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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【今週の全米No.1アルバム事情 #5 - 2019/11/30付】

先週のコメントで「2週目の1位もあるかなあ」と言ってたルーク・コムズを今週末のBillboard 200チャートの1位から引きずり下ろしたのは、先週も予想してたセリーン・ディオン。2013年のアルバム『Loved Me Back To Life』(最高位2位)以来6年ぶりの英語アルバム(彼女はケベック出身でフランス語が第2言語なので時折フランス語アルバムもリリースしてるのはご存知のとおり)になる新作『Courage』が今週初登場1位。何とセリーンのアルバムチャート1位は2002年の『A New Day Has Come』以来の17年ぶりで、今回女性アーティストのアルバム1位間の長期ギャップ記録を更新するという力強さ(これまでの記録はホイットニーの『ボディガード』サントラと2009年の『I Look To You』の164ヶ月)。

売上の方もまずまずで、113,000EAU(実売109,000枚)と2位とEAU3万ポイントの差を付けての文字通り堂々の1位。しかし最近この実売109,000枚って、先週のルーク・コムズといい、この間のカニエといい、まったく同じ枚数。そういうことからも今回のセリーンの復活が半端なレベルではないことがわかるし、EAUのうちストリーミングやデジタルダウンロードの割合が極端に少ないのも、ほとんどの人がアルバムちゃんと買ってるってことで、大ポップスター、セリーンの面目躍如たるもんがありますな。まあこれも9月から既に開始している「Courage」ツアーのチケットとアルバムのバンドルセールスで結構枚数稼いでるらしいけど、それにしたってファンがコンサートのチケット買ってるからで、やはり彼女の根強い人気を物語るというもの。

セリーン・ディオンといえばちょうど『Loved Me Back To Life』をリリースした直後に発覚した咽喉ガンで2016年に最愛の夫ルネ・アンジェリルが他界するという人生の試練を経験して、ちょっと前にはガリガリにやせこけた写真を報道されたりなんかして「セリーン・ディオン大丈夫か」と思わせていたので、今回のアルバム『Courage』どうなんだろう、と興味半分、心配半分という感じだった。それでも2011年から年間平均70ステージをこなしてきたという、ラスベガスのシーザー・パレスでの8年にわたるレジデンシーも今年の6月に見事に勤め上げ、最後のステージではこの『Courage』収録の曲もいくつか披露したというから、ポップスターとしてのプロ意識は高く維持され続けてきたようだ。

で、今回のアルバムから何曲か聴いてみて驚いたのは、前回の英語アルバムではメインストリーム・ポップ系のプロデューサー達(お馴染みウォルター・アファナシエフとか)やメインストリームR&B系のソングライター・プロデューサー達(ベイビーフェイスやニーヨなど)との仕事で、正に伝統的な王道ポップアルバムを作っていたのが、今回は多分かなり「今のソングライター・プロデューサー」達と組んで、敢えて伝統的サウンド・楽曲ではなく、コンテンポラリーなサウンドに取り組んでるなあ、ということ。エミネムやピットブルとの仕事で知られるニュー・ロワイヤルのリズ・ロドリゲスが共作者に名を連ねる冒頭の「Flying On My Own」なんて、始まりは「ん?フランク・オーシャンか?」って感じの今の音響系RBにトラップ・フレイバーまで加味され、サビのアップテンポのトラックはピットブルが出てきてもおかしくなさそうなアゲアゲリズム。こう書くと「何すかそれ、無茶苦茶ですやん」と思うんだけど、これにセリーンのボーカルが乗ると、もうセリーンの世界以外何ものでもない、という感じで彼女のポップスターとしての存在感は何ら揺らいでいないのが凄い。シーンからの評価も概ね高いようだし、セリーン復活を印象づけるには充分過ぎる出来。

