Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【年末恒例企画#1】ビルボードHot 100年間チャート予想(Part 3、10-6位)

【年末恒例企画#1】ビルボードHot 100年間チャート予想(Part 3、10-6位)


一昨日はいよいよ1/28(日本時間1/29)に発表の第60回グラミー賞のノミネーションが発表になり、予想通りブルーノ・マーズケンドリック・ラマー、そして今年を後に振り返って必ず思い出されるであろう「Despacito」などが順当にノミネートされる一方、何とチャイルディッシュ・ガンビーノジェイZという、ヒップホップ・シーンでも片や今時の音像系のサウンドを繰り出す若手と大ベテランというある意味全く対照的な二人がそれぞれ5部門、8部門(今回最多)ノミネートという全く予想外の展開もあり、驚くと共になかなか予想作業が楽しそうだな、と思った次第。グラミー予想については、この【年末恒例企画】シリーズで後ほどお届けしますので乞うご期待。


ということで、年間チャート予想、トップ10です。


10. Believer - Imagine Dragons

(Hot 100 - 40週、Top 40 - 29週、Top 10 - 14週、Top 5 - 5週)

2017.8.26 & 9.9付 最高位4位)


Imagine Dragons Believer


10位はイマジン・ドラゴンズのアルバム『Evolve』からの第1弾シングル、「Believer」がランクイン。ちょうど4年前の第56回グラミー賞で彼らの「Radioactive」がレコード・オブ・ジ・イヤーにノミネートされ、授賞式でユニークな和太鼓を配したパフォーマンスと、その年新人賞部門ノミネートだったケンドリック・ラマーとの共演が印象的だったイマジン・ドラゴンズ。その後のアルバムが今ひとつだったんですが、今回のアルバムからはこの「Believer」と「Thunder」(現在Hot 100最高位4位をマーク中)と2曲のトップ10を出し、復活した感のある彼ら

今回のこの曲も彼ららしい、パーカッシヴなイントロからドラマティックに展開していくスケールの大きい楽曲で、彼らにとっては2013年の「Demons」(最高位6位)以来、3曲目のトップ10ヒットになりました。今回のグラミーでは今ヒット中の「Thunder」が最優秀ポップ・デュオ/グループ部門、アルバム『Evolve』が最優秀ポップ・ボーカル・アルバム部門にノミネートされていて、ロック系メインストリーム・アーティストとしての存在感を示してます

この曲は彼ららしく、2月に43位で初登場後ランクダウンとランクアップを繰り返して、チャートイン21週目でやっとトップ10入り、そこから7週かけて最高位4位にたどり着いたというロングヒット。オルタナティヴ・チャートでも、4月から6月にかけて通算13週1位を記録2017年を代表するロックヒットの一つになりました。

今回もグラミーでスケールの大きいパフォーマンスを見せてくれるのではと個人的には期待大ですわ。




9. Congratulations ▲5 - Post Malone Featuring Quavo

(Hot 100 - 45週、Top 40 - 41週、Top 10 - 6週)

2017.7.8-15付 最高位8位)


Post Malone Congratulations


これまでもミゴスリル・ウジ・ヴァートなど数々の新世代のヒップホップ・アーティストを紹介してきましたが、年間9位に入ったのもそうした新世代のヒップホップ・アクトながらちょっとユニークなキャラを持ったポスト・マローンことオースティン・リチャード・ポスト君、22歳。白人ラッパーのポスト・マローンは、ヒップホップだけでなくフォークやR&B、果てはエレクトロっぽいサウンドも駆使しながら、ラップと歌を行ったり来たりするというハイブリッドな感じの奴で、90年代にブレイクしたキッド・ロックエヴァーラストといった連中の系譜を汲みながら今風に発展したスタイルのアーティストということになるかと

去年1月にNBA往年のスター、アレン・アイヴァーソン選手へのトリビュートを込めた「White Iverson」が、サウンドクラウドとYouTubeで人気を集めて初のヒット(最高位14位)となり、ポスト・マローンの存在をシーンとファンに印象づけた。昨年末にリリースされたこの「Congratulations」はやはり今年大きくブレイクしたトラップ・デュオ、ミゴスの片割れクエイヴォをフィーチャーしたよりトラップ寄りのサウンドの曲ながらドリーミーなサウンドが魅力で、折からのトラップ勢の盛り上がりにシンクロするようにヒットして彼にとって初のトップ10ヒットに。しかもこの後リリースした、これも若手ラッパーの21サヴェージをフィーチャーした「Rockstar」はとうとうHot 100に2位初登場、4週後に1位を獲得して今週現在6週目の1位を付けている、来年の年間チャートでは上位に入って来そうなヒットになってます。あっという間にトップに駆け上がった感のあるポスト・マローン、今年のグラミー新人賞部門にはノミネートされなかったものの、ただのハードコア、トラップ・ラッパーでないので若者を中心により広いリスナー層を確保してると思われ、今後もしばらくは快進撃が続くかな、と見てます。





8. Something Just Like This ▲ - The Chainsmokers & Coldplay

(Hot 100 - 38週、Top 40 - 36週、Top 10 - 17週、Top 5 - 4週)

(2017.4.15付 最高位3位)


Chainsmokers Coldplay Something Just Like this


今やポップ・EDMシーンの代表選手的なイメージにのし上がった感のあるチェインスモーカーズ。2015年にローゼズをフィーチャーした「Roses」(最高位6位)の大ヒットでブレークした頃は無名女性ボーカリストをフィーチャーして相乗効果でヒットを飛ばす、というフォーミュラで「Don't Let Me Down」(フィーチャリング・デイヤ、2016年最高位3位)、「Closer」(フィーチャリング・ホルジー、同年12週1位)とヒットを立て続けに飛ばしてたけど、今年に入って彼らだけのクレジットの「Paris」(6位)の後にドロップした大ヒットが、何とあのコールドプレイとコラボったこの曲。

これが前回の「Closer」同様、ダンス・トラック・チャートで通算24週1位をマークするという、2017年のEDMを代表する大ヒット。まあコールドプレイとの組み合わせだとリスナー層の拡大相乗効果もかなりあったんだろうなあ、って感じ。ただし彼らは毎回グラミーではあまり評価されておらず、今回のノミネートでもこの曲が最優秀ポップ・デュオ/グループ部門でノミネートされているのみ。まあこれだけヒット曲続けて出せればライヴでもかなりもうけたと思うし御の字でしょう。





