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Life Is A Rock - 洋楽こそ我が人生
洋楽全般について、英米ヒット・チャートに登場有無に関係なく、お気に入りの洋楽作品についての独り言やコメントをつれづれに掲載します。「新旧お宝アルバム!」「恒例グラミー賞大予想」など定期コラムが中心です。洋楽 ファンサイト、meantime(www.meantime-jp.com)のスピンオフ企画としてお楽しみ下さい。
【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#126「Lost & Found」Jorja Smith (2018)

 #126Lost & FoundJorja Smith (FAMM, 2018)


いやあそれにしてもこの7月、そして8月に入ってもちょっと外に出ると気持ちの悪いくらいのレベルの猛暑。だからというわけでもなく、たまたま自分の7月が公私ともにとんでもなく多忙だったこともあってこのブログも丸々一ヶ月、ちょっと一足お先に夏休みを頂いてしまってました。その間に中国には2回も出張で行って疲れたり、一方でフジロック・フェスティヴァルに参戦して、ィランケンドリック・ラマーをはじめとした素晴らしいパフォーマンスで仕事の疲れを癒やしたりしてきました。


ということで一ヶ月の「新旧お宝アルバム!」は、このたまらない暑さの中でも涼しげな歌声を聴かせてくれて、耳を傾けるにつけちょっとだけこの猛烈な暑さを忘れさせてくれる、そんな素敵な新人アーティストはいかがでしょう。しばらく前から英米のR&Bシーンでは評判になってきていて、今年はキャリア初のワールド・ツアーの一環で今月日本のサマーソニックへの出演も決定しているイギリス出身の女性R&Bシンガーソングライター、ジョージャ・スミスのデビュー・アルバム『Lost & Found』をご紹介します。


Jorja_Smith_-_Lost__Found.png


幼少の頃から、やはりR&Bミュージシャンだった父親の影響もあって、スカやダブ・レゲエで有名なUKのトロージャン・レコードの作品や、カーティス・メイフィールドといったアーシーでオーガニックな音楽の中で育ったジョージャ、その彼女が一貫して聴かせてくれるのはやはりそうした出自を反映した、オーガニックで地に足のついたR&B作品

彼女が英米のメインストリーム・シーンでその名前を取り上げられるようになったのは、2016年に初めてリリースした4曲入りEP『Project 11』の中から「Blue Lights」という曲がUKのブラック・ミュージシャンを対象にした音楽賞、MOBOアウォード最優秀ソングにノミネートされたのがきっかけ。その年UKでツアーをしたドレイクのサポート・ボーカリストとしていくつかのライヴに参加したのが縁で、2017年リリースのドレイクの大ヒット・アルバム『More Life』には彼女のボーカルをメインフィーチャーしたその名も「Jorja Interlude」というショート・トラックに続く「Get It Together」に大きくフィーチャーされ、その名前と存在をUKのみならず世界中に広く知られることに。


シーンでのバズが高まっていく中、今年に入って、過去アデルサム・スミスらが受賞しているUKの音楽評論家が選ぶBrit Critics' Choice Awardを受賞ジョージャ自分でも言っているように「自分が書いてきた曲をそろそろ世間でも自分の名前が出てくるようになったから、アルバムで出そうかと思って」と今年4月に初フルアルバムのリリース予定を発表、そして6月にリリースされたのがこのアルバム『Lost & Found』というわけ。

その間もシングル「Teenage Fantasy」などのビデオをリリースしたり、アメリカの有名ロックフェス、コーチェラに出演してこのアルバム収録の新曲を披露したり、様々なアーティストが図書館のようなスペースで生のライヴを披露することで人気のネット番組「NPR Music Tiny Desk Concert」で素晴らしいライヴを披露したりと、なかなか自分のメディア・プレゼンスを嫌味のないステップでタイミング良く大きくする活動も繰り広げてきました


Jorja Smith


そしてリリースされたこのアルバム。全体を通して聴いてまず自分が感じるのは、アリシア・キーズローリン・ヒル、シャーデーといったヒップホップやジャジーな味わいのオーガニックR&Bの魅力で我々を虜にしてきた数々の先達の系譜上にあるシンガーであり、作品だということ。

ちょっとエイミー・ワインハウスや、ヒップホップ・シンガー達のスタイルも感じさせるクセのある歌い回しながら基本的にはコントラルト・ヴォイスなので、今風R&Bなスペーシーで夢見るような音像とも相まって独特の浮遊感を感じさせる、ひたすら気持ちのいいボーカル・パフォーマンスは、どの世代のR&Bファンにも問題なく受け入れられるのではないでしょうか



オープニングのアルバム・タイトル曲「Lost & Found」からして、エレピの涼しげな音とタイトでゆっくりとしたリズムをバックに、スキャットからふわっと立ち上がってくるジョージャのボーカルにはぐっとハートを捕まれること間違いなし。そしてバックのサウンドは明らかにUSではなく、UKの、それもヒップホップや90年代のアシッド・ジャズあたりを経由して作りあげられた浮遊感とグルーヴと清涼感が一体となったサウンドで、同じオーガニックR&Bといっても、ジル・スコットとかアンジー・ストーンとかの生活感の強いグルーヴとはちょっと違うところがミソです。

2曲目の「Teenage Fantasy」はシングルとしてもリリースされた曲で、1曲目の日なたを感じさせる曲調とは異なり、ちょっと日陰とか雨の日を感じさせるマイナー調の、しかし迫り来るエモーションを感じる曲。

物憂げなピアノのイントロから静かに始まる「Where Did I Go?」も曲に入るとちょっとインダストリアル・ノイズっぽいパーカッションが効果的なミディアム・テンポのトラックにジョージャのボーカルが絡みつく、独特の魅力を持つトラック。




