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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#150「Breakaway」Art Garfunkel (1975)

 #150BreakawayArt Garfunkel (Columbia, 1975)


いよいよ今日から2019年も後半、7月に突入ですがまだしばらく梅雨っぽい天気は続くようでして。こういう天気になるとやっぱりしっとりした音楽が聴きたくなるもんですね。

今週の「新旧お宝アルバム!」は記念すべき150回目。今回はひとつ70年代に戻って、こういうややムーディーな天気を爽やかにしてくれる、美しい歌声を聴かせてくれるアート・ガーファンクルのアルバムでも。彼のソロアルバム第2作目でファンの間でも人気のあるアルバム『Breakaway愛への旅立ち)』を、この頃のアートをご存知ない若い洋楽ファンの方々のためにも、改めてご紹介します。

Breakaway.jpg 

一昨年3年ぶりに来日して、もう70代ながらその素晴らしい歌声を聴かせてくれたという(残念ながら自分は行けず涙)アート。70年代に入ってサイモン&ガーファンクルの解散を受けてリリースした最初のソロアルバム『Angel Clare(天使の歌声)』(1973)は、S&G時代のプロデューサー、ロイ・ハリーとの共同作業で選曲やプロデュースを行った、ある意味ではアートにとってはソロ活動モードに充分慣れるための、S&G時代の延長的なアルバムになっていました。ジミー・ウェッブ作の「友に捧げる讃歌(All I Know)」(全米最高位9位)やポール・ウィリアムスロジャー・ニコルス作の「青春の旅路(Traveling Boy)」といったS&G時代のアートの名唱を彷彿させるようなドラマティックな楽曲のヒットが出ましたが、個人的には今聴き返すとどこか肩に力の入った、それでいてそれまでのアプローチから脱していない感じが否めない、そんなアルバムにきこえます。オシビサの「Woyaya」のカバーとか、どうしても「コンドルは飛んでいく」のアプローチの二番煎じのようにきこえてしまって。

Angel Clare

それから彼がいろいろ考えたのかどうかは判りませんが、3年を経てリリースされたこの2枚目のソロ『Breakaway』では、プロデューサーを名匠リチャード・ペリーに任せたことや、ポールS&G瞬間再結成となった曲「My Little Town」を収録したのが、逆にS&G時代からの延長の呪縛からアートを解き放ってくれたのか、すっかりフレッシュな感じで歌うアートの歌声が「これからがソロ活動時代の本番だ」と決意表明しているようにもきこえるのです。

様々なカバー曲を集めて、これにアートの歌声、歌唱解釈力で新たな魅力を吹き込む、というアルバム制作スタイルは前作と同じですが、このアルバムの選曲に当たっては、60年代に活躍していたジミー・ウェッブポール・ウィリアムスといった「お馴染み」のライター達からちょっと離れて、いろいろな人の曲をトライしているのも好感が持てます。そしてそれが見事に機能しているのもこのアルバム全体の「アートのソロアルバム」としての完成度を高めている要因ではないかと思うのです。

アルバムオープニング、ハイトーンで始まる美しいバラード「I Believe (When I Fall In Love It Will Be Forever)」はまるでアートのためにあるようなそんなゴージャスなメロディを持った曲ですが、これが実はスティーヴィー・ワンダーの名作アルバム『Talking Book』(1972)のクロージング・ナンバー。原曲より2度ほどキーを上げて、アートのハイトーンボーカルによりマッチするようにアレンジされたこの曲でのアートの歌唱にははっきり自信を感じますね

2曲目はスティーヴ・イートンというシンガーソングライターの正直地味なバラード「Rag Doll」ですが、こういうシンプルなメロディではアートの声と歌唱が引き立つようです。

そしてアルバム・タイトルナンバーの「Breakaway」(全米最高位39位)。スコットランド出身のシンガーソングライティング・デュオ、ギャラガー&ライルのペンによる、夢見るようなメロディが素敵なナンバーで、リトル・フィートビル・ペインが弾くフェンダーローズのイントロに乗って登場するアートの歌声と、デヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、トニー・テニールらの美しいバックコーラスがふわっと気持ちを持ち上げてくれます。元々70年代初頭マッギネス・フリントというバンドにいたギャラガー&ライルは、1976年にこの曲を自ら録音したアルバム『Breakaway』がUKでアルバムチャート6位に登るまではあまり知られていなかったわけで、その2人を見つけてきて自分のアルバムのために曲提供を依頼したアートの先見の明は素晴らしいもんです


