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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【年末恒例企画#2】My Best Album of 2018(Part 2, 7 - 4 位)

さて、続いてMy Best Album of 2018、7位です。


7位:『Dear Annie』Rejjie Snow (300/Brace Face/BMG)

Rejjie Snow Dear Annie 

レジー・スノウっていう名前を初めて聞いたのはうちのヒップホップ・トラップ・ヘッズの息子から。去年だったか、毎日チキチキハイハットのトラップトラックを聴きまくり、自分でもトラックを作り始めてた息子は、今時のR&Bの新しいアーティストへの耳も早くて、ブレイク前からThe InternetとかSZAとかジョージャ・スミスとかは「オヤジが好きそうだぜ」と教えてくれててなかなか重宝していたので「今何かお勧めある?」と聞いたら帰ってきたのがこの名前。当時はまだミックステープを出したばっかりだった彼の「D.R.U.G.S.」って曲をYouTubeで聴いたところ、何しろ最近のヒップホップにしてはトラップっぽさが皆無(笑)で、サウンドのアプローチも90年代あたりのネイティヴ・タン系のポップ感覚溢れる感じ(PVもそんな感じのアニメなのも好感度だった)で、当時気に入ってたチャンス・ザ・ラッパー系の明るさが即気に入り、当時の「Song Of The Day」にもすぐアップしたくらい。(Song Of The Day #853)

そのレジーが満を持して今年初フル・アルバムをリリースした。これは買わねばなるまい、ということで即ヴァイナルで購入。このアルバムの収録曲20曲は、アルバムリリース前に2枚のEPに分けて発表されたもの。その楽曲はどれもこれも「D.R.U.G.S.」同様、ヒップホップアルバムとしては90年代あたりのクラシックなスタイルで、3曲にフィーチャーされているデイナ・ウィリアムス嬢などのR&Bシンガーも多数フィーチャーした、70年代っぽいR&B色もかなり濃厚な、クオリティも高い楽曲がずらり並んでいて、我々のように70年代ソウルを下敷きにして、90年代ヒップホップやR&Bに慣れ親しんだリスナーにはたまらない内容。でもそれでいて古臭さは全くなく、使われているサウンドスタイルや音像系は間違いなく今の時代のもの。カリードとかともサウンドは似てるけど、もっとオールドスクールヒップホップの香りと、90年代UKアシッド・ソウルなんかの影響も感じる

とにかくヒップホップが楽しかった時代の記憶を随所で呼び起こさせてくれる楽曲揃いで、デ・ラ・ソウルのトラックにありそうな、メロウでリズミックなトラックに乗ってデイナ嬢のドリーミーナボーカルと去年ブレイクしたラッパー・デュオのアミネのフロウをフィーチャーした「Egyptian Luvr」とか、アルバムラストのシンガーのマイカー・ウィリアムスをフィーチャーした「Greatness」なんかでは「ママは俺が生まれた時スティーヴィー・ワンダーに夢中で/Superstitionを一晩中かけてた」なんてなフロウがぽろっと出てくるあたりも楽しい。キャロライン・スミス嬢をフィーチャーした「23」ではレジーも歌いながら、ドリーミーでラヴリーなサウンドとメロディに乗って口笛なんか吹いてる。「Spaceships」とかも『ファースト・フィナーレ』の頃のスティーヴィー・ワンダーまんまのご機嫌なソウル・ジャムだし。とにかく今時のヒップホップっぽくないけど、ヒップホップとR&Bの楽しさのエキスがぎっしり詰まってるようなそんなアルバムだ。多分このアルバム最初に通して聴いてたとき、自分はニヤニヤしてたと思う(笑)

レジーって、ナイジェリア人の父親とアイリッシュ・ジャメイカンの母親の間に、アイルランドのダブリンに生まれ、フロリダに移り住む18歳までそこで育ったらしい。道理で普通のUSのヒップホップっぽくないわけだ。凄く音の素性がコスモポリタンな感じで、UKアシッド・ソウルの香りがあるのも納得できる。そのレジー、USには数年だけいて、今はダブリンに戻ってそこで活動を続けているらしい。

音的にはチャンスとか、ケイトランダとか、タイラー・ザ・クリエイターとか、最近のフィールグッドなスタイルのヒップホップのまた新しいアーティストが出てきたぞ、こいつはフォローしなきゃ、という感じですので、最近のチャンスとか90年代のネイティヴ・タン系のヒップホップとかがお好きな方には100%お勧めします!




