Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#73「Tracy Nelson」Tracy Nelson (1974)

 #73『Tracy NelsonTracy Nelson (Atlantic, 1974)


ワシントンDCに50万人を超える参加者が集結したウーマンズ・マーチなど、混乱のうちに執り行われたトランプ新米国大統領就任式から早数日、まだこれから新政権の下でアメリカがどういう方向に進むかははっきりしませんが、新大統領がどういう行動を今後取って行くのか、まずは見極めたいと思います。1月も早くも後半に突入、これから年度末に向けて何かと忙しい方も多いでしょうが、寒い日が続くここ最近、お互いに体調には充分気を付けて洋楽ライフを楽しみましょうね。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は旧アルバムをご紹介する番ですが、今回は1970年代前半にシーンに登場した多くのシンガーソングライター達の一人ながら、よりカントリー・フォーク系のブルースに根ざした作品を現在に至るまで発表し続け、最近ではブルースシーンへの貢献に対する評価も高い女性シンガーソングライター、トレイシー・ネルソンのソロデビュー作『Tracy Nelson』(1974)をご紹介します。

Tracy Nelson (Front) 

このレコードのジャケットは、セピア色のトーンで描かれたトレイシーのポートレイト。裏ジャケはトレイシーがワンちゃんと一緒にニッコリと微笑んでいるもので、若々しさが故の魅力溢れるポートレイトになってます(この作品発表当時彼女は27歳)。


ところがアルバムオープニングの「Slow Fall」の歌い出しの第一声を聴くと、そのやや低めの力強いソウルフルなコントラルト・ヴォイスに「おおっ」と呟いてしまう、そんな意外性にいきなりのめり込んでしまう、このアルバムはそういうアルバム、そしてトレイシーはそういう魅力に溢れたシンガーです。

もともとキャリアのスタートが、1964年に当時住んでいたウィスコンシン州マディソンからほど近いシカゴで録音された、アコースティック・ベースのブルース・アルバム『Deep Are The Roots』という作品で、この時のバックには後にブルース界の大御所となるブルースハーピスト、チャーリー・マッスルホワイトがいたというから、最初から筋金入りのブルース・シンガーだったわけです。ただ彼女のキャリアはブルース一辺倒ではなく、60年代後半はサンフランシスコに移ってマザー・アースというカントリー・ロック・バンドを率いてフィルモア・ウェストに出演、ジェファーソン・エアプレインジャニス・ジョプリンと共演したり、1969年にはソロ名義で『Tracy Nelson Country』というカントリーアルバムをリリースしたりと、フォーク・カントリー中心の広いジャンルで活動を続けていました。


その彼女がマザー・アースと袂を分かってリリースした実質的に最初のソロアルバムがこの今回ご紹介する『Tracy Nelson』。プロデューサーにはサイモン&ガーファンクル、ボブ・ディラン、ジョニー・キャッシュらの大ヒットアルバムの数々を手がけた大御所、ボブ・ジョンストンを迎えて、ブルースやR&Bに強いアトランティック・レーベルからリリースしたこのアルバム、トレイシーの本気度みたいなものが感じられるアルバム

その本気度は、前述の冒頭「Slow Fall」の力強いソウルフルな歌唱からも充分くみ取れるものです。続く「Love Has No Pride」は後にリンダ・ロンシュタットもアルバム『Don't Cry Now』(1973)でカバーしたことで有名な、エリック・カズリビー・タイタスのペンによるカントリー・ロック・バラードの名曲。ここでもトレイシーメリー・クレイトンストーンズの「ギミー・シェルター」でのミック・ジャガーとのデュエットが有名な黒人女性シンガー)やジム・ギルストラップといった名うてのシンガー達のコーラスをバックに実に堂々としたソウルフルな歌声でこの曲を歌いきってます。