7. Body Like A Back Road ▲4 - Sam Hunt

(Hot 100 - 41週、Top 40 - 38週、Top 10 - 8週)

(2017.4.22付 最高位6位)

Sam Hunt Body Like A Back Road


間違いなく2017年のチャート関係の10大ニュースの一つとして特筆されるのは、サム・ハントのこの曲のホット・カントリー・ソング・チャートでの34週1位という、2013年フロリダ・ジョージア・ラインの「Cruise」の24週を遙かに上回る長期政権記録を達成したこと。これまでも「Leave The Night On」(2014年最高位30位)「Take Your Time」(2015年20位)「House Party」(同26位)の3曲のカントリー#1シングルを積み上げてきたサムが、ここに来て一気に大躍進した格好Hot 100でのトップ10ヒットもこれが始めてで、カントリー特区から全国区に躍進をこの曲で果たしたわけです。

彼のスタイルはいわゆる伝統的なカントリーだけではなく、R.ケリージニュワイン、アッシャーにも影響を受けたと自認しているように、R&B的な歌唱スタイルや楽曲要素に特徴がある当たりが、カントリーだけでないリスナーを掴んでいる要因なんでしょう。当然のごとく今回のグラミーでは最優秀カントリー・ソング、最優秀カントリー・ソロ部門に堂々のノミネート、強力な受賞候補の一角を占めてます。





6. Say You Won't Let Go ▲2 - James Arthur

(Hot 100 - 49週、Top 40 - 39週)

(2017.6.3 & 24付 最高位11位)


James Arthur Say You Wont Let Go


10位から6位までは、11位~20位と趣が異なりヒップホップ以外のいろんなジャンルが登場してるので、比較的今回のアップは楽しんで読んで頂けてるでしょうか(笑)

さて最高位11位ながら、Hot 100 49週という長期に亘るヒットで、年間予想6位に入って来たのは、UKのアメ・アド「X-Factor」の2013年チャンピオン、ジェイムス・アーサー。その人の良さそうなルックスとは裏腹に上半身を覆うタトゥーと、アコギを主体とした自作のトルバドゥール・スタイルの楽曲から「もう一人のエド・シーラン」的なイメージのジェイムス君、この曲もそういったスタイルの心にしみるバラード曲で、本国UKでは去年の9月から10月にかけて3週間No.1と大ヒットしたのが今年になってUSでもヒットとなったもの。

最初はUSでは無名だったこともあってか、Hot 100には去年11月に100位初登場。そこから33週かけてジワジワと上昇して最高位を付けたイマジン・ドラゴンズの向こうを張るロングヒットとなり、年間のこの順位まで着けました。こういうヒットだったらグラミーでもポップ部門とかにノミネートされてもよさそうなんだけど、何故かノミネートからは外れてます。でも2017年を代表する渋いヒット、もっと多くの人に聴いて欲しいなあ、と思うのは僕だけか。





さてあといよいよ5曲。今週末までには年間チャート予想をコンプリートしたいと思ってます。お楽しみに。

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【年末恒例企画#1】ビルボードHot 100年間チャート予想(Part 2、15-11位)

【年末恒例企画#1】ビルボードHot 100年間チャート予想(Part 2、15-11位)


年間チャート予想、11位までを今日はカウントダウンします。では15位。


15. Unforgettable ▲4 - French Montana Featuring Swae Lee

(Hot 100 - 31週、Top 40 - 27週、Top 10 - 16週、Top 5 - 4週)

2017.8.19-26付 最高位3位)

French Montana Unforgettable


このフレンチ・モンタナことカリーム・カーバウチ(ステージネームはモロッコ移民系でフランス語話せるので)、今時のラッパーのパターン通り、数多くのミックステープのリリースを通じてマイアミ・ラップシーンのドン、リック・ロスP.ディディバッド・ボーイなどに見いだされて、2013年にアルバム『Excuse My French』(英語で汚い言葉を使う前に断りで言う決まり文句w)と、リック・ロス、ドレイク、リル・ウェインをフィーチャーした「Pop That」(最高位36位)でブレイクした、ここ数年でグンと伸してきた、ブロンクス出のイースト・サイド・ラップの流れを汲む正統派のラッパー(トラップではない)。

ここに来るまでは「Pop That」以来シーンではかなりビッグになってたけど、メインストリーム・アクト、という感じではなかったが、今回のスウェイ・リー(これもここ数年で一気にビッグになったミシシッピ州テュペロ出身のヒップホップ・デュオ、レイ・シュリマードの片割れ)を全面的にボーカルにフィーチャーしたこの「Unforgettable」で一気にブレイクした感じ。確かに2パックとかにも通じるストイックなラップ・スタイルの「Pop That」や「No Shopping」(2016年最高位36位)に比べるとちょっとDJプレミアを思わせるトラックや、歌が前面に出てる楽曲構成といい、ぐっとメインストリーム感が増したのは事実アデルエイミー・ワインハウス、ラナ・デル・レイとかが好きだというレンチ、これに合わせてリリースした2枚目のメジャーアルバム『Jungle Rules』も好調に全米3位ということで今後はメインストリーム路線を突っ走るんだろうなあ。ラップのセンスとか、トラックの感じが大分洗練されてきているので今後に期待。





14. Location ▲3 - Khalid

(Hot 100 - 43週、Top 40 - 31週)

2017.5.13付 最高位16位)


Khalid Location


と、ここまで見てきて「なーんかやっぱ最近のヒットってラップばっかりなんだ。やだなあ」と思ってたあなた、ご安心下さい。ちゃんとラップ以外の曲もヒットしてますから(笑)。ということで2017年話題のテキサス出身の新人R&Bシンガー、カリード君の登場です。若干19歳にしてその歌唱表現力と独特の歌声、そして自ら書く楽曲とサウンドはどこかあのジェイムス・ブレイクを彷彿とさせる異次元感というかドリーミー感が漂う、個性満点ながら聴く者の心を休ませてくれる、そんなシンガー。