一転してドリーミーなトラックがここ最近USでもよく聴かれる浮遊感満点の音像を想起させる「February 3rd」や「On Your Own」「The One」と続くアルバム展開も、ジョージャの世界を積み上げるかのように形作っていく構成としては大変効果的で、ここまで聴いてくると個々の楽曲を聴くと言うより、アルバム全体が一個の「ジョージャの音楽世界」を塊として体験する、といった感じになってきます。彼女のスタイルはR&Bパフォーマンスとして決して斬新ではありませんが、自分の音楽表現のエグゼキューションが見事に構成されているので、聴く者へ強い印象とある意味の感動を与えてくれます。



LPでいうとB面サイドはよりヒップホップの影響を感じさせる楽曲が多いのですが、オープニングの「Wandering Romance」はその中で音像スタイルが最もヒップホップ、というよりは今時のトラップの影響を感じさせる曲。でもあくまで楽曲の主役はジョージャの気だるい、それでいてエモーションを感じるボーカル。それに続く、彼女が2016年のEPに収録されていた出世曲の再収録となる「Blue Lights」は後半半分ラップっぽいスタイルでジョージャが歌ったり、オールド・スクール・ヒップホップ的なスクラッチがちょっと入ったりとそこはかとないヒップホップテイストが魅力的なトラック。しかしここで歌われている「Blue Lights」とはパトカーのサイレンのライト(UKのパトカーのサイレンは青いライト)のことのようで「サイレンが聞こえてきても決して逃げたりしてはだめ/何も悪いことをしてなければ/青いライトは通り過ぎていくはず/どうして逃げようとするの、何をしたの?」という歌詞が社会の現実的な側面をさりげないメロディで表現するこの曲、魅力的であると同時に緊張感を与えるクオリティの高い楽曲です。


そして続く「Lifeboats (Freestyle)」は確かローリン・ヒルの曲でこういうフレーズあったよなあ、という「すべては落ちていく、落ちていく」とリフレインでスタートした後、ジョージャがまさしくフリースタイルのラップを、可愛らしいUKアクセントで達者に聴かせてくれる、ある意味このアルバムで最も「ヒップホップな」曲。そのフロウはなかなか思索的な内容なのでちょっと紹介します。


「水に入ってもいないのにどうやって泳ぎを覚えられるというの?

時には入るためには飛び込むしかないこともあるのよ

人生は浅瀬ばかりじゃない

体を浮かしなさい、そうすれば誰かが腕をさしのべて助けてくれるかも

もし誰かが混乱の海で溺れそうになっていたら

私だったら助けようとするし、どうしてうまく潮に乗れなかったのか、

なぜ灯台の光が消えていたのか理解しようとするもの


なぜ金持ちだけが水に浮くことができて

ボートに乗ってるはずなのになぜ私の兄弟たちは溺れてしまうの?

マザーシップは誰も助けてくれない」


なかなか示唆的でしょう?この曲をジョージャと共作して、プロデュースもしているトム・ミッシュは、やはり最近注目のUK若手ビート・メイカー兼ギタリストで、ジョージャ共々今年のサマソニに出演、今年は自身のソロ・アルバムもリリースしている注目のアーティストなんです



アコギの弾き語りでしんみりとしかし後半エモーショナルにジョージャが歌う「Goodbyes」はライヴで是非とも聴いてみたいと思わせる曲。この曲からアルバム最後の3曲はいずれもこのアルバムで最もアンプラグドな楽曲。エレピをバックにドラマティックに歌う「Tomorrow」、そしてピアノをバックに静かにアルバムを締める「Don't Watch Me Cry」までの全12曲を聴き終わる頃にはどっぷりジョージャの世界に浸っていることでしょう。


Lost Found (back)


このアルバムもリリース以来、シーンでの評価も高く、今年従来の5から8に拡大される予定のグラミー賞新人賞候補へのノミネートも多分間違いないジョージャ。現在7月にUKを皮切りにスタートした「Lost & Found Tour: 2018」は今月の日本のサマソニを経てまたヨーロッパ・UKに戻り、11~12月にかけては全米をツアーで巡るジョージャ。今年が終わる頃にはジョージャの名前は、単にR&B好きのファンだけでなく、ハウスホールド・ネームになっているかもしれません。


それまでの間はこのアルバムを聴きながら、連日暑い日々にジョージャが届けてくれる涼しげな歌声を楽しむことにしませんか?


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位41位(2018.6.23付)

同全米R&B・ヒップホップ・アルバム・チャート 最高位23位(2018.6.23付)

同全米R&Bアルバム・チャート 最高位3位(2018.6.23付)

全英アルバム・チャート 最高位3位(2018.6.21付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#125「Dirty Computer」Janelle Monáe (2018)

#125Dirty ComputerJanelle Monáe (Bad Boy / Atlantic, 2018)


あっという間に梅雨も明け、今年も半分が終わり7月に入ってから連日暑い日が続いていてもう完全に夏模様。これからは夏フェスが次から次に始まりますが、皆さん体調管理は万全にして、絶好調のコンディションで音楽もアウトドアも楽しみたいもんですね。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は、ここのところ映画俳優としての活動でも各所で存在感を出しながら、モデルとしても、またアクティヴィストとしてもメディアに顔が出ることが増えてきたジャネル・モネイが今年リリースした、ちょっとだけ先進的なサウンドアプローチながらメインストリーム・アピールもバッチリという3枚目のフル・アルバム『Dirty Computer』をご紹介します。


DirtyComputer.png

今のフューチャリスティックで都会的な風貌からはちょっと意外に思える、カンザス・シティという中西部の地方都市のブルー・カラーな家庭に生まれ育ったジャネル・モネイ(本名:ジャネル・モネイ・ロビンソン)の子供の頃からの夢はシンガー/パフォーマーになることだったというから既に彼女はその夢をほとんど達成していることになります