6位:『Good Things』Leon Bridges (LisaSawyer63 / Columbia)


Leon Bridges Good Thing 

こちらは現代におけるネオ・クラシック・ソウルの旗手、という鳴り物入りで2015年に『Coming Home』でデビューしたリオン・ブリッジズの2作目。こちらも今年の5月にここのブログ「新旧お宝アルバム!」でレビューしてますので、詳しい曲ごとの解説とコメントはそちらをご覧下さい。

(新旧お宝アルバム!のリンク)http://boonzzy.blog.fc2.com/blog-entry-420.html

その時のブログにも書いたのだけど、『Coming Home』の時、あまりに「現代のサム・クック、オーティス」的に売り出されて、ジャケやアルバムの楽曲などもそれをえらく意識しすぎた(と自分は感じた)ために、当時は全くピンと来なかったけど、今回のこの『Good Things』は「クックオーティスの先達の系譜を汲んでリスペクトしてるけど、自分は《いま》のソウルシンガーなんですよ!」という表明をするかのように、クラシックなスタイルの「Bet Ain't Worth The Hand」(こちらは今回の第61回グラミー賞の最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス部門に、自分が8位に挙げたベティ・ラヴェットと共にノミネートされてる)や「Beyond」「Mrs.」など前作の意匠を継続するナンバーだけでなく、シックのダンクラ・チューンかと思うほど軽くモダンでファンキーな「If It Feels Good (Then It Must Be)」や「Forgive You」「You Don't Know」といった70年代後半スタイルの軽快で洒脱なナンバーも軽々とモノにしてるところが素晴らしいところ。結果として、何度聴き返してもその都度発見があり、飽きずに繰り返し聴くことができるアルバムになっていると思う。

そしてアルバムを締める「Georgia To Texas」は南部テキサス出身であるオンの出自を表現するかのように、極めてダウン・トゥ・アースで、黒人霊歌的なフィーリングを持つ楽曲でこれをリオンが静かに、しかしエモーショナルに歌い上げるのを聴くと、今回のアルバムでリオンの引き出しが二重にも三重にもなって、いろんな表現力を発揮できるシンガーになったな、と如実に感じる。そして全曲に共作者として関わっているところも重要。今回グラミー賞最優秀R&Bアルバム部門へのノミネートも順当で、僕はH.E.R.の『H.E.R.』(2017年10月のアルバムなので、今回の自分の2018ランキングに入れられなかったのが残念)との争いになると見てます。早くも次作が楽しみなリオン、ソウル好きであれば聴くべしです。




5位:『Indigo』Kandace Springs (Blue Note / Capitol)


Kandace Springs Indigo 

ブラック・アーティストのアルバムが続きます。5位はついこの間東京国際フォーラムでの素敵なライヴを観てきたばかりの、キャンディス・スプリングスブルー・ノートからの2枚目、『Indigo』。デビュー・アルバムの『Soul Eyes』はややメインストリームR&Bっぽいポップ寄りの王道派のジャズ・ボーカル・アルバムという感じで、あのプリンスYouTubeにアップされていたキャンディスのパフォーマンスを見て気にいって、自分のペイズリー・パークでの『Purple Rain』30周年記念ライヴに特別に招待した、というエピソードで想定されるような凄さはあまり感じなかったもんだ。歌は巧いし、声は魅力的なんだけど。

で、今回のアルバムを聴いてその印象がガラッと変わっていたのにまずおっ、と思った。今回も基本はジャズ・ボーカル・アルバムなんだけど、寄り添っているのがメインストリーム・ポップではなく、かなりヒップホップの気配を感じさせたり、「Piece Of Me」などはシャーデーあたりも想起させるスタイルになっている一方、先頃惜しくも他界したジャズ・サックス奏者ロイ・ハーグローヴをフィーチャーした「Unsophisticated」などは前作を上回るレベルの王道ジャズ・チューンだったりする。チェックしてみると、まず前作はジョニ・ミッチェルの80年代の旦那さんで、彼女の当時の一連作品のプロデュースで知られるメインストリーム系のプロデューサー、ラリー・クラインだったのに対し、今回のアルバムは、あの伝説のヒップホップ・サウンドメイカー、J・ディラの影響を公言して憚らず、同じく90年代以降のヒップホップ・アイコンであるコモンのアルバムに必ずプロデュースで毎回参加している、それでいて本職はジャズ・ドラマーのカリエム・リギンズ。自ずから楽曲やサウンド、アレンジメントへのアプローチが全く違うのも納得だ。