自身も今時の若者らしく、ケンドリック・ラマーチャンス・ザ・ラッパー、フランク・オーシャンが好きという一方、その当のジェイムス・ブレイクファーザー・ジョン・ミスティ(元フリート・フォクシズのメンバーでフォーク・オルタナティヴ・ロックのアーティスト)の影響を受けた、と言ってるあたりただの19歳のアフリカン・アメリカンじゃないなあ、と感じさせる。このデビューヒット「Location」もそんな魅力がアピールしたのか、最高位16位にもかかわらず、Hot 100に43週も居座るロング・ヒットとなって年間でもこの位置に。デビューアルバム『American Teen』も全米チャート4位初登場、R&Bアルバムチャートでも通算9週間1位を記録するなど、グラミー賞新人賞部門だけでなく、R&Bアルバム部門でもかなりの本命になるんじゃないか、と見てます。今後のR&Bを担うこと間違いなしの大型新人、要注目ですぞ。




13. 24K Magic ▲4 - Bruno Mars

(Hot 100 - 36週、Top 40 - 32週、Top 10 - 10週、Top 5 - 7週)

(2016.12.10 & 24-2017.1.7付 最高位4位)

Bruno Mars 24k magic


さあブルーノファンの皆様、お待たせしました。ちょうど去年の今頃リリースされたニューアルバムからシングル・カットされて、中年以上のポップ、R&Bファンの皆さんに愛されていたこの「24K Magic」もちゃんと年間チャート上位に入って来ています。マーク・ロンソンの「Uptown Funk」のメガヒットで80年代R&B/ファンク・サウンドで当てた路線を踏襲しているサウンド(でもプロデュースは自らのチーム、スミージングトン改めシャンプー・プレス&カールによるものでマークは入っていない)でヒットを拾いに来たのがこの曲。「Uptown Funk」に比べて今回はよりザップジャーを思わせるボコーダーと、よりダウン・トゥ・アースなファンキー・グルーヴを強調してるのが違いだけど、同じ路線でこの当たりのサウンドに思わず体が動いてしまう、80年代R&Bラヴァーのファンをガッチリ掴んでるなあ。僕も捕まれたもん(笑)。これか、この後出てくる今年のもう一曲の大ヒット「That's What I Like」のどちらかはおそらくグラミーレコード・オブ・ジ・イヤー部門には間違いなくノミネートされるだろうね。2年前のグラミーで「Uptown Funk」でROY取ったのを再現するか、見物ですね。




12. Black Beatles ▲4 - Rae Sremmurd Featuring Gucci Mane

(Hot 100 - 18週、Top 40 - 18週、Top 10 - 12週、Top 5 - 10週)

(2016.11.26-12/31 & 2017/1/14付 7週1位)

Rae Sremmurd Black Beatles


さて、先ほどフレンチ・モンタナのところで片割れのスウェイ・リーがフィーチャーされてたというので名前が出てきたヒップホップ・デュオのレイ・シュリマード。2014年に今や売れっ子のヒップホップ・プロデューサー、マイク・ウィル・メイド・イット(本名マイケル・レン・ウィリアムス)の肝いりで出したシングル「No Flex Zone!!」(最高位36位)、「No Type」(16位)、「Throw Sum Mo」(30位)の立て続けのヒットでヒップホップ・シーンに旋風のように登場、アルバム『SremmLife』も初登場5位と一気にスターダムに駆け上がったスウェイ・リースリム・ジミの兄弟デュオが完全に化けたのがこの不遜とも思えるタイトルの「Black Beatles」。アトランタ出身のこちらも最近ノリに乗ってるラッパー、グッチ・メインをフィーチャーしたこのナンバーは、トラックもラップ自体もそんなにヒット性が高いような強烈さはないけど、この曲がリリースされると同時にYouTubeを中心にこの曲をバックトラックにして、いろんな人々がマネキンのようにフリーズしている様子を録った動画がネット上でヴァイラル状態になったことで爆発的なヒットになったという、ネット時代ならではのヒット曲なのです。一般人のみならず、NFLの選手やマンチェスター・ユナイテッドのサッカー選手などがこのブームに乗った動画をアップするなどするうちに7週間1位という、2017年では3番目の長期政権のNo.1ヒットになったこの曲、正直個人的にはレイ・シュリマードというアーティスト自体もあんまり面白いとは思わないんですよねえ。まあ時代の徒花的なグループであり、ヒットなのかなあと。この後「Swang」(最高位26位)のヒットは出てるけど、この調子を持続できるのか、またソロアルバム発表をアナウンスしているスウェイ・リーのソロ作がどの程度売れるのかにかかってる部分は大きいような気が。いろんな意味で2017年の全米ヒット・シーンを象徴する曲だったような気がします





11. Humble. - Kendrick Lamar

(Hot 100 - 32週、Top 40 - 30週、Top 10 - 15週、Top 5 - 11週)

(2016.5.6付 1週1位)

Kendrick Lamar Humble


一方、ヒップホップ・シーンで盤石の存在感を維持しているケンドリック・ラマー。2 年前のグラミーで惜しくもテイラーの『1989』に受賞は譲ったものの、21世紀のヒップホップを代表する作品『To Pimp A Butterfly』 がアルバム部門にノミネートされ、余裕でラップ・アルバム部門を受賞して以来、満を持してリリースされた『DAMN.』は前作からスタイルを大きく変えて、社会性やメッセージから離れたパーソナルでよりラップ自体にこだわった作品になってて、またそのレベルが高いのに唸ってしまった、そんな作品だったと思う。U2リアーナなど広いゲストをフィーチャーしたこのアルバムの中でこの「Humble.」が特に突出したトラックとは思わないけど、彼のラップスキルを強調したトラックという意味では強力なトラックで、Hot 100で初登場2位、翌週3位にブルーノの「That's What I Like」に押されて3位に後退したものの、その翌週見事に初の1位をゲット。前作に比べてストイックな作風のため、グラミーのアルバム部門のノミネートは微妙なところだけど、ラップ部門ではドレイクと最優秀アルバム部門を争うのは間違いないところ。カマシ・ワシントン、サンダーキャット、テラス・マーティンなど自分を中心としたミュージシャンのサークルをどんどん広げていることといい、やっぱこの男は凄いですわ。





ということで次回はいよいよトップ10予想、行きますのでお楽しみに。

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#108「Let's Face It」Mighty Mighty Bosstones (1997)

#108Let's Face ItMighty Mighty Bosstones (Mercury, 1997)


