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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#159「Duncan Sheik」Duncan Sheik (1996)

 #159Duncan SheikDuncan Sheik (Atlantic, 1996)


台風19号に続いてこの週末の雨で被災者の皆さんは引き続きご苦労されていることと思います。我々も義援金の寄付など、できることをしなければいけないし、被災者の皆さんの一日も早い日常復帰を心より祈っています。

朝晩がめっきり肌寒くなってきた今日この頃、秋が次第に深まるのを感じますが、今週の「新旧お宝アルバム!」は引き続き深まる秋にぴったりの作品をお届けします。久々の90年代作品再評価シリーズということで、当時新人ながらその作品のクオリティの高さで注目を集め、その後は数々のミュージカル作品の音楽制作者として活躍を続けるシンガー・ソングライター、ダンカン・シークのデビューアルバム『Duncan Sheik』(1996)をご紹介します。

 

90年代作品を改めて評価してみよう、第11弾。

ポイグナント(poignant)という表現をご存知でしょうか。

もともとは「胸に突き刺さるような」という意味の英語ですが、一般的にはその転意で「見る者、聴く者の胸に強く訴えかけるような感動を呼ぶ」という意味に使われる表現のことばです。

1996年当時、ダンカン・シークのぱっと聴きには地味な感じのトップ40ヒット「Barely Breathing」を何回か聴くうちに感じたのは正にこのポイグナントな感動でした。下手をすると単調な起伏のない繰り返しのAメロから、正にその歌詞のように軽く「息ができなくなるくらい」のカタルシスを持ったBメロに突入した瞬間、一気に持って行かれるような感動を覚えるこの曲、当時のFMラジオで長期間に亘ってヒットとなり、その前年にビルボード誌Hot 100連続滞在週数記録を更新したエヴリシング・バット・ザ・ガールの「Missing」と並ぶ55週連続チャートインを記録(同じ週にやはり55週を記録したジュエルの「Foolish Games / You Were Meant For Me」はその後も記録を65週まで伸ばすのだが)。その年のグラミー賞最優秀男性ポップボーカル部門にノミネートされるなど、ダンカンの名前を一躍シーンに知らしめたのでした。

しかし今回ご紹介するデビューアルバムで特にこの「Barely Breathing」だけが際立っているわけではなく、アルバム全体のトーンは秋を思わせる抑えめながらオーディエンスに強い印象を思わせる楽曲群で統一されていて、それらの曲調スタイルは、アメリカのシンガーソングライターの楽曲というよりは、どこかヨーロッパの美しい街角を舞台にした映画のバックグラウンドで歌われている曲を思わせるような哀愁をたたえ、時折胸をつく感動(ポイグナンス)を想起させる楽曲ばかり。

Duncan Sheik 

アルバムのプロデュースが、あのハワード・ジョーンズの一連の作品のプロデュースで80年代に名を成したルパート・ハインの手によるところもこうしたアルバムのトーンを作り上げる大きな要素にもなっているのでしょうが、それに加えてダンカン自身の作風スタイルの独特さが際だっているように思います。ブラウン大学在学時代には、あのリサ・ローブともグループを組んで活動していたというあたりからも分かるように、基本的な作風スタイルはフォークやアメリカーナをベースにしたシンガーソングライター的なそれであり、ダンカンの場合はそれが映像を想起させるようなビジュアル性をもったメロディと歌詞で独特なものを作り上げているように思います。

Barely Breathing」以上にスケールの大きいメロディと楽曲構成がアルバムオープニングからいきなり軽い感動を呼び起こす「She Runs Away」、このアルバムの中では比較的アメリカーナっぽいメロディと楽曲スタイルで、基本ダンカンのアコギ弾き語りにストリングスが控えめに被さっていくという展開の美しいメロディの「In The Absence Of Sun」、「Barely Breathing」を挟んで、静謐なピアノのイントロから静かに楽曲が展開していく「Reasons For Living」そして室内弦楽曲的にアコギとチェロがヨーロッパ的な楽曲の世界を静かに織りなす「Days Go By」などなど、いずれもポップセンス溢れる一方で、音数を重ねていくというより適格な音の引き算も駆使して音数を抑えながら、映像感と感動があふれ出るような楽曲が並んでいます。

ダンカンのこのアルバムはその完成度の高さから、その年のローリング・ストーン誌の年間アルバムランキング7位に選ばれるなど当時シーンでも高く評価されたのですが、シングルヒットも「Barely Breathing」以降チャートインせず、その後もコンスタントに『Humming』(1998)、『Phantom Moon』(2001)、『Daylight』(2002)と、彼独特の魅力的な楽曲を聴かせるアルバムをリリースするのですが、商業的には全く振るわず、とうとうアトランティック・レーベルとの契約も終了。このままワン・ヒット・ワンダーとしてポップの歴史に名前を残すだけで終わってしまうのかとも思われました。