このアルバム、他にもスカイラー・グレイやサム・スミス、アデルでお馴染みのグレッグ・カースティン、スターゲイト、シーア、デヴィッド・グエッタ、更にはスティーヴ・アオキと、2019年のコンテンポラリーポップを代表するサウンドメイカー達が総出演の凄いアルバムなのだが、上記のようにこれにセリーンが負けてるどころか、むしろ彼らが創り出すトラックを自分の手のひらで転がすかのように自分のものにしているのが凄い。よく見るとジャケ写のセリーンもすっかり以前の風貌に戻りながら、どこか筋金入りの力強さを感じさせる。このアルバムのタイトル(勇気)について彼女は「私もいろいろあった。その間親しい人達が私に力と勇気をくれたから、今回のアルバムはこのタイトルにした」と語ってるけど、ルネの死とそこからの立ち直りがその大きな要素だったことは想像に難くない。

今回のアルバムの1位で、彼女は1990年代、2000年代、そして2010年代と3つのデケイドで1位を記録。これは女性シンガーとしてはジャネット、バーブラ、ブリトニーに続いて4人目。彼女のこの力強い歌声とこのアルバムの出来だと2020年代もまだまだ来そうだし、2002の「A New Day Has Come」(最高位22位)以来途絶えているトップ40ヒットも期待できそうですねえ。

さてその他のトップ10内初登場は今週も1枚だけ(レディ・アンティベラムはどこ行ったの?)。2位に83,000EAU(実売9,000枚)で初登場してきたのは、カナダ出身のラッパー・R&Bシンガーのトリー・レインズの4枚目になる『Chixtape 5』。今時のラッパー達を多くフィーチャーしていた前回までの3枚に比べて今回はかなりR&Bサイドに寄り添ってる内容みたいで、フィーチャリングされてるのも安定の(笑)クリス・ブラウン以外にもジャッギド・エッジとかマイヤとかアシャンティとか、2000年代R&Bファンには懐かしい名前が続々。これはちょっとじっくり聴いてみたい。

さて来週の1位ですが、11/22-28リリース予定のアルバムの中でダントツに目立ってるのは何と言ってもベックの『Hyperspace』。これに対抗しそうなのはコールドプレイくらいかなあ。BJザ・シカゴ・キッドとか、カントリーのジェイソン・アルディーンとか、アニマル・コレクティブのライブとか、売上小さい週だったら1位もありでしょうけど、ベックとコールドプレイの新譜は結構売れるでしょう。しかもサンクスギヴィングのブラック・フライデー直前なので来週の1位は実売20万枚は行きそうですね。ではまた来週。

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【今週の全米No.1アルバム事情 #4 - 2019/11/23付】

今週末のBillboard 200チャートの1位は、先週予想してたとおり、カントリーのルーク・コムズの2枚目『What You See Is What You Get』が172,000EAU(実売109,000枚)という、カントリー・アルバムとしては今年最大のEAUと売上枚数で初登場。今年のカントリー・アルバムでBillboard 200を制したのはこのアルバム以外ではトーマス・レットの『Center Point Road』(6/15付)だけだけど(あ、テイラーは当然カントリーとは見なさないってのでいいよねw)、その時はわずか76,000 EAU(実売 45,000枚)。カントリーで109,000枚週間売上というのは、去年9/29付で1位初登場、266,000EAU(実売 251,000枚)を記録したキャリー・アンダーウッドの『Cry Pretty』以来の実に1年ぶりの記録になった。

ルーク・コムズというと、2017年に『Hurricane』のヒット(カントリー1位、Hot 100 31位)でブレイク以来、『When It Rains It Pours』(Hot 100 33位)『One Number Away』(同34位)『She Got The Best Of Me』(同31位)そして先週発表された第53CMAのソング・オブ・ジ・イヤーを見事獲得した『Beautiful Crazy』(同21位)と、デビューアルバム『This Ones For You』からの5枚のシングルが連続でカントリー・エアプレイ・チャート1位を取るという、最近久々にカントリー界の大物新人アーティストとして充分なくらいの実績を打ち立てた(このうち『When It Rains It Pours』と『Beautiful Crazy』はカントリーソング・チャートも堂々1位)、ノース・キャロライナ州シャーロット出身の29歳。しかし写真見ると頭薄くて顎ヒゲたっぷりでとても29歳には見えんが(笑)。

そのデビューアルバム『This Ones For You』はリリースの20176月にカントリー・アルバム・チャート1位になってからつい先々週まで、他のアーティストの新譜に1位を譲った後また返り咲き、そしてまた返り咲きと都合何と19回も1位に復帰、通算50週も1位を独占しながら、Billboard 200の方では最高4位止まりだっただけに、満を持してリリースした今回のセカンドで力強い売上で堂々1位を取って、さぞ気持ちいいだろうなあ。

