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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【新企画】新旧お宝アルバム!#27 「Adriana Evans」 Adriana Evans (1997)

#27Adriana EvansAdriana Evans (RCA, 1997)


2016年松の内も終わり、今日は成人式。全国で新たに成人となった若者たちがいろいろなイベントで盛り上がっていることでしょう。一方殆どの方にとっては3連休の最終日。年末年始で疲れた体と胃腸をゆっくりと休めながら明日からの仕事に英気を養っておられることと思います。そういう時に体と気持ちをほぐしてくれる、そんな音楽を今日はお届けしたいと思います。

今週の「新旧お宝アルバム!」は、今から18年前のアルバムですから、「新」でも「旧」でもなくいわば新旧中間のタイミングでリリースされていることもあってか、殆どの方に取っては初めて聴く名前かもしれませんが、作品の内容は自信を持ってお勧めできるネオ・ソウル・シンガー、エイドリアナ・エヴァンスの1997年のデビュー・アルバム『Adriana Evans』をご紹介します。


Adriana Evans (Front)


エイドリアナ・エヴァンスは1974年サンフランシスコ生まれ。母親はカウント・ベイシーディジー・ガレスピーといったジャズの大御所達のシンガーとして多くのレコードも出しているメアリー・ストーリングス。あの有名なジャズ・サックス奏者のファラオ・サンダースが彼女のゴッドファーザー(名付け親)であるなど、音楽、特にジャズやブルースに囲まれた環境に育ったエイドリアナが音楽の道を進もうとしたのは半ば当然。そして、彼女のしなやかで、ヒップなグルーヴ感満点な伸びやかなボーカルを聴くと、従来のひと世代前のアフリカン・アメリカン・アーティストが経由するゴスペルやブルースといった、泥臭さよりも洒脱な、それでいてアーシーな雰囲気を強く感じるのはこうした彼女の生い立ちや環境が大きな要因だというのが判ります。

また一方彼女のボーカルには、90年代のブラック・アーティストが必然的にそうであるように、そこここにヒップホップの香りをまとっていて、それが彼女のボーカルに微妙にコンテンポラリーなニュアンスと独特の魅力を加えています。それもそのはず、このアルバムを含め彼女がこれまでに発表した4枚のアルバム全てにおいて彼女と共にプロデュースをしているのは、彼女が18歳の時(1992年)大学進学のため移り住んだLAで知り合って意気投合して以来、ずっと彼女のサウンド・サポーターとして寄り添っているラッパーのジョナサン・“ドレッド”・スコット。彼はエイドリアナに先駆けてメジャー・レーベルから1994年にアルバムをリリース、エイドリアナをフィーチャーしたシングル「Check The Vibe」がアングラ・ヒップホップ・シーンで小ヒットになるなど、彼なりの活動を行っていましたが、このエイドリアナのデビュー作以降はその活動をほとんど彼女とのソングライティング、プロデュースに徹しています。二人が自然にプライベートなパートナーとなったのは自然の成り行きだったでしょう。

そのドレッドのプロデュースも、彼自身が幼少時ジャズやファンクを浴びるように聴いたという経験もあり、ヒップホップの色合いはあくまで微妙な味付けにうまーく使っている一方、色濃く70年代ソウルや、ジャズのグルーヴを強く感じさせるサウンドにフォーカスすることで、先に申し上げたエイドリアナの洒脱なグルーヴに満ち溢れたサウンドを生み出していることに成功しており、これも彼女の作品のクオリティを高いものにしている大きな要因です。

ヒップホップサウンドメイカーとR&Bシンガーのペアというと、あのアリシア・キーズスイズ・ビーツジェイZ、DMX、イヴ、ビヨンセ、ニッキー・ミナージなどのプロデュースで有名)が有名ですが、彼らのサウンド・アプローチがよりストリート色が強いのに対し、エイドリアナドレッドはあくまでジャズや昔のR&Bを強く意識したアプローチに徹しているのがいいところ。