そして、よりジャズのプレイヤーの視点やヒップホップ風ソウル的なグルーヴを重視したカリエムの今回のプロデュース・アプローチの方が、キャンディスのボーカルスタイルの良さをより効果的に引き出していると思う。

そうしたジャズとヒップヒップ風味のグルーヴを作り出しているカリエムの仕事に加えて、このアルバムにアーシーなR&Bの風合いをうまく加えているのが、4曲を作曲、2曲のプロデュースを担当している、NYベースのソングライティング・デュオ、カール・スターケンイヴァン・ロジャーズ。全米トップ40ファンには1991年の全米No.2ヒット「P.A.S.S.I.O.N.」を放ったリズム・シンディケイトの中心メンバーとして知られる彼らは、その後ソングライティング・プロデュース・チームとしてアギレラケリクラのデビュー作に曲を提供したり、あのリアーナを見つけてきたりして数々の新しいアーティストを育ててきたのだけど、ナッシュヴィル出身のキャンディスを見つけてきてドン・ワズのブルー・ノートと契約させたのも彼ら。前述の「Piece Of Me」や「Unsophisticated」、そしてピアノ弾き語りでジャジーなボーカルを聴かせる「Fix Me」など彼らのペンによる曲が、カリエムのプロデュースとうまく調和してキャンディスのパフォーマンスを更に引き立てていると思う。

先日のライヴでキャンディスは基本的にピアノを弾いて歌うのが大好きな一方、その彼女に影響を与えたのはアート・テイタムオスカー・ピーターソンといったジャズの偉大なアーティストだ、というのが判り、改めてこのアルバムを聴くとその彼女の歌への、ピアノへの思いがしっかりプロダクションに反映され、彼女を最大限に表現しているのがわかる。そしてその究極が、ライヴでもアンコールで演って、このアルバムの終盤を飾るロバータ・フラックの「The First Time Ever I Saw Your Face」のカバー。プリンスが彼女をペイズリー・パークに呼んだ時に、彼女をピアノに座らせてリクエストしたというこの曲、多分その時と同様、この歌の静かなパワーが乗り移ったようなパフォーマンスが素晴らしい。引き続き、その動向から目が離せない、そんなアーティストです。



4位:『Heaven And Earth』Kamasi Washington (Shoto Mas / Young Turks)


Kamasi Washington Heaven Earth 

このアルバムを最初聴いた時の圧倒的な迫り来るような楽曲と演奏のテンション、そしてそれらの楽曲やパフォーマンスの完成度から、「これはジャンル関係なしに今年を代表するアルバムだし、絶対グラミーのアルバム部門ノミネートは間違いないな」と思ったものだけど、蓋を開けるとアルバム部門どころか、ジャズ部門でもまったくの蚊帳の外だったのはとても意外だった。同じケンドリック・ラマー人脈のロスのコンテンポラリー・ジャズ・シーンのアーティストで、このカマシのアルバムでも1曲「Agents Of Multiverse」を共作しているクリス・デイヴの『Chris Dave & The Drumhedz』なんかは最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門にノミネートされてるのに、同じ人脈・シーンでよりハイ・プロファイルで評価も高いカマシが蚊帳の外、というのも腑に落ちない。ヴァイナルだと長尺5枚組、CDで3枚組(うち1枚はカッターでジャケを切り開かないと出てこないという隠し盤w)という大層さが嫌がられたのか、それともジャズの最先端シーンであるNYから距離を置いてロスでの活動にこだわるカマシに対する一部の批判層のなせる業なのか。

自分は正直ジャズは門外漢に近い。いろいろな洋楽ジャンルは聴き倒してきたが、ジャズについては奥深い森過ぎて下手に足を踏み込むとずるずるになってしまうのでは、という懸念からフュージョンとかを中心に表面的にしか関わってこなかった。その考えを変えたのは13年前、自分が最初に転職する時に部下から贈られたマイルスの『Milestone』で、理屈なしにすっと胸に入ってくる感じが思わぬ快感だった。以来、機会あるごとにジャズの名盤なるものには触れるようにしている。

そんなまだまだジャズ初心者の自分が、今特に同時代性を感じることができるのがこのカマシであり、ロバート・グラスパーでありサンダーキャットといった連中。彼らはケンドリック・ラマ人脈ということでヒップホップ好きの自分に取って何となくシンパシーを感じるところも多い。

そんなカマシの今度のアルバムのオープニング「Fists Of Fury」を聴いて驚いたのが、もはやこれはジャズの範疇を超えて、ビッグバンドによる壮大なエピックの映画スコアのようにこみ上げてくる怒りや哀しみなど様々な感情を表現した圧倒的なトラックであったこと。そして後にこれがあのブルース・リーの映画『ドラゴン怒りの鉄拳』のテーマ曲のリメイクだ、という話を聞いて妙に納得したものだ。

ヴァイナルでは最初2枚、CDでは最初のディスクが「Heaven」、次のヴァイナル2枚、ディスクが「Earth」、そして最後の隠しディスクが「The Choice」と名付けられたこの大作、冒頭の「Fists Of Fury」以降はジャムセッション的スタイルの正統派コンテンポラリージャズ、といった楽曲が次から次に抑えたクールネスを持って登場する。Heavenディスクは、途中スロウな「Connection」やバンドが縦横無尽にジャムってオーセンティックなグルーヴを醸し出す「Tiffakonkae」など、50年代スタイルのジャズ・トラックで気持ち良くしてくれるかと思うと、不協和音や複雑なコードを駆使したノイズ的なカマシのソロからメロウな本編になだれ込む「The Invincible Youth」など、いろんなアプローチでカマシ自作の楽曲群が聴く耳を楽しませてくれる

Earthディスクのスタートは、冒頭の「Fists Of Fury」ほどのインパクトはないものの、またまた大人数のコーラスをバックに壮大な映画スコアのような「The Space Travelers Lullaby」で始まり、Heavenディスクがインストのみだったのに対し、電子処理したボーカルをフィーチャーしたうねる波のような「Vi Lua Vi Sol」、夜のイメージのカマシのソロとピアノでスタートしてパトリス・クインの神に懇願するようなボーカルが入る「Journey」などボーカル入りのジャズ・トラックが4曲フィーチャーされている。そうした王道ジャズ・トラックの中でやや異彩を放っているのが、エレクトロなリズムリフをベースにまたまた映画スコアのようなコーラスをバックにタイトなグルーヴを聴かせる「Street Fighter Mas」。

そして最後の5曲入りThe Choiceディスクは、やはり大コーラスをバックにした「The Secret Of Jinsinson」に始まり、キング/ゴーフィン作で有名な「Will You Still Love Me Tomorrow」とファイヴ・ステアステップスの「Ooh Child」のカバーを含むが、全社は極端にテンポを落としたトーチ・ソング風(ボーカルはパトリス)、後者はサビのフレーズのコーラスループ以外はまったく原曲をとどめず、延々続くジャズのジャムセッション、といった内容。

全体はいわゆるオーセンティックなスタイルのコンテンポラリージャズだし、いくつかのカバーへのユニークなアプローチ以外は、カマシがこのアルバムで取り立てて何か新しいことをしているわけではない。ただこれだけの大作の楽曲のほとんど(21曲中15曲)を一人で書き、アレンジしてこれだけの全体感、楽曲の存在感を実現しているというのは並大抵ではないことはジャズ門外漢の自分でもよく判る。

このジャズアルバムは、小洒落た青山の焼き鳥屋とか代官山のイタリアンとかでBGMで流れるような類のジャズではなく、しっかりと向き合って聴くことを求めるタイプの作品なので、重たいといえば重たいのだけど、ある意味今年の重大なミュージカル・イベントの一つであり、今年の重要作品の一つだと思うのです




さて、My Best Album of 2018のトップ3、遅くとも今週のどこかではアップしますね。お楽しみに。
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テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

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