Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【年末恒例企画#1】ビルボードHot 100年間チャート予想(Part 1、20-16位)

【年末恒例企画#1】ビルボードHot 100年間チャート予想(Part 1、20-16位)


さて勝手に銘打った【年末恒例企画】シリーズ、これから年末~年始にかけてこの時期に関係した企画でブログをお送りします。だいたい毎年やってることなんですが、その年の気分によってやらなかったりすることも多く、唯一ここ10年以上ちゃんと毎年やってるのはグラミー賞予想授賞式生ブログくらいなんですが、ちょっと今年はいろいろやってみようかな、と思って銘打った次第。途中で挫折するかもしれませんが(笑)まあそれもご愛敬と。


で、第一弾は「Hot 100年間チャート予想」。この予想自体は1999年から程度のばらつきは別にしてずっとやっていて今年で19年目という個人的年末恒例儀式みたいなもんでして。数年前まではチャートファンにはお馴染みのCD通販ショップ「あめりかんぱい」さんが懸賞形式で予想を募っていて、当たるとストア・クレジットを頂いたりしてたんですが、それももうなくなってしばらく経ちます。だからといってこの予想やめるのもつまんないし、その年その年の流行り歌の総決算、と言う観点では意義あるということで今年もやってみました。


今年の流行り歌といえば、久しぶりに最長ナンバーワン記録に並んで、かつ外国語によるナンバーワンヒットということでいうとあの1996年の「Macarena」以来ということで話題を集めた「Despacito」やブルーノ・マーズ、エド・シーランらの常連組の大ヒット、そして今年はロック系やらEDM系やら今風R&B系やらヒップホップ・トラップ系の新人達がビッグヒットを飛ばしたりと百花繚乱の趣がありました。まあ個人的に今後も長く聴いていきたいなと思う曲が多かったかどうかは別にして、いくつか注目に値すべき楽曲、アーティストの台頭があり、まだまだ流行り歌、チャートものから目が離せないな、というのが概観。


このブログでは自分がチャート順位等を元に独自の集計方法で集計して予想したトップ20を20位からカウントダウンしていって、それぞれちょこっとずとコメントしていく、ということでお届けしようと思います。ではさっそく2017年年間20位。


20. Stay ▲2 - Zedd & Alessia Cara

(Hot 100 - 31週、Top 40 - 28週、Top 10 - 8週)

2017.5.6 & 6/10-17付 最高位7位


Zedd Alessia Cara 

昨年前半に「Here」(最高位5位)という素晴らしいデビューヒットを、そして年末にかけては「Scars To Your Beautiful」(最高位8位、今年の年間予想でも25位)と2曲のスマッシュヒットを放ちながら、グラミー賞の最優秀新人賞部門からは完璧にシカトされてしまっていた可哀想なアレッシア・カラ嬢。彼女は個人的にはアデルエイミー・ワインハウスの流れを汲む、素晴らしくソウルフルな歌唱ができる逸材だと思っているのでこれには驚いたもんです。その彼女が今デケイドもっともイケているEDM系DJの一人、ロシア系ドイツ人のゼッドと組んで放ったヒットがこの「Stay」。彼女の特徴ある歌声がゼッドの作るちょっと民族的な雰囲気のあるトラックにマッチして、かなり耳残りのいいキャッチーなヒット曲になりました。

アレッシアはこの他にも今年はディズニー映画「モアナ」の主題歌「How Far I'll Go」をカバーして小ヒットにしたり、この秋に話題となったジックのヒット「1-800-273-8255」(自殺相談ラインの電話番号をタイトルにした話題曲、今年の年間予想で35位)に同じく歌声に強い個性のあるカリードと共にフィーチャーされたりと堅実な活動を続けているだけに、この曲くらい今年のグラミーのどっかにノミネートされて欲しいものです。





19. Bodak Yellow (Money Moves) ● - Cardi B

(Hot 100 - 19週、Top 40 - 16週、Top 10 - 14週、Top 5 - 13週)

2017.10.7-21付 3週1位


Cardi_B_-_Bodak_Yellow.jpg


出たな~(笑)という感じでだるそーにラップしながら最初数秒で「f**k」ワードが飛び出してくるといういい意味でも悪い意味でもNYはブロンクス出身の今風女性ラッパー、カーディBことベルカリス・アルマンザー嬢のデビューヒットがこの曲で、秋に嵐のように1位に飛び込んできたテイラーの新曲を蹴落として1位に。