彼女は音楽と演劇の勉強のためにNYのアカデミーに通った後、2001年、16歳の時にアトランタに移住して当時ヒップホップの大スターだったアウトキャストビッグ・ボイと知り合い、地元の若手のアーティスト達とワンダランド・アーツ・ソサエティなるグループを結成。このワンダランドの仲間達がその後、現在まで彼女の作品の曲作りや制作のバックアップをしてくれることになります。

その後アウトキャストのアルバム『Idlewild』(2006)に客演したのがきっかけで、あのバッド・ボーイ・レーベルの主宰者、ショーン・”P-ディディ”・コムズに気に入られてバッド・ボーイと契約。同レーベルからリリースした最初のEP『Metropolis: Suite I (The Chase)』(2007)の中の一曲がその年のグラミー賞の最優秀アーバン・オルタナティヴ/パフォーマンス部門にノミネートされたのが彼女のミュージシャンとしての成功のスタートでした。


Janelle Monae


そのジャネルが多くの我々の前に登場したのは、あのファンの大ヒット曲「We Are Young」(2012年6週連続1位)にフィーチャーされて、2013年2月開催の第55回グラミー賞で、ソング・オブ・ジ・イヤーを受賞したその「We Are Young」をファンのメンバーとパフォームしたあの時

当時既に最初のフル・アルバム『The ArchAndroid』(2010)をリリース、その先進的コンセプトのポップ・R&B作品が一部に高く評価されていた彼女がこれでメインストリームに正式に登場、続く『The Electric Lady』(2012)ではエリカ・バドゥ、プリンス、ミゲル、エスペランザ・スポールディングなど新旧の個性的なスーパーゲスト達をフィーチャーした、様々なジャンルの音楽が渾然一体となった、とても個性的ながらキャッチーなフック満載の「ジャネル・モネイ・ワールド」を提示してシーンの高い評価を集めることに


そして2016年には、その年のアカデミー賞作品賞候補となった、いずれも厳しい社会でのプレッシャーや差別と戦いながらもアフリカン・アメリカンとして生き抜いていくという2本の映画、『ムーンライト(Moonlight)』と『ドリーム(Hidden Figures)』に主要な役どころで好演。単に音楽的表現に止まらず、アーティスト「ジャネル・モネイ」としての存在感をマスに大きくアピールしました

そしてリリースされたこの最新作。アルバムリリースに先駆けてドロップされた新曲「Make Me Feel」のPVは、あのプリンスが逝去直前にアイディアを出したというシンセ・ベース・リフをフィーチャーした、そのプリンスの「Kiss」を彷彿させるようなミニマリスティックながら強烈なファンク・グルーヴが全編を通してうねりまくるバイセクシュアル賛歌、そして映像もとてもフューチャリスティックでファッショナブルなもので、新作への期待をいやが上にも盛り上げてくれたものです。



このアルバムでは、前作の『The Electric Lady』同様、シンセポップ、ファンク、ゴスペル、オルタナティヴ・ロック、ヒップホップ、R&Bといった様々なジャンルの要素がある時は渾然一体と、またある時は曲ごとに全く異なるジャンルの要素を前面に出した形で楽曲が提示されます。しかし楽曲のアレンジやメロディ・フックの感じが前作よりもメインストリームを意識しているような感じもあり、ジャネルの作品が初めて、という方も比較的抵抗感なく彼女の楽曲世界に入っていける、そんな作品になっています。


アルバムのオープニングは厳かなコーラスだけをバックにジャネルがアルバムの紹介をするような小品「Dirty Computer」。分厚いバックのコーラスに参加しているのは何とビーチ・ボーイズブライアン・ウィルソン

ゴスペル教会の牧師のような演説からR&Bポップっぽいミディアム・リズムにポップなメロディフックで盛り上げていく「Crazy, Classic, Life」(マーヴェル・コミックスの『Black Panther』に登場するワカンダ国でとれる架空の金属ヴィブラニウムに着想を得たとのこと)と「Take A Byte」(禁断のリンゴを食べたエデンの園のイヴに着想を得たとのこと)でアルバムのトーンを今風R&Bポップな感じに持っていった後、レニー・クラヴィッツの実娘で俳優でも活躍するゾウ・クラヴィッツをフィーチャーした、ちょっとオルタナ・ポップな感じの「Screwed」では刹那的な快楽主義を揶揄するような歌詞を思いっきりポップに歌ってるというのがこのアルバムでの彼女の立ち位置を象徴しているような気が

続いてラッパー・ジャネルの登場で、これまでの自分の生い立ちとキャリアを斜に構えたような視点でまくし立てる達者なそして挑発的なフロウを聴かせる「Django Jones」(『Black Panther』に登場する女闘士団、ドラ・ミラジェに着想を得たとか)でぐっと雰囲気変更。続く「Pynk」はザ・ナショナルフェニックスかという感じの今風のシンセポップ・ロックトラックで、このあたりはジャンルがあちこちに飛びまくっているのにアルバムとしては不思議な統一感を感じさせるのは、やっぱりジャネルのボーカルが立っているからか。



そしてこのアルバムの先行シングルで先ほど冒頭に触れたプリンス・マナーのミニマル・ファンク「Make Me Feel」。やはりこの曲はこのアルバムでもハイライトの一つですね。この曲を一つの頂点として、ファレル・ウィリアムスをフィーチャーしたR&Bポップ「I Got The Juice」、今風R&B的なミニマルなトラックに一段とジャネルのボーカルが映える「I Like That」から80年代ベイビーフェイスっぽいスローなR&Bジャム「Don't Judge Me」とアルバムの雰囲気は段々とワインドダウンの方向に