Duncan Sheik Album back

ところが、2006年に5枚目の『White Limousine』をインディーレーベルからリリースした頃と時を同じくして、それまでに8年かけて『Phantom Moon』以来コラボしていた詩人のスティーヴン・セイターと書き上げたロックミュージカル『Spring Awakening(春のめざめ)』がニューヨークのオフ・ブロードウェイで開演。たちまち人気を呼びその秋にはブロードウェイでも開演、その年のトニー賞の最優秀ミュージカル部門を含む8部門受賞、その勢いでグラミー賞の最優秀ミュージカル・ショー・アルバム部門も受賞、その年を代表するミュージカルとして大ヒットになりました。

後にポップ・ミュージック・シーンに大きな反響を呼んだTV音楽コメディ番組『Glee』でメインストリームにブレイクすることになるリー・ミシェル(『グリー』のレイチェル役)のキャリアを大きくブレイクすることになったこのミュージカルの成功で、ダンカンは新たにミュージカル音楽作曲家としてのキャリアを歩み出すことに。その後もダンカンセイターと再び共作の『Alice By Heart』(2012、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』をベースにしたミュージカル)、2013年には映画『アメリカン・サイコ』のミュージカル版や犬を主人公にした大ヒット小説『Because of Winn-Dixie』のミュージカル版の音楽制作、2016年にはワシントンDCのシェイクスピア・シアター・カンパニーによる『じゃじゃ馬ならし』の演劇公演に曲を書くなど、第2のキャリアを着実に進んでいる様子です。

一方、ミュージシャンとしてもその後、曲を提供したミュージカルの自作曲を収録した『Whisper House』(2009)、デペッシュ・モード、ハワード・ジョーンズ、ティアーズ・フォー・フィアーズ、スミスといった80年代のUKミュージシャンの曲をカバーした『Cover 80's』(2011)、今のところの最新作の『Legerdemain』(2015)と、アルバムも時折リリースしているようです。

今回ご紹介のデビューアルバムだけでなく、その後ダンカンがリリースしているアルバムはどれも彼の非アメリカ的で、ポイグナントな映像感満載の独特のスケールの大きい世界観が感じ取れる作品ばかりですので、秋が深まり始めたこの季節、そうした彼のアルバムを生活のサウンドトラックにしてみるのもいいかもしれません。

<チャートデータ>
ビルボード誌全米アルバムチャート 最高位83位(1997.4.19付)

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テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#158「Love & Liberation」Jazzmeia Horn (2019)

 #158Love & LiberationJazzmeia Horn (Concord, 2019)


週末日本を襲った台風19号(ハギビス)では皆さんのところには被害はなかったでしょうか。被災された方には心よりお見舞い申し上げると共に一日も早い日常への復帰を心よりお祈り申し上げます。

台風一過のこの週末は秋らしい晴れ空が広がり、これから一気に秋が深まろうかという勢い。今週の「新旧お宝アルバム!」はそういう季節になると、何となくジャズっぽいサウンドがしっくり来るということで、先日2枚目のリーダーアルバムをリリースしてシーンの高い評価を受けている、若手ながら本格派の女性ジャズ・シンガー・ソングライター、ジャズメイア・ホーンのアルバム『Love & Liberation』(2019)をご紹介します。

 

確か以前ジャズ・フルートのボビー・ハンフリーのアルバムをご紹介をした時にも言いましたが、自分はまだまだジャズの世界は勉強中であり、専門的な観点からジャズをどうこう論じれるような身分ではないのですが、ジャズという音楽ジャンルのスタイルに憧れるところはあるわけで、ここのところ「巨匠の名盤」と言われるものや、最近の若手のジャズ・ミュージシャンの作品で気になるものを意識して聴くようにはしているところ。

このジャズメイアのアルバムも、そんな感じでゆるーく立てていたアンテナにひっかかった作品で、まずそのジャケットのジャズメイアの美しい写真に目を奪われたのが聴いてみるきっかけ。出始めの頃のエリカ・バドゥの雰囲気をもう少し太陽の下のアフリカに寄せた感じのたたずまいの彼女の感じから、これはオーガニック系のR&Bシンガーだと思って音を聴いてみると、スタンダード風のジャズ・ボーカルで二度びっくり。しかしそのボーカルの上品なセクシーさと、若い頃のサラ・ヴォーンエラのオーラが漂うようなオーセンティックでアーシーなボーカル・スタイルに惹かれてアルバムをゲットしたのです。

もともとジャズ・ボーカルというと、最近はダイアナ・クラールとかが人気なわけですが、何故か自分はあまり彼女には魅力を感じられずにいたのですが(ベタなカバー曲が多い、ということもありますが)、今回ジャズメイアのこのアルバムを聴いて、自分は白人的スタイリッシュ・ジャズ・ボーカルよりも、ブラック・アーティスト特有のR&B的グルーヴを感じさせるジャズ・ボーカルの方が好きなんだなあ、と実感した次第。