 

何と言っても冒頭、ゆったりとした南からの朝のそよ風のように始まるイントロがいきなり聴くものの心を奪ってしまうLove Is All Around」がこのアルバム全体のふくよかで素晴らしい雰囲気を開始数秒で定義してしまいます。自分がこのアルバムに最初に出会った時、このイントロ一発でこのアルバムの素晴らしさを確信した、そういうキラー・オープニング・チューンです。

このアルバムはこの「Love Is~」に代表されるようなエイドリアナの伸びやかでしなやかなジャズ・テイストのグルーヴ満載のボーカルと、70年代R&Bを彷彿とさせるネオ・ソウル的なサウンドが楽しめる曲が満載。2曲目の「Seein' Is Believing」のギターソロなんて明らかにジョージ・ベンソンウェス・モンゴメリーあたりのジャズギターを意識してますし、70年代のフィラデルフィアソウルを思わせるゆったりしたフレーズに乗って美しい鳥が飛び立つようにふわっと立ち上がるエイドリアナのボーカルがひたすら美しい「Heaven」、重目のドラムビートに乗ったヴィブラフォンの音色が昔のジャズソウルを思い出させる「Reality」、ギター・ワウの音色が70年代R&Bジャズ・シンガーがクラブで歌っているようなインティミットな雰囲気を醸し出す「Say You Won't」などなど、枚挙にいとまがありません。




また一方、意図的にレコードのスクラッチノイズっぽいSEを入れながらオーガニックなエイドリアナの歌声がグルーヴ満点の「Swimming」やアルバム最後を同様のサウンドアプローチで、エイドリアナの伸びやかな高音ボーカルが清々しい「In The Sun」などは、ドレッドが、ア・トライブ・コールド・クエスト(ATCQ)あたりのクールでありながら日なたの暖かさを感じさせる独特のヒップホップ・サウンドを強く意識しながら、それを使ってエイドリアナのボーカルを引き立てようと言う90年代のソウル・レコードらしい工夫が感じられます。ヒップホップサウンドメイカー、ドレッドの面目躍如といったところ。ATCQなどのネイティヴ・タン一派の都会的なヒップホップサウンドの感じが好きな方であればこの辺も気に入って頂けると思います。



エイドリアナの作品は、この次の同様のアプローチでの『Nomadic』(2004)、この作品リリース後、ブラジルに一時期渡っていた頃の影響を感じさせる『El Camino』(2007)、そして最新の『Walking With The Night』(2010)と、いずれも素晴らしいものばかりですので、このアルバムを聴いて気に入って頂けた方はこれらのアルバムも、必ず楽しんで頂けると思います。

Nomadic.jpg

最近の新しいR&Bというと、どうしてもEDM系のサウンドか、ヒップホップそれもミニマルなサウンドの音作りの味付けが濃いものが多く、70年代ソウルやジャズ・ソウルなどに親しんだ方にはちょっと手が出にくいことが多いかとは思いますが、このエイドリアナ・エヴァンスの作品などはそうした方々にも強くお勧めできるものです。

また一方、今回成人式を迎えられる世代の、最近のヒップホップやEDM系のサウンドに慣れ親しんだR&Bリスナーの皆さんにも、エイドリアナの素晴らしい歌声と、無駄な装飾を削ぎ落としたようなオーガニック・ソウル的なサウンドは、きっと新鮮な感動を届けてくれるものと思います。

Adriana Evans (Back)


皆さん、いい音、いいレコードで楽しい洋楽ライフをお送り下さい。


<チャートデータ>

ビルボード誌全米R&Bアルバム・チャート 最高位33位(1997.5.17付)


Seein' Is Believing同全米ソウル・シングル・チャート 最高位50位(1997.5.31付)

Love Is All Around同 最高位65位(1997.9.27付)

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