ジョー・コッカーマッド・ドッグ&イングリッシュメンにも参加して、後にキム・カーンズに「Bette Davis Eyes」の大ヒットを提供することになるドナ・ワイスのペンによるカントリー・バラード「Hold An Old Friend's Hand」は、トレイシーの力強い歌声がゴスペル・シンガーのような風格。スワンプ風味たっぷりのフェンダー・ローズのイントロで、こちらも南部ゴスペル的なたたずまいで情感たっぷりに聴かせる「Rock Me In Your Cradle」でのトレイシーは若き頃のアレサ・フランクリンをちょっと思わせるような存在感も。この曲はプロデューサーのボブの作品。そしてLPでいうとA面ラストを飾るのは、ホーンセクションやバックコーラス隊をバックに、ベイエリアファンク・ナンバー風のアレンジで思いっきりソウルフルに聴かせるディランの「It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry」のカバーでこれが素晴らしい出来。ホーンアレンジはあのニューオーリンズの大御所、アラン・トゥーサンというのも納得。



後半のスタートは何とカントリーの大御所、ウィリー・ネルソンとのデュエットで、ハーモニー・ボーカルにリンダ・ロンシュタットという豪華な組み合わせでのカントリー・ナンバー「After The Fire Is Gone」。いやいやここでの朗々としたトレイシーのボーカルは明らかにウィリーを圧倒してます。この曲のパフォーマンスが素晴らしかったことは、1975年第17回グラミー賞最優秀カントリー・デュオ/グループ部門でこの曲がノミネートされたことでも明らか。

ビル・ウィザーズの「Lean On Me」のカバーに続いて、黒人女性ブルース・シンガーのアーマ・トーマス1964年の曲「I Wish Someone Would Care」のカバーとここはカバー攻撃ですが、彼女の抜群の歌唱力と声質の力強さからいって、やはり後者のアーマ・トーマスの曲のような、ゆったりとしたゴスペル・バラード風の曲で、より彼女のボーカルの魅力が発揮されている気がします。ちなみにトレイシーは後に1999年第41回グラミー賞最優秀コンテンプラリー・ブルース部門で、そのアーマ、そしてマーシャ・ボールとのトリオでの「Sing It!」がノミネートされることになります。



フェンダー・ローズの音色とバックのホーンセクションがスワンプ風味を盛り上げる「Lay Me Down Easy」に続いて、アルバムラストはトレイシー自らのペンによる、マザー・アース時代の曲のセルフカバー「Down So Low」。この曲もリンが『風にさらわれた恋 (Hasten Down The Wind)』(1976)でカバーしていましたが、トレイシーのボーカルの魅力が十二分に発揮された、南部の教会で歌われているかのようなこの感動的なゴスペルナンバーでアルバムは幕を閉じます


Tracy Nelson (Back)


こんなにソウルフルでビックリするくらい魅力的な歌唱パフォーマンス満載で、有名プロデューサーの素晴らしい仕事で作り上げられた作品ですが、残念ながらチャート的には芳しくなく、その後も1980年頃までコンスタントにアルバムを発表するも大きな商業的成功を得ることはできていません。

その後10年以上のブランクの後、1993年にブルーグラス系のレーベル、Rounderからリリースした『In The Here And Now』で復活したトレイシー、その後またコンスタントにアルバムを発表しながら、カントリーやブルースのシーンで活動を続けていて、2013年にはブルース・ミュージック・アウォードで、「ココ・テイラー賞(トラディショナル・ブルースの女性シンガー部門)」にノミネートされるなど、メインストリームの成功には縁がないものの、シーンでの存在感はかなりがっちりと確保しているようです。


このアルバム、他のお宝アルバム同様、ワーナーミュージック・ジャパンさんの「新・名盤探検隊」シリーズで2015年にCD化されてから比較的入手しやすくなっています。寒い気候でほっこりした雰囲気が恋しい今日この頃、トレイシーの熱いソウルフルなボーカルの魅力で暖まってみて下さい。


 <チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバムチャート最高位145位(1974.11.2付)

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