実はこのセカンドからの先行シングル『Beer Never Broke My Heart』(Hot 100 21位)もすでにカントリー・エアプレイ・チャート1位を記録済みでこれで6曲連続。彼のスタイルは、ザック・ブラウン・バンドあたりの影響を色濃く感じさせる、ややロック寄りの正統派カントリー・シンガーソングライターで、カントリーファンだけでなく、ガース・ブルックスやティム・マグローとかも聴くよ、という70年代カントリー・ロック・ファンでも充分楽しめる楽曲と、何と言っても歌のうまさが強み。『Beer Never…』は豪快なカントリー・ロックナンバーだし、セカンドシングルの『Even Though Im Leaving』はマンドリンをバックにゆったりと歌う和み系の曲。なかなかアルバム全体もいい感じですね。

今回の109,000枚という実売は、最近よくあるコンサート・チケットを買うとアルバムをゲットできるというキャンペーンや、彼のサイトで販売されてるグッズとアルバムのバンドル・セールなどがかなり貢献してるらしいけど、それにしてもこの枚数は立派なものです。よく考えると先々週のカニエの実売枚数と全く同じ枚数だし(笑)。カントリー・アルバムが実売で大物ヒップホップ・アーティストに並ぶというのもなかなかないことです。

またこのアルバム、ストリーミングの方もかなりのもので、7,400万オンデマンド・ストリーム曲数を記録して、カントリーアルバムとしては史上最多の記録を達成。従来の記録保持アルバムが、大御所ジーン・オートリーのクリスマスアルバム(ジーンの「赤鼻のトナカイ」はクリスマス・ソングの定番)が記録した4,371万ストリーム曲数というからぶっちぎりですな。

今年のCMAアウォードでは「Beautiful Crazy」のソング・オブ・ジ・イヤーの他に、デビュー2年目にしてクリス・ステイプルトンやキース・アーバンを押さえて堂々最優秀男性ボーカリストも獲得してるあたりは、しっかりとした実力を持った彼に対するシーンの評価が高いのを物語ってるよね。このアルバムからもカントリー1位ヒットはまだまだ出るだろうけど、まだHot 100でトップ20に駒を進められてないので、ここらが今後の彼の課題でしょうか。

Rod Wave

さて今週は1位以外はトップ10内初登場はないのだけど、先週14位に初登場、今週10位に上昇してトップ10入りしてきたのがフロリダ出身のラッパー、ロッド・ウェイヴの『Ghetto Gospel』(27,000 EAUs)。ピッチフォークが8.0を付けたこのアルバム、2016年の「2 Phones」(Hot 100 17位)のヒットで知られるルイジアナはバトン・ルージュ出身のラッパー、ケヴィン・ゲイツがエグゼクティブ・プロデューサーになっているのは、ロッドがケヴィンをリスペクトしてそのスタイルに影響を受けたかららしい。基本打込みにピアノやギターを絡めるくらいで、音数を押さえたトラックをバックに南部のリアルな日常をフロウに乗せる、という攻撃的ではなく淡々とラップする彼のスタイルが結構共感を呼んでるのかもね。

さて来週の1位ですが、11/15-21リリース予定のアルバムの中ではなかなかこれという大物が見当たらないですね。可能性あるとすると6年ぶりの新譜になるセリーン・ディオンの『Courage』か、レディ・アンティベラムの『Ocean』あたりか。ルーク・コムズの売上とEAUがあまり落ちないようだと、2週連続1位というのも充分あり得る線ですね。ではまた来週。

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#161「Little Ghost」Moonchild (2019)

 #161Little GhostMoonchild (Tru Thoughts, 2019)


いよいよMLBの各年間賞の発表もほぼ終わり、今週は来年1月授賞式の第62回グラミー賞のノミネート発表と、年末色満載のイベントがそろそろ立て込んできました。一方季節も一気に冬の雰囲気を漂わせてきた今日この頃、年末にかけて2010年代ベストアルバムの発表など、各種イベントも目白押しだと思いますが、いい音楽で2010年代の最終年の残りをお過ごし下さい。