いよいよ11月も最終週、USはサンクスギヴィングホリデーも終わって、今週末からは12月に突入、この後はクリスマスそして年末年始と怒濤の季節に向かってまっしぐら。皆さんも何かと忙しい毎日が続くでしょうが、いい音楽には耳を傾けて、そして体調に気を付けて、楽しい年末年始を迎えられるよう、この時期乗り切って下さい。


先週はラナ・デル・レイのやや重めの作品をお届けした「新旧お宝アルバム!」、今週はまったく正反対のあっけらかんに楽しんで、乗れて、理屈抜きに盛り上がれる、そんなアルバムをご紹介。90年代に何故か突然リバイバル的に盛り上がって、ある意味エモやパンクのサブジャンル的に位置づけられて、数々のバンドが登場したスカコアというジャンルを覚えていますか?70年代後半もパンクが登場する中、それに対応する形でスペシャルズマッドネスセレクターなどというUKの2トーン・レーベルから多くのバンドを輩出したスカというジャンル、90年代のリバイバルの時はスカ・コアというジャンルの下、多くのUSバンドが出てきたのが特徴的でした。その90年代のスカコア・シーンの先鞭を付けたともされる、ボストン出身のマイティ・マイティ・ボストーンズのメジャーブレイク作となったアルバム『Let's Face It』(1997)をご紹介します。


Lets Face It


スカという音楽ジャンルはもともとジャマイカ発祥で、レゲエが独特のリズム・パターンで世界的に有名になったのに対して、スカはそれに類似のリズムに西洋のR&Bやジャズの要素を取り入れながら、2拍目と4拍目を強調した独特のスタイルのもの。70年代末の2トーン・スカも、90年代のスカコアも、いずれもこれをベースにしながらハードコア・パンクあたりのひたすら疾走感溢れる楽曲にホーンセクションを加えて(90年代スカコアではギター・サウンドも多く用いられる点がよりパンクやエモに近い)独特の異国的な雰囲気とロックが融合したような魅力を醸し出しているのが特徴。


今日ご紹介するマイティ・マイティ・ボストーンズは、1983年にボストンでリード・ボーカルのディッキー・バセットとベースのジョー・ジトルマン(この二人でほとんどの曲を書いている)を中心に結成された97年当時はサックスやトロンボーンを含めた8人組。

MightyMightyBosstones.jpg


何と言ってもこのアルバムの信条は「速く、楽しく、そして短く」(笑)。全12曲でわずか34分、一曲平均3分以下という潔さ。そしてそれぞれの曲がポップなフックが最高なスカ・ロックだったり、もろパンクっぽい曲だったり、ハードコア・エモだったり、時々スカのリズムがどっか飛んでいってしまうのはご愛敬ですが、いずれもバンドがノリノリで演奏して、こりゃあライヴでも観に行ったら最初から最後までタテ乗りのリズムで体が動きまくってしまうこと請け合いのアルバムです。

そして注目はバンドメンバーのファッション。PVなどを見ると余計明らかに分かりますが、このジャンルの出自であるジャマイカのスカをはやらせたルードボーイ達(地方からキングストンに集まってゲットーに住んだ若年貧困層)が、昔クラブで身を包んでいたクールなファッションを纏ってプレイ。聴いている者、見ている者の気分をその昔のジャマイカのクラブに連れて行ってくれます



のっけの「Noise Brigade」からリスナーを煽るかのようなスネアとホーンセクション、跳ねるベースライン、そしてジェットコースターのようなスピードでスカのリズムが刻まれる高揚感。続く「The Rascal King」は当時MTVで結構パワープレイだった、個人的にも本作で最も好きなナンバーですが、こちらも潔いホーンから一気にスカのリズムに突入、さびのコーラスがキャッチーでしばらく耳から離れないこと請け合いです。ちょっとダブっぽい処理も入ったややレイドバックしたビートの「Royal Oil」に続いての「The Impression That I Get」は彼らの人気がブレイクするきっかけとなった当時のエアプレイ・ヒット。イントロのジャンプするようなギターのリフからホーンセクション、そしてスカのリズムを刻むギターに乗って野郎どもの大合唱のコーラスというこのスカコアのアンセムといってもいいナンバーです。



アルバムタイトル曲の「Let's Face It」まではこうした絵に描いたようなスカコアの魅力たっぷりのナンバーが続きますが、アルバム後半はそうしたスカコアずばりのナンバーに混じって「That Bug Bit Me」、「Nevermind Me」、「Descensitized」といったギターのコードストロークを前面に押し出してスカコアリズムがあまり感じられない正にパンクかエモか、といったナンバーや「Numbered Days」や「Break So Easy」のように、スカコアとパンクのハイブリッドのような(リズムは普通の4ビートだがホーンの入りかたがスカコア風など)楽曲が登場して、単にスカコア一辺倒の単細胞バンドでもないよ、とでもいいたげなプロダクションが微笑ましいところです。

Lets Face It (back)


こんな一見ワンパターンに陥りやすそうなスタイルのマイティ・マイティ・ボストーンズですが、あのマッドネスだって未だに現役でやっているように(昨年の来日ライヴは素晴らしいものでした)、2003年から2007年の間にバンド活動を休止した他は、現在も元気にライヴもこなし、アルバムもこの作品以降も2011年の『The Magic Of Youth』まで9枚リリースしているという現役感満点ぶりです。またボストン地区の若いバンドのサポートにも熱心で、このアルバムでブレイクする前の1994年からボストンのケンブリッジ地区で「ホームタウン・スロウダウン・フェスティヴァル」のホストとしてこのフェスを開催し続けていて、今年も12月28日~30日の日程での開催が予定されているというから感心します。


年末忘年会やパーティが多い季節。ダンスフロア・クラシックやヒップホップ・チューンだけでなく、こういうスカコアの楽しいナンバーなんかに合わせて楽しく踊る、なんてのもなかなか盛り上がっていいかもしれません。それだけでなく、単純に楽しめるビート満点の音楽を求める方にはこのバンド、このアルバム、お勧めですよ。


<チャートデータ> 

RIAA(全米レコード産業協会)認定 プラチナ・アルバム(100万枚売上)

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位27位(1997.7.12付)

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【年末恒例企画#1】ビルボードHot 100年間チャート予想(Part 1、20-16位)

【年末恒例企画#1】ビルボードHot 100年間チャート予想(Part 1、20-16位)


