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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
■My Best Albums of 2008 - #1
My Top 10 Albums of 2008
#1: Just A Little Lovin' - Shelby Lynne (Lost Highway)

:...ということで期せずして上位2枚がいずれも女性ボーカルのアルバムになってしまった僕の2008年のマイ・ベスト・アルバム#1はシェルビー・リンのロスト・ハイウェイ・レーベル移籍第一弾『Just A Little Lovin'』。このアルバムが出たのが去年の1月の末だから、僕の中ではほぼ1年を通じてトップを独走してしまったことになる。それくらいこのアルバムを最初に聴いた時の鳥肌度と、その後聴けば聴くほど味わいを増すアルバム・プロダクションにはまいってしまったのだ。その要素はいろいろあるのだが、一番大きな要素は、彼女がこのアルバムで表現しようとしたかのダスティ・スプリングフィールドへのオマージュがあまりにもピタッときていて、彼女の歌声やバッキングのサウンドにダスティが乗り移ったかのような静かな迫力のようなものがあったからだ。このアルバムのジャケもダスティのトレードマークであるブロンドのウィッグを付けたシェルビーが1969年の名盤である『Dusty In Memphis』でのダスティのポーズを模するかのようなポートレイトになっている。2001年に、6作目にしてこともあろうにグラミーの新人賞を獲得したシェルビーの名盤『I Am Shelby Lynne』(1999)(これもダスティを思わせるが当時僕はレビューで「ちあきなおみを思わせる」と書いた覚えがある。往年の和田アキ子が日本のアレサであったように、往年のちあきなおみの佇まいとたなびくようなソウルネスはダスティに通じるものがあったから)の成功にもかかわらずその後レーベルを転々とせざるを得ず、作品の内容も巧拙相半ばしていたシェルビーが、キャピトルとの契約が解消された後、オルタナ・カントリーのレーベルとして名DustyInMemphis.jpg高いロスト・ハイウェイから満を持して発表したこの作品の位置づけは特別なものだったに違いない。それはあたかもUKでの録音に飽きたらず、自らが愛するR&Bの聖地、テネシー州メンフィスに乗り込み、ジェリー・ウェクスラー、トム・ダウド、アリフ・マーディンという当時のアメリカンR&B制作陣としては最高のプロデューサー陣を起用して『Dusty In Memphis』を完成させた当時のダスティーの思いに自らをシンクロさせるというような考えがあったかもしれないと思わせるような、この作品はそんな入魂の、それでいて肩に無駄な力が一切入っていないとてもセンシュアルなパフォーマンスが聴けるそんな作品だ。

キャピトルとの契約が切れた次の方向性で悩んでいた彼女をこのダスティへのオマージュ・プロジェクトに向かわせたのは、何とバリー・マニローからの助言だったという。彼女はキャピトルのスタジオで、フランク・シナトラが使っていたマイクを使い、名匠フィル・ラモーンをプロデューサーに迎えて、バックはギターのディーン・パークスなど名うてのスタジオ・ミュージシャン4人のみを起用、そしてサウンド・エンジニアリングはこちらも数々の名盤を手がけたアル・シュミットが担当...となってくれば、このアルバム全体を通して感じられるサウンドの切れ味と静謐さ、その中から匂い立ってくるようなソウルネスが感じられるのも当然だ。そして何よりもシェルビーシェルビー自身であることを見失っていない。ダスティーへのオマージュだからといって(なりは真似してみても)ダスティーのような歌い方をしてみようとかそういうことは一切ない。ここにあるのは、シンガー、シェルビー・リンが非常に優れた作品と制作環境で、自らのタレントを100%あるがままに表現しようという試みを捉えた結果だ。
Dusty In Memphis』からは冒頭の「Just A Little Lovin'」を含め「Breakfast In Bed」「Willie And Laura Mae Jones」そしてランディ・ニューマン作の「I Don't Want To Hear It Anymore」が選ばれているが、冒頭のアルバム・タイトル・ナンバーを聴いてもらえば、上記の2つのパラグラフで僕が表現して伝えたいと思ったことが一発で理解してもらえると思う。控えめなバッキングのギター、フェンダーローズの深みのある響き、そしてその中で呟くように、ある時はあえぐように歌うシェルビーのパフォーマンスはあっという間に聴く者をこの作品の世界に引きずり込む。その後曲はいずれもダスティの代表曲であり、数々のアーティストにもカバーされた「Anyone Who Had A Heart」「You Don't Have To Say You Love Me」「I Only Want To Be With You」の3連発となる。特にエルヴィスのカバーで有名な「You Don't Have To~(この胸のときめきを)」などは力が入りすぎてもおかしくないところを、シェルビーはまずアカペラで入り、全曲を通じて淡々とそれでいて情感たっぷりに歌っている。しかしこれらの曲のバックの演奏は完璧で、一音一音が意味を持って鳴っている、という感触を与えてくれる。そしてシェルビーもそのクオリティの高いバッキングにきっちりガチコンで応えるパフォーマンスだ。最初聴いた時、ここで僕は軽い感動を既に覚えていた。