さて今週の「新旧お宝アルバム!」は今年リリースの新作。2010年代半ばからロサンゼルスをベースに活動を行っている、今風の音響派的サウンドと、レトロなR&Bやジャズをバックボーンに、ひたすら心地よい音楽を作り出して昨年は初来日も行った3人組、ムーンチャイルドの4作目のアルバム『Little Ghost』(2019)をご紹介します。

 

最初にムーンチャイルドの作品を聴いたのはいつ、どうやってだったか既にあまり記憶が定かではないのだけれど、多分彼らがブレイクした前作『Voyager』(2017)リリース直後にYouTubeでいろんな動画をあちこちと聴いて(見て)いた時に多分「Cure」とか「6AM」とかだったと思うけど、たまたま彼らの動画に巡り会ったのが最初だったかな。その幻想的というかドリーミーな趣味のいいシンセベースのトラックに、こちらもドリーミーながらそれでいて根っこに90年代オーガニックR&Bに通じるような女性ボーカルに一発で魅せられたものです。たまたまその直後に渋谷のレコード屋で『Voyager』のアナログ盤を見かけて即購入。それ以来自分の愛聴盤になって、その年の自分の年間ベストアルバムの4位に入れたくらい

2010年代はこの種の音響派的サウンドのR&B作品で素晴らしいものが次々に出たデケイドで、特にオッド・フューチャー系のフランク・オーシャンジ・インターネット、そしてケンドリック・ラマー人脈から一気にメインストリームに出てきたアンダーソン・パーク、テラス・マーティン、サンダーキャットといった連中がこのデケイドの一面を定義するような作品をリリースし、この種の作品に対する自分ののめり込みも一気に進んだ、そんなデケイド。

自分の2017年の年間ベスト5にもサンダーキャットDrunk』を筆頭に、このムーンチャイルドカリードといったアーティストの作品を入れたし、またこれらのアルバムはシーンでも高く評価されたということで一つのメインストリームジャンルとして認知されて、他のヒップホップやオルタナ・ロック・アーティストにも影響を与えることによってこのデケイドの音楽シーンを豊かなものにしてくれた、そんなサブジャンルとしての存在感を発揮してましたね。

Moonchild.jpg

このムーンチャイルドは、南カリフォルニア大学(USC)のジャズ・プログラムで知り合ったアンバー・ナヴラン、アンドリス・マットソン、マックス・ブリックの3人により結成。グループ名は、3人である日星空を眺めていたことがきっかけでしっくり来る名前だと感じたためとのこと。確かに彼らのサウンドは、夜星空を眺めながらチルアウトするのにぴったりですからね。

当初彼らのサウンドを聴いた後、メンバーのアー写を見て3人とも白人だったのには個人的にちょっと驚いたのを覚えてます。それほど彼らのサウンドはそのシンセをうまく楽曲の骨格に使う手法が70年代のスティーヴィー・ワンダーを想起させますし、アンバーのボーカルは(よく引き合いに出されるのですが)エリカ・バドゥコリン・ベイリー・レイといった囁くような90年代以降のオーガニックR&Bのスタイルを今風に聴かせてくれるので、てっきりUKの黒人メンバーによるグループだとばっかり思っていたのです。

一つ彼らのサウンドについて言えるのは、上述した2010年代を定義する音響派的サウンドR&Bのアーティスト達の中でも、現代風R&Bやヒップホップよりも(もちろんこれらの要素もあちこちにちりばめられていますが)、よりジャズの要素がベースに色濃く練り込まれていること。もともと3人ともジョン・コルトレーンを敬愛するというくらい、ジャズに軸足の一つを置いているわけで、フレーズや楽器の使い方(たとえばホーンのさりげない使い方など)のそこここにジャズっぽい意匠が感じられることも多く、それがまた彼らの音楽の独特の魅力にもつながっているのです。