さて勝手に銘打った【年末恒例企画】シリーズ、これから年末~年始にかけてこの時期に関係した企画でブログをお送りします。だいたい毎年やってることなんですが、その年の気分によってやらなかったりすることも多く、唯一ここ10年以上ちゃんと毎年やってるのはグラミー賞予想授賞式生ブログくらいなんですが、ちょっと今年はいろいろやってみようかな、と思って銘打った次第。途中で挫折するかもしれませんが(笑)まあそれもご愛敬と。


で、第一弾は「Hot 100年間チャート予想」。この予想自体は1999年から程度のばらつきは別にしてずっとやっていて今年で19年目という個人的年末恒例儀式みたいなもんでして。数年前まではチャートファンにはお馴染みのCD通販ショップ「あめりかんぱい」さんが懸賞形式で予想を募っていて、当たるとストア・クレジットを頂いたりしてたんですが、それももうなくなってしばらく経ちます。だからといってこの予想やめるのもつまんないし、その年その年の流行り歌の総決算、と言う観点では意義あるということで今年もやってみました。


今年の流行り歌といえば、久しぶりに最長ナンバーワン記録に並んで、かつ外国語によるナンバーワンヒットということでいうとあの1996年の「Macarena」以来ということで話題を集めた「Despacito」やブルーノ・マーズ、エド・シーランらの常連組の大ヒット、そして今年はロック系やらEDM系やら今風R&B系やらヒップホップ・トラップ系の新人達がビッグヒットを飛ばしたりと百花繚乱の趣がありました。まあ個人的に今後も長く聴いていきたいなと思う曲が多かったかどうかは別にして、いくつか注目に値すべき楽曲、アーティストの台頭があり、まだまだ流行り歌、チャートものから目が離せないな、というのが概観。


このブログでは自分がチャート順位等を元に独自の集計方法で集計して予想したトップ20を20位からカウントダウンしていって、それぞれちょこっとずとコメントしていく、ということでお届けしようと思います。ではさっそく2017年年間20位。


20. Stay ▲2 - Zedd & Alessia Cara

(Hot 100 - 31週、Top 40 - 28週、Top 10 - 8週)

2017.5.6 & 6/10-17付 最高位7位


Zedd Alessia Cara 

昨年前半に「Here」(最高位5位)という素晴らしいデビューヒットを、そして年末にかけては「Scars To Your Beautiful」(最高位8位、今年の年間予想でも25位)と2曲のスマッシュヒットを放ちながら、グラミー賞の最優秀新人賞部門からは完璧にシカトされてしまっていた可哀想なアレッシア・カラ嬢。彼女は個人的にはアデルエイミー・ワインハウスの流れを汲む、素晴らしくソウルフルな歌唱ができる逸材だと思っているのでこれには驚いたもんです。その彼女が今デケイドもっともイケているEDM系DJの一人、ロシア系ドイツ人のゼッドと組んで放ったヒットがこの「Stay」。彼女の特徴ある歌声がゼッドの作るちょっと民族的な雰囲気のあるトラックにマッチして、かなり耳残りのいいキャッチーなヒット曲になりました。

アレッシアはこの他にも今年はディズニー映画「モアナ」の主題歌「How Far I'll Go」をカバーして小ヒットにしたり、この秋に話題となったジックのヒット「1-800-273-8255」(自殺相談ラインの電話番号をタイトルにした話題曲、今年の年間予想で35位)に同じく歌声に強い個性のあるカリードと共にフィーチャーされたりと堅実な活動を続けているだけに、この曲くらい今年のグラミーのどっかにノミネートされて欲しいものです。





19. Bodak Yellow (Money Moves) ● - Cardi B

(Hot 100 - 19週、Top 40 - 16週、Top 10 - 14週、Top 5 - 13週)

2017.10.7-21付 3週1位


Cardi_B_-_Bodak_Yellow.jpg


出たな~(笑)という感じでだるそーにラップしながら最初数秒で「f**k」ワードが飛び出してくるといういい意味でも悪い意味でもNYはブロンクス出身の今風女性ラッパー、カーディBことベルカリス・アルマンザー嬢のデビューヒットがこの曲で、秋に嵐のように1位に飛び込んできたテイラーの新曲を蹴落として1位に。

スタイルとしてはリル・キムあたりの流れを汲む派手派手セレブ系ビヤッチ・ラッパーなのだけど、インスタでフォロワーを増やしてセレブ・ステイタスを獲得したり、VH1のヒップホップ番組のキャスト・メンバーになったことをきっかけに天下のアトランティッと契約してこの曲のヒットにつなげたりと、スターパワーは満点のよう。さっそく他のラッパー達とコラボしたヒットを飛ばしたりと最近のメインストリームヒップホップの一つのトレンドである「複数のラッパーが組んで大ヒットを飛ばす」パターンにうまく乗っている感じ。彼女も今年のグラミー賞ラップ部門の台風の目の一つになっていいレベルだとは思うけど、いかんせん今年のラップ部門はケンドリック・ラマー、ドレイクを筆頭にジェイZ、フューチャーなどメガトン級の混戦模様なのでノミネートも厳しいかもね。





18. Mask Off ▲4 - Future

(Hot 100 - 31週、Top 40 - 26週、Top 10 - 12週、Top 5 - 2週)

2017.5.6-13付 最高位5位


Future Mask Off


そのラップ部門のグラミー戦線の一角を占めるだろうフューチャーの5枚目のアルバム『FUTURE』からの先行シングルがこの「Mask Off」。ここ数年ラップの一つのサブジャンルになっているアトランタあたりを発祥とする「トラップ」の代表選手的なアーティストがこのフューチャーで、とにかくここ2~3年は怒濤の勢い。きっかけは2015年の3作目のアルバム『DS2』が初の1位獲得、同じ年にドレイクとのコラボアルバム『What A Time To Be Alive』も同じく1位獲得、そのシーンでのポジションを盤石にしたこと。それから出すアルバム全部1位で、今年に至ってはこの曲の入った『FUTURE』と『HNDRXX』(ロックファンはん?と思うと思うけどジミヘンは関係ないらしい)を2週連続でリリース、見事2週連続アルバムチャート初登場1位という怪記録を樹立してる。