でも本番はこの後の「The Look Of Love」。歌い出しの「♪The Look, of love~」とノーイントロで始まって被さるようにグレッグ・フィールドのタムブラシがスイング感たっぷりに入ってくるところははっきり言って鳥肌が立った。今聴いてもやはりぞくっとするこの曲でのシェルビーのボーカルはこのアルバムの中でも白眉だと思う。特にオリジナルよりもぐっとビートを落としたよりジャジー感の強いアレンジにしたことがバカラックのペンによるこの曲自体の「凄さ」みたいなものを浮き彫りにしている。続く「Breakfast In Bed」はぐっと明るい日向に出て来たようなナッシュヴィルっぽいアレンジで聴かせる。こういうカジュアルな感じのシェルビーもいい。そして同じ『Dusty In Memphis』からの曲である「I Don't Want To Hear It Anymore」はいかにもメンフィスという感じのサウンドで原曲に忠実な演奏だが、ここでもシェルビーはあくまで自分自身の歌声でスムーズに聴かせてくれる。アルバムも終盤に近づき、このアルバム唯一の自作曲である「Pretend」はアレンジという意味でいえばこれまでのシェルビーの作品でのアレンジに最も近いアコギの弾き語り、という形で演奏される。しかしこれまでこのアルバムを通して聴いてきたことによって、そんな曲もひと味違ったニュアンスで聴く者の耳に入ってくる。全体の中でも自然にアルバムにとけ込んでいる、そんな曲だ。

ShelbyLynne.jpgアルバム最後はこれもダスティがUKでシングルとして発表したことのある、元はラスカルズのヒット曲でデヴィッド・キャシディもカバーしたことのある「How Can I Be Sure」。これをシェルビーディーン・パークスのアコギ1本をバックに見事に歌いきる。単なるオルタナ・カントリーのシンガーソングライターとしてのシェルビー・リンはもはやそこにはおらず、様々な楽曲をそれぞれに説得力のある歌唱力で表現することのできるシンガー、シェルビー・リンがそこにはいる。このアルバムはチャートで上がることもなければ、そんなに大きくメディアに取り上げられることもなかったが、ミュージシャンシップと作品とプロデュース・エンジニアリング・チームの高いクオリティでの共同作品として、あのスティーリー・ダンの『エイジャ(彩)』などと同等レベルの評価を受けてしかるべき作品だと僕は思う(今回のグラミーではベスト・エンジニアリング・レコード部門でこの作品を手がけたアル・シュミットがノミネートされている。是非取って欲しいものだ)。また、シンガー、シェルビー・リンとしての一つの大きな転機となるべき作品に違いない。今後どのような方向に彼女が進んでいくかは不明だが、この作品の完成度は彼女に取って大きな次のレベルに向かうための自信になったことは間違いないと思う。そういう意味ではバリー・マニローに大感謝せばなるまい。

いかがでしたか。ちょっと最後は思い入れが入りすぎたかもしれません。でも、1位にしても2位のアデルにしても、年の最初の頃に聴いたアルバムが年間を通じてトップとして評価できる、なんてのは近年あまりなかっただけに、この2枚のアルバムの素晴らしさは去年(僕的には)際立ってました。皆さんの2008年はどうでしたか?さて、次はグラミーの予想だなあ。
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