今回の『Little Ghost』は、前作の『Voyager』でのブレイクを受けて世界中を回るツアーの後に作られた新作。彼らのインタビューなどでも明確に言っていますが、彼らはアルバムごとに新しい要素や楽器を必ず作品に盛り込む、というのを一つの方針にしているらしく、今回の新しい要素の一つはそれまでピアノで曲を書いてトラック作りはアンドリスマックスに任せていたというアンバーが積極的にトラック作りやプロデュースに参画したこと。それまでボーカルとフルートがメインだった彼女が今回シンセを買い込んでトラック作りにも大きく関与したことによって、これまでよりもよりリズムが強調された、ものによってはかなりファンキーなトラックができたとのこと。確かに今回のアルバムでは前作の星空にたゆとうような浮遊感満点のサウンドから、よりメリハリの効いたリズムの要素が、シンセベースやリンドラム、そしてパーカッションなどでより前面に出ていて、それが今回のアルバムの新しい魅力になっています。不思議なパーカッションとヒップホップを思わせるシンセベースと力強いリズムでいきなりアルバムオープニングから彼らの新しい世界に連れて行ってくれる「Wise Women」や、アコギのハーモニックスで始まり、ガッツリしたウォーキング・リズムに夢見るようなアンバーのボーカルが絡む「Strength」、更には90年代のディアンジェロの楽曲を彷彿とさせるライトR&Bファンクの「Onto Me」などはこうした要素が特に感じれられる楽曲です。

もう一つの新しい要素は、これまであまり登場しなかったアコギやウクレレ、さらにはカリンバ(親指ピアノ)といった新しい楽器を今回も積極的に取り入れていること。特にアコギサウンドと彼らの従来のシンセベースのトラックとの融合については、メンバーがボン・イヴェールの『22 A Million』(2016)からの影響が大きかったことを明言していて、アコギとシンセの融合というアイディアを彼のレコードからインスパイアされて実際にやってみたところうまくいったと。

フィンガースナッピングとアコギの演奏が、タイトなリズムのムーンチャイルド的シンセトラックと融合して独得のグルーヴを生んでいる「What You're Doing」、ジャズ的なスイング感溢れるリズムのシンセトラックにやはりアコギがさりげなく絡んでくる「Too Much To Ask」、そして逆にアコギの演奏やアコースティック・ピアノが主体となったメロディと楽曲にさりげなくシンセトラックが絡みついてきて、新しいムーンチャイルド楽曲のスタイルを提示している「The Other Side」など、それまでも独得のグルーヴを提供してきた彼らが、また新しい形でちょっとスタイルを変えたグルーヴを造りだしてくれていることが、何度か聴くうちに大変印象的に思えたのです。

また、「Sweet Love」でイントロから楽曲を通じて印象的に使われているカリンバの演奏も、彼らのサウンドに新しい魅力を付加しています。これはマックスが、90年代後半のディアンジェロジェイムズ・ポイザーザ・ルーツのプロデュースで有名)のサウンドを意識して使ったとのこと。

アルバム中最も現代風音響派的R&Bの意匠を明確にまとって、ジ・インターネットの作品といっても充分通る、シンセベースやシンセドラムの産み出すグルーヴが印象的な「Still Wonder」でアルバムはフィナーレを迎えますが、アルバムを通して聴くと、いつの間にかムーンチャイルドの創り出すグルーヴの世界にどっぷりハマっていて、ザワザワした日常から逃れて、幻想的で精神を落ち着かせてくれる、そんなサウンドの虜になっている自分に気がつく、そんなアルバムです。

Little Ghost (back)

ムーンチャイルド、そしてこのアルバムは、常日頃メディアから放出される今時のテンション高いサウンドにちょっと疲れ気味で、何か新しい、それでいて魅力的で音楽の素晴らしさを純粋に楽しめる、そんな音楽を求めている方には絶好のアルバム、アーティストです。折から深まり行く秋の雰囲気にもぴったりのこのアルバム、年末に向かうあなたの音楽ライフのサウンドトラックにいかがでしょうか。

<チャートデータ>
ビルボード誌全米インディ・アルバムチャート 最高位26位(2019.9.21付)
同全米R&B・ヒップホップ・アルバムセールスチャート 最高位13位(2019.9.21付)

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【今週の全米No.1アルバム事情 #3 - 2019/11/16付】

