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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【新企画】新旧お宝アルバム!#17 「Beat Crazy」 Joe Jackson Band (1980)

#17『Beat Crazy』Joe Jackson Band (A&M, 1980)


秋雨前線がようやく落ち着いて日々秋の深まりを感じる今日このごろ。さて先週お休みを頂いたこの「新旧お宝アルバム!」、第17回目の今回は「旧」、といっても80年初頭にリリースされたジョー・ジャクソンの3作目のアルバム『Beat Crazy』を紹介します。


JoeJackson_BeatCrazy (Front) 


このアルバムが発表された1980年、ジョー・ジャクソンはまだイギリスのニューウェイヴ・パンク・シーンから出てきたちょっと変わったロック・シンガーソングライターで、後の『Jumpin' Jive』(1981)でスイング・ジャズに手を染めたり、『Night And Day』(1982)でよりメインストリーム・ジャズを意識したイギリス版ドナルド・フェイゲン的なシンガーソングライターへと変貌を遂げる前。

そのサイケデリックなデザインと色使いのジャケットからも窺い知れるように、このアルバムでのジョー・ジャクソンはまだまだニューウェイヴ・パンク・スカといった当時UK音楽シーンの時代を反映した、エッジの立った音楽を体現しつつ、一方では後のジャズへの傾倒を予感させるような、何か新しい方向性を探っているような貪欲な意欲と勢いを感じさせます。

しかし、この『Beat Crazy』はそうした様々な音楽的方向性を意識しながらうまーくバランスが取れていながら、音的にも鋭くタイトな作品に仕上がっている隠れた名盤。この当時ニューウェイヴ系の作品の中では、先鋭的ながらメインストリームとしても高い評価に値するという意味では、アフリカンポリリズムを大胆に取り入れたトーキング・ヘッズRemain In Light』(1980)と双璧をなすと思っていました。

ただ残念ながらジョーの作品というと、あの白いカッコいい靴のジャケのファーストや、全米大ヒット「Steppin' Out」を含む『Night And Day』、あるいはジャズとメインストリームロックをうまく昇華した『Body And Soul』(1984)あたりが語られることはあっても、この作品はなかなか話に登らないことが多く、今回取り上げることにしたわけです。


JoeJackson_BeatCrazy (Back) 


アルバムはジャケのイメージを体現するかのような、スカを意識した後乗りの激しいリズムに乗せてジョーがシャウトするタイトル・ナンバーでスタート。とにかくこのリズムがカッコいいこの曲、詞の内容は今流行の音楽やファッション、果てはドラッグに溺れてビートに狂ったように生きながら、社会政治的状況には無関心な若者たちを痛烈に批判している曲。この辺り、早くもタダ者ではないジョーの面目躍如というナンバー。

続く「One To One」はブームタウン・ラッツあたりを思わせるようないかにもニューウェイヴの匂いを漂わせる、ピアノとリズム・マシーンだけで男女の関係のねじれを歌うミディアム・バラード。

ダブのリズムを冷たく底辺に刻みながら、幸せに見えるようだがどの家庭にも悪夢が潜んでいる、とクールに歌う「In Every Dream Home (A Nightmare)」と、続いてフェードインのように流れこんできて、誰かに常に監視されている、自分は19歳までに死ぬんじゃないか、と歌う「The Evil Eyes」あたりではこの時代のUKの底辺にある暗い雰囲気をクールなリズムに乗せて歌っています。




ひたすらカッコよくタイトなベースラインに乗って恋人への苛立ちを吐き捨てるように歌う「Mad At You」や、永遠に繰り返すループのようなギターリフの印象的な「Someone Up There」、ダブのリズムを刻むギターをバックに人種差別をテーマにした詞を朗読するかのような「Battleground」、そしてスカのリズムに軽快に乗って、TVに出てくる可愛い坊や達には才能なんてある訳無いさ、と痛烈に歌う「Pretty Boys」など、どの曲もアルバム全体、他の曲とのシークエンスが途切れなく、様々なタイプの気持ちのいいビートに乗って繋がっているのですが、一曲一曲で言っていることはかなり痛烈な風刺だったり、どうしようもなく暗鬱なテーマだったりします。

しかしその二つの強力に相反する要素が、むしろこのアルバムの先鋭性と作品としての出来の良さを支えているのです。

美しいメロディの歌なのに歌詞の内容は残酷だったり凄惨だったりすることによってその作品が作品としての凄さを如実に発揮する、というのとよく似ている効果がここにはあります。

そして彼のそんな楽曲と演奏によって「ビート・クレイジー」にされてしまっているのは、このアルバムを聴いている我々なのかもしれません。




ジョーはその後ジャズやサルサなど多様なジャンルにその創作活動のインスピレーションを広げていっただけでなく、90年代にはクラシックの作品も発表し2001年にはグラミー賞クラシカル・インストルメンタル部門を受賞するなど、その音楽に関する広い知見と造詣の深さで今もユニークな活動を進めています。また自らのウェブサイト(joejackson.com)では「今何を聴いているか(What I'm Listening To)」と題して、彼が今興味を持っている音楽についてのブログを不定期にアップしています。秋の夜長、そういう彼の音楽についての広い知見を綴ったブログを紐解きながら、ちょうど35年前に発表されながら未だにそのエッジと瑞々しさを失わないこのアルバムを聴いてみてはいかがでしょうか。


<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位41位(1980.12.13付)

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テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

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