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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【新企画】新旧お宝アルバム!#30「You Should Be Here」Kehlani (2015)

#30『You Should Be Here』Kehlani (Tsunami Mob/Atlantic, 2015)


ロック・ミュージシャンの訃報が相次いだ1月も終わり、2016年も早くも2月。寒さが厳しい今日この頃ですが、2週間後の2/15(日本時間は2/16)にはグラミー賞授賞式、という洋楽ファンには何かと落ち着かない季節になってきました。皆さんの洋楽ライフはいかがですか?

今週の「新旧お宝アルバム!」は「新」のアルバムをご紹介する番ですが、今回は、昨年iTune Music Storeにリリースしたミックステープが各方面で高い評価を得て、まだCDは一枚もリリースしてないながら今月発表のグラミー賞のアーバン・コンテンポラリー・アルバム部門にノミネートされている当年若干20歳の女性R&Bシンガー・ソングライター、ケーラニことケーラニ・パリッシュ嬢の『You Should Be Here』を取り上げます。


Kehlani-YouShouldBeHere.jpg 

ケーラニはサンフランシスコ郊外のオークランド出身の、自称「黒人、白人、アメリカ先住民族、ヒスパニックの混血」のエキゾチックなルックス。父親が早くに亡くなり、母親は刑務所を出たり入ったりというなかなかヘヴィな家庭環境のため、幼少から伯母さんに育てられ、最初はジュリアードに進学してダンサーになることを夢見ていたとか。

でもローティーンの時に膝を傷めたため歌に進路を転じ、地元のポップライフというポップバンドに参加。ポップライフは2011年に『America's Got Talent』(アメリカン・アイドル類似のリアリティ・ショー)の第6シーズンに出場し、最終審査で4位という結果を出すのですが、その際審査員に「君には才能がある。でもグループは不要では」と言われたことから、ソロでのキャリアを決意。

その後、元マライアの旦那で、前述の『America's Got Talent』の審査員でもあったニック・キャノンのバックアップもあって、2014年に最初のミックステープ『Cloud 19』を発表。これがビルボード誌他音楽誌の耳にとまり、期待の新人として注目を集め始めます。そして満を持して昨年2015年5月に発表した2本目のミックステープがこの『You Should Be Here』。

まず、R&Bアルバムにしてはやたら可愛らしい、ファンタジー・アニメ調のジャケデザインが目を引きます。そしてアルバムに耳を傾けると、まず最初の「Intro」では彼女の祖父(または庇護者)とのヴァレンタイン・デーの会話のスキットから始まりますが、後半ではまるでこれから『ターミネイター』か『アルマゲドン』が始まるの?というようなあたかもSFアクションゲームに出てきそうなシアトリカルな独白をつぶやくケーラニ

「神様は最強の兵士には最も困難な戦いを授けて、兵士はそれを死なずに切り抜けることで強くなるというわ。誰もが私は無敵に見える、恐れを知らない、勇敢に違いないって言うけど私だってただの人間。私はバーでドリンクを注文できるような年になる前に、そこらの人が一生かかって経験するよりも多くのものを見て、多くの痛みを経験してきた。

でも私は強くならなきゃ、自分のためというよりも大きな目的のために。なぜなら私の義務は私という人間を遥かに超えた大きなものだと思うの。家族を救うとか以上の。それは世界のため、なぜならこの世にいる誰かがこれを聴く必要があるから。だからこれはここにはいなくて、私がどれだけの経験をしてきたか、これからどこまで行けるかを見ることができない誰かのため。ここまで来れなかった家族や途中で失ってきた友達とか。

それとも私が自分の気持ちを捧げたけど、それにどう向かったらいいか判らない誰かのためなのかもしれない。あなたはここにいなくては(You should be here)

最後の部分でこれが自分自身の経験を踏まえた彼女の決起宣言であり、次にプレイされる「You Should Be Here」につながるモノローグであることがわかります。そして「You Should Be Here」というのが、愛する相手が自分の気持ちを理解せず、あたかも遠くにいるように振る舞うことについての彼女の叫びのメッセージであることも。

YouShouldBeHere-Back.jpg

You Should Be Here」以降アルバムのほとんどの曲のサウンドは、自主制作ということもあってか、いわゆる打ち込み系のサウンドプロダクションが中心の、フランク・オーシャンとか、以前にご紹介したティナシェとかいった、いわゆる21世紀のコンテンポラリーなR&Bサウンドです。

しかし、このアルバム・タイトルナンバーも、そして相手を挑発するようなリリックの「How That Taste」も、「ハイヒールなんてあたしの柄じゃない/あたしはスニーカーの紐をきちっと締め上げる方がいい」と彼女のスタイルのリアルさを象徴する「Unconditional」も、そして「今生きてるって感じる!」とポジティブなメッセージでアルバムを締めくくる「Alive!」も、人工的なサウンドというよりも、スペーシーながらR&Bの伝統的なぬくもりを感じさせながら、聴きやすいフックやメロディ、そして抑えめながら効果的なリズムリフが効いた耳に残るサウンドで、ケーラニのソングライティングの才能に新鮮な驚きを感じずにはいない、そんな楽曲揃い


そして特筆すべきは彼女の歌唱。軽くハスキーさの入った伸びのあるボーカルで、堂々とこうした彼女のステイトメントともいうべきメッセージを載せた楽曲を歌い切る様子は、同世代のティナシェジャネ・アイコらのレベルを超えて、あのアーリヤを彷彿させる瞬間が一度や二度ではありません。「ひょっとして私はあなたにふさわしくないのかも」と一転していたいけさを見せる「The Letter」ではちょっとアリアナ・グランデ風だったり、「Bright」では彼女が影響を受けたというローリン・ヒルを思わせるような正統的なR&B歌唱を披露するかと思えば、ヒップホップ的なトラックの「Runnin'」ではリアーナを思わせる今風ヒップホップR&B的な歌唱を聴かせたりと正に多様多才。しかも収録曲は全て自作自演。America's Got Talent』の審査員が才能がある、と断言したのもむべなるかなという感じです。

もちろん彼女は自分だけで勝負するのではなく、ここ数年ヒップホップ・シーンのみならずポップ・フィールドや一部のロックファンにも注目されているChance The Rapper(「The Way」)やBJ The Chicago Kid(「Down For You」)といったシカゴ中心に活動するラッパーやR&Bシンガーソングライターたちをフィーチャーし、しっかりシーンからの注目を集められるようなアルバムづくりをしているあたりはビジネスパーソンとしてもなかなか抜け目がないと見ました。

それを証明するかのように、このミックステープはリリースと同時に各音楽誌の注目を集め、直後に彼女はメジャーのアトランティック・レーベルと契約。現在メジャーデビューアルバムを鋭意制作中なのだとか。

DownForYou.jpg

とにかく、最近のブラック系のアルバムは打ち込みで音は人工的だし、ヒップホップ色が強くてちょっと...と思っておられるようなR&Bファンの皆さん、新しいヤング・アダルト層のアーティストの代表として、今のR&Bのあり方を素晴らしい形でエグゼキュートして、グラミー賞ノミネーションまで獲得してしまったこのアルバムで、今のR&Bの新しい息吹を感じてみることをおすすめします。

<チャートデータ>
ビルボード誌
全米アルバム・チャート 最高位36位(2015.5.16付)
同全米R&B/ヒップホップ・アルバム・チャート 最高位5位(2015.5.16付)

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テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

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