やっぱり強かったポスト・マローン。今週末のBillboard 2001位は先週のカニエを2位に退けて、何とポスト・マローンの『Hollywoods Bleeding』が先週の2位から通算5週目の1位に返り咲きました。51位は今年のチャートで最長、直近の51位アルバムは去年の78月に5週連続1位となったドレイクの『Scorpion』以来で、その前は201712月のザ・ウィークンドの『Starboy』。

今週の『Hollywoods Bleeding』のEAU78,000と、先週の81,000EAUからわずか3.7%しか落ちておらず、2位のカニエ(先週から73%のEAUダウン)とわずか6,000EAUの差というから、カニエの2週目のEAU大幅ダウンに助けられた格好。なお今週は残念ながら実売枚数はビルボードにもNYTにもLA Timesにも出ておらず不明。

ちなみにチャート初登場から現在までのこのアルバムのEAUの推移を見ると、4週目以降のEAU減少がゆっくりと進んでいて、デジタル/ストリーミングでかなり持続的に消費されているのがわかります。

9/21 - 489,000 (実売200,000)
9/28 - 198,000▲60.2% (実売26,000)
10/5 - 149,000▲24.7% (実売16,000)
10/12 - *124,000▲16.8%
10/19 - *108,000▲12.9%
10/26 - *99,000▲8.3%
11/2 - 93,000▲6.1% (実売9,000)
11/9 -*81,000▲12.9%
11/16 - 78,000▲3.7%

今年最長1位アルバムを決めて、年間アルバムチャート首位はほぼ確実となったこのアルバム、その人気のほども、そしてヒップホップとメインストリーム・ポップのハイブリットのようなコンテンツからも、色んな意味で2019年を代表するアルバムに。でも前も言ったように、今年のグラミーの対象期間の8月末への繰り上げの影響を食らって、11/20発表予定のグラミーノミネートの対象にならないのが何とも納得が行かないな。まあ今年のグラミーでは、ROYSOY部門で頑張ってもらいましょう。

ちなみに今週のトップ10初登場は1枚だけ。何と53,000EAU(実売44,000枚)とかなりガッツリとポイントを獲得して4位にカントリーの中堅女性シンガー、ミランダ・ランバートのメジャー7枚目『Wildcard』が登場。これで彼女は2007年の『Crazy Ex-Girlfriend』(6位)から、『Revolution 』(20098位)『Four The Record』(20113位)『Platinum』(20141位)『The Weight Of These Wings』(20163位)と6枚連続でBillboard 200のトップ10入りという堂々たる実績。先行シングルの「It All Comes Out In The Wash」はカントリーチャートでも22位と今一振るいませんが、ブレイク・シェルトンを降り出しに3人の男性遍歴を経て今年1月にNY市警の警察官とめでたくゴールインした恋多き、そして強き女のイメージのミランダ、アルバムもヒットで今週発表のCMAアウォードでの最優秀女性ボーカリスト部門の受賞も期待されます。

さて来週の1位に入って来そうなのはカントリーのルーク・コムズの2枚め『What You See Is What You Get』か、ピッチフォーク誌が10点満点の9.4点という高得点で「Best New Music」に選んだオルタナR&BFKAトウィッグスの2枚目『Magdalene』のどちらかでは、と睨んでいるのですがさてさて。ではまた来週。
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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#160「Belle Of The Ball」Richard Torrance & Eureka (1975)

#160Belle Of The BallRichard Torrance & Eureka (Shelter / ABC, 1975)


日本シリーズも、MLBポストシーズンも、そしてラグビーワールドカップも終わってしまって、これまで毎日スポーツで盛り上がっていたのが一気に寂しくなったような気がする今日この頃。いや、まだまだNFLもあるしNBAもある!という方もいらっしゃるでしょうが、個人的にはやはりMLBロスは大きいですねえ。これから年末にかけてはナショナルズ初優勝ということもあっていろんな特番が放送されるでしょうから、せいぜいそちらで楽しむことにします。

さて今週の「新旧お宝アルバム!」は久しぶりに70年代に戻ってみます。ウェスト・コースト・ロックのシンガーソングライターで、70年代に何枚かのアルバムを出した後は一線からは姿を消してしまいましたが、その作品が近年一部で見直されている、知る人ぞ知るお宝アーティスト、リチャード・トランスが自分のバンド、ユーレカを率いて、リオン・ラッセルのレーベル、シェルターからリリースした2作目のアルバム『Belle Of The Ball』(1975)をご紹介します。