この曲も典型的なトラップのパターンで、不吉なシンセやキーボードの音色をバックにゆったりしたフロウで、チキチキハイハットや複雑パターンのスネアをアクセントにした楽曲。トラップって普通は陰気なトラックが多いけど、この曲は比較的トラップにしちゃ「明るい」(笑)のがヒットの要因の一つかも。この曲、オリジナルバージョンの他にケンドリック・ラマーをフィーチャーしたリミックス盤、こちらも新進のラッパー、マシュメロをフィーチャーしたバージョンなどいろいろリミックスが出てて、そういう意味でも期待されたリリースだったんだなあ、という感じ。本人ハイチ移民の子だから、と言うわけでもないだろうけど他のラッパー達ですら「何を言ってるかよく分からん」(笑)というフューチャー節は健在で、聴いてても「F**k you Mask Off」以外ははっきり聴き取れないのが凄い(何が凄いかよーわからん)。まあ何にしても今の流行りのラップはこれ、とうちの息子もゆーとりますので。





17. I'm The One ▲5 - DJ Khaled Featuring Justin Bieber, Quavo, Chance The Rapper & Lil Wayne

(Hot 100 - 22週、Top 40 - 21週、Top 10 - 15週、Top 5 - 13週)

(2017.5.20付 1週1位

DJ Khaled Im The One


その「複数のラッパーで目指せ大ヒット」の今年の典型的なパターンがこの曲。DJキャレドってもともとDJだからたーくさんラッパーをフィーチャーしてのヒット(というかソロでのヒットはあり得ない)が従来から多かったのだけど、今回は今年の話題のトラップ・トリオ、ミゴスクエイヴォ、去年グラミー賞ラップ・アルバム部門をフィジカル(CDやレコード)リリースなしでかっさらって話題を呼んだチャンス・ザ・ラッパー、今や大御所感漂うリル・ウェインに加えて、今年は「Despacito」にもフィーチャーされた途端に「Despacito」を1位に押し上げた「2017年ポップ界のマイダス王」ことジャスティン・ビーバーまでフィーチャーして、この曲で見事初登場1位を獲得

曲はジャスティンのボーカルがいきなり出てきてそれだけでもリスナーの食いつきが良さそうなスローEDM風トラックで、まあ今の売れ線のおいしいところを上手に使ってこれだったら今の若い衆には受けるよなあ、という出来。

ちなみにDJキャレドは2011年にやはりリル・ウェインをフィーチャーした「I'm On One」という全米最高位10位のヒット(今回はそれ以来のトップ10ヒット)があるが、全く別の曲なので間違いのなきよう(笑)




16. XO TOUR Llif3 ▲4 - Lil Uzi Vert

(Hot 100 - 33週、Top 40 - 30週、Top 10 - 10週)

(2017.6.24付 最高位7位

Lil Uzi Vert XO Tour Lilf3


このリル・ウジ・ヴァートことサイミア・ウッズ君も、ここ数年のトラップ・ブームの中から出てきた若手のフィラデルフィア出身のラッパー。スタイルとしては発声もエフェクタを通したように少し割れ気味の声でラップし、バックのトラックもシンセをバックにチキチキリズムでゆっくり目に(時々早口で)ラップする、と言う意味ではトラップ・ラッパーなんだけど、ミゴスフューチャーとかに比べると何だかあっけらかんとしていて「ネアカ・トラップ」とでも言うべきスタイルなのが受けてるのかな。アルバムジャケとか可愛らしいイラストだったりして、いわゆるトラップやヒップホップ・アーティストにある「ヤバイ感」が結構希薄だったりするのが面白い。こいつも最初に音を聴いたのは、ヒップホップ・ヘッズのうちの息子が「これ最近ヤバイよ」といって聴かせてくれたということで最近この手の情報源としては重宝してます。

今時のヒップホップ・アーティストならではの、まずはミックステープでファンを掴んで、その後メジャーと契約してアルバム・シングルでドン!とブレイクする、というパターンをそのまま行ってこの1年ほどでビッグになったLUV、今年はそのミゴスとコラボした「Bad And Boujee」という特大のナンバーワンヒットがあったがそれが年間予想で何位に入っているかはこの後のお楽しみということで。





まだまだ続く年間チャート予想、お楽しみに。

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#107「Lust For Life」Lana Del Rey (2017)

 #107Lust For LifeLana Del Rey (Polydor / Interscope, 2017)


MLBワールドシリーズもアストロズの感動的な優勝で幕を閉じ、街角に北風が吹き始めて気候も晩秋から初冬の雰囲気が日々強まっていますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。12月ももう目の前、年間チャートの予想や年間アルバムの選定、そしてグラミー賞各部門予想と、自分のブログもいろいろと忙しくなる時期でこの時期になると「ああもう年末も近いなあ」ということになるのですが、今年は仕事の方が年末ギリギリまで気が抜けない状況なので、本当に年末にならないと年末感が出てこないのでは、と戦々恐々としているこの頃です。


さて先週お休みしてしまった今週の「新旧お宝アルバム!」は、自分が選ぶ今年の年間アルバムのランキングにもそれなりのポジションに入れることになるのでは、と思っている、最近のアメリカ音楽シーンで「バロック・ポップ」だとか「ハリウッド・サッドコア」だとか言われ、独特のイメージとカリスマティックな存在感を見せている女性オルタナ・シンガーソングライター、ラナ・デル・レイから届けられたフル・アルバムとしては5枚目の作品『Lust For Life』(2017)をお届けします。


Lust For Life


ラナ・デル・レイ。不思議にラテンの響きのあるステージネームとは裏腹に、ダークでドリーミーかつ何となく不安感を誘うような音響系の音像を持つ楽曲に、時折禁忌用語も交えてドラッグや金や危険で破滅的な男たちとの男女関係などを歌うギャングスタで危ない歌詞を乗せ、そのクールで50年代アメリカーナ的なキッチュさを湛える美貌で(ちなみにラナ1985年生)、ある時は呟くように、ある時はファンタジー中の歌姫のように歌う女性シンガーソングライター。2011年にセカンド『Born To Die』でセンセーショナルにブレーク以来、そのアンバランスな楽曲の魅力やモデルもやる美貌とのギャップに完全にヤラれてしまった音楽ファンは少なくないでしょう。

Lust For Life (Insert)