スタイルとしてはリル・キムあたりの流れを汲む派手派手セレブ系ビヤッチ・ラッパーなのだけど、インスタでフォロワーを増やしてセレブ・ステイタスを獲得したり、VH1のヒップホップ番組のキャスト・メンバーになったことをきっかけに天下のアトランティッと契約してこの曲のヒットにつなげたりと、スターパワーは満点のよう。さっそく他のラッパー達とコラボしたヒットを飛ばしたりと最近のメインストリームヒップホップの一つのトレンドである「複数のラッパーが組んで大ヒットを飛ばす」パターンにうまく乗っている感じ。彼女も今年のグラミー賞ラップ部門の台風の目の一つになっていいレベルだとは思うけど、いかんせん今年のラップ部門はケンドリック・ラマー、ドレイクを筆頭にジェイZ、フューチャーなどメガトン級の混戦模様なのでノミネートも厳しいかもね。





18. Mask Off ▲4 - Future

(Hot 100 - 31週、Top 40 - 26週、Top 10 - 12週、Top 5 - 2週)

2017.5.6-13付 最高位5位


Future Mask Off


そのラップ部門のグラミー戦線の一角を占めるだろうフューチャーの5枚目のアルバム『FUTURE』からの先行シングルがこの「Mask Off」。ここ数年ラップの一つのサブジャンルになっているアトランタあたりを発祥とする「トラップ」の代表選手的なアーティストがこのフューチャーで、とにかくここ2~3年は怒濤の勢い。きっかけは2015年の3作目のアルバム『DS2』が初の1位獲得、同じ年にドレイクとのコラボアルバム『What A Time To Be Alive』も同じく1位獲得、そのシーンでのポジションを盤石にしたこと。それから出すアルバム全部1位で、今年に至ってはこの曲の入った『FUTURE』と『HNDRXX』(ロックファンはん?と思うと思うけどジミヘンは関係ないらしい)を2週連続でリリース、見事2週連続アルバムチャート初登場1位という怪記録を樹立してる。

この曲も典型的なトラップのパターンで、不吉なシンセやキーボードの音色をバックにゆったりしたフロウで、チキチキハイハットや複雑パターンのスネアをアクセントにした楽曲。トラップって普通は陰気なトラックが多いけど、この曲は比較的トラップにしちゃ「明るい」(笑)のがヒットの要因の一つかも。この曲、オリジナルバージョンの他にケンドリック・ラマーをフィーチャーしたリミックス盤、こちらも新進のラッパー、マシュメロをフィーチャーしたバージョンなどいろいろリミックスが出てて、そういう意味でも期待されたリリースだったんだなあ、という感じ。本人ハイチ移民の子だから、と言うわけでもないだろうけど他のラッパー達ですら「何を言ってるかよく分からん」(笑)というフューチャー節は健在で、聴いてても「F**k you Mask Off」以外ははっきり聴き取れないのが凄い(何が凄いかよーわからん)。まあ何にしても今の流行りのラップはこれ、とうちの息子もゆーとりますので。





17. I'm The One ▲5 - DJ Khaled Featuring Justin Bieber, Quavo, Chance The Rapper & Lil Wayne

(Hot 100 - 22週、Top 40 - 21週、Top 10 - 15週、Top 5 - 13週)

(2017.5.20付 1週1位

DJ Khaled Im The One


その「複数のラッパーで目指せ大ヒット」の今年の典型的なパターンがこの曲。DJキャレドってもともとDJだからたーくさんラッパーをフィーチャーしてのヒット(というかソロでのヒットはあり得ない)が従来から多かったのだけど、今回は今年の話題のトラップ・トリオ、ミゴスクエイヴォ、去年グラミー賞ラップ・アルバム部門をフィジカル(CDやレコード)リリースなしでかっさらって話題を呼んだチャンス・ザ・ラッパー、今や大御所感漂うリル・ウェインに加えて、今年は「Despacito」にもフィーチャーされた途端に「Despacito」を1位に押し上げた「2017年ポップ界のマイダス王」ことジャスティン・ビーバーまでフィーチャーして、この曲で見事初登場1位を獲得