Belle Of The Ball 

リチャード・トランス、という名前を知っている洋楽ファンはそれほど多くないと思いますが、彼の書いたある有名な曲はかなりの洋楽ファンの方(特に現在アラフィフ~アラ還の方)がご存知だと思います。その曲は「リオ・デ・ジャネイロ・ブルー(Rio De Janeiro Blue)」。そう、あのニコレット・ラーソンが2枚目のアルバム『In The Nick Of Time(愛の季節)』(1979)の中でカバーしていた、ちょっとマイケル・フランクスのナンバーを思わせるボサノヴァ・タッチの曲で、その後、クルセイダーズとのコラボで有名なフュージョンR&Bシンガー、ランディ・クロフォードが『Secret Combination』(1981)でもフュージョン風にカバーしていた、当時AORチューンとしてはそこそこ人気のあった楽曲ですのでご存知の方は多いのでは。


そう、この「リオ・デ・ジャネイロ・ブルー」の共作者がリチャード・トランスなのです。

リチャードはノース・ダコタ州の州都、ビスマルクの出身でしたが、音楽で身を立てるために高校卒業後カリフォルニアに移住。そこで1972年、当時音楽シーンの大物の一人、リオン・ラッセルのレーベル、シェルターとの契約をものにして今日ご紹介する『Belle Of The Ball』を含む3枚のアルバムをリリースします。オンの『Wedding Album』(1976)にもアコギで参加するなどこの時期リオンとのつながりが深かったため、この『Belle Of The Ball』を「スワンプの名盤」と評する方も多いのですが、自分的にはスワンプ、というよりはちょっと南部の香りのする硬派のウェスト・コースト・ロック、というのが正直な印象です。あ、これ全部褒め言葉ですので(笑)。

こうした作品のリリースをバックに、リチャードユーレカイーグルス、リトル・フィート、リンダ・ロンシュタット等々といった当時のウェスト・コーストの人気アーティスト達のライブのオープニングを務めたり、自らのナショナル・ツアーも3回ほど行うなど、バンド活動を勢力的に展開。この後リチャードリオンシェルター・レーベルと袂を分かってキャピトルと契約、「リオ・デ・ジャネイロ・ブルー」を含むアルバム『Bareback』(1977)を含む4枚のアルバムをリリース後は一線から退き、北カリフォルニアでもっぱらスタジオの経営や、地元のタレントのプロデュースなど裏方に回った活動を80年代を通じて地道に行っていたようです。

そのリチャードがアーティストとして一番輝いていた時代に、唯一全米アルバムチャートにもチャートインしたのが『Belle Of The Ball』。ジャケットには南部と思われる瀟洒なお屋敷の前にたたずむ白の正装の淑女の写真。タイトルが「舞踏会の佳人」という意味なので、そのものズバリのイメージ通りのジャケットということになります。

Richard Then

アルバムはいきなりツインアコギギターの豪華なカッティング・リフが印象的なインストゥルメンタル曲「The Jam」でスタート。このアルバムがリリースされた1975年には結構多くのウェスト・コースト系のロック・バンドがアルバムにインストを入れていて、ドゥービー・ブラザーズの「Slack Key Soquel Rag」(『Stampede』収録)のようなアコギの小品から、イーグルスの「Journey Of The Sorcerer」(『One Of These Nights(呪われた夜)』収録)のようなプログレッシヴ・カントリー・ロック的な壮大なもの、はてはパブロ・クルーズの「Ocean Breeze」(『Pablo Cruise』収録)のようなピアノによる12分の大作など、いろんなバンドが意欲的なアプローチを見せていました。ある意味この時期のアルバム作りのスタイルだったのだと思いますが、リチャードのこのナンバーは言わばイーグルスドゥービーのアプローチをうまく取り入れて、それをよりロック的なアプローチで、素晴らしい楽器のアンサンブルで聴かせてくれて、これでいきなり「おお何だ何だこれは」とわしづかみにされること請け合いです。