今回の新作『Lust For Life』(情欲は一生ものイギー・ポップにも同名タイトルのアルバムがありました)はタイトルからしてそういうラナの世界全開なのだけど、最近ある方が「今回はジャケでニッコリ笑ってるのが変だ。作風が変わったのか」と仰っておられ、確かにこれまでは『Born To Die』も、その次の『Ultraviolence(2014)や前作の『Honeymoon(2015)も、ジャケのラナは無表情でニコリともしてなかったので、今回のジャケはいつもと違うと言えば確かにその通り。

しかし今回のラナは従来の作風を変えないばかりか、ヒップホップへの接近を強めたり、これまであまり無かった個性派アーティスト達との共演などで更に自分のゴシックな音像世界をレベルアップしているように聞こえるので、ジャケの笑顔の不自然さは逆に彼女の自信、と解釈すべきなのかも。



アルバムの先行シングルとしてリリースされた冒頭の「Love」は正にそのラナ・ワールド全開の作品。低音のエレクトロベースサウンドをバックにスローモーションのモノクロ映画の場面を想起させ、夢の中から歌いかけてくるようなドラマチックなラナの歌声で既に聴く者は彼女の世界の中に。呟くようなラナのラップで始まるタイトルナンバー「Lust For Life」はザ・ウィークンドのファルセットコーラスを従えそのドリーミーさにフィル・スペクター的なプロダクションで拍車をかけ、「13 Beaches」ではフランク・オーシャンに代表される最近の音響派R&Bを彷彿させるヒップホップの影響を仄かに感じさせたりと、ドリーミーな音像と催眠的なボーカルがラナ・ワールドが炸裂する導入部を構成している。



しかしこの楽曲の流れは6曲目の「Summer Bummer」で大きくヒップホップへの接近を見せてまた一段と新しいレベルへ。この曲はドレイクらとの仕事で知られるボイ・1ことマシュー・サミュエルズをプロデュースに迎え、今NYで一番のラッパー、エイサップ・ロッキーとその舎弟で今売出し中のアトランタ出身のラッパー、プレイボイ・カーティをフィーチャーした、クレジットだけ見ると今時よくあるポップスター・フィーチャリング・ラップってな感じ。ところがラナの場合、サウンドも楽曲も、ラップの役割も完全に彼女のコントロール下に収めていてエイサップの存在感あるフロウが単なるラナのドリーミー・ゴシック・チューンの引き立て役になってるのが凄い。続く同じくエイサップをフィーチャーした「Groupie Love」では、ラナワールドに呑み込まれそうなエイサップ、いつ出て来るの?と思ってると残り1分半で何とか存在感を示すフロウをかます辺りは流石。でも最後エイサップ、ラナと一緒に「Groupie Love 」って歌っちゃってるし(笑)。



アルバム中盤は個性的な視点で曲を書くラナの面目躍如のトラックが満載。「Coachella - Woodstock In Mind」は今年4月にラナがカリフォルニア郊外のロックフェス、コーチェラ出演中に、米国海軍が日本海に航空母艦を配備したという誤報に端を発した、米朝間の急速な緊張悪化の報道を知ったラナが「少しでも世界平和が維持されるように」と、コーチェラウッドストックになぞらえて書いたという一曲。で、その楽曲スタイルはここのとこ流行りのトラップ・ヒップホップのチキチキハイハットとシンセとストリングスで織り成す不吉な音像世界に、ラナのいつものドリーミーでシネマティックなボーカルが乗ったというもの。

God Bless America - And All The Beautiful Women In It」はそのトラップの代表的プロデューサーで今売れっ子のメトロ・ブーミンことリーランド・ウェインプロデュースの、これがちっともトラップっぽくない完全ラナ・ワールド(笑)。そしてコーラスで「これは一時代の終わり?それともこれはアメリカの終焉なの?」と歌う「When The World Was At War We Kept Dancing」も、前出の「Coachella〜」同様、北朝鮮危機の最中にコーチェラのフェスで盛り上がっていた自分達を意識した、不吉でドヨーンとしたトラックをバックにラナが夢の中のように歌う、というこの辺りの楽曲には強い緊張感を感じる。



このアルバムのもう一つの聴きどころは、ヒップホップ以外の個性派アーティスト達との共演ぶり。いかにもな取り合わせのスティーヴィー・ニックスとのデュエット「Beautiful People Beautiful Problems」はこのアルバムで唯一普通のピアノで始まる美しいメロディと、この二人のペンによるのが納得できるにちょっとクセのあるサビが魅力的な曲。そして個人的にはこのアルバムで最も興味深かったショーン・レノンとのコラボ「Tomorrow Never Came」。この曲だけが唯一、ラナの手から楽曲のコントロールが離れてショーンの手に移っている感じが凄くして、そればかりかコード進行といい、メロディの感じといい、ビートルズ後期の香りを強烈に感じたのはちとうがち過ぎか。しかしショーンのボーカルが出てきた瞬間にジョンを思わせる存在感は凄いの一言。ここばかりは客演者がに勝っている瞬間だった。


アルバムはこの後何事もなかったかのようにラナ・ワールドの楽曲スタイルに戻り、「Heroin」「Change」そしてあの音像をバックに60年代ガールポップ風のメロディをラナがだるそうに歌う(笑)「Get Free」でエンディングを迎える。

Lust for Life (back)


つまるところこのアルバムは、これまで独自のカリスマティックで独特の音像世界による楽曲スタイル一本で来たラナが、ヒップホップやトラップ、更には他のアーティストとの共演共作など、今のメインストリームにもちょっと寄り添って見せているのだけど、楽曲についてのコントロールは一切渡さずショーンとの楽曲はその唯一の例外)自分の音世界、イマジャリーを更に一段進化させている、そんなアルバムに思える。

こうしたのスタイルが好きか嫌いかで、このアルバムに対する(というかラナ・デル・レイというアーティストに対する)評価は大きく分かれてしまうのだけど、特に奇抜なことをせずにそれでいて誰が聴いてもラナ独自の世界だということが分かるものを作り上げている、と言う意味では少なくとも一聴に値する作品だと思う。普通でないポップ・ミュージックが好きな方には是非お勧めです。


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位1位(2017.8.12付)

同全米オルタナティヴ・アルバム・チャート 最高位1位(2017.8.12付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#106「Moon Bathing」Lesley Duncan (1975)

 #106Moon BathingLesley Duncan (MCA, 1975)