曲はジャスティンのボーカルがいきなり出てきてそれだけでもリスナーの食いつきが良さそうなスローEDM風トラックで、まあ今の売れ線のおいしいところを上手に使ってこれだったら今の若い衆には受けるよなあ、という出来。

ちなみにDJキャレドは2011年にやはりリル・ウェインをフィーチャーした「I'm On One」という全米最高位10位のヒット(今回はそれ以来のトップ10ヒット)があるが、全く別の曲なので間違いのなきよう(笑)




16. XO TOUR Llif3 ▲4 - Lil Uzi Vert

(Hot 100 - 33週、Top 40 - 30週、Top 10 - 10週)

(2017.6.24付 最高位7位

Lil Uzi Vert XO Tour Lilf3


このリル・ウジ・ヴァートことサイミア・ウッズ君も、ここ数年のトラップ・ブームの中から出てきた若手のフィラデルフィア出身のラッパー。スタイルとしては発声もエフェクタを通したように少し割れ気味の声でラップし、バックのトラックもシンセをバックにチキチキリズムでゆっくり目に(時々早口で)ラップする、と言う意味ではトラップ・ラッパーなんだけど、ミゴスフューチャーとかに比べると何だかあっけらかんとしていて「ネアカ・トラップ」とでも言うべきスタイルなのが受けてるのかな。アルバムジャケとか可愛らしいイラストだったりして、いわゆるトラップやヒップホップ・アーティストにある「ヤバイ感」が結構希薄だったりするのが面白い。こいつも最初に音を聴いたのは、ヒップホップ・ヘッズのうちの息子が「これ最近ヤバイよ」といって聴かせてくれたということで最近この手の情報源としては重宝してます。

今時のヒップホップ・アーティストならではの、まずはミックステープでファンを掴んで、その後メジャーと契約してアルバム・シングルでドン!とブレイクする、というパターンをそのまま行ってこの1年ほどでビッグになったLUV、今年はそのミゴスとコラボした「Bad And Boujee」という特大のナンバーワンヒットがあったがそれが年間予想で何位に入っているかはこの後のお楽しみということで。





まだまだ続く年間チャート予想、お楽しみに。

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#107「Lust For Life」Lana Del Rey (2017)

 #107Lust For LifeLana Del Rey (Polydor / Interscope, 2017)


MLBワールドシリーズもアストロズの感動的な優勝で幕を閉じ、街角に北風が吹き始めて気候も晩秋から初冬の雰囲気が日々強まっていますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。12月ももう目の前、年間チャートの予想や年間アルバムの選定、そしてグラミー賞各部門予想と、自分のブログもいろいろと忙しくなる時期でこの時期になると「ああもう年末も近いなあ」ということになるのですが、今年は仕事の方が年末ギリギリまで気が抜けない状況なので、本当に年末にならないと年末感が出てこないのでは、と戦々恐々としているこの頃です。


さて先週お休みしてしまった今週の「新旧お宝アルバム!」は、自分が選ぶ今年の年間アルバムのランキングにもそれなりのポジションに入れることになるのでは、と思っている、最近のアメリカ音楽シーンで「バロック・ポップ」だとか「ハリウッド・サッドコア」だとか言われ、独特のイメージとカリスマティックな存在感を見せている女性オルタナ・シンガーソングライター、ラナ・デル・レイから届けられたフル・アルバムとしては5枚目の作品『Lust For Life』(2017)をお届けします。


Lust For Life


ラナ・デル・レイ。不思議にラテンの響きのあるステージネームとは裏腹に、ダークでドリーミーかつ何となく不安感を誘うような音響系の音像を持つ楽曲に、時折禁忌用語も交えてドラッグや金や危険で破滅的な男たちとの男女関係などを歌うギャングスタで危ない歌詞を乗せ、そのクールで50年代アメリカーナ的なキッチュさを湛える美貌で(ちなみにラナ1985年生)、ある時は呟くように、ある時はファンタジー中の歌姫のように歌う女性シンガーソングライター。2011年にセカンド『Born To Die』でセンセーショナルにブレーク以来、そのアンバランスな楽曲の魅力やモデルもやる美貌とのギャップに完全にヤラれてしまった音楽ファンは少なくないでしょう。

Lust For Life (Insert)