神秘的なサウンドをバックに、スティーヴィー・ワンダー神への愛と、怒りや憎しみの感情すらも愛の言葉で表現すべき、という福音的な語りを聴かせる短い「Stevie's Dream」に続き、ニルヴァーナとかの90年代グランジ・ロックっぽいギターのバッキングがまたちょっと異色な感じの「So Afraid」が終わると、アルバム・ラスト・ナンバーのゴスペルっぽいコーラスとボーカルからあたかもミュージカルのフィナーレのような感じの盛り上がりでエンディングに向かっていくアップビートな楽曲「Americans」へ。
この最後の曲は、オバマ元大統領が2008年大統領選立候補の際行った、人種差別を超えて国全体の結束を求める演説「A More Perfect Union」と、今年2月にクインシー・ジョーンズGQ誌のインタビューで行った「我々は黒人であることに付き合わざるを得ない。怒りは何も解決しない。怒りではなく、問題を解決可能なパズルとして捉えることが大事で、常に自分はそればかり考えている」というコメントにインスパイアされてジャネルが書いた曲。そしてそのメッセージはオバマ氏クインシーのメッセージをジャネル風に咀嚼した前向きなものなのです。

Dirty Computer (back) 

その後も新しい映画への出演も予定されながら、自らのバイセクシュアリティを隠すこともなく、積極的にLGBTQコミュニティへの支援発言や活動を続ける、ある意味今のアメリカを象徴するオピニオン・リーダーの一人としても注目を集め続けるジャネル・モネイ。このアルバム、今年から対象作品数が5から8に拡大されることになったグラミー賞主要4部門でも必ずどこかにノミネートされるのでは、と個人的には密かに思っています。


暑い夏の昼下がり、あるいは夜友人達とのパーティーなどの席で、ジャネル・モネイのフューチャリスティックだけどメインストリーム、エッジーだけどポップ、そして歌詞の内容を読み込むとオピニオン・リーダーとしての彼女が浮き出てくるというこの作品を是非楽しんでみてください。


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位6位(2018.5.12付)

同全米R&B・ヒップホップ・アルバム・チャート 最高位4位(2018.5.12付)

同全米R&Bアルバム・チャート 最高位1位(2018.5.12付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#124「Home Grown」Johnny Rivers (1971)

 #124Home GrownJohnny Rivers (United Artists, 1971)


どうやら梅雨らしい雨模様の天気が続き、気温も一時に比べるとかなり涼しくなってきているこの季節、一方で雨に濡れた新緑の美しい時期でもあります。今世の中はワールドカップですが、MLBファンの自分は、贔屓のNYメッツの不調と、大谷をはじめ日本人メジャーリーガーの相次ぐ故障で、最近はちょっとスポーツ観戦に熱が入らなくなってきたところ。そうなると戻る先は音楽で、いろいろな新譜や昔のレコードを引っ張り出して聴く機会がめっきり増えてきているこの頃です。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は、久しぶりに70年代に戻り、このしっとりとした新緑の季節にぴったりな感じのアルバムをご紹介。60年代にロックンロール・スターとしてブレイク、大きな人気を勝ち得ながら70年代のニューロックへの大きな音楽シーンのうねりの中、商業的には今ひとつの状況に立たされていたジョニー・リヴァースが、自らを見つめ直すような感じでリリースした、心和ませる珠玉のアルバム、『Home Grown』(1971)をご紹介します。


Home Grown 


おそらく我々昭和世代のシニアな洋楽ファンでも、ジョニー・リヴァースというアーティストの名前を聞いたことはあってもどういう曲をやっていた、どんなアーティストかと言われるとあまりピンと来ない方も多いのでは。ましてや今ストリーミングやYouTube、デジタルダウンロードで洋楽を聴いている40代以下の皆さんは名前も聞いたことない、という方も多いでしょう。

かなり熱心なアメリカの70年代のヒット曲ファンでも、「Rockin' Pneumonia & The Boogie Woogie Flu」(1972年最高位6位)と「Swayin' To The Music (Slow Dancin')」(1977年最高位10位)の2曲が思い浮かべられればかなり詳しい方だと思います。ことほどさようにジョニー・リヴァースというアーティストは、ブレイクした60年代を除いては、70年代以降特に日本ではその名を知られるようなヒットもなく、洋楽ファンにとってもイメージが持たれにくいアーティストなんではないでしょうか


ニューヨークに生まれたイタリア系移民の息子であるジョニー(本名:ジョン・ヘンリー・ラミステラ)は、幼少の頃に移り住んだルイジアナ州バトン・ルージュで、現地のカントリー、ブルース、ケイジャン、ジャズ、R&B等が混沌とした音楽文化に触れて8歳の頃ギターを始めたのが音楽人生の振り出し。

高校時代からバンド活動を始めたジョニーは、1958年NYへ旅行した際当時ロックンロールの生みの親といわれた伝説的DJ、アラン・フリードに出会ったのがきっかけでレコード・デビューにこぎ着けますが、この時は不発。

その後60年代に入ってLAに移って地元のクラブでライブ活動をしていたところを、後にキャロル・キングの『つづれ織り』をプロデュースすることになる有名プロデューサー、ルー・アドラーに認められ、ちょうどジョニーが人気を博していた地元の有名クラブ「ウィスキー・ア・ゴー・ゴー」でのライヴをそのままアルバムにしてリリース。そこからシングル・カットされた、チャック・ベリーのカバー「Memphis」の大ヒット(1964年最高位2位)で一躍ロックンロール・スターとしてブレイクしました