続く「Southern Belles」や「That's What I Like In My Woman」(このあたりは女性テーマですね)は、アウトローズとかのサザンっぽいウェストコースト・ロックでレイド・バックしたロック・ナンバーで、後者はよりブギータイプのストレートなロックンロール。このあたりはこのバンドの骨太な演奏力が堪能できます。その後ちょっと雰囲気を変えて「North Dakota Lady」ではアコギのカッティングと分厚いハーモニー・コーラスを印象的に配した、初期イーグルスを思わせるちょっと幻想的なメロディが聴けます。スローな「Side By Each」で一息ついた後、A面ラストは分厚いギターストロークのフレーズがメインの、またまたサザンロックっぽいストレートなナンバー「Hard Heavy Road」で終了。

B面オープニングは、あのリンジー・バッキンガム作で、彼がマック合流前のスティーヴィー・ニックスとのデュオによるバッキンガム・ニックス時代のアルバム『Buckingham Nicks』(1973)収録の「Don't Let Me Down Again」のカバー。跳ねるドラムスや独特のギターフレーズの感じがまんまバッキンガムの世界観の再現、という忠実なカバーでリチャードがこの曲をよっぽど気に入ってたのがよくわかります。

続く「Singing Spring」はイントロから登場するドブロの音色や、アームを多用するギターワークが確かにスワンプっぽい雰囲気を漂わせているナンバー。ボーカルもややスワンプっぽさを意識しているかも。そしてこの曲でも初期イーグルス風のパチッとしたハーモニーコーラスが印象的です。

Lady」はこのアルバムでも多分一番楽曲構成に凝ったのが分かる曲。イントロから入ってくるムーグの音色でおやっと思うのですが、すぐにラテン風なリズムでパーカッションをバックにムーディーな曲調に変貌。後半などちょっとこの時期のサンタナっぽい雰囲気も感じるナンバーです。


バンドの卓越したコーラスワークを存分にショーケースしてくれるのが次の「Lazy Town」。シンプルなピアノの弾き語りから楽器の音数を押さえた造りの楽曲に時折絶妙に美しいハーモニーコーラスが重ねられるという、地味ながらこのアルバムで屈指のナンバーだと思います。随所で半音にフェイクするリチャードのボーカルもこの曲のメロディに魅力を付加してます。

そして最後はやーお疲れ様、ご苦労さん的な「Sweet Sweet Rock & Roll」で打ち上げパーティー的にストレートなロックンロールで締め。これだけ工夫を凝らしたアルバム作りのエンディングにしてはやや単純すぎる嫌いはあるけどバンドが演奏を楽しんでる気分が伝わってくるのはいい。最後のバックコーラスがビーチボーイズ風なあたりが、このバンドのユニークなスタイルを改めて確認させてくれます。

なお、アルバムを聴き終えて、裏ジャケを見ると先ほどの佳人のものとおぼしきドレスやブーツが脱ぎ捨てられてピックアップトラックの荷台に放り出してあるというなかなか意味深なお遊びにも思わずニヤリとさせられます。

Belle Of The Ball (back)

さて80年代バンド活動から裏方に回ったリチャードですが、その後90年代はラス・ヴェガスのカジノでハウス・バンドをやったりという稼業をしながら2枚のCDをリリースするなど音楽活動は地味ながら継続。

2004年からは故郷のビスマルクに戻り、地元で音楽活動を続けながら地元タレント発掘TVショーの仕事を手伝ったり、教会の音楽監督の仕事をしたりとコミュニティーへの貢献をテーマにした活動を続ける、充実した人生を過ごしてる模様です。

Richard Now

秋が深まり、音楽を楽しむには最高の時期が到来しました。商業的にはこの1枚だけでシーンからは遠のいてしまったリチャード・トランス&ユーレカ。しかしこの1枚はこうした季節に楽しむには珠玉の一枚です。70年代ウェストコースト、サザンロックそしてもちろんスワンプのお好きな方には一押しの作品、Apple MusicSpotifyなどのストリーミングでは聴けないのが残念ですが、リチャードのウェブサイト(http://www.richardtorrance.com/vinyl.htmlで何とCDで買えるようですのでチェックしてみて下さい。

<チャートデータ>
ビルボード誌全米アルバムチャート 最高位107位(1975.5.24付)

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

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