今回の新作『Lust For Life』(情欲は一生ものイギー・ポップにも同名タイトルのアルバムがありました)はタイトルからしてそういうラナの世界全開なのだけど、最近ある方が「今回はジャケでニッコリ笑ってるのが変だ。作風が変わったのか」と仰っておられ、確かにこれまでは『Born To Die』も、その次の『Ultraviolence(2014)や前作の『Honeymoon(2015)も、ジャケのラナは無表情でニコリともしてなかったので、今回のジャケはいつもと違うと言えば確かにその通り。

しかし今回のラナは従来の作風を変えないばかりか、ヒップホップへの接近を強めたり、これまであまり無かった個性派アーティスト達との共演などで更に自分のゴシックな音像世界をレベルアップしているように聞こえるので、ジャケの笑顔の不自然さは逆に彼女の自信、と解釈すべきなのかも。



アルバムの先行シングルとしてリリースされた冒頭の「Love」は正にそのラナ・ワールド全開の作品。低音のエレクトロベースサウンドをバックにスローモーションのモノクロ映画の場面を想起させ、夢の中から歌いかけてくるようなドラマチックなラナの歌声で既に聴く者は彼女の世界の中に。呟くようなラナのラップで始まるタイトルナンバー「Lust For Life」はザ・ウィークンドのファルセットコーラスを従えそのドリーミーさにフィル・スペクター的なプロダクションで拍車をかけ、「13 Beaches」ではフランク・オーシャンに代表される最近の音響派R&Bを彷彿させるヒップホップの影響を仄かに感じさせたりと、ドリーミーな音像と催眠的なボーカルがラナ・ワールドが炸裂する導入部を構成している。



しかしこの楽曲の流れは6曲目の「Summer Bummer」で大きくヒップホップへの接近を見せてまた一段と新しいレベルへ。この曲はドレイクらとの仕事で知られるボイ・1ことマシュー・サミュエルズをプロデュースに迎え、今NYで一番のラッパー、エイサップ・ロッキーとその舎弟で今売出し中のアトランタ出身のラッパー、プレイボイ・カーティをフィーチャーした、クレジットだけ見ると今時よくあるポップスター・フィーチャリング・ラップってな感じ。ところがラナの場合、サウンドも楽曲も、ラップの役割も完全に彼女のコントロール下に収めていてエイサップの存在感あるフロウが単なるラナのドリーミー・ゴシック・チューンの引き立て役になってるのが凄い。続く同じくエイサップをフィーチャーした「Groupie Love」では、ラナワールドに呑み込まれそうなエイサップ、いつ出て来るの?と思ってると残り1分半で何とか存在感を示すフロウをかます辺りは流石。でも最後エイサップ、ラナと一緒に「Groupie Love 」って歌っちゃってるし(笑)。



アルバム中盤は個性的な視点で曲を書くラナの面目躍如のトラックが満載。「Coachella - Woodstock In Mind」は今年4月にラナがカリフォルニア郊外のロックフェス、コーチェラ出演中に、米国海軍が日本海に航空母艦を配備したという誤報に端を発した、米朝間の急速な緊張悪化の報道を知ったラナが「少しでも世界平和が維持されるように」と、コーチェラウッドストックになぞらえて書いたという一曲。で、その楽曲スタイルはここのとこ流行りのトラップ・ヒップホップのチキチキハイハットとシンセとストリングスで織り成す不吉な音像世界に、ラナのいつものドリーミーでシネマティックなボーカルが乗ったというもの。

God Bless America - And All The Beautiful Women In It」はそのトラップの代表的プロデューサーで今売れっ子のメトロ・ブーミンことリーランド・ウェインプロデュースの、これがちっともトラップっぽくない完全ラナ・ワールド(笑)。そしてコーラスで「これは一時代の終わり?それともこれはアメリカの終焉なの?」と歌う「When The World Was At War We Kept Dancing」も、前出の「Coachella〜」同様、北朝鮮危機の最中にコーチェラのフェスで盛り上がっていた自分達を意識した、不吉でドヨーンとしたトラックをバックにラナが夢の中のように歌う、というこの辺りの楽曲には強い緊張感を感じる。