Johnny Rivers


その後1966年にはルー・アドラーとの共作「Poor Side Of Town」が全米1位に輝き、キャリアの絶頂期でしたが、その後作品は発表し続けるも人気は下降線をたどり、今回ご紹介する『Home Grown』がリリースされた70年代初頭は、アルバムもシングルも以前のようなヒットにならず、ある意味商業的にはどん底の時期。しかしこのアルバムは、ジョニーとその息子と思われる少年が楽しそうにならんでいる写真が、手縫い刺繍でタイトルとジョニーの名前が縫い込まれたキャンバス地にあしらわれているという、見ただけでほのぼのとするジャケットに象徴されるように、ネガティヴなトーンは皆無で、聴く者の心を和ませてくれる、そんな作品なのです。(ちなみにレコードのレーベルも手書きのイラスト入り。これもなかなか好感度です)


Home Grown Label


またこのアルバム、バックにはLAのクラブ時代からの相棒であるジョー・オズボーン(b.)や有名セッションドラマーのジム・ケルトナーを初め、シナトラビーチ・ボーイズ、ママス&パパスなど数々の60年代のポピュラー楽曲のバックをつとめたセッションミュージシャン集団「レッキング・クルー」のメンバーも多数参加、古くから気の知れたメンツの手堅くもグルーヴ満点の演奏をバックに、ジョニーが気持ちよさそうに歌っています。



ちょっとカントリー・ブルース風な「Moving To The Country」を皮切りに、ジョニーの魅力の一つである優しく艶のあるボーカルが映える、R&B風味のカントリー・バラード「My New Life」という流れはいかにも70年初等のシンガーソングライター・アルバム(このアルバムでジョニーは10曲中3曲しか作品に絡んでませんが)という雰囲気で、ぐっと引き込まれます。

彼のブレイクがチャック・ベリーのカバーであったように、ジョニーは自分で曲も書きますが、他人のカバーがピタッとはまるケースの方が実は多いのですが、このアルバムでそれを象徴的に感じさせるのが、3曲目の「Our Lady Of The Well」と5曲目の「Rock Me On The Water」。ご存知の方も多い、ジャクソン・ブラウンのカバーですが実はジャクソンはこのアルバムが出た当時はまだレコード・デビュー前。おそらくLAの音楽シーンで既に実績・人脈とも有していたジョニーが業界の誰かからジャクソンの評判を聞いてこれらの曲のデモを聴く機会があったのでしょう。

後にジャクソンの代表曲となるこの2曲を、いち早く取り上げるジョニーの目も大したものですが、このいずれの曲もジョニーは見事に自分のスタイルにアレンジして、彼らしいスワンプ風のスタイルでものにしています。


レコードA面のラストは、おそらくジャケ写真の息子に捧げたと思われる自作のバラード「Song For Michael」。「目の前に現れる明るい光のように僕の気持ちを喜びで満たしてくれる/君を見ていると自分が子供だった時に戻るようだ/君と僕は目を見合わせて/ただ「やあ」と言うだけだけど」という、もうマイケル君にメロメロなジョニーの様子が窺える、微笑ましいこの曲の途中にはマイケル君本人と思われる声もSEで登場します。このアルバムをとっても私的で、ポジティヴな感じにしている要因の一つがこの曲の存在で、ジャケットはそれをそのまま表しているのです


B面はA面のラストからつなげるように自作のジャグバンドっぽいカントリー・ポップ・チューン「Permanent Change」でスタートした後、ここから有名曲3曲のカバー攻撃。まずは元々インプレッションズカーティス・メイフィールド作で、ロッド・スチュアートのカバーでも有名な「People Get Ready」。ここではピアノとストリングスをバックにゴスペル風に、エンディングに向けて控えめに盛り上げるジョニーの歌唱が印象的。

続いてはキャロル・キングのアルバム『つづれ織り』収録の「So Far Away」のカバー。ルー・アドラーの導きなのでしょうが、これも当時リリースされたばかりの『つづれ織り』からさっそくカバーに取り上げたジョニーの選曲センスが光ります。ジョニーのバージョンは比較的オリジナルに忠実な、これもピアノとストリングスを中心にしたもの。


そして3曲目のカバーは、ジェームス・テイラーの「Fire And Rain」。原曲同様アコースティックなアレンジですが、ギターの代わりに名手ジェームス・バートンのドブロがややカントリー・スワンプ的なイメージを与えています。しかしこの曲のポイントは、ジョニーが後半歌唱を盛り上げてシャウトしたかと思うと、最後のフェードのところでバックコーラスが「Help me Jesus / Be my friend(主よ救い給え/我が友として)」と繰り返し原曲にはないコーラスを付けるところ。実はこれがその前2曲のカバー共々、この後のアルバム最後の壮大なアップテンポのゴスペル・チューン「Think His Name」の前振りとなっていたのだ、ということに曲が始まって間もなく気付きます。ひたすらジーザス・クライストの名前を連呼するゴスペルクワイアをバックに、淡々と歌うジョニー。商業的な逆境の中で、子供への愛と神への感謝で自らのスピリットを高くという思いを込めて、ジョニーはこのアルバムを作ったのではないか、そんな風に思わせるエンディングです。



このように非常に心温まる作品ながら、このアルバムも残念ながら大きなヒットにはならず。次作の『L.A. Reggae』(1972)からのシングル「Rockin' Pneumonia & The Boogie Woogie Flu」(こちらもヒューイ・スミスのカバー)のヒットと、「Swayin' To The Music」(イーグルスグレン・フライの作詞作曲パートナーだったジャック・テンプチンの曲のカバー)がヒットした『Outside Help』(1978)がマイナーなヒット・アルバムになったのを最後に彼の作品はチャートに戻ってくることはありませんでした。