台風の関係で雨続きだった10月も終わり、11月に入ってやっと秋らしい素晴らしい天気の日々が続いていますが、皆さんもアウトドアに、行楽に、そしてライブやレコードハンティングに活動レベルを上げていることでしょうね。そうこうしているうちに2017年も後残すところ2ヶ月。今月が終わるとビルボード誌の年間チャートの発表や、来年2月発表のグラミー賞ノミネーション発表と、にわかに音楽周りも慌ただしくなる季節。今年新たに巡り会ったアーティストや新譜の数々を振り返って、そろそろ2017年の総決算の準備をしようかな、と思い始めているところです。


さてそんな秋の深まりを感じる今日この頃、今週の「新旧お宝アルバム!」は正にそうした秋の雰囲気を強く感じさせるアーティスト、そしてアルバムをご紹介します。エルトン・ジョンの初期のアルバム『エルトン・ジョン3(Tumbleweed Connection)』(1970)に収録されたしみじみとしたアコースティックナンバー「Love Song」の作者として、そしてその曲をエルトンとデュエットしたことで当時注目を浴びた、イギリス出身の女性シンガーソングライター、レスリー・ダンカンの4枚目のアルバムになる、その名も秋らしく「月光浴」という『Moon Bathing』(1975)をご紹介します。


Moon Bathing 


レスリー・ダンカンという人は、上記の通り初期の自分のアルバムには基本自作または自分の共作曲しか収録しなかったエルトン・ジョンが数少ない例外として「Love Song」を収録、しかも共演までしたということで70年代前半に注目を浴びたシンガーソングライター。その後もUKロックシーンでバックボーカリストとしてその後もエルトン・ジョンの『マッドマン(Madman Across The Water)』(1971)、あのピンク・フロイドの名盤『狂気(The Dark Side Of The Moon)』(1973)の楽曲にも全面参加するなど、ミュージシャン達の間で大きなリスペクトを集めたアーティストです。

上品な佇まいの風貌のレスリーはこうした素晴らしいキャリアやミュージシャン仲間からのリスペクトにも関わらず、本人自身が華やかなスターダムを望まず、またかなりの舞台恐怖症だったらしく、英米で商業的な成功を収めるには残念ながら至っていません。

しかしその大人の雰囲気を湛えたボーカルや、UKのアーティストながらアメリカのマッスルショールズあたりのサウンドも彷彿させる魅力溢れるメロディや楽曲構成の作品で、今でも70年代以来活躍するミュージシャンや古くからの音楽ファンの間では確たる人気を博しているのです。



当時の夫のジミー・ホロウィッツのプロデュースによるこのアルバムの冒頭を飾るのは、ちょっと明るいローラ・ニーロあたりのナンバーや、70年代半ばのサザン・ソウルナンバーを彷彿させる軽快でリズミカルな「I Can See Where I'm Going」。軽快なカッティング・ギターを聞かせてくれるのは、このアルバム全面に参加している、あのUKを代表するセッション・ギタリスト、クリス・スペディング。続くジミーとの共作「Heaven Knows」はぐっとテンポダウンして、しっとりとしたしみじみ系のバラードナンバーで、クリス・スペディングのスライド・ギターをフィーチャーしたこの曲は正に秋深し、という言葉を想起させるナンバーです。次のタイトルナンバー「Moon Bathing」はレスリー自らマンドリン、そしてUKアーティストの作品には珍しくジム・ライアンのバンジョーをフィーチャーした、ちょっとブリティッシュ・トラッドの香りを感じさせながらスロー・ブルーグラス的ユニークな楽曲で、レスリーの作風の幅を感じさせます。

ビートルズの「You Won't See Me」などと同様にコードの根音が半音ずつ下がっていくメロディから、サビにかけてはいかにもUKポップ風の軽快なギターリフが楽しい「Rescue Me」、そしてジミーのピアノをメインにまたぐっとしっとりとしたバラードの「Lady Step Lightly」でアルバムのA面が終了します。



B面は、ゴスペル風のピアノの演奏に乗ってレスリーがメンフィス・ソウル風な歌唱を聴かせてくれるアップテンポな「Wooden Spoon」でスタート。後半の効果音やゴスペル風コーラスが楽しいナンバーです。次の「Pick Up The Phone」はエレピのイントロから抑えめのクリスのギターをがっちりR&B風のリズムセクションが固めるミディアムナンバー。ここでのレスリーのソフトでやや哀愁を湛えたボーカルが、秋を感じさせてくれます。

同じく抑えめの楽器アレンジの中にフルートやサックスの音色が心落ち着かせてくれる「Helpless」、レスリー自身とジム・ライアンのアコギのアルペジオと後半から入ってくるジミーのピアノだけというシンプルながら心にしみいる、これぞシンガーソングライター作品という感じの「Fine Friends」、トルバドゥール風のピアノから一気に時代を感じさせるディスコ・ビートっぽいアップテンポにそれこそ「飛び込んでいく」このアルバムでは異色なナンバー「Jump Right In The River」とレスリーのボーカルと楽曲を堪能できる作品が続いて、ラストはもう一曲のジミーとの共作曲「Rocking Chair」。ジミーのピアノをバックにレスリーがその柔らかなボーカルでしっとりと歌うバラードで、この素晴らしいアルバムのフィナーレを飾ります。



レスリーはこの後5枚目のアルバム『Maybe It's Lost』(1977)をリリースした後、『狂気』のエンジニアだったアラン・パーソンズとの縁で、アラン・パーソンズ・プロジェクトのアルバム『イヴの肖像(Eve)』(1979)に参加、「If I Could Change Your Mind」のリード・ボーカルを取ったのを最後に、音楽業界からは引退してしまいました。最初の夫ジミーと離婚後、1978年に音楽プロデューサー、トニー・コックスと再婚し、スコットランドのマル島の港町に移り住んで静かな生活を送っていたようですが、残念ながら2010年に66歳の若さで他界しています。


Moon Bathing (Back)


長らくCD化されず、古くからの音楽ファンの間だけで聴かれ続けて来たこのアルバム、ありがたいことに昨年2016年に日本で世界初CD化を果たし、広く音楽ファンの手にわたることになりました。これからますます秋深まる中、きっとその素晴らしい楽曲とレスリーの歌声が心を温めてくれる、そんな作品、是非一度聴いてみてはいかがでしょうか。


<チャートデータ> チャートインなし

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