとキーボード・ドラムスのドミニク・”ドット”・メイジャーの3人で構成されるロンドン・グラマーは、2009年、ハンナダンノッティンガム大学の一年生の時にキャンパスでギターをつま弾くハンナダンがバンドの誘いをかけたことから始まったバンドです。

音楽的には、アトモスフェリックという表現がぴったりの、控えめなギターと趣味よくプロデュースされたシンセ・サウンドを中心とした、宇宙空間に浮遊するような神秘的な音楽スタイルがとても印象的なバンド。その音楽性とハンナの取り憑かれたようなイメージのボーカルスタイルから、UKの音楽プレスではフロレンス&ザ・マシーンあたりに例えているようですが、フロレンス&ザ・マシーンほどシアトリカルでドラマチックな感じは強くなく、よりナチュラルな感じで緻密に作り上げられたサウンドとハンナのボーカルが自然に醸し出すドラマティズムで、新人にしてはスケールの大きい楽曲を聴かせる、そんなバンド。その涼しげなサウンドは今年のような暑い夏に聴くにはうってつけです。


London_Grammar_Member.jpg


2011年に大学を卒業した彼らはミュージシャンのキャリアに進み、2012年12月にYouTubeにアップした「Hey Now」で注目を集めたのをきっかけにBBCRadio 1に出演するようになり、2013年2月にデビューEP『Metal & Dust』、そして同年9月にデビューアルバム『If You Wait』をリリースして一気にシーンに登場。同時期にリリースしたシングル「Strong」が全英最高位16位を、そして『If You Wait』は全英アルバムチャート2位に上るヒットとなるなど、ヨーロッパやオーストラリアを中心に一気に人気を集めました。

その彼らが満を持してリリースしたのがこの『Truth Is A Beautiful Thing』。今回プロデューサーにあのアデルエリー・ゴールディング、シーアらのプロデュースを手がけ、今年2月のグラミー賞では最優秀プロデューサーを獲得した今や売れっ子のグレッグ・カースティンと、同じくアデルの『21』『25』のプロデュースと共作で知られるポール・エプワースを迎えて、アデルのあの世界観に通じる雰囲気も加えた意欲作。今年6月にリリースと同時に全英アルバムチャートに1位初登場するという、ファンやシーンの期待を反映した形で発表されたこのアルバム、その人気はヨーロッパやオーストラリアに限らず、アルバム発売と同時にUSでも評判を呼び、ちょうど7月に自分がUS出張の帰りにロスの大手レコード屋に立ち寄ったところ、彼らのこのアルバムがデカデカとプロモーションされているのが大変印象的でした。


前11曲中、メンバーとグレッグ・カースティンの共作「Everyone Else」と「Leave The War With Me」、メンバーとポール・エプワースの共作「Non Believer」以外はすべて楽曲はメンバー3人の自作。

全体リヴァーヴがかかったピアノとアコギと、遠くに微かに聞こえるシンセのトーンのみをバックに、ハンナの低いゆっくりとした歌い出しから始まるシングルカット曲「Rooting For You」は、いかにもUKメインストリーム・ポップの伝統を思わせる、マイナーキーとメジャーキーを行ったり来たりするメロディが印象的なスローでスケールの大きい楽曲。「Big Picture」はジェネシスとかのプログレ系のバンドの曲を思わせる、短いオブリガート・フレーズを奏でるギターと教会音楽を想起させる抑えめのシンセをバックにハンナが歌う楽曲。この後「Wild Eyed」「Oh Woman Oh Man」「Hell To The Liars」までのメンバー3人のペンによる5曲は一貫して同じタイプのスケールの大きい、音数を抑えながら教会で演奏されるかのような落ち着いたナンバーです。



LPでいうとB面にあたる6曲目以降の楽曲は、前述の2人のプロデューサーとの共作曲「Everyone Else」「Non Believer」が続き、A面楽曲で聴かれるアトモスフェリックな楽曲のスタイルは変えず、若干テンポ早めでリズムをやや強調した印象を与えます。特に後者はドラムス音の減衰を短くカットしたドラムスのサウンド(80年代のジェネシスのレコードで聴かれたあのサウンドに似ています)が曲に引き締まった印象を与えてくれています。

その流れを受け継ぐかのように続くメンバー自作曲「Bones Of Ribbon」はややリズムを強調したミディアム・テンポの曲。同じくメンバー自作の「Who Am I」でも「Big Picture」で聴かれたシンプルながら印象に残るギター・リフがループのようにハンナのボーカルを彩っている楽曲。

もう一曲のプロデューサーとの共作「Leave The War With Me」はリズムの明確さはあるもののまたA面楽曲の印象に戻るような楽曲で、ピアノをバックに美しくも静謐な印象を与えてくれるアルバムラストのタイトルナンバー「Truth Is A Beautiful Thing」によるエンディングになめらかにつながって行きます。



しっかりと構成されたスケールの大きい楽曲と静謐なサウンド・プロダクション、そしてハンナのドラマティックなボーカルスタイル。このアーティスト、このアルバムを楽しめるかどうかは、良くも悪くもこうしたサウンド・スタイルに魅力を感じるかどうかにかかっていると言えます。

最近のUSのヒット曲やメインストリーム・アーティストの多くが安易なヒップホップとのコラボや、やや過度とも思えるエレクトロ的な味付けでここのところ80年代後半から90年代初頭を思わせるチープなマスプロ感を漂わせているのと比べると、このアルバムで聴けるサウンドは、メインストリームを軸足に抑えながら普通のポップ・ロック・バンドであることを微妙に外しているところが、ある意味フレッシュで魅力的なのです。

Truth Is A Beautiful Thing (back)



まだまだ蒸し暑い日々が続くこの夏、ロンドン・グラマーの涼やかなサウンドを体験してみてはいかがでしょうか。


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバムチャート最高位129位(2017.7.1付)

同全米ロック・アルバムチャート最高位29位(2017.7.1付)

同全米オルタナティヴ・アルバムチャート最高位16位(2017.7.1付)

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