しかし今でも年間50回を超えるライヴを行っているというジョニー、最近では自分のルーツの一つでもあるブルースに軸足を置いた活動を続けているようです。


2009年にはルイジアナ州の音楽殿堂入りし、2015年にはアメリカン・ポップ・ミュージック殿堂入りの候補にもノミネートされるなど、シーンからのリスペクトを今も受け続けているジョニー。そんな彼のとても私的な一面を感じ取ることができるこのアルバムで、梅雨の合間の緑美しいこの時期をお過ごしください。


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位148位(1971.9.25付)

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【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#123「Sublime」Sublime (1996)

#123SublimeSublime (Gasoline Alley / MCA, 1996)


2018年もとうとう6月に突入、今年もほぼ半分が過ぎました。幸い関東地区はこの週末も目の覚めるような素晴らしい好天に恵まれて、梅雨になる前に、とアウトドアやスポーツに時間をたっぷり過ごした方も多かったと思います。自分も久しぶりに近くのコースでゴルフのハーフラウンドなどして、この最高の天気を楽しんできました。


さて今週の「新旧お宝アルバム!」は、またまた久しぶりに恒例の90年代作品再評価シリーズで。90年代を代表する(当時の)新興音楽ジャンルの一つ、日本でいうところのミクスチャー・ロックの代表選手の一つでしたが、その音楽スタイルのように90年代の短い期間を一気に駆け抜けた感のある、カリフォルニアはロング・ビーチ出身の3人組、サブライムの最後のアルバムとなった『Sublimie』(1996)をご紹介します。


Sublime Album 


90年代作品を改めて評価してみようシリーズ、通算第5弾。


日本では90年代以降、ヒップホップ・ラップやレゲエ・スカとロック(場合によってはメタル・ロック)を融合したスタイルの音楽を指すのに頻繁に使われていたミクスチャー・ロックというジャンル名、実はいわゆる和製英語で、英米ではこういう言葉はないようです。なので正確にサブライムの音楽スタイルを表現するとすると、ヒップホップ風味を持ったスカコア・パンク・バンド、ということになるのでしょうか。いずれにしてもこういうスタイルのバンドは90年代に多く輩出して、今や大御所のレッチリリンキン・パークをはじめ、同じLAロング・ビーチ出身のノー・ダウトや以前このコラムでもご紹介したマイティ・マイティ・ボストーンズ、311などのよりメインストリーム・ロックをベースにしたバンドや、よりメタル方向に傾斜したリンプ・ビズキットレイジ・アゲンスト・ザ・マシーン、コーンなどが次々と活躍してました。

その中でもサブライムは当時同じシーンで活躍していたノー・ダウトのベーシスト、トニー・カナル曰く「最もヒップホップやレゲエ・スカとパンクやロックを要素を、リアルなスタイルの楽曲にしていて、リード・ボーカルのブラッド・ノウェルのソウルフルなボーカルがそれらの要素を切れ目なくバランスよくがっちりつないでいた」ということなので、当時シーンの中でも一目置かれた存在だったことがよくわかります。

そのサブライム、幼少からの友人だったエリック・ウィルソン(ベース)とバド・ガウ(ドラムス)がハイスクール卒業後始めたパンク・バンドに、当時カレッジをドロップアウトしたばかりのブラッド・ノウェル(ボーカル・ギター)が「お前ら、レゲエとかスカとかもいいぜ」と言って合流して1988年に結成。その後主に南カリフォルニアのスケートボーダー・カルチャーが濃密な地域で地元のクラブでのライヴを中心にファンを増やし、1992年にブラッドが設立したインディのレーベルからデビュー・アルバム『40oz. To Freedom』をリリース。レゲエ・スカ、パンク、ヒップホップ、サーフ・ロックを渾然一体としたスタイルが更に地元カリフォルニアで人気を呼んで地元のメジャー・バンドとしての地位を確立。


40oz to Freedom


続く『Robbin' The Hood』(1994)はラップや宅録のフォーキッシュな曲など実験的な内容だったこともあって商業的には失敗に終わり、サブライムの3人は次作となるこの『Sublime』の楽曲を準備しながら、ライヴ活動で更にファンベースを増やしていたのですが、1996年5月25日にヘロインのオーバードーズでブラッドが急逝するという事態に(享年28歳)

残ったメンバーは録音していた楽曲をまとめて2ヶ月後にリリースしたのが、この3枚目にしてラスト・アルバムとなった『Sublime』でした。


ありがちなことですが、ブラッドの他界という要素もあってこのアルバムからは彼らの唯一のモダン・ロック・チャート1位に輝いた「What I Got」をはじめ、「Doin' Time」(1997年全米最高位87位)、「Wrong Way」といった曲が盛んに全米のラジオでエアプレイされ、皮肉にもブラッドの死がサブライムを全国区バンドにしたのですが、ブラッドを失った2人はすでにこの時点でサブライムの解散を決意していたという皮肉な結果に。


そのアルバムを語るに欠かせないのはミクスチャーな音楽性もさることながら、南カリフォルニアのスケートボーダー・カルチャーを色濃く反映したアルバムのアートワークです。ジャケには鮮やかながら独特の雰囲気を持ったスケートボーダー・イラストがあしらわれる中に、背中に誇らしげに「SUBLIME」というタトゥーを背負った男の背中がバーンとあるという、なかなかインパクトのあるジャケ。当時のこのあたりのカルチャーをよく知る人にはこのジャケだけでもサウンドの中身が何となく想像がつくのでは。



さてアルバムはルースなレゲエのリズムに乗って、途中ヒップホップなスクラッチを交えた、当時のレッチリのナンバーを思わせるゆったりとしたナンバー「Garden Grove」でスタート。彼らの最大のヒットとなった「What I Got」はレイドバックなブラッドのアコギのリフとタイトなリズムがだんだん盛り上がり、途中からトースト・レゲエ風になったブラッドのボーカルが途中からヒップホップ・スクラッチをバックにフリースタイル風に変貌していくという、ラジオから流れてくると「おっ、これ何?」と耳を引くこと必至なナンバー。

