
さて年間チャートの予想発表、いよいよトップ3です。
#3. Love Yourself ▲2 - Justin Bieber (#1 for 2 weeks - 2/13 & 27)
<Hot 100 - 41 wks, Top 40 - 38 wks, Top 10 - 24 wks>
4位に続いて年間3位のワン・ツー・パンチで今年の強さをいかんなく見せつけているジャスティン・ビーバーの「Love Yourself」。No. 1アルバム『Purpose』から、「Where Are U Now」「What Do You Mean?」「Sorry」に続く4曲目のヒットでアルバムから何と3曲目のNo.1ヒットという強さ。2月に間に1位初登場のゼイン「Pillowtalk」を挟んで飛び石で2週1位を記録、UKでは昨年12月から1月にかけて通算6週間1位の大ヒットでした。
「Sorry」と違って音数をぐっと抑えてギターのつまびきだけで頭から最後まで通し、なかなか魅力的なメロディが素晴らしいこの曲、あのエド・シーランとの共作。ナルシスティックな女の子を皮肉っぽく歌う歌詞と、この曲についてはEDMっぽいアレンジを敢えて避けたことがこの大ヒットの要因でしょう。エド・シーランのメロディはこういう抑えたアレンジで光るからね。
で、この流れに乗って今年ジャスティンは自分のレコードだけでなく、メジャー・レザーの「Cold Water」(8月最高位2位)、DJスネイクの「Let Me Love You」(10~11月最高位4位)と他のアーティストの客演でも大ヒットにからんだジャスティン、2016年カムバック賞の資格充分だと思うのですがどうでしょうか?
#2. Work ▲3 - Rihanna Featuring Drake (#1 for 9 weeks - 3/5~4/30)
<Hot 100 - 36 wks, Top 40 - 33 wks, Top 10 - 18 wks>
年間2位に予想したのは、今年の第一四半期を席巻したリアーナ+ドレイクの「Work」。2/13に9位にいきなり初登場、その後7位→4位→1位とあっという間に1位をマークそのまま9週突っ走った横綱相撲的なチャートアクションが圧倒的でした。「♫Work work work work work♫」というフレーズが耳にこびりついた人は多かったようで、かのオバマ大統領もホワイトハウスのイベントでこの歌を口ずさんだ、というのでニュースになってましたな。
あとこの曲では中盤から軽ーい感じでレイドバックなフロウで絡んでくるドレイクが良い感じの味を加えていたのも楽曲の魅力を加えてたかも。でもシンプルなメロディ、そして音数少なめの打ち込みだけで構成されたシンプルなトラックでこんだけ大ヒットしたわけですから、アーティストパワーのなせる技といったところでしょうか。アルバム『ANTI』よりの第一弾シングルで、UKでは2月から3月にかけて2週間最高位2位でした。
さあ、いよいよ1位は?当然あの曲ですわ。
#1. One Dance ▲4 - Drake Featuring WizKid & Kylo (#1 for 10 weeks - 5/21 & 6/4-7/30)
<Hot 100 - 32* wks, Top 40 - 32* wks, Top 10 - 20 wks>
年間1位の予想は、多分大方の人も予想してたとおり、ドレイクの「One Dance」。4/23に21位初登場、その後13位→3位→2位→1位とこちらもリアーナの「Work」に劣らず横綱相撲ぶり。1位1週取った後、こちらも1位初登場のジャスティン・ティンバレイクを1週はさんで、再び1位、そのまま通算10週1位をキープした今年を代表するヒットになりました。UKでは更にでかいヒットを記録、4月~7月にかけて何と15週間1位という、1994年のウェット・ウェット・ウェットの「Love Is All Around」(同じく15週1位)以来の記録的ヒットになってるからまあすごい。
アルバム『Views』も、メジャーデビュー以来『Thank Me Later』(2010)、『Take Care』(2011)、『Nothing Was The Same』(2013)、『If You're Reading This It's Too Late』(2015)、トラップ・ラッパーのフューチャーとのコラボアルバム『What A Time To Be Alive』(2015)に続いて連続6枚目の全米No.1アルバム。しかも発売初週の売上が104万AEU(実数売上は85.2万ユニット)という今年のアルバム売り上げでは、1位5週目(1/9付)で119万AEU(実売116万ユニット)を記録したアデルの『25』に次ぐ売上を記録。アルバムチャートトップに通算13週居座るという大ヒットアルバムでした(10週以上のアルバムチャート1位は、去年のテイラー・スイフト『1989』の11週以来)。
このアルバム全体が、前作の『If You're Reading This...』あたりからの傾向でもある、かなり音数を絞り込んで、シンプルな打ち込みトラックとドレイクの独特のグルーヴを持ったフロウとで勝負してそれがかなり良い結果を生んでるのですが、この「One Dance」などその最たるもの。古くからの洋楽ファンだとなかなか馴染めない類いの音かもしれないけども、今の音楽シーンの一つの完成形のサウンドであることは間違いないところ。今週発表のグラミー賞ノミネーションでもかなりの部門に顔を出してくることが予想されるね。
ということで年間チャート予想、いかがだったでしょうか。2016年の全米ヒットチャートの全体的な所感としては、
※ポップ・ミュージックの新しい形を示唆するようなサウンドがいくつか見られたこと(トウェンティ・ワン・パイロッツのブレイクはその一つの例でしょう)
※相変わらずEDM系は強いけどもこれまでに比べて相対的な楽曲のレベルはかなり上がってきたのではないかということ
※一方で結構安易なコラボや中身どうでもいいアーティスト(例えばパンダとかw)は相変わらずヒットチャートを賑わしていたこと
といった感じではないかと。
思えば、自分がビルボードのHot 100のチャートを毎週毎週データベースに入力するようになったのが2000年頃。70~80年代の高校生大学生の時代にケイシーと湯川さんの全米トップ40を聴きながら毎週ノートにチャートを付けていたのとやってることは似ているけども、あの頃の毎週ドキドキしながらノートを書いていたとのは明らかに自分に取ってのインパクトは違う。でも、毎週Hot 100を入力していることによって、その時その時のヒット曲のヒットの趨勢というか、動きというか、そういうものが肌で感じられると言う部分は共通している。
そういう意味でいうと、昔に比べて今はより客観的にヒット曲の動向を観察できるようになった、と言う点はあるかもしれない。
そんな中で、何となく今年のチャート、ヒット曲の出方を見ながら感じたのが上にまとめた3つのポイント。正直言って、去年から今年にかけてのヒット曲の出方って、2000年代後半以降の中でもいつになくすごく健全だと思う。アデルやドレイクやジャスティン・ビーバーやブルーノ・マーズやエド・シーランといったところが繰り出してくるちゃんとした良い曲、時代の脈を伝えてくれるクオリティ高い楽曲がちゃんと上位に上がってヒットしていて、チャートが健全に機能している、という感じが最近ひしひしとするのだ。
こういう状況って、80年代後半~90年代前半にかけてヒットチャートが死ぬほどつまらなくなっていたところから(その時期真剣に洋楽から離れていた時期もあった)90年代中盤以降、まるで冬を越した木々の芽や花が咲き誇るように、ロック、アメリカーナ、オルタナティヴ・ロック、ヒップホップなど様々な音楽ジャンルの充実が進んだあの頃の状況にすごく似ていると思う。
そういう意味で、来年のヒット曲動向、チャートの動向が大変楽しみになってきた。引き続きこのブログでは昔懐かしい音楽もカバーしていきますが、大衆音楽なんてその時その時の時代を映し出す生き物なので「今」の音楽もそれ以上にカバーしていきたいと思います。よろしく。