Jazzmeia.jpg

ジャズメイアはテキサス州ダラス生まれの今年28歳。17歳の時にダウンビート誌主宰の学生ミュージシャンに送られる「Student Music Award」を受賞したのをきっかけに18歳の時にNYに。ジャズとコンテンポラリー音楽の学校に通いながら、ソロ・キャリアを目指してアポロ劇場をはじめ、NYエリアのいろいろなヴェニューでパフォーマンスを重ねながら、同じくダウンビート誌の選ぶ2010年の最優秀ジャズ・ソロ・ボーカリストを受賞。その後も数々のジャズ・ボーカリストに送られる賞の受賞を重ね、着実に実績を積んでいきました。そして2017年にリリースしたソロ・デビュー・アルバム『A Social Call』が、グラミー賞の最優秀ジャズ・ボーカル・アルバム部門にノミネートされて、シーンで一気に存在感を確立することになったのです。

今回のアルバム『Love & Liberation』は前作からレーベルを移籍してジャズの世界では名門のコンコード・レーベルからの最初の作品。全12曲のうち、8曲を自作自演。そのいずれもが伝統的なスタンダードジャズのスタイルを取りながら、ジャズメイアのしなやかで、確かなボーカル技巧に裏打ちされた、グルーヴ感満点のボーカルが、サラやエラが若かった頃に同時代で彼女たちのパフォーマンスを聴いたらきっとこんな感じだったに違いない、と思わせるリアリティを感じさせる作品に仕上がっているのです。


たとえば冒頭の「Free Your Mind」など、軽くスイングしながら踊るように歌うジャズメイアのボーカルは、これが2019年に彼女が書いた曲とは思えないほど、いい意味でのオーセンティシズムに溢れた作品。まるでジャズクラブで彼女のライヴを目の前で観ているかのような臨場感も満点で、冒頭から引き込まれます。ゆったりとしたサックスとトランペットの演奏をバックにしっとりと静かにモノローグ風に歌うような、つぶやくような「Time」、ジャズメイアエラばりのグルーヴ満点のスキャット・パフォーマンスが興奮の、アップテンポのジャイヴ風の軽快なナンバー「Out The Window」、同じくゴキゲンなスキャットが楽しめる、ちょっと洒脱な感じの「When I Say」などなど、彼女自作の曲もジャズ作品としてしっかりした楽曲揃いで、知らなければジャズ・スタンダードのカバーアルバムだと思ってしまうほど。

アルバムには自作の他、4曲のカバー作品が収録されていますが、まずはジャズメイアのイメージとも重なるエリカ・バドゥのアルバム『Mama's Gun』(2000)に収録の「Green Eyes」。オリジナルは二つのパートに別れたR&B組曲風になっていますが、ジャズメイアは後半のメインパートを、あたかもジャズスタンダードのように、気だるいグルーヴを醸し出しながら見事に自分のものとしています。また、ジャズフルートのヒューバート・ローズのアルバム『Morning Star』(1972)に収録されていたインスト・ジャズ・ナンバー「No More」を見事にボーカリーズ・ナンバーに仕立てて、こちらでも見事なパフォーマンスを聴かせます。歌い出しのワンフレーズの歌詞と、それをフェイク気味に歌うジャズメイアの歌唱の説得力たるや、これももともとこういう歌詞が付いていたと思わせてしまうほど。


そしてボーカルとしても活躍するドラムスのジェイミソン・ロスジャズメイアのお互いに寄り添うような自作のモノローグ「Only You」に続いての「Reflections Of My Heart」はこのアルバムでもハイライトの一つ。ソウル・ジャズ・シンガー、レイチェル・フェレルの2000年のアルバム『Individuality (Can I Be Me?)』に収録の、レイチェルとプロデューサーのジョージ・デュークの共作によるこの曲では、クローズ前の深夜過ぎのジャズ・クラブのような控えめなピアノとベースの演奏をバックに、ジャズメイアジェイミソンのデュエットで静かなエモーションの高まりを感じさせるパフォーマンスを聴かせます。

そして締めはシナトラビリー・ホリデイの歌や、マイルスのバージョンでも有名なジャズ・スタンダード、「I Thought About You」をジャズメイアがこれもちょっとルーズな感じのグルーヴを漂わせる気だるいボーカルとお得意のエラ風のスキャットで達者に聴かせてくれます。

とにかくアルバム全編を通して、ジャズメイアのジャズへの、そして音楽への愛を強く感じさせるパフォーマンスが、聴く者をぐいぐいと引き込んでくれる、そんな作品です。そして極めてオーセンティックなスタイルを取りながら、「ただの」ジャズ・ボーカル・アルバムではない「何かプラス・アルファ」を感じさせてくれる作品。それは彼女自身が自分でこういう曲を書いていることや、彼女のボーカル・スタイルの独特なグルーヴ、そしてライナーノーツにも彼女自身が書いているように、自分の祖先がアフリカにつながっていることを強く意識し、それを誇りに思っていることなどによるものなのかもしれません。

Love And Liberation (back)

これから深まる秋、新進気鋭のミューズ(音楽の女神)、ジャズメイアの素晴らしい、一味違うジャズ・ボーカルを楽しみたいもの。そして何と今年12月にコットンクラブでの初来日ライブが決まったそうです!これは観に行かねば。

<チャートデータ>
ビルボード誌全米ジャズ・アルバムチャート 最高位4位(2019.9.7付)

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