こちらもエアプレイヒットとなった「Wrong Way」は典型的な軽快なスカコア・ナンバーで、天気のいい日のライヴでやると盛り上がりそうなナンバー。他の曲でもそうですが、エリッのベースのミックスが強めになっていて全体のグルーヴを強化している効果を果たしています。




更にスピーディーなスカコア・ナンバーでライブではモッシュ必至の「Same In The End」を経て、あのロドニー・キングのリンチ事件に起因する1992年のロス暴動を題材として、ラジオや警察無線を模したSEをバックに、ダブっぽいトラックとほぼラップに近いボーカルで異様なテンションを構築、ふとクラッシュを思い出してしまうApril 29, 1992 (Miami)」では一気にそれまでのノー天気な雰囲気から、アルバムはシリアスな感じに。


やはりエアプレイヒットの「Santeria」は一転してアップビートなレゲエ・リズムにブラッドのピロピロと奏でるギターリフとボーカルが印象的な曲。リリックは自分の彼女を取られた男が復讐しようとするが、返り討ちにあって銃で脅されるとなかなか情けないですが(笑)。

超ハイスピードのパンク・ロックフレーズとレゲエ・フレーズ、そしてスカ・コア・フレーズが代わりばんこに登場して最後は一体になるというなかなか楽しい「Seed」やレイドバックなレゲエ・ロックの「Jailhouse」を経て、またまたダブっぽいリズムに乗った醒めた感じのするエッジの効いたギターとブラッドの絞り出すようなボーカルで、またまたクラッシュポリスあたりのナンバーを思わせる「Pawnshop」でアルバムは後半に。

パンク一発の「Paddle Out」、レイドバックなダブ・ロックの「The Ballad Of Johnny Butt」、アップのスカコア「Burritos」などなどと、サブライムの音楽スタイルを順繰りにまたもう一度お披露目した後、アルバムの最後は、「What I Got」のアンプラグド・ヴァージョン的な「What I Got (Reprise)」、そして最後は彼らの唯一のHot 100ヒットで、ハービー・マンのフルートをサンプリングしたヒップホップのスタイルであのガーシュインの「Summertime」のフレーズをモチーフに、サウンド・コラージュにラップを乗っけるような感じの不思議なグルーヴを感じさせる「Doin' Time」で全17曲、約1時間のサブライム・ワールドが終了します。



ブラッドの死によってサブライムは解散しましたが、2009年に残ったエリッが、サブライムのファンの一人、ローム・ラミレスをボーカルにサブライム再結成をトライ。再結成そのものはブラッドの遺族のクレームでかないませんでしたが、彼らは現在も「サブライム・ウィズ・ローム」名義で活動を続けているとのこと。

その後近年のアナログ・レコード復活に合わせて、このアルバムを含む3枚のアルバムが2016年には180g重量盤でアナログ・リイシューされるなど、最近またサブライムに関する関心がシーンで静かに高まりつつあるようです。

Sublime Album back


これから梅雨の時期ですが、太陽いっぱいのカリフォルニアの空を思いながら、90年代の一時期を飾ったサブライムのこの独特のサウンドに身をゆだねて、初夏の到来を待つというのもいいのではないでしょうか。


<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位13位(1997.7.26付)

同全米ロック・アルバム・チャート 最高位41位(2017.5.6付)

同全米オルタナティヴ・アルバム・チャート 最高位23位(2017.4.1付)

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

【Boonzzy Music】新旧お宝アルバム!#122「Good Thing」Leon Bridges (2018)

#122Good ThingLeon Bridges (LisaSawyer63 / Columbia, 2018)


いよいよ5月も最終週に入り、九州は梅雨入りとのニュースも入ってきて、さわやかな五月晴れの日々もあと少しで雨の日が増えてこようというこの時期、この週末は素晴らしい快晴の中、アウトドアにイベントに存分に楽しんだ方も多かったでしょうね。

さて今週の「新旧お宝アルバム!」は、先週に引き続き最近のアルバムを。今回はテキサス州フォートワース出身の60~70年代スタイルのネオ・クラシックR&Bシンガーとして2015年に鮮烈にデビューしたリオン・ブリッジズの2枚目となるアルバム『Good Thing』(2018)をご紹介します。

Good Thing

実は白状すると、リオン・ブリッジズがデビュー・アルバム『Coming Home』(2015)で華々しくデビューし、様々な音楽メディアからの高い評価やグラミー賞ノミネートなどを受けて「サム・クックの再来」みたいなことを盛んに言われた時に、当然自分もこのアルバムを買って、何度も聴きこんだんですが、なぜかとうとう自分にはピンとくることがなかったのです

60~70年代のクラシック・ソウル・スタイルの体現者で、サム・クックオーティスらを思わせる素晴らしいR&Bシンガー、って自分の最も好きなタイプのアーティストのはずなんですが、なぜかこれがイマイチだった。それが当時気持ち悪くって、もやもやしたものを抱えていたものです。


Leon Bridges

で、今回レコード店でこの新作のジャケを見て、「今度はどうかな」と思う一方「ん、これはちょっと違うかも」と思い、買って聴いてみたところ「おー、今度はかなりいいじゃないか!」と一発で気に入ったので今回ご紹介しようと決めた次第。

で、全体聴き通して思うことは、前作では歌い方のスタイルや、バックの演奏のスタイルまで「サム・クックやオーティスらのスタイル」といったものをかなりそのものズバリで演出した内容に統一されていて、いわば「狙いに行き過ぎてる」感が自分には強すぎて、そこにあざとさを感じてしまっていたのかな、ということ。