このアルバムのもう一つの聴きどころは、ヒップホップ以外の個性派アーティスト達との共演ぶり。いかにもな取り合わせのスティーヴィー・ニックスとのデュエット「Beautiful People Beautiful Problems」はこのアルバムで唯一普通のピアノで始まる美しいメロディと、この二人のペンによるのが納得できるにちょっとクセのあるサビが魅力的な曲。そして個人的にはこのアルバムで最も興味深かったショーン・レノンとのコラボ「Tomorrow Never Came」。この曲だけが唯一、ラナの手から楽曲のコントロールが離れてショーンの手に移っている感じが凄くして、そればかりかコード進行といい、メロディの感じといい、ビートルズ後期の香りを強烈に感じたのはちとうがち過ぎか。しかしショーンのボーカルが出てきた瞬間にジョンを思わせる存在感は凄いの一言。ここばかりは客演者がに勝っている瞬間だった。


アルバムはこの後何事もなかったかのようにラナ・ワールドの楽曲スタイルに戻り、「Heroin」「Change」そしてあの音像をバックに60年代ガールポップ風のメロディをラナがだるそうに歌う(笑)「Get Free」でエンディングを迎える。

Lust for Life (back)


つまるところこのアルバムは、これまで独自のカリスマティックで独特の音像世界による楽曲スタイル一本で来たラナが、ヒップホップやトラップ、更には他のアーティストとの共演共作など、今のメインストリームにもちょっと寄り添って見せているのだけど、楽曲についてのコントロールは一切渡さずショーンとの楽曲はその唯一の例外)自分の音世界、イマジャリーを更に一段進化させている、そんなアルバムに思える。

こうしたのスタイルが好きか嫌いかで、このアルバムに対する(というかラナ・デル・レイというアーティストに対する)評価は大きく分かれてしまうのだけど、特に奇抜なことをせずにそれでいて誰が聴いてもラナ独自の世界だということが分かるものを作り上げている、と言う意味では少なくとも一聴に値する作品だと思う。普通でないポップ・ミュージックが好きな方には是非お勧めです。


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位1位(2017.8.12付)

同全米オルタナティヴ・アルバム・チャート 最高位1位(2017.8.12付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#106「Moon Bathing」Lesley Duncan (1975)

 #106Moon BathingLesley Duncan (MCA, 1975)


台風の関係で雨続きだった10月も終わり、11月に入ってやっと秋らしい素晴らしい天気の日々が続いていますが、皆さんもアウトドアに、行楽に、そしてライブやレコードハンティングに活動レベルを上げていることでしょうね。そうこうしているうちに2017年も後残すところ2ヶ月。今月が終わるとビルボード誌の年間チャートの発表や、来年2月発表のグラミー賞ノミネーション発表と、にわかに音楽周りも慌ただしくなる季節。今年新たに巡り会ったアーティストや新譜の数々を振り返って、そろそろ2017年の総決算の準備をしようかな、と思い始めているところです。


さてそんな秋の深まりを感じる今日この頃、今週の「新旧お宝アルバム!」は正にそうした秋の雰囲気を強く感じさせるアーティスト、そしてアルバムをご紹介します。エルトン・ジョンの初期のアルバム『エルトン・ジョン3(Tumbleweed Connection)』(1970)に収録されたしみじみとしたアコースティックナンバー「Love Song」の作者として、そしてその曲をエルトンとデュエットしたことで当時注目を浴びた、イギリス出身の女性シンガーソングライター、レスリー・ダンカンの4枚目のアルバムになる、その名も秋らしく「月光浴」という『Moon Bathing』(1975)をご紹介します。


Moon Bathing 


レスリー・ダンカンという人は、上記の通り初期の自分のアルバムには基本自作または自分の共作曲しか収録しなかったエルトン・ジョンが数少ない例外として「Love Song」を収録、しかも共演までしたということで70年代前半に注目を浴びたシンガーソングライター。その後もUKロックシーンでバックボーカリストとしてその後もエルトン・ジョンの『マッドマン(Madman Across The Water)』(1971)、あのピンク・フロイドの名盤『狂気(The Dark Side Of The Moon)』(1973)の楽曲にも全面参加するなど、ミュージシャン達の間で大きなリスペクトを集めたアーティストです。

上品な佇まいの風貌のレスリーはこうした素晴らしいキャリアやミュージシャン仲間からのリスペクトにも関わらず、本人自身が華やかなスターダムを望まず、またかなりの舞台恐怖症だったらしく、英米で商業的な成功を収めるには残念ながら至っていません。

しかしその大人の雰囲気を湛えたボーカルや、UKのアーティストながらアメリカのマッスルショールズあたりのサウンドも彷彿させる魅力溢れるメロディや楽曲構成の作品で、今でも70年代以来活躍するミュージシャンや古くからの音楽ファンの間では確たる人気を博しているのです。



当時の夫のジミー・ホロウィッツのプロデュースによるこのアルバムの冒頭を飾るのは、ちょっと明るいローラ・ニーロあたりのナンバーや、70年代半ばのサザン・ソウルナンバーを彷彿させる軽快でリズミカルな「I Can See Where I'm Going」。軽快なカッティング・ギターを聞かせてくれるのは、このアルバム全面に参加している、あのUKを代表するセッション・ギタリスト、クリス・スペディング。続くジミーとの共作「Heaven Knows」はぐっとテンポダウンして、しっとりとしたしみじみ系のバラードナンバーで、クリス・スペディングのスライド・ギターをフィーチャーしたこの曲は正に秋深し、という言葉を想起させるナンバーです。次のタイトルナンバー「Moon Bathing」はレスリー自らマンドリン、そしてUKアーティストの作品には珍しくジム・ライアンのバンジョーをフィーチャーした、ちょっとブリティッシュ・トラッドの香りを感じさせながらスロー・ブルーグラス的ユニークな楽曲で、レスリーの作風の幅を感じさせます。

ビートルズの「You Won't See Me」などと同様にコードの根音が半音ずつ下がっていくメロディから、サビにかけてはいかにもUKポップ風の軽快なギターリフが楽しい「Rescue Me」、そしてジミーのピアノをメインにまたぐっとしっとりとしたバラードの「Lady Step Lightly」でアルバムのA面が終了します。



B面は、ゴスペル風のピアノの演奏に乗ってレスリーがメンフィス・ソウル風な歌唱を聴かせてくれるアップテンポな「Wooden Spoon」でスタート。後半の効果音やゴスペル風コーラスが楽しいナンバーです。次の「Pick Up The Phone」はエレピのイントロから抑えめのクリスのギターをがっちりR&B風のリズムセクションが固めるミディアムナンバー。ここでのレスリーのソフトでやや哀愁を湛えたボーカルが、秋を感じさせてくれます。

同じく抑えめの楽器アレンジの中にフルートやサックスの音色が心落ち着かせてくれる「Helpless」、レスリー自身とジム・ライアンのアコギのアルペジオと後半から入ってくるジミーのピアノだけというシンプルながら心にしみいる、これぞシンガーソングライター作品という感じの「Fine Friends」、トルバドゥール風のピアノから一気に時代を感じさせるディスコ・ビートっぽいアップテンポにそれこそ「飛び込んでいく」このアルバムでは異色なナンバー「Jump Right In The River」とレスリーのボーカルと楽曲を堪能できる作品が続いて、ラストはもう一曲のジミーとの共作曲「Rocking Chair」。ジミーのピアノをバックにレスリーがその柔らかなボーカルでしっとりと歌うバラードで、この素晴らしいアルバムのフィナーレを飾ります。



レスリーはこの後5枚目のアルバム『Maybe It's Lost』(1977)をリリースした後、『狂気』のエンジニアだったアラン・パーソンズとの縁で、アラン・パーソンズ・プロジェクトのアルバム『イヴの肖像(Eve)』(1979)に参加、「If I Could Change Your Mind」のリード・ボーカルを取ったのを最後に、音楽業界からは引退してしまいました。最初の夫ジミーと離婚後、1978年に音楽プロデューサー、トニー・コックスと再婚し、スコットランドのマル島の港町に移り住んで静かな生活を送っていたようですが、残念ながら2010年に66歳の若さで他界しています。


Moon Bathing (Back)


長らくCD化されず、古くからの音楽ファンの間だけで聴かれ続けて来たこのアルバム、ありがたいことに昨年2016年に日本で世界初CD化を果たし、広く音楽ファンの手にわたることになりました。これからますます秋深まる中、きっとその素晴らしい楽曲とレスリーの歌声が心を温めてくれる、そんな作品、是非一度聴いてみてはいかがでしょうか。


<チャートデータ> チャートインなし

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