4曲目のバーバンク・サウンドを思わせるメロディのバラード「Disney Girls」は、あのビーチ・ボーイズの中期以降のメンバーで、バリー・マニローの「歌の贈り物(I Write The Songs)」の作者としても有名なブルース・ジョンストンの作品。この曲は、彼が在籍していたビーチ・ボーイズ1971年の名作『Surf's Up』に「Disney Girls (1957)」と言うタイトルで収録されていた切ない味わいのバラード。その他数々のアーティストにカバーされたこの曲をアートは見事に自分のものとしてほんわりとした切なく素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。ブルースはこのアルバム発表直後、バリー・マニローに書いた「I Write The Songs」が大ヒットして、ソングライターとしてのキャリアを一気に次のレベルに上げていますので、アートのこのカバーもそうした流れに一役買ったのではないでしょうか。ちなみにブルース自身のバージョンは、この後1977年にリリースされた彼のアルバム『Going Public』で聴くことができます。

そしてレコードA面のラストは、今度はボサノヴァの大御所アントニオ・カルロス・ジョビンの代表曲「三月の水(Águas de Março)」をカバーした「Waters Of March」。同じラテン系作品のカバーでも、ここでは前作のオシビサのカバーなどに見られた気負いのようなものは感じられず、あくまでゆったりとジョビンのメロディに身を任せるかのようなアートの歌唱が印象的。

レコードB面トップは、当時S&G再結成か!と騒がれたヒット曲「My Little Town」(全米最高位9位)。久々のポールとのハーモニーにもテンションのようなものは感じられず、5年の月日が溶けゆくかのようなスムーズなコーラスが気持ちいいナンバーですが、この曲、よく聴くと、実は転拍子がいくつも行われ、コード進行もかなり複雑で歌唱にはかなり技術を要する曲なのです。そんなことを聴いただけでは一切感じさせない2人のケミストリーは、少なくともこの時期はまだ健在だったということでしょう。

そして2曲目は、イントロのアンドリュー・ゴールドが弾くギターのコードアルペジオ的なストロークが夢見るような雰囲気を醸し出す、1950年代のドゥーワップ・グループ、フラミンゴズのヒット曲のカバー「I Only Have Eyes For You(瞳は君ゆえに)」(全米最高位18位)。そしてこのアルバムでアートが2曲を取り上げているスティーヴン・ビショップ作の1曲目「Looking For The Right One」。この頃はまだ駆け出しのソングライターだったスティーヴンの曲をアートが録音したのは、このアルバムに参加しているベースのラス・カンケルの奥様、リア・カンケルがたまたまスティーヴンのデモ・カセットをアートに渡したのがきっかけだったとか。後のスティーヴンの作品を思わせる、アコギ・エレキの両方のギターの使い方が印象的で、美しいメロディを持つこの曲が、シンガーソングライター、スティーヴン・ビショップのキャリアに扉を開いてくれたわけで、ここでもこのアルバムのテーマとも言える、新しいシンガーソングライターの作品に日を当てるというアートのアプローチが成功しています。


アートが日を当てたのは新しいライターだけではなく、往年の名シンガーソングライターであったアルバート・ハモンドが同じ1975年に放った小ヒット(全米最高位91位、ACチャート1位)をカバーした「99 Miles From L.A.」も、アートのドリーミーなボーカルが素敵な一曲になっています。

そしてアルバムを締めるのは、シンプルなピアノと控えめなベースとドラムスをバックにアートが押さえた情感を表現しながら歌い、後半ドラマティックに盛り上がる、スティーヴン・ビショップ作のもう一曲「The Same Old Tears On A New Background」。この曲は、この後アートの肝いりでABCレコードと契約成ったスティーヴンのデビュー名作アルバム『Careless』(1976)のクロージング・ナンバーでもありました。

Breakaway (back)

この宝石箱のようなアルバム全体を支えるのは上記の他、リー・スクラー(b)ら西海岸のセッション・プレイヤー、ザ・セクションの面子や、ラリー・ネクテル(g)、ジョー・オズボーン(b)らレッキング・クルーの面々、バリー・ベケット(kbd)やピート・カー(g)らマッスルショールズの面々に加え、ジム・ケルトナー(ds)、ニッキー・ホプキンス(kbd)、ジム・ゴードン(ds)やスティーヴ・クロッパー(g)等々、超豪華なセッション・ミュージシャン達。アートがいかにも気持ち良さそうに歌っているのも納得ですね。

2007年のスタンダード・ナンバー・カバー・アルバム『Some Enchanted Evening』以降アルバムを発表していないアート。1978年には王貞治選手(当時)のホームランを見るためにお忍びで来日もしたというアートにはまだまだ新作を出して、そしてまた来日してその変わらない歌声を聴かせてもらいたいものです

<チャートデータ> 
ビルボード誌全米アルバムチャート 最高位9位(1975.11.29-12.6付)
全英アルバムチャート 最高位7位(1975.11.2付)


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テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

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