今回も確かに多くの楽曲はクック、オーティスらの先達のスタイルを踏襲したスタイルで、リオンも達者にそうしたスタイルを「尊重」して歌っているのですが、一方前作ではあまり聴かれなかった、ファンキーなカッティング・ギターをフィーチャーしたナンバーとか、単純にゴスペルチックに歌うのではなく意図して早口の節回しで達者な歌唱テクニックを見せたりとか、バリバリではないにしても今の最先端の音響派的なR&Bトラック的な音作りと楽曲スタイルを感じさせる楽曲をうまく混ぜたりと、様々な工夫が見えるところが、逆にリオンのアーティストとしてのパフォーマンスを引き立てる結果になっているような気がします


アルバム冒頭の「Bet Ain't Worth The Hand」からして前作ではほとんど聴かれなかったファルセット・ヴォイスで歌い出すという、いきなり聴くものの気持ちをぐっとつかむ演出。楽曲スタイルはサザン・ソウル的なアーシーな感じですが、前作のバックの演奏だとわざとメンフィスあたりのクラブで夜遅くにひっそり演奏してますよ~的な音ではなく、とてもライヴな楽器の音が臨場感満点で、この1曲目からぐっと作品に引き込まれる感じです。

続く「Bad Bad News」はこちらも前作ではあまり聴かれなかった、90年代UKアシッド・ソウルっぽいモダンなアップテンポのトラックに乗って、バックの男性コーラスとコール&レスポンス風に展開するというなかなかテンション上がるナンバー。途中に絡むウェス・モンゴメリー風のギターリフも気分です。

Shy」はイントロのわざとベンディングしているギターリフの感じとかそこにからむリオンの歌が、トニ・トニ・トニラファエル・サディークあたりの作品を彷彿させる、まさしく90年代以降の今時の正当派R&B作品

続く「Beyond」はこのA面では前作からのスタイルを一番踏襲している、70年代ソウル風のミディアム・ナンバーですが、サビの部分の多めに詰め込んだ歌詞を洒脱なリズムとメロディに乗せて聴かせるあたりはちょっとひと味違うところ。そしてA面最後の「Forgive You」はちょっとロック風の四つ打ちのウォーキング・リズムをバックに、こちらも饒舌な歌詞をスタイリッシュでモダンなメロディとトラックに乗って軽やかに歌うあたりは、それこそサム・クックが今時のメインストリームR&B楽曲を歌ったらこんな感じなのか、とふっと思わせます。

アルバムB面はこちらも演奏のスタイルが前作の雰囲気を色濃く残した「Lions」ですが、ここで音数少ない楽器とリズム・セクションをバックに歌うリオンの歌唱は、フレーズをぶつ切りにして歌うという、かなりヒップホップの雰囲気を漂わせたものになっていて「へえ、こんなスタイルもできるのか」と思わせます。

続く「If It Feels Good (Then It Must Be)」は冒頭からタイトルの通り、もうこれは聴いて楽しむしかないでしょう!といった感じのメロー・ファンキーなカッティング・ギターのリフをバックに歌う楽しいダンス・ナンバーで、これライヴでやったらみんな踊り始めるんだろうな~と聴きながら思わずニンマリする曲。




ベースリフのフレーズが印象的なこちらもアップテンポで、ほんのりプリンスの陰が見え隠れするナンバー「You Don't Know」で軽快な楽曲が続いた後、グッとまたサザン・ソウル風味満点の、それこそメンフィスやテキサスあたりのライヴ・ジョイントでリオンのねっとりした、恋人同士の仲直りのセックスの歌を聴いてるという濃厚な雰囲気の「Mrs.」で本来のスタイルに戻った後、アルバムラストを締めるのは、自らの出自や彼が大きな影響を受けた母親のことを、半ばフリー・ジャズ・フュージョン風のトラックをバックに、それでもリオンらしい正当派R&Bシンガースタイルで歌う「Georgia To Texas」。ここでのリオンの歌い方を聴くと、彼が本来はゴスペル畑から成長してきたシンガーなんだな、ということが如実にわかる、そんなアルバムのクロージングです。



思えば前作のジャケは真っ赤のバックに、ヴィンテージものの60年代風のジャケットとパンツに身を包んだリオンが、サム・クックさながらのポーズを決める、といったものでしたが、今回はより最近の90年代あたりのR&Bアルバムを思わせる出で立ちとデザインで、前回と今回のアルバムのスタイルをよく表しているといっていいでしょう。

前作に比べて、本来のスタイルを維持しながらも様々なスタイルに取り組んでいる今回のアルバムもシーンでは概ね評判がよく、全米アルバムチャートでもトップ3と、彼に取って最大のヒットアルバムとなっています。今回も前作同様全曲でリオン自身が曲作りに関与していることも、このアルバムでの彼のパフォーマンスにクレディビリティ(信頼性)を与えています。

また、今回従来のR&Bチャートだけでなく、何とアメリカーナ・フォーク・アルバム・チャートで堂々の1位に輝いたということも、リオン・ブリッジズというアーティストがより広いリスナー層を捉えられる多様性を持っていることを示した証明でしょう。


Coming Home 

まもなく梅雨空が多くなる時期ですが、クラシックなスタイルを持ちながら今回音楽性の幅の広さをも証明してみせたリオンの素晴らしいR&B作品を聴きながら、残り少ない五月を楽しみませんか。

<チャートデータ> 

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位3位(2018.5.19付)
同全米R&B・ヒップホップ・アルバム・チャート 最高位3位(2018.5.19付)
同全米R&Bアルバム・チャート 最高位1位(2018.5.19付)
同全米アメリカーナ・フォーク・アルバム・チャート 最高位1位(2